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オタクガール、悪役令嬢に転生する。

[著]富士 ゆゆ  [絵]はくり

オタク暦15年、BL一筋に生きてきた腐女子が『脱!悪役令嬢』を目指して大奮闘!?最後の記憶はイベントのアフター―なのに、目の前の鏡に映っている縦ロール女は誰っ!?戸川芭琉が転生したのは、超人気乙女ゲーム「私立学園花乱舞」の悪役令嬢。高校3年間の破滅フラグを回避せよ!…って言われても、このゲーム全然知らないよ!?だって私、腐女子だったんだから―!!攻略キャラの知識は無いけど、兄と幼なじみのCVが生前の推しカプと同じっぽいので妄想だけは捗ります!!!(「BOOK」データベースより)

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 腐女子OLが、とある乙女ゲームの世界の「悪役令嬢」として転生してしまった。高校時代3年間の生活で「破滅エンド」を回避しなければいけないが、元になった乙女ゲームの知識などまるでなく、ヒロインも攻略対象すら知らない手探りの状態で…!?というお話。

 俗世から隔絶されたセレブ校、その身は箱入り娘のお嬢様。行動に縛りの多く一人になり辛い状態で転生先の世界観設定の把握すらおぼつかない。そんな中で自分にとっての「バッドエンド」を回避しようと右往左往する展開が楽しかった。その合間にオタク女子としてなんとかマンガとかアニメとかに触れようとするけど、どこまでも邪魔が入って阻止されるのがジワジワ来る。いやしかしオタクにとってこの「断食」はつらいですよねわかるわ……。

 ヒロインが誰だか解らないと、どういう行動が「悪役令嬢」として受け取られてしまうのか未知数で。序盤から「この娘がヒロインでは?」というキャラが何人か提示されているけど、あれだけ露骨にヒロイン扱いされていると引っ掛けのような気もしてくる。実は今主人公に弄られてるこの娘こそがヒロインなのでは……!?と想像しながら読むと、予想外の所で悪役令嬢フラグ立ててしまってそうで、勝手にハラハラしてしまったw

 しかし、世界観とか配役とか気になる部分が沢山あるのに、世界観の全体像すら見えずに終わってしまったのが残念です。原作が「なろう」らしいので続巻前提なんだとおもうけど、この巻だけだと面白いかどうかの判断すらできない。

 「悪役令嬢」の概念をラノベで見たから知ってる!!って言われるのも若干違和感あったのですがこれはラノベ発の概念なの?意味としてはなんとなく伝わるんだけど属性として直接単語にしてるのは初めて触れました「悪役令嬢」……最近少女小説系のなろうではやってるみたいなので、そっちを想定した発言なのかなあ。「兄と幼馴染みのcvが前世で好きだった二次カプの中の人と同じ」という腐女子設定も、今後生きてくるのかもしれないけどちょっと本編に上手く絡んでないというか、浮いてた気がする。

 読み終わった後に軽く「なろう」の原作の方も見たのですが、番外編で元の世界の主人公の友人が勢い余って主人公の追悼本?出す!!!みたいな流れになってるのおもしろかったです。元の世界の情報があまりにも少なすぎるので、あれ最後の方に入ってたら良かった気がする。

俺様にゃんこ、極道のもふもふになる

[著]朝香 りく  [絵]みろく ことこ

新米ノラ猫のチビは、発泡スチロールで川に流されていたところをヤクザの神名木に救われた。怪我を負ってまで助けてくれた神名木に恩返しがしたいと神社でお祈りしてみたら、なんと人間の姿に大変身!実はそこは猫の守り神がおわす神社で、猫の恩返しに力を貸してくれるらしい。だが、相手に正体がバレて忌み嫌われると、毛玉になって消えてしまうという。短い生涯になっても俺様は恩返しをする!と、チビは神名木のもとに乗り込むが―!?(「BOOK」データベースより)

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 世間知らずの捨て猫チビが、ひょんなことから人間のヤクザの男・神名木に命を助けられる。自分を助けるために怪我をしてしまった男になんとか恩返しをしたくて神社で祈ったら、人間の姿になってしまった!?人間に正体を知られたら毛玉になって消えてしまうと言われるが、それでも恩返しに行くことを決意して……!?

 タイトルからもっとトンデモなお話を想像していたけど、飼い主に捨てられたことを受け入れられない猫と女に裏切られて人間不信気味の極道が新たな居場所を見つけて寄り添っていくというちょっとほっこりできるお話でした。そのうち神名木だけじゃなくて組員たちまでが少しずつ絆されていって、家族っぽくなっていくのが楽しかった。

 チビ改めアザミの常識知らずな言動から来る勘違いやら正体を隠そうとして引き起こす騒動が微笑ましいんだけど、何気に神名木の勘違いの仕方も大概じゃない!?アザミの言い様でカラダを売ってたと勘違いするのはともかく、突っ込んだら反応とかで察してあげてほしい。猫であるがゆえにヤクザにも色眼鏡を掛けず、そして本能の赴くままに気持ちいいことを素直に受け入れてしまう。いろんな意味で「正体が猫」という設定がいろんなところに上手くつながっているなあと思いました。

 あと、猫側のバックアップ体制が微笑まし過ぎて。ラストの神名木にお説教するアザミの親友猫・キンメのシーンが個人的にお気に入りです。可愛すぎ……。

異世界取材記 〜ライトノベルができるまで〜

[著]田口 仙年堂  [絵]東西

中堅ラノベ作家の俺は、編集からのオーダーである「無双とハーレム」を体験するため、KADOKAWAが用意したルートを使って異世界へ取材にやってきた。ガイドの獣人アミューさん、そして、「魔法理論」を勉強するため、わざわざ異世界転移してきたらしいラノベ作家志望のJKと、いざ取材旅行へ出発!だが、孤高無双の勇者は中二病こじらせた二刀流の少年だし、ハーレム三昧の魔王の正体は後輩の売れっ子ラノベ作家!?この取材、どう転ぶかわから…(編集)先生、宣伝足りねーよ!!こうだろ→しがないラノベ作家が取材がてら異世界を救う!?創作と現実が交錯するサクセスファンタジー開幕だ!!(「BOOK」データベースより)

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 「異世界ラノベを書くためにライトノベル作家が取材で異世界に行く」のが普通の世界。コワモテの編集者に勧められて『無双』と『ハーレム』の取材をしに異世界にやってきたラノベ作家。現地のガイド・アミューさんや異世界で助けたラノベ作家志望のJKを連れ、“勇者”や“魔王”の取材に向かうが!?というお話。

 カクヨムで途中まで読んでいた連載なんですけど色んな意味でしょっぱなから破壊力が高いので気になるひとはとりあえず読むといいとおもいます。序章のラスト2行ズルいとおもうんですよほんとズルいんですよ設定の勝利だよね……!!

 世界観設定だけでも割と大勝利なのに、異世界転移モノのお約束を弄ったネタだけでなく、そこかしこから顔をだすラノベキャラ・ラノベ作家・編集のパロネタ/メタネタが全開でめちゃくちゃ楽しい。先輩作家のあの人やらこの人やら割と隠れてないし、勇者はキ○トさんだし魔王はどうみてもどっかの美少女作家だし!

 取材だけのつもりがだんだん異世界の事情に巻き込まれていく一行が、だんだんシリアスな展開になりつつもしっかりと取材魂だけは忘れてないのにニヤリとする。良い意味で「やりたい放題」な物語でありながら、最後はしっかり熱いバトルで〆てくるのが最高にずるかったです。

 それにしても元ネタの作家の人が浮かんでしまう時点で、最終決戦が仲良し作家同士がお互いをベタ褒めしながらペンで殴り合っているようにしか見えないのでなんだこの……なんだ……私はどんな顔してこれ読めばよかったんだ……。キノシタのあの絶妙なクズっぷりと絶妙に屈折したせんせーへの愛憎感が私物凄く好きなんですけど……なんなんですかね……困りますね……。最終決戦のシリアスなバトルシーンでそこかしこで「召喚(サモン)」が飛び交ってるの絶対意趣返しだと思いました(某ラジオ参照)。


 キノシタのCvは下野紘を希望します(気が早い)

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う3

[著]昼熊  [絵]加藤 いつわ

迷路階層の主を退け、異世界で着々と名声を築いていく自販機―ハッコン。そんな彼のもとには今日も続々と新たな依頼が。地図の制作やモンスターハント、更には大食い大会の景品に!?「これで今日一日、ハッコンは私の物っすよ!」自販機の独占使用権を得たのは底無しの胃袋を持つ少女・シュイ。暴食の限りを尽くす彼女に、全ての食料を食い尽くされてしまうのか―?自動販売機に転生した男の異世界無双ライフ第三弾!!(「BOOK」データベースより)

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 自動販売機マニアだった青年が異世界に自動販売機として転生する物語。バトルあり、新キャラありで盛りだくさんなシリーズ3冊目。

 新キャラ・ミシュエルの見た目とは正反対の残念ぶりが好みだった!外面は穏やかな好青年、その実態はコミュ障のビビリ、しかし防御の加護を持つハッコンでも唸るほどの実力を持つ騎士であり、対峙した人間を容赦なく切り捨てる容赦ない一面もある……というギャップ萌えが詰まった美味しいキャラでした。というかこのシリーズに唯一足りてなかった美青年枠の登場に、ついついニッコリとしてしまう。ラッミスやヒュールミがミシュエルにぐらっといかないかヤキモチを焼くハッコンの姿も微笑ましかったです。

 今回は外征話が多めで、清流の階層でのエピソードが少なかったのが少しだけ残念だけど、その分大食い団とシュイが大暴れする大食い大会物語が最高に楽しかった!商店街にギリギリで赤字を出させないために、大会参加メンバーの胃袋をあの手この手でふくれさせようと右往左往する姿にニヤニヤする。

 その後の、シュイの事情に迫る1日デート(違)の話もたのしかった。序盤は生きるため、機能を拡充するために商売を最優先にしている部分があったハッコンがシュイの事情を目の当たりにして色々葛藤するのがいかにも「人間」らしい。とはいえ、それってこれまでの商売をて広くやってポイントに余裕が出たからこそ悩める事なんだなあと思うと、感慨深い(個人的にハッコンが商売してる話が好きなのでそこは割り切ってどんどんやってほしいんだけど!)

 階層主並の打撃力を持つミシュエルや圧倒的な力を持つ「冥府の王」、そして魔王の存在等、話も大きくなってきたなぁ。危ない場面は多々あれどなんだかんだで2巻まで敵なし状態で勝ち続けてきただけに、冥府の王との戦いは手に汗握らされました。圧倒的な力を持つ相手を前にどうやって状況を打開していくのか、楽しみです。

 しかしコインランドリーはともかくA●Dは自販機に含めてしまっていいの!?今回得たスキルで一気に自分で出来ることが広がって、ますます「自動販売機」とはいいづらい存在になってきたなハッコン。あとは会話が出来るようになったらもうほとんど自販機としてのデメリットなくなってしまう……。

スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました

[著]森田 季節  [絵]紅緒

現世で過労死した反省から、不老不死の魔女になって、スローライフを300年続けてたら、いつの間にかレベル99=世界最強になってました。生活費を稼ぐためにこつこつ倒してたスライムの経験値が蓄積しすぎたせいみたいです…。そんな噂はすぐに広まり、興味本位の冒険者や、決闘を挑んでくるドラゴン、果ては私を母と呼ぶモンスター娘まで押し掛けて来るのですが―。冒険に出たことないのに最強…って、どうなる私のスローライフ!?(「BOOK」データベースより)

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 現代日本で過労死したOLが異世界に。転生する際に神(女神?)的な存在からお願いを叶えて貰うことができた彼女は、不老不死の魔女に転生。のどかな村の近くで悠々自適のスローライフを送ることに。ところが転生から300年ほどたったある日、日銭を稼ぐために毎日スライムを倒していたらスライムの経験値が積もり積もってレベルMAXになってしまっていたことが発覚して!?というお話。

 不老不死だし、レベルMAXだしでおおよそ敵なし状態なんだけど色々望んでいないトラブルが向こうからやってきてしまうフラグ体質感と、あくまでスローライフを維持しようとするアズサのペースにやってきたトラブルのほうが巻き込まれていくのがすごく楽しかった!弟子のドラゴンに「娘」を自称する双子、押しかけエルフなどとなんだかんだと疑似家族的な関係になっていくのにほっこりする。あと家族にはならないけど世話焼き魔族のベルゼブブが超かわいい。

 寿命の違いから意識的に人間とは距離を置いて生きてきたアズサが、望んではいなかったけど最強の魔女として名が売れてしまったことでそういうことを気にせず対等に付き合える、かけがえのない「家族」を得ることができた。なんだかんだで彼女達との関係に居心地よさを感じているアズサの独白が印象的でした。

 しかしこの物語の最大の魅力は難しいこと考えずに頭からっぽにして読めるこの感覚だとおもうんです。都心での社会生活に疲れてる社畜や社壊人には是非おすすめしたい。なんかもう心に染み入るぞー……。

ラノベのプロ! 年収2500万円のアニメ化ラノベ作家

[著]望公太  [絵]しらび

「バッキャロウ!こういう人気作は、発売日に買いたくねえんだって。俺より売れてる作家の初動に貢献したくないの!」アニメが爆死した、意識高い系ラノベ作家・神陽太の年収は2500万円。アニメがコケてもこれぐらい稼ぐことはできるが、この業界では全然たいしたことはない。上には本当に上がいる。そんなシビアな業界で陽太は“プロ”らしい日常を心がけるが―税金対策として雇った幼馴染み・希月結麻はラノベ知識ゼロ。後輩作家のJKとJCの才能には焦らされ、担当編集からはダメだしの嵐…。それでも野望達成のため、今日も執筆で金を稼ぎ続ける!望公太が贈る『日常系』のハイエンド登場!!(「BOOK」データベースより)

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 高校生でデビューしたがデビュー作は打ち切り、なんとかアニメ化まで漕ぎ付けたがアニメは爆死……というラノベ作家の神陽太が、税金対策で雇ったアシスタント兼おさななじみの結麻や後輩作家の女の子達に振り回されたり、自分より売れてる作家に嫉妬しながら売れ筋作家目指して頑張る日常ラブコメ。

 ラノベ作家系日常コメディと聞いて勝手に昼夜逆転で締め切りに追われる修羅場生活を想像していたら主人公が早寝早起きで朝にジョギングまでしちゃう意識高いストイックな作家生活してて謎のダメージを受けた。作家生活を脅かすと思えば好きだったゲームも封印するしソシャゲにも手を出さないとかストイックすぎて眩しい。

 ラノベ作家の年収の話とか編集者との話とか打ち切りやら延期の話とか絵師の話とか業界関係の生々しい話も結構あるんだけど、それよりも「自分より才能のある作家を妬まずにいられない」あたりの話の方がなんだか生々しく感じました。でも、同時にその妬ましさを「強さ」として自分を律することが出来て、自分の芯を曲げない主人公なんだよなあ。だからこそ作家仲間達も彼の周囲に集まるんだろうと(基本ぼっちだけど)。作品を生き残らせるために妥協しろ、の話は凄く説得力があったし、厨二病作家であるエマならではのルビ振り談義で盛り上がるシーンとかものすごく楽しかった。それにしても藤川先生(男)と陽太の間にナニがあったんですか?私気になります!!!

 一方で、オタクに興味も理解もない幼なじみヒロイン・結麻が、オタクのノリを理解できない事をもどかしく感じながらも彼らのノリには染まらず、それでいて一番の理解者として主人公の隣にいるという関係性が美味しかったです。すれ違うこともあるけれど、お互いが大切で仕方がない関係性がニヤニヤしてしかたない。そして、終盤で明かされる主人公のまっすぐな好意が眩しい。素直になれない事は数あれど、ラノベ作家としての仕事意識と同じくらいストイックに彼女の事を一筋に思っている姿が心地良かった。なんという幼なじみヒロイン大正義ラノベ。

 ラストシーンの告白の行方やら陽太のアニメ化周りのあれこれとか、まだ色々隠されている物語がありそうで、この雰囲気だと上下巻完結とかになるのかな?続きも楽しみにしてます!

 それにしても望公太先生がリアルで幼馴染とゴールインされたときいて……

CHAOS;CHILD とある情弱の記録

[著]藤井 三打  [絵]ささき むつみ[原作]5pb.×ニトロプラス

「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれた、連続猟奇殺人事件から6年。その事件をなぞるように、6年前と同じ日に連続して人が死にはじめた。1人は自分の腕を食べ、1人は自分の腹を裂き、1人は自分の首をねじ切って…。高校の新聞部に所属する宮代拓留は当初、興味半分で事件を追いはじめる。しかし、取材を進めるうち、いつのまにか自分に危険が迫っていることに気づくが…。大人気ADVゲーム「CHAOS;CHILD」初の公式ノベライズがついに登場!! (「BOOK」データベースより)

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 興味本位から渋谷で起きている連続猟奇殺人事件の捜査をしていた碧朋学園新聞部の面々。部長の宮代拓留はこれまでの事件が、6年前に渋谷で発生した「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれる連続猟奇殺人事件の日付と一致することに気づく。第三の事件も予想通りの日時で発生し、偶然ながら殺人現場に潜入することに成功するが、それ以来、事件は彼らの周囲で起きるようになっていって……。

 ヒロインのひとり・来栖乃々の視点から語られるカオスチャイルドの物語。主人公である拓留の知らないところで事件に深く関係する人物であった「乃々」と、第一の事件からの「被害者」たちの視点から描かれる事件の真相はゲーム内でも明かされていない情報がたくさんあって面白い。死んでしまう人間からの視点も含まれるので色々としんどいところはあるんですが。

 第六の事件の当事者の話はもう無条件でえぐられるんですけど、第三の事件「回転DEAD」の被害者・柿田と有村の馴れ初め話もかなりしんどい。兄の死、家族の裏切り、周囲の人間の「嘘」を突きつけられる日常に参っていた彼女が兄の友人であり、腹を割って話せる柿田との出会いにどれだけ救われたのかと思うと……あと、第四の事件の顛末なんかはトゥルーエンドを読んだ後に読み直すとなんとも言えない気持ちになる。

 ゲームのトゥルーエンドルートでの展開を、乃々の視点から読めるのは正直とても嬉しかった。最終的には蚊帳の外になってしまう彼女たちが、物語の裏で彼らを支えた人々が、「彼」の帰りを待ちわびている姿を見れただけでも胸が熱くなるし。それにしてもシリーズの垣根超えて色々な事情を知ってそうなゲンさん、この人一体何者なんだよ……。

 ただ、ゲーム本編で語られる部分(=主人公である宮代拓留の視点)については事のあらまししか語られない上、その割には事件の真犯人まで含めてがっつり核心部分をネタバレされる(というか知っていること前提で物語が進む)ので原作ゲームをプレイしていない方はそちらを先にやったほうが良いかも。

 良くも悪くも、ゲーム本編と「対」となる物語でした。

ゴブリンスレイヤー

[著]蝸牛 くも  [絵]神奈月 昇

その辺境のギルドには、ゴブリン討伐だけで銀等級にまで上り詰めた稀有な存在がいるという…。冒険者になって、はじめて組んだパーティがピンチとなった女神官。それを助けた者こそ、ゴブリンスレイヤーと呼ばれる男だった。彼は手段を選ばず、手間を惜しまずゴブリンだけを退治していく。そんな彼に振り回される女神官、感謝する受付嬢、彼を待つ幼馴染の牛飼娘。そんな中、彼の噂を聞き、森人の少女が依頼に現れた―。圧倒的人気のWeb作品が、ついに書籍化!蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー、開幕! (「BOOK」データベースより)

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 かつてゴブリンの襲撃により家族を失い冒険者になった男、通称『ゴブリンスレイヤー』が、周到な下準備と強い執念を持って、獲物であり家族の仇でもあるゴブリン達をひたすら殺していく話。

 Web小説ではなく、2chの「やる夫スレ」が原作。AAを使って淡々と書かれた内容がどういうふうになっているのか……とおもったら、小説としての肉付けをされつつもどことなく雰囲気はそのままで小説になっているのが面白かった。キャラクターの固有名詞がなく、役職のみで描写されるのでどうしても脳内ではAA元のあのキャラやあのキャラで浮かんでしまうんだけど、その想像を邪魔しないどことなく元のキャラクターたちの空気を漂わせるキャラデザがずるい。

 数々の冒険者達の迎えた悲惨な最期と凄惨な現場が、ゴブリンという生物の恐ろしさとしてじっくりと描写されていて、現実のRPGでも作品世界でも雑魚モンスターとして扱われているゴブリンがこの作品の中だととても恐ろしい存在だと思えてくる。

 熟練の冒険者が相手をするには旨味が少なく、初心者が対処するには持て余しがちなゴブリンを決して侮らず、そして一切の容赦なく殺していく姿には一筋の狂気すら感じる。でも、ゴブリンをひたすら殺す物語でありながら、そのゴブリンの恐ろしさを一番理解しているのはそのゴブリンを殺しまくっているゴブリンスレイヤー自身で。人間に仲間を殺され、群れを渡ったゴブリン達が上位のゴブリンになるなら、それを殺す存在がゴブリンに家族を殺され、生き残った男だというのはなんとも因果を感じてしまって、やるせない。

 そんな彼が擦り切れそうになりながらも、迷ったり悩んだり、幼馴染の牛飼い娘や仲間の女神官に対して不器用ながらに心をひらいていく姿が、どうしようもなく人間らしかった。恐らくWeb版との一番の違いはその辺の心象描写が増えていることではないかと思うんだけど、幼いころの冒険者になりたかったという「夢」を思い出すゴブリンスレイヤーのシーンだけでも、読んでよかったと思える。

 原作スレは確かここまでなので、続編がどうなっていくのかがとても気になります。いつかゴブリンとは関係ない心躍る冒険に旅立つゴブリンスレイヤーさんの姿も見てみたい。

どうでもいい 世界なんて 2 -クオリディア・コード-

[著]渡航(Speakeasy)  [絵]saitom

正体不明の敵<アンノウン>によって、世界が崩壊した近未来。今も<アンノウン>との戦争を続ける防衛都市・千葉に暮らす千種霞は、本来の戦闘科としての仕事ではない、出向先の生産科で残業に明け暮れていた。そんな中、生産科の科長・朝顔は、事実上の支配階級である戦闘科に反旗を翻し、首席選挙に立候補しようと目論むが、そのことが戦闘科にばれ、窮地に立たされる。起死回生を狙うため、霞が考えたとんでもない作戦とは!? TVアニメも好評だった『クオリディア・コード』の「千葉編」前日譚、完全書き下ろし小説第2弾!(公式サイトより)

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 千葉首席の座を勝ち取り戦闘科偏重の空気を覆すため、代表選に出ることを決意した釣瓶朝顔。生産科に出向中の霞をはじめ生産科の面々は彼女の活動を後押しするが、それを良く思わない戦闘科から釘を刺されてしまう。圧倒的な戦闘科優位を覆すため、霞はとある作戦を提案するが……?「クオリディア・コード」の前日譚、千葉完結編。

 露骨に霞の中の繋がりの人ネタな「理由あってアイドル作戦」やらやたらと連発される作者繋がりの「勝ったな!!ガハハ」とかこれでもかとぶちこまれるメタネタの数々がテンポよくて楽しい。生産科が一丸となって彼女の選挙活動を盛り上げていく姿がアツかった。それにしても「恋ダンス」とか恐らく米大統領選を匂わせる話とかネタの鮮度が高すぎるんですけどこれ本来の発売日去年の年末じゃなかったっけ!?ものすごくギリギリ進行の気配を感じる……。

 その一方で、前巻からばらまかれていた不穏な伏線がしっかり水面下で根付いていて、時折感じさせる薄ら寒さとそれが芽吹いてからの人間模様は流石だなあと。1巻も殆どバトルおまけみたいな扱いでしたが2巻は完全に人間vs人間の戦いだったなあ。そして、人間同士の心理戦に不確定な<世界>の要素が加わって繰り広げられる心理戦が熱い。選挙活動のシーンとか割と真剣に「政治」やってるのが印象的でした。

 今回明かされた霞の<世界>の真の力とその代償についてはちょっとアニメでも見たかった気がしなくもないっていうかその設定正直美味しいんですけど今ここで明かされるんですかー!!!アニメでの壱弥の「本気を出せ」発言とかどういう気持で受け流してたんでしょうね……。思っていた以上に強力でそれ故に使い所が難しい能力を、自分(達)の思惑の為なら躊躇せず使う霞は本当にかっこよかった。

 霞と明日葉、互いが互いに手を伸ばし合うようにして得たそれぞれの<世界>。二人の立場から見た夢見の世界の風景が、対称になってるのがすごく好きです。

 いろんなことがあったけど、最終的に色々立場も変わったけど、それでもいつも通りの何気ない応酬で終わる物語が、これからも続いていく千種兄妹の物語を感じさせるようで良かったです。ノベライズの方もそうなんだけど、本当に渡先生の描く千種兄妹は何気ないやりとりが偉い甘くてズルい。後は予定されているのは円盤特典小説とダッシュエックス文庫のノベライズの最終巻のみとなりましたが、また機会があれば違った姿の彼らが見られたら良いなあと思います。

 それにしても、終盤の漆原パイセンのかっこよさは異常。このニンジャスレイヤー原先輩、絶対卒業年度になっても内地行かないで3話の電車のアクロバティック脱線とか手伝ってくれてたに違いない。

クオリディア・コード 2

[著]渡航(Speakeasy)  [絵]松竜、wingheart

セカイの真実は、どこにあるのか―?アンノウンの急襲によりカナリアを失った朱雀は、絶望に沈み込み戦線から離脱していた。首席を欠いてピンチの東京を支えるため、舞姫が新リーダーに就任。懸命に生徒たちを支えようとする舞姫だが、その陰ではカナリアを失った哀しみに必死に耐えていた。一方、ほたるはアンノウン急襲の鍵が侵入不可領域にあると考え、青生を連れて探索を始める。そして未知の新型アンノウンにほたるたちが襲われるのと時を同じくして、東京上空にかつてない規模でアンノウンが襲来!仲間たちが次々と倒れていく中、人類の希望を一手に背負った舞姫は激戦に身を投じていくが…!?話題沸騰のオリジナルTVアニメ完全ノベライズ、待望の第2巻!! (「BOOK」データベースより)

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 渡航が描く、TVアニメ「クオリディア・コード」本編のノベライズ。第2巻ではアニメ8話までの物語を収録しています。

 1巻ラストで起こったカナリアの「死」を巡り、遺された5人それぞれの思いが透けて見えるのが楽しかった。完全に「メディアの違い」的な問題だと思うんだけどやはり心理描写を描くなら小説のほうが……みたいなのが、どのメディアミックスでもありますよね。兄気質故に妹っぽい舞姫のことが割と好感度高い霞はどこまで「兄」なんだよと笑ってしまった。「世界を守る」と叫んでいたかつての壱弥を唯一の「同志」だと考えていた舞姫の場面は、それを踏まえてその直後の壱弥とのすれ違いを思うと切なくなる。

 良くも悪くも後半に千種兄妹視点になってからが本番で、兄妹の気の置けないやりとりとか青衣と視察に出ることになってどぎまぎする兄とかそれをストーキングしながらヤキモキする妹が可愛すぎた。そして妹のコードを弄る霞のシーンがアニメ以上にエロい。やっぱり首筋のコードは性感帯なんです?千葉全く関係ないけど壱弥に壁ドンされる霞のシーンは描写がまるでBL小説みたいでした(こなみ)。

 ただ、千葉陣営が生き生きと動いているだけに逆に2巻前半の神奈川陣営メインの所はちょっと固さを感じたというか、割り食ってる印象はありました。ノベライズ自体はすごく良いと思うんだけど、それはそれとしてさがら総が描く4話までのノベライズ、橘公司が描く7話までのノベライズ、渡航が描く12話までのノベライズという形で読みたかった感じもちょっとする。



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