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愛でしか作ってません

[著]後藤田 ゆ花 [絵]沢内 サチヨ

「あたしたちを買ってください!」
YOIカンパニーで働く佐藤珠美は業界でも最大手のBL雑誌の編集者。ところが、親会社の赤字の煽りを食らい、自社が倒産することに!編集者達は自分達を丸ごと「買ってもらう」為、他出版社への身売り作戦をはじめたが…!?
 

いつぞや倒産した某BL大手出版(多分ビ●ロス)の元編集者が、自分の体験を元にして書いたというフィクション小説。…とはいうものの、きっとかなりの割合でノンフィクションなんだろうなあ…という気がしなくも。1社除いて、社名を隠す気ないですよねこれ!?(笑)

突然編集長に呼ばれて、言い渡されたのが「うちの会社が親会社の倒産を受け、連鎖倒産する可能性があります。お給料も出せません、次いつ出せるかも分かりません。」という言葉。それでも社に残留した女性編集者達が色々な葛藤を経ながら他の会社に身売りしようと奮闘する話。とにかく読んでいると主人公達のボーイズラブへの愛とか、“自分達が作っているもの”に対する誇りなんかが伝わってくる。ちょっと「私たちは腐女子のトップ・カリスマ腐女子」とか「うちが潰れたらBLが駄目になる」とか「自分が声を掛ける事で、作家の人生が変わる」とか全体的にちょっと自意識過剰っぽい表現が鼻にはつくのですが、ぶっちゃけこのくらい自分の仕事に愛情と自信持ってなかったら給料も無しで無償活動なんかしないと思うんですよね。とにかく、編集者達の「本気ぶり」が伝わってくる作品。

作家の原稿を取りに行ったり、倒産がほぼ決定した後にもコミケに同人作家を発掘しに行ったり、扱っているのがBLであるというのを理由にボロクソにけなされたり…と倒産の件で駆け回っているあたりの話は凄く楽しい。特に恐山出版の編集者と珠美がガチでぶつかり合うシーンは良かったです。屈辱に耐えながらも自分が大切に育てた作家を紹介したら、予想以上に真剣に受け止めてくれて…—という、編集者の態度の変化が凄く良かった。この人もただ頭からBLを否定しているのではなく、自分の仕事に誇りを持ってやっているんだろうなというのがなんとなく伝わってくる。それにしても結局“恐山出版”ってどこのことなんでしょうね。集英社?

しかし、筆者がある程度反映されているであろう「主人公」の珠美がこの本を書くに至るまでの経緯は正直余計だった気も。編集部身売りの場面では、何者にも流されず、編集部復活に向けて頑張る編集者達の姿が描かれているのに、あんまり信じていないけど同僚に誘われたので占いを受けに行って「小説家になりなさい」と言われ、流されて本を書き始めた…というのがあまりにも場に流されすぎで、なんだか微妙に感じてしまいました。本になった経緯もなんだかその場のノリっぽくて、なんか、これが本当なら本気で小説家目指してる人間に対してなんだか失礼な気がしてしまう。

倒産前夜にみんなで集まって、差し押さえられる前に作家達から預かった原稿や全プレの景品を送ってしまおうとするシーンが凄く印象的。封筒が足りなくて必死に他の封筒を使いまわしたり、エロい絵柄を隠そうと苦心したり…そんな事をしながら色々語り合って、やはり話はBLになってしまう、腐女子達のサガを感じます。その後の担当漫画家とのやりとりにもジーンとした。

色々とツッコミたい部分はあったけれど、BLが好きな人や編集者の仕事に興味がある人にはかなり楽しめるのではないかと思います。ある意味“ノンフィクション”であると歌っているからこそハチャメチャに書けたというのがあると思うし。題材はBLですが、普通に熱い物語なので耐性がある人にはオススメ。

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