ページ 24 | 今日もだらだら、読書日記。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編4

 

全学年、全生徒、総力戦のサバイバル試験、超絶怒濤の壮絶決着!
2週間のサバイバル試験も後半戦。1年生、2年生、3年生、月城理事長代理、様々な人の意志が常夏の無人島で交錯する。 「私は退学を恐れません。綾小路先輩を守るためであれば、何でもするつもりです」 「だから、あたしの許可なく勝手に潰されてないで下さいね」 「もしもの時はそうだな……力づくで乗り切ることにしよう」 「高円寺を封じ込める指揮は俺が取る」 「やれやれ、騒がしいねぇ。それじゃあ、少しだけペースを上げさせてもらおうかな」 「わ、私、どうしても綾小路くんに伝えなきゃいけないことがあって!」 全学年、全生徒、総力戦の無人島サバイバル試験、ついに決着!

波乱だらけの全学年対抗無人島サバイバル、完結編。めちゃくちゃ面白かった!ホワイトルーム生の正体も発覚して月城学園長代理との対決は一段落…という流れなんだけど、ただ1年生組に関してはよくも悪くもますます謎が深まったと言うか、最高にアツい展開ではあるんだけども若干スッキリしない終わり方だったな。2年生編になってから敵が強くなってきてて、綾小路ひとりの力だけでは無双しづらくなってきてるのを改めて感じた1冊だった。

いつもと違う人間関係が印象的だった無人島サバイバル完結編

七瀬との対決・和解、そしてホワイトルーム生との遭遇を経て再び単独行動に戻ることを決意した綾小路。ところが、雨による特別試験の一時中断やそれによる補填など綾小路にとって予想外の事態が次々と発生していく。更に、綾小路の首にかかる賞金を狙った一年生の混成軍が動き始めて……。

ホワイトルーム生の正体が速攻でバラされて「アレだけ引っ張ってたのはなんだったの!?」状態だったんですけど、一年生周りの話はホワイトルーム生の正体が明かされてもなお謎のままというか、正体が明らかになったことでますます謎が深まったと言っても良いまである。なにより、以前出てきた“ホワイトルーム生の独白”の主が、どう考えても今回正体が明かされた人とは別人な気がするんだよなあ。今回のやりとりを見るとちょっと現在明かされてる情報をそのまま素直に受け取ってはいけないような気もしてきて結局の所一年生に関する真相はほとんど闇の中に。果たして今回明かされた人とは別のホワイトルーム生が別口でいるのか、それとも今回正体を出してきた生徒自体がフェイクなのか、もしくは月城以外の別口なのかそれとも(でも月城が把握してないホワイトルームからの刺客が出てきちゃうともう同学年ですら信用できなくなるな……)。綾小路先輩と和解して番犬みたいなムーブする七瀬ちゃんかわいい(現実逃避)。

一年生の誰も彼もが胡散臭い状況の中、これまでの試験で敵対しあってきた2学年の生徒たちと手を取り合い完全に協力することはできないけどお互いを信頼して戦う姿が新鮮で楽しかった。特に「いつか綾小路と本気の勝負をしたい」板柳&「あいつを倒すのは俺だ」龍園との共闘には本当にニヤニヤしちゃう。こういった運動関係の種目がハンデとなる板柳が動けないのを逆手に取って司令塔として活躍する姿はめちゃくちゃ心強かったし、龍園がかつて綾小路と対峙した際に語った自らの“勝負への価値観”がふんだんに発揮される宝泉との戦いなんかもう本当にめちゃくちゃおもしろかったですね。龍園のやってることめちゃくちゃ卑怯なのに、バトルがこんなにアツくなるのはズルいよな。あと最後の最後で詰め込まれた伊吹&堀北の仲悪コンビがめちゃくちゃ好きなんですが、この二人の薄い本はいつ出ますか???(気が早い)

今回は綾小路が結果的に一本取った形になったけど南雲生徒会長との因縁はむしろここから始まった感じがあるし、ヒロインレース的な意味で見せ場をかっさらっていく一之瀬など、今後につながるであろう新しい人間関係の構築が面白い巻でもありました。というか本格的な一之瀬参戦でヒロインレースどうなる?綾小路は鬼龍先輩やひよりとの絆も深めてる感でマジ軽井沢さん無人島サバイバルしてる場合じゃない。

最高に面白かったけど謎はますます深まってしまった…!!

長く続いた無人島サバイバル編の決着巻ということで、熱い展開で最高に面白かった!!……んですけど、その一方でむしろ一年生周りの謎はますます深まってしまったし、なかなか全貌が見えてこないのが若干もどかしい。3冊(一年生との対決という意味では4冊)も引っ張ったにしては、すっきりしない終わり方だったなぁ。また、敵がホワイトルーム生になったことで1年生編のように綾小路が水面下で無双してサクッと裏から勝つみたいな展開がなくなってしまったのは若干寂しさを感じる……学園の生徒側の支配者として描かれる南雲会長を眼力で押し返す場面には挿絵含めてたいへんに興奮したけど。

ただ、1年生編と比べて綾小路一人で対処しきれない事態が増えてくる=周囲の同級生たちを巻き込まざるをえなくなっている現在の展開は1年生編にはなかった要素で本当に楽しいし、並み居る強敵相手に今後どういうふうに綾小路が「成長」していくのか(というかある意味でホワイトルーム製の「完成品」である彼が果たして成長することができるのか?)はすごく楽しみ。あと色んな意味でどうなる一之瀬。最後はスッキリと気持ちよく勝ってくれるといいなあ。

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貴サークルは“救世主”に配置されました

 

100部売れなきゃ世界が滅ぶ!? 同人誌に懸ける青春ファンタジー
「ずっと……ずっと、あなたを探していました、世界を救うために」 自分の同人誌によって、魔王の復活が防がれる。突如現れた女子高生ヒメにそう諭された同人作家のナイト。 ヒメの甲斐甲斐しい協力のもと、新刊制作に取り組むのだが…… 「えっ、二年間で六部だけ……?」 「どうして『ふゆこみ』に当選した旨を報告していないのですか?」 「一日三枚イラストを描いて下さい」 「生きた線が引けていません」 即売会で百部完売しないと世界が滅ぶっていうけど、この娘厳しくない!? 「自信を持って下さい。きっと売れます」 同人誌にかける青春ファンタジー、制作開始!

斜陽ジャンルマイナーカプ頒布1桁の弱小サークルがめちゃくちゃな努力したとしたって数ヶ月で100部は無理があるだろという一見トンデモな展開から、本人の努力だけでなく原作側の展開やサークルの配置などが加わり「運が良ければ行ける」と思わせるリアリティ具合がすごかった。「同人誌100冊出さないと世界が滅ぶ」が納得できる設定に収まるのも好感度高い。

「弱小同人サークル」描写のリアリティが凄い

落ち目のアニメジャンルのマイナーカップリングをやっている同人漫画描きの主人公。本は四捨五入でも一桁売れたら良い方、の彼がなぜかタイムリーパーを名乗る女子高生から「救世主」として祭り上げられ、同人誌で100部完売を目指すハメに。100部完売しなければ魔王が復活して世界が滅ぶ!?というお話。

この手のサークル描写って割と同人経験者でもリアリティがない作品が多いように感じるんですけど(同人経験あり商業誌作家の描く「弱小サークル」の描写、全体的に部数が2倍くらい多い、下手すると桁が1つ多い…)これはほんとうに弱小サークルあるある感がすごかったです。

絵が下手なわけではないがランキングに乗るほど上手くもない、ツイッターにイラスト投下しても行ってもRT10程度、漫画を描けば背景がなく全体的に白い、更にサークル名とHNが絶妙に古い、SNS使いこなせてないとかなんか…なんかわかる……(微妙に他人事には思えない!!!)

弱小同人サークル、100部完売を目指す

そんな主人公がヒロイン・ヒメの強烈なダメ出しと入念なスケジュール管理とそして本人の努力によって、次のイベントまでという短い期間でありながらも成長していく。真っ先にSNSでの活動での露出増をアドバイスしてくるヒメ(※オタク歴数ヶ月)のリサーチが完璧すぎる。イラストを投下させることで名前を売り、同時に枚数を描かせることで画力も成長させていくという完璧な計画なんですよね。SNSでのイラスト投稿が活発な絵描きは成長も早いし伸び代もでかいわかる。まあ普通はわかってるけど実践できないから困るんですが!!!(ヒメにスケジュール管理してもらいてぇ〜!!!)

もともと頒布数1桁の主人公が現状のジャンル・カップリングのままで100部完売するのはどう考えても無理があるんですが、配置が良かったり公式側に動きがあったりみたいな微妙に運の後押しを受ける具合がまた本当に絶妙だった。たしかにそれだけの努力にラッキーが重なれば100部完売行けなくもないかもしれない。いやぁ夢のある話だなあ!!!(吐血)

世界の命運が文字とおり自分の両腕にかかったコミケ本番……なんて状況には関わりなく同人誌が売れていくことに素直に感動できる主人公の姿にもまた胸が熱くなりました。自分に自信がなく、同人をしていても内にこもりがちだった彼がヒメのスパルタ教育の成果もあって少しずつ自らの足で前に踏み出していく姿がとてもよかったです。

ファンタジーとしても面白かった

「同人誌100部売らないと世界が滅ぶ!」というあらすじだけ聞くとかなりトンデモなお話に感じるのですが、最終的にはすごく筋が通った展開で「主人公の同人誌が100部売れないといけない理由」にちゃんとオチがついて、同人サークル物としてもファンタジーとしても楽しかったです。読後感が爽快すぎるし、それでいて次巻への種まきもしっかりなされているところがまた隙がなかった。個人的には修羅場のエピソードはもう少しじっくり読みたかったけど、ファンタジー部分との兼ね合いを考えるとこんな感じになるのか。公式燃料投下でコピー本!!!の流れ、わかる。

どうしても同人サークル描写の方に言及が偏りがちなんですが、ファンタジーの方の設定がまたすごく良かったんですよね!!ヒロインがタイムリープしてきていることで少しずつ見えてくる未来の人間関係が面白いし、それでいて解決の糸口が同人方向に寄っているのでいちいち笑ってしまう。魔王が復活する理由があんまりすぎるんですけど理解できてしまうので困るし私ならまず真っ先に元凶を消し炭にするので仕方ないと思う。むしろ元凶を消し炭にするのだけはやっても良かったのでは??ところで、カップリングの解釈違いでガチ喧嘩する主人公ヒロイン可愛いすぎない???

1巻でも綺麗にまとまってるけど続きが出るならまた読みたいなあ。

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「好きラノ 2020年下期」投票します。

ブログやtwitterによるラノベ人気投票サイト。2020年下期の人気ライトノベルはこれだ!!
今回も参加させていただきます〜!!
下半期は少し読んだ本の数も控えめだったので投票も少なめで……
紹介文の一部は「2020年読んで面白かったラノベ10選」の記事からそのままコピペしている部分もあるんですがちょっと時期が近かったんで見逃してほしい。

石川 博品「ボクは再生数、ボクは死」→感想
【20下ラノベ投票/9784047363847】
巨大なVR空間でネトゲー廃人な男女ふたりが繰り広げる、血と殺戮の配信ショー。凄くリアルなVR空間を舞台に繰り広げられるインモラルな物語が、現実ではないがゆえに軽薄に進んでいくのが面白かった。どこか滑稽で物悲しくてロマンチックなラストが大好き。
水瀬 葉月「ダークエルフの森となれ -現代転生戦争-」→感想
【20下ラノベ投票/9784049132748】
薄暗い雰囲気を漂わせつつ、好きな人と思うままに生きるため前向きに頑張る近未来学園異能。「ぼくと魔女式アポカリプス」が好きだった15年前のラノベオタクは是非読もう!!!
夕鷺 かのう「竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事」→感想
【20下ラノベ投票/9784047364349】
初恋をこじらせた聖女と初恋(?)をこじらせた竜神の織りなすドタバタラブコメ具合が楽しい!あと夕鷺作品の戦うヒロインはやっぱりかっこいんです!!って声を大にして言いたい。
翅田 大介「悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。」→感想
【20下ラノベ投票/9784049133813】
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した極道の女が乙女ゲーム世界を斬る。気っ風が良くて裏表がない、あくまでも自分のものさしでしか動かないキリハのキャラクターがどこまでも魅力的で、読んでいて楽しかったです。
佐伯 庸介「グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む」→感想
【20下ラノベ投票/9784049130751】
学園の図書館地下に広がる「迷宮」を舞台に、一度は人生に挫折した少年が死なない迷宮を舞台に他人を救い・導くために迷宮探索に挑む。他人を助ける、と謳いながらその実全く自分の欲望を満たすためという主人公の行動原理・精神性にすごく惹き込まれました。
二月 公「声優ラジオのウラオモテ #03 夕陽とやすみは突き抜けたい?」→感想
【20下ラノベ投票/9784049134919】
アイドル声優の「アイドル」としての部分がメインだった2巻までとはうってかわって、やすみが声優としての壁にぶつかり成長する、王道の成長物語が楽しかった〜!!今季一番おもしろかった一冊は間違いなくこれ。

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ダークエルフの森となれ -現代転生戦争-

 

褐色ギャル風ダークエルフとの同棲。そして種の生存をかけた戦争が始まる!
 輝獣と呼ばれる自然脅威から日本を守る騎士候補生として学園生活を過ごす朝倉練介は、誰よりも駆動鉄騎の扱いに長け、優等生の仮面を被り、だがしかし温度のない日常に倦んでいた。  そんなある日、木の上から突如彼に飛びかかってきたのは、一人の黒ギャル女子高生……もとい異世界から転生してきたというダークエルフ、シーナだった。  挑発的な態度、嗜虐にみちた言葉、それでいて明るい、日だまりのような笑顔。そんなシーナに眷属として見初められた練介は、彼女とマンションで同棲を始め、やがて異世界から転生してきた魔術種たちの生き残りをかけたバトルロイヤルに巻き込まれていく。  これは世界から零れ落ちた二人の、大それた神話で――黙示録だ。

思った以上に直球で『ぼくと魔女式アポカリプス』だ〜!!あの薄暗い世界観でありながら、世界がどうなっても好きな女の子とともに生きていくみたいな薄明るさが感じられることに時代の流れを感じる。ロボ要素が1巻時点だとちょっと浮いてる感じだったけど今後どう絡むんだろうな。

現在に向けてアップデートされた懐かしの「学園異能バトル」

「魔術種」達が自らの種の復活を掛けてお互いの「根源魔力」を奪い合う、近未来日本で行われるバトルロイヤル。彼らの戦いに望んで、望まないままに巻き込まれていく人間の「眷属」達。普段は変わらぬ学園生活を送りながら、水面下で行われる異能者達の宴。これが私の読みたかった学園異能だ!!!という感じが凄い。最高。

設定はかつての『ぼくと魔女式アポカリプス』を思い起こさせるものでありながら、あの薄暗い世界観の中にどこか薄明るさがみえるというか、薄暗い中で輝く前向きで熱い展開が印象的でした。あとがきでも触れられている通り、15年前の作品と同じ題材を用いながらも時の流れにあわせて物語の方がアップデートされてるんだなあと(っていうか魔女カリ2006年って…15年前ってマジかよ……)。

魔術種達の生存競争と、それに巻き込まれた少年少女たちのサバイバル。

明るい優等生の仮面をかぶりながら、実は猟奇・スプラッター系の創作や悪役、ダークファンタジーが好き、特にダークエルフが大好きという主人公の練介。自分を圧し殺して生きる毎日に疲れ果てて街を彷徨っていたある日、異世界から転生してきた「本物のダークエルフ」シーナに出会う。彼女の「眷属」になった練介は、魔術種達の生存競争に巻き込まれていく。

自分を圧し殺す日常から異形達が争う非日常へ、練介を連れ出してくれたシーナ。ダークエルフだということで排斥され、孤独に生きてきたシーナを救った、練介のまっすぐな好意。お互いの存在に救われたふたりがお互いの常識をすり合わせしつつ送る非日常な「日常」がとにかく楽しい!ラッキースケベな展開も交えつつも、お互い恋愛ではない別の所から発生した好意だからこその初々しさがあるというか。同棲生活を送るふたりが改めてお互いの「個」に惹かれ合っていく姿が良かった。

そんな中でシーナと同じく異世界から転生してきたスライム種のアグヤヌバとの生存競争が進行していく。アグヤヌバの眷属となった人間と対峙し、人間ではなく「ダークエルフの眷属」として生きる覚悟を今一度突きつけられた練介が「シーナとさえ共に生きることが出来れば世界がどうなろうと構わない」、というどこか破滅的な願望を持ちながら、その一方で「シーナと楽しく生きるために、今までどうでも良いと思っていたこの生活を護りたい」という答えを得ていくのが──日常から外れたところに生きる目的を見出したことで、いつ捨てても構わなかった「退屈な日常」に価値が生まれていくのに、胸が熱くなりました。

メカ要素が今後どう絡んでいくのかが気になる

今回は割とがっつり魔術バトルが中心と言う感じだったんですが、世界観的には人形サイズの装甲メカ「RV式駆動鉄騎」が活躍する近未来でもあるんですよね。今回はあまり目立たない活躍ではああったのですが、エネルギー流体(EF)が魔術側の戦争にとっても重要な役割を果たしそうな気配だったり、どうしてこの世界で魔術種達の戦争が行われているのかなど、色々と謎は多そう。

2巻はメカの活躍が多いということなのでそういう意味でも今後どういう活躍をしていくのか、楽しみです!



それはそれとして「魔女カリ」は良いですよ……短編を含めても4冊なので読みやすいのもいいね……。
救いがない感じの15年前の現代学園異能らしい「ダークエルフ」が読みたかったらよもうな……
水瀬 葉月(著), 藤原 々々(イラスト) 「ぼくと魔女式アポカリプス (電撃文庫)」
水瀬 葉月(著), 藤原 々々(イラスト) (著)
KADOKAWA
発行:2013-09-26T00:00:00.000Z

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竜神さまの生贄になるだけの簡単なお仕事

 

押しかけ聖女(嫁)と不器用青年(竜)の勘違い異類婚姻譚(ラブコメ)!
「竜神さまは生贄を受け取るつもりがない?」 聖女見習いのルーチェは、目の前の青年――オルフェンにそう告げられ大混乱。 人の姿を持つ彼は、間違いなくこの地を守る竜神さまなのに。 「俺は絶対に喰わん」「召しあがっていただけるまで、絶対おそばを離れません!!」 かくして食べてほしい生贄の聖女VS意地でも食べたくない竜神の謎の同棲生活が始まり!?

初恋を拗らせた竜神と生贄の聖女!!!恋敵はかつての自分!!!最初から実質両想いなのに拗らせた初恋の体験が邪魔をする展開が最高にもどかしく可愛かった。悪いやつではないけど外道でクズな悪友(竜)と義妹想いの姉巫女の今後も見守りたい。

初恋をこじらせた竜神と聖女の異類婚姻系ドタバタラブコメ

かつて黒い鱗の竜神に生命を救われたという体験から今度こそ竜神様に自分を食べてもらいたい!!と初恋をあらぬ方向にこじらせた聖女見習いの少女・ルーチェと、実はかつて彼女を救った竜神だが6年ぶりに再開したルーチェが「黒い鱗の竜神さま」のことばかりを口にするのですっかりこちらも初恋をこじらせてしまった竜神・オルフェンが繰り広げるすれ違いラブコメ。

とにかく生贄の押し売りをするルーチェとなんとしても生贄を拒否したいオルフェンの押し問答が楽しい!!嫁入り道具みたいなノリで調味料を装備してたり、少しでも美味しく食べてもらうために自分を磨こうと努力しはじめたり…と、斜め上の努力を重ねるルーチェの姿に何度も笑ってしまった。

初恋体験を乗り越えて両想いになっていく二人が良い

「自分を救ってくれた竜神に生命をお返ししたい」という恋心やら使命感やら義務感やらでがんじがらめになってしまっているルーチェと、そんな彼女を見て「かつての“黒い鱗の竜神”ではない、今の自分自身を見てほしい」と願うオルフェン。お互いが初恋(?)体験を拗らせているせいでどこまでもすれ違い続けるふたりのもどかしい恋模様が最高に楽しかった。ルーチェの拗らせぶりも相当ですが、終盤で明かされるオルフェンの行動もだいぶ初恋(?)をこじらせちゃってますよね。素直になれないふたり!!恋敵はかつての自分!!!という展開に、ニヤニヤが止まらない。

なかなか自分の気持ちを素直に伝えられない(というかルーチェは自覚も出来ていない)ふたりがなしくずしに同棲生活を送ることによって少しずつお互いの気持に正直になっていくところがまた良かった。竜神に生命を救われたことへのひとかどの罪悪感というか、聖女としての使命感に囚われていたルーチェがふとした瞬間にオルフェンへの恋心を自覚してしまうところに思わずほっこりしてしまった。

個人的には脇役たちの恋路も見守りたい

ルーチェが自分の生贄になったと知った義姉・イリスはこの地の竜の加護を受けていると語る青年・トゥレラと共に神殿に向かう。ところがそれは、トゥレラが仕組んだ罠だった。最大の窮地に陥ったオルフェンを救うため、ルーチェはその身を掛けて闘おうとする──。

炎に包まれる神殿、力を失いかけていたオルフェンを前にして自分の恋心をはっきりと自覚し、トゥレラに立ち向かうルーチェがかっこよくて最高。いやほんと夕鷺作品の闘うヒロインは最高!!なんですよ!!!あわせてクライマックスの挿絵がめちゃくちゃいい仕事してるので最高の高の高。

トゥレラの正体はこれまでの物語を読めばさっくり分かる感じだし予想以上に彼がオルフェンを狙う理由がクズでヒドいんですが(トゥレラが守護を投げ出した理由の一端がオルフェンにあったとしても、お前オルフェンに自分の仕事押し付けておいてそれはないだろ…!!という)、彼が惚れ込んだルーチェの義姉・イリスがしっかり彼の手綱を握っているのである意味完全に「お似合いのカップル」なんですよね。ルーチェとは別の方向に強い女であるイリスの活躍もうちょっと見たいし続編があるならこの二人の関係をもっと掘り下げていってほしい気持ちが凄い。

性格がクズい人こそ若干名いるものの、本当に性根が悪い人はいない世界観でそういうところも安心して読めました。楽しかった!!

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2020年読んで面白かったラノベ10選

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

2020年は色々な意味でこれまでとは違った1年でしたが、このブログに関係ある範囲で言いますと3月から職場がリモートワークになり、めちゃくちゃ読書が捗る!!と思ったのもつかの間通勤時間(※往復3時間以上)が消滅したため逆に読書ペースが不安定になるというトラブルが発生したりしてました。予想以上に通勤・移動時間での電子書籍読書がはかどっていたということが明るみになった1年でありました。通勤時間の3時間半自由時間が増えたはずなのに結局今年はいつもよりも何もやれてない気がするのは何故なのか。

その反面、割と新作には色々手を伸ばせてた年で、久しぶりに「おすすめ10作品」に絞るのに散々頭を悩ませたりしてました。問題は既刊のほうで脱落してる作品がかなりあることなんですが……。例によって同じ10作品を「マニアック・ライトノベル・オブ・ザ・イヤー2020」さんに投票してきました。

当分リモートワークが続く予定なので、今年はもう少し計画的に趣味の時間を作るようにしていきたいです。あと、これは後日別個宣伝しようと思っているのですが3月にラノベ中心のWEBオンリーを開催する予定なのでもし興味がある!というかたがいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。二次創作メインではありますが色んなラノベを知ってるとより楽しめるイベントかと思いますし、ラノベブログとかラノベ評論ジャンルのかたも参戦していただけたらななどと!

二月 公「声優ラジオのウラオモテ」→感想
この女の友情が美味しい!な熱血系お仕事モノ。
現代学園お仕事女の友情熱い
正反対の性格のふたりが徐々にかけがえのない親友・絶対に負けたくないライバルとして絆を育んでいく姿がたまらない。「なりたい自分」と「現実の自分」とのギャップに葛藤しながらも「アイドル」「声優」として時に目を覆いたくなるような無謀なことをしながらも、精一杯頑張っていく姿が良かった。
岬 鷺宮「日和ちゃんのお願いは絶対」→感想
混沌とした令和に生まれ落ちたNewセカイ系。
現代学園セカイ系恋愛
どんな「お願い」でも叶えることが出来るという異能を使う最終兵器系彼女と、そんな彼女と時に共感し時に恐怖しながらも最後はそばに寄り添おうする主人公の姿が良かった。今年の世相をそのまま反映したような世界観設定と、そんな世界を自ら変革しようとするヒロインの姿が印象的。
落葉 沙夢「─異能─」→感想
登場人物達の想いが交錯する、現代異能系デスゲーム。
現代学園異能バトルデスゲーム
人外の存在から「異能」を与えられたひとびとが、毎週2人ずつ選ばれて殺し合いをする、現代異能系デスゲーム。能力者それぞれの視線から代わる代わる語られる事で少しずつ全体像が見えてくる物語と、異能者達の想いが形をなすクライマックスがとても良かった。
佐伯 庸介「グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む」→感想
この主人公の拗らせ具合が好きだ!な迷宮探索モノ。
現代?学園迷宮探索異能
学園の図書館地下に広がる「迷宮」を舞台に、一度は人生に挫折した少年が死なない迷宮を舞台に他人を救い・導くために迷宮探索に挑む。他人を助ける、と謳いながらその実全く自分の欲望を満たすためという主人公の行動原理・精神性にすごく惹き込まれました。
石川 博品「ボクは再生数、ボクは死」→感想
セクシャルアンドバイオレンスな近未来VR空間モノ。
VRゲーム動画配信百合エロい
巨大なVR空間でネトゲー廃人な男女ふたりが繰り広げる、血と殺戮の配信ショー。凄くリアルなVR空間を舞台に繰り広げられるインモラルな物語が、現実ではないがゆえに軽薄に進んでいくのが面白かった。どこか滑稽で物悲しくてロマンチックなラストが大好き。
千 花鶏「女王の化粧師」→感想
お仕事×恋愛もあるよ!なファンタジーロマン。
ファンタジーお仕事恋愛もあるよ
貴族社会を舞台に、癇癪持ちの女王候補の少女と腕は良いが貴族社会を知らない化粧師の少年が女王を目指して奮闘する物語。未熟なふたりが少しずつ成長していく姿が楽しく、お仕事モノだとおもいきやしっかり恋愛要素も匂わせてくるところも良かった。3巻出るといいな…。
七夕 さとり「悪役令嬢レベル99 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜」→感想
コミュ障ゲーマー女子が繰り広げる私TUEE系ラブコメ。
ファンタジー異世界転生俺TUEE悪役令嬢ラブコメ
この悪役令嬢が良かった2020。ゲーマー気質とオタクならではのコミュ障を拗らせた主人公が過剰なレベル上げにより私TUEEしてしまうお話。誤解を招きやすいが悪気はない主人公を影に日向にフォローしてくれるクラスメイト・パトリックとのラブコメがめちゃくちゃ好き。
翅田 大介「悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。」→感想
「極道の女」がファンタジー世界を斬る!
ファンタジー異世界転生極道の女
乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生した極道の女がライバルのヒロイン令嬢(転生者。性格最悪のドクズ女)や元婚約者を蹴散らし、他の悪役令嬢達のを鍛え直す。水戸黄門的な安心感のある展開が読んでて気持ちよかった!
木村「魔王の右腕になったので原作改悪します」→感想
「推し」の生存ルートのためなら手段を選んでいられません。
ファンタジー異世界転移原作改変推し
好きだった漫画の世界に転移した主人公が、最終回で死んでしまう「推しキャラ」の魔王を救おうとする。転移前からしてワケアリそうな主人公が知恵と「科学」の力を駆使してファンタジー世界で突破口を見つけ、強行突破していく展開が楽しかった。
紙城 境介「転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?」→感想
ヤンデレ妹に愛されすぎて死んでも逃げられない。
ファンタジー異世界転生ヤンデレサイコホラー
ヤンデレ妹に監禁され、妹もろとも生命を落とした主人公が神様のご厚意で妹と同じ世界に転生させられる。色々な意味で妹のキャラクターが強烈で、赤ん坊だろうがなんだろうが油断したら死ぬみたいなサイコホラー展開が最高に楽しかったです。

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グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む

 

図書委員の仕事は……迷宮探索!? 異能の力を秘めた魔書を見つけ出せ!
 国内有数の蔵書数を誇る宇伊豆学園の図書館には、広大かつ深遠な《地下迷宮》が存在した。  高等部に所属する図書委員の守砂尊は、ある日、立入禁止の《閉架書庫》に足を踏み入れ、この図書館に隠された真実を知る。――地下に収められた奇書や希覯本、異能の力を秘めた魔書を手に入れるため、図書委員たちが果てなき迷宮探索に挑み続けていることを――。  秘密を知った守砂は、他の図書委員とチームを組んで、妖魔が跋扈する迷宮で未知の蔵書を探す《地下レファレンス》をすることに。しかし、それは楽しくも波乱に満ちた日々の幕開けで……!?

面白かった〜!!一見「誰かのため」の行動のように思える主人公の行動が、その実どこまでも彼自身の欲望を満たす行為であるというのがすごく良いですね。主人公のことが好きすぎて時々(?)暴走する幼馴染の先輩をはじめ、個性的な仲間達とのやり取りも良かった。

死んでも死なない世界で、学生たちが迷宮に挑む

膨大な「書」を内包した図書館の地下迷宮を舞台に、「図書探索委員」となった十代の少年少女達がチームを組んで迷宮を探索し、迷宮内で蔵書を探すという「依頼」=地下レファレンスをこなしていくというお話。

一定時間以上迷宮から出ないと能力や記憶を喪ってしまうというペナルティを追うが、迷宮の外に出さえすれば生命も含めて完全復活できる。十代までの少年少女達が迷宮内の「魔書」と呼ばれる本と適合し、その本の内容に由来する異能を引き出すことが出来る。死の恐怖と隣り合わせでありながら、どこかお気楽な雰囲気が漂う迷宮探索が印象的でした。迷宮攻略が主目的のチームだけでなく、とにかく戦闘を楽しみたいチーム、浅い階層で簡単な依頼をこなすチーム、特定ジャンルの書物に関する探索だけを請け負うチームなどなど今回出てきたチームだけでもかなり個性があるのがまた面白い。

バラバラだった学生たちが連携して強敵に挑む展開がアツい!!

初回から「オートマッピング」という探索向けの異能を発現させた主人公・守砂尊。迷宮内に取り残された生徒を他のチームが助けに行かないという現状を聞いた彼は、「迷宮内に取り残された生徒たちの救出」と「迷宮内の詳細な地図作成」を目的としたチームを結成する。ところが、守砂隊が発見して地図内に記載していた「隠し通路」に踏み込んだチームで事故が多発するようになり……。

隠し通路の先にあったボスラッシュみたいなフロアを攻略するため、これまでバラバラに探索していた有力者達を一つにまとめて合同作戦を行う!という展開がアツいし、その声を上げたのが新参者の守砂隊ということも、一見無謀に思える呼びかけに守砂隊によって救われた生徒たちが義によって参戦するという展開がとてもアツかった!尊達が命からがら逃げ帰った強敵たちすらも圧倒する先輩達の能力に思わずニヤリとしてしまう。尊のことが好きすぎてちょっとだいぶ愛が重い幼馴染の先輩・ミカ姉とフロアボスの対決は正直ミカ姉の迫力が圧倒的すぎて笑った。強いぞこの幼馴染。

あとなにより、尊を目の敵にしていた武闘派の先輩・加来の美味しいところ持っていきぶりとその心境の変化がたまらなく良いのですが、ラストの加来先輩萌えキャラすぎじゃないですかね!!??素直になれないキャラなんだろうなというのはこう予想がついてましたけど、予想以上に良いツンギレであった……。

自分自身の欲望を満たすために他者を救おうとする主人公が良い

かつて少年冒険家として名を馳せていたが、とある事故をきっかけに冒険家としての生命を絶たれた尊。一度は絶望の淵に沈んだ彼が迷宮探索という新たな「冒険」を見出し、それに新たな喜びを見出していくのが大変良いのですけど、その反面、ダンジョンに潜ると彼の中に潜む暴力的な「隠されたものを暴きたい」「人を助けて、目的の場所に導きたい」という欲望が時折露わになるのがまた大変良かった。慈善事業じゃなくて本能に忠実にやりたいことやってるだけなんですよねえ文字通り。

ただその反面、暴力的な一面の裏から更に自分が冒険家としての生命を絶たれるきっかけとなった事件へのトラウマやら後悔みたいなものが時折見え隠れしてくるのがどこかアンバランスで、目が離せない。良い意味で本当に今後どうなっていくのか気になってしまう主人公像でした。今後どうなっていくのかとても楽しみ。

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パワー・アントワネット

 

SNSで12万人が驚愕した超話題のWeb小説、待望の書籍化!!
「言ったでしょう、パンが無いなら己を鍛えなさいと!」 パリの革命広場に王妃の咆哮が響く。 宮殿を追われ、処刑台に送られたマリー・アントワネットは革命の陶酔に浸る国民に怒りを爆発させた。自分が愛すべき民はもういない。 バキバキのバルクを誇る筋肉(フランス)へと変貌したマリーは、処刑台を破壊し、奪ったギロチンを振るって革命軍に立ち向かう! 「私はフランス。たった一人のフランス」 これは再生の物語。筋肉は壊してからこそ作り直すもの。 その身一つでフランス革命を逆転させる、最強の王妃の物語がいま始まる――!! 大人気Web小説が早くも書籍化!

マリー・アントワネットが処刑台から筋肉で無双してフランス革命をひっくり返す、史実if。細かい部分の粗は筋肉(パワー)でゴリ押ししていく感じが一発ネタ小説として大変楽しかったし、それはそれとして割としっかり史実ネタも盛り込んでくる(多分)のが大変良かったです。

マリー・アントワネット、ギロチン台からの大逆転劇

処刑台に送られたマリー・アントワネットは民衆からのとある言葉をきっかけに覚醒する。たったひとりの「筋肉(フランス)」として、そして一人の母として。心優しき処刑人、親友の仕立て屋、彼女を護る麗しの騎士──仲間たちと共に、立ち上がる。

とりあえず麗しきフランス女王マリー・アントワネットが筋肉むきむきの狂戦士となりフランスの王政復古を目指して大活躍するお話、と言って気になるか気にならないかで買うかどうかを判断していいくらいに気持ちよくそういうお話でした。元はと言えばTwitterの一発ネタがバズってそのまま長編小説化したものということでいろいろな意味で細かい整合性が気になり始めると色々とアレなんですけど、読んでる時はそれを気にさせないだけのパワーがある物語だったと思う。考えるな感じるんだ。

ネタだけでは終わらせない、魅力的なキャラクター達が印象的

一度は処刑を受け入れたはずのマリーが、断頭台すらも跳ね除けて立ち上がったのはひとえに残された子どもたちのためでした。物語では彼女と子どもたちの絆も描かれていきます。普通の人間は断頭台を跳ね除けられないとかルイ17世のキャラが濃すぎるとかそういうことを考えちゃだめだ。

オドオドとした女性のような外見とは裏腹に処刑人としての高い矜持とこだわりを持つデオン、陽気なパリピとしてのキャラを貫きながらマリーの処遇とそれに対して何もできない自分に誰よりも憤る仕立て屋ローズ・ベルタン、誇り高き女騎士デオンなど魅力的なキャラクターが多数登場するのも楽しかったです。この時代あまり詳しくないのですけど、中盤は割としっかり歴史の掘り下げが行われていくのが印象的なんですよね。というかこの手の一発ネタ小説で巻末に参考文献出てくるのいろいろな意味でインパクトあるよな(騙されやすい顔で)。

何より、マリーの最大のライバルであり彼女と互角の格闘術を持つデュ・バリー夫人との対決はいろいろな意味で本作最大の見せ場と言っても過言ではなかった。生まれながらのお姫様と市井からの成り上がった烈女、フランスを揺るがした気高く美しい女ふたりが己の筋肉全てを掛けて戦う姿に燃えない訳がないですよね(?)。まあ正直筋肉用語がわからないので何が起こってるのかよくわからないところは多かったんですけど!!

やはり筋肉は全てを解決する

こどもたちを取り戻したマリーだったが、力を使い果たした直後を革命軍に狙われ、大ピンチに陥る。ところが、そこに「筋肉(フランス)」を臨む市民たちの声が響き渡り──革命を主導して漁夫の利で権力を狙う革命軍のトップと劣勢ながらも正しき筋肉(フランス)のため、ノブレスオブリージュを掲げてギロチンを振り回して可憐に舞うマリーのアツい最終決戦!!……のはずなんですけど始終飛び交う「パワーワード」の応酬で腹筋がつらい。筋肉を鍛えてないので笑いすぎて腹筋がとてもつらい。

中盤はマリーを取り巻く人間達の関係性や史実の掘り下げを交えつつ筋肉を押しつつもわりと堅実な物語が描かれていた印象なんですけど最後になってまた一気にめちゃくちゃ筋肉で押してきました。いやでも読みたかったのはコレという気がしなくもないのでいいんですけど最後の最後で力押しがすごい!!

良くも悪くも勢い重視というか、Twitter小説ならではのライブ感というか、微妙なスタンスのブレみたいなのが気になったりはしたのですがそれ以上に圧倒的なパワー(筋肉)と勢い(筋肉)で強引に押し流される物語を見ていくのは大変楽しかったです。Twitter連載ではアンケートで続きを決定するみたいなお遊びもあったみたいで、それはリアタイで追いかけてたら楽しかっただろうなあ。

やはり筋肉は全てを解決するんだよ(洗脳)

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声優ラジオのウラオモテ #03 夕陽とやすみは突き抜けたい?

 

崖っぷち声優やすみ、躍進のラストチャンス! 青春声優エンタメ第3弾!!
「コーコーセーラジオ!」新コーナーも存外(?)の好評を博し、晴れておだやかな日常を取り戻した夕陽とやすみ。目下やすみの悩みは――仕事が無い! そんな崖っぷちに舞い込んだのは、夕陽主演・神代アニメの宿敵役!? やっとつかんだ大役に意気込んだのも束の間・・・・・・ 「あんた今、周りに迷惑だから」「すげーやりづらかったよ」 容赦なく突きつけられる、一流の壁。できない、苦しい、まだ足りない、それでも―― 「あんたにだけは」「あなたにだけは」「「負けられない!!」」 突き抜けたいふたりの声優ラジオ、熱い声援を受けて、まだまだON AIR!!

やすみが「声優」として壁にぶつかりそして大きく成長するお話。ド直球な成長物語でめちゃくちゃおもしろかった〜〜!!壁にぶち当たった時の閉塞した空気、そんな中で必死にもがく由美子の葛藤と、そんな彼女の最高の相棒で、最悪のライバルである夕陽のやりとりが最高によかった。ところで完全に「ただのファン」になってるめくる先輩推せる〜〜。

やすみが声優としての壁にぶつかり、大きく成長する物語

夕暮夕陽をめぐる一連の炎上騒動も落ち着いて今度こそ日常を取り戻した由美子は、改めて声優として崖っぷちな自分の前途に思い悩む日々を送っていた。そんな彼女の元に、夕暮夕陽が主役を務めるロボットアニメ『幻影機ファントム』での主人公のライバル役が舞い込んできて……。

2巻までは「アイドル声優」としての二人の姿がクローズアップされていたけど、3巻は純粋な「声優」としてやすみが成長する物語。新人声優として崖っぷちであるという自覚とプレッシャーに押しつぶされそうなところに舞い込んだ大きなチャンス。現場でのアウェー感、普段とは真逆のキャラを演じるという事への悩み、新人声優として崖っぷちという事へのプレッシャー、収録が上手く行かなくてだんだん自分以外の物が見えなくなっていく閉塞感。特に初回の収録の話は本当に読んでいて胸が押しつぶされそうになりました。

ともすれば自分の内に引きこもりそうになってしまいそうな状況で、それでも周囲に相談したり、無理矢理にでも外部への働きかけが出来るのが由美子の強みだなと思うのですが……逆にそれをしてもなお届かない、もっと上を求められてくるという展開が(それだけ彼女が周囲から期待されていることの裏返しでもあるんだけど)しんどかったです。

焦燥感の中でも続いていく「女子高生」「声優」としての日常が尊い
(めくる先輩まじかわいい)

なんとか最低限リテイクをもらわない程度の演技は出来るようになったものの、まだ先方の求めているところには届かない。そんな焦燥感を抱えながらも、女子高生としてそして職業・声優として続いていく平穏な日常の描写にほっこりしてしまうし、2巻ではそういう描写も控えめであったので3巻で再びこういう自然体なエピソードが見れるようになったのが実に尊い。由美子と千佳の気のおけない掛け合いも満載で楽しかった。

学校のクラスメイト達とカラオケに行く話でクラスメイト達のコメントに合わせて木村のオタコメが混ざるの面白すぎるんですけど、そりゃあ憧れの声優ふたりとカラオケ行ってしかもお互いの持ち歌交換してたらそりゃ冷静じゃいられないよね。というか自分から持ち歌交換振った由美子がさりげに「夕暮夕陽のファン」の顔を隠せないのににまにましてしまった。

声優としてのお話は、やはり桜並木乙女・柚日咲めくるとの合同ラジオイベントからの打ち上げ焼き肉会が楽しすぎて!開き直って由美子の前では時々「ただの声優ファン」になっちゃうめくる先輩が可愛すぎるんですけど、めくる先輩は「ただの歌種やすみのファン」でもあるわけで…仕事に厳しい先輩声優の顔と声優ファンの顔、由美子の前でキャラが一定しないのが本当に可愛い。いやほんとめくる先輩可愛すぎやしませんか!!!

最高の相棒/ライバルなやすみと夕陽の関係が熱かった!

歌種やすみが演じる「シラユリ」のクライマックス回の収録で、由美子は再び壁にぶつかってしまう。最後の収録を目前に控えて、彼女が最後に助けを求めたのは自らの相棒でありライバルでもある夕暮夕陽=渡辺千佳だった。

千佳に助けを求めることへの葛藤は今回の話の序盤からずっと語られてきていたのですが、それでも自分のプライドを曲げてでも助けを求める由美子と、そんな彼女のひたむきな姿に自分には敵わないものを見てしまう千佳の姿が印象的でした。その由美子への劣等感をその場で口にしちゃうところが実に千佳ちゃんらしくて可愛いんだよな。様々な感情を覚えながらも由美子の手を取ってくれる千佳の姿が、なんて頼もしいことか。ライバルあり、ラジオが決まって以来声優「歌種やすみ」の一番近くにいた相棒であり、孤高の陰キャである千佳だからこそ見える、由美子の弱点にも納得。

もうこの時点で翌日に撮影が成功するのは決まったようなものなんですけど、そこからの収録の様子がとにかく凄くて、ひたすら圧倒されるばかりでした。魂をぶつけるような歌種やすみの熱演、それに夕暮夕陽やかつて由美子が憧れた声優達が引き込まれていく様子、現場の高揚した雰囲気、それと同時に展開されていく「幻影機ファントム」という物語のクライマックスに釘付けになりました。

毎回クライマックスの盛り上げ方がとにかく上手くて読み終わると暫くの間「面白かった〜〜!!」としか言えなくなってしまうシリーズなんですが、今回はド直球で王道な少女たちの成長物語で、ひときわ面白かったです。

それで「幻影機ファントム」のアニメっていつ放送されますか──!?

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ボクは再生数、ボクは死

 

現実を凌駕するVRエロス&バイオレンス!
世界一の美少女になるため、俺は紙おむつを穿く‐‐。 しがない会社員の狩野忍は世界最大のVR空間サブライム・スフィアで世界最高の美少女シノちゃんとなった。 VR世界で恋をした高級娼婦ツユソラに会うため、多額の金銭を必要とするシノは会社の先輩である斉木みやびと共に過激で残酷な動画配信を行うことで再生数と金を稼ぐことを画策する。 炎上を繰り返すことで再生数を増やし、まとまった金銭を手にしたシノはツユソラとの距離を縮めていくのだが、彼女を取り巻く陰謀に巻き込まれていき‐‐!?

Vtuberや動画配信文化にはとんと縁がないんだけど、視聴者のテンポ良いツッコミやアカウント名にニヤニヤしながら楽しく読めました。エロス&バイオレンスが吹き荒れる展開の果てに待つ、それまでの展開とはうってかわってセンチメンタルなラストが印象的。

「紙おむつ」からはじまるエロス&バイオレンスなVR配信もの

バーチャル美少女な会社員おじさんが、百合ハーレムを築きながら本命の風俗嬢をモノにするため、同じVR空間で零細動画配信者をしていた会社の先輩(※VR中に使っていた紙おむつを会社のゴミ箱に捨てようとしてオタバレした)と共に過激な動画配信をする話。

最初からVR空間で百合の濡れ場がはじまってビビったし、職場の先輩・斎木みやび(イツキ)との出会いのきっかけが「紙おむつ」なのが強烈すぎる。そういえばMMORPG全盛期にありましたねゲームに熱中するあまりに紙おむつとか尿瓶とかそういう話……。

濃厚な肉体関係を築きながらもどこか人工的でプラトニックな「ツユソラ」との逢瀬、互いのすべてを曝け出しながらもキスひとつしていない斎木みやびとの気のおけない関係性。VR空間サプライムスフィアと現実。ふたりの「ヒロイン」とも言える女性達との対称的な関係性が面白かった。ともすれば仮想空間にふわっと飛んでいったまま戻らなくなりそうな物語でありながら、時折挟まれる現実での斎木とのやりとりで現実に引き戻されるさじ加減も上手いなあ。

仮想現実だからこその倫理観ド無視な展開が痛快

最初は自分の美少女アバターを愛でることと百合風俗に通うことにしか興味がなく、斎木の動画配信もお付き合いで手伝っていた忍が、ツユソラが移籍したエスコートサービスの指名料を捻出するため、彼女の配信を本気で後押しし始める。そんな折、ひょんなことから「人を殺す映像はウケる」と気づいてしまった忍のアバター「シノ」は、ちょっと問題ありなストリーマー達を「殺す」という過激な配信を行っていく。

サプライムスフィア内での「死」はキャラを操作している本人には基本的に影響ないが、アカウントが完全に削除されてしまう。これまでの名声や配信で得たリターンを失う──というそこそこ重たいリスクがある反面、主人公が「狩った」悪者たちが雑に転生(=新垢作成)してはまた主人公に狩られてるの、昭和アニメで毎週主人公たちにぶちのめされる三流悪役っぽくてわらってしまう。たとえ仮想現実だとはいえ娯楽としての殺人動画配信という展開にはギョっとしてしまうんだけど、敵が割と雑に転生して戻ってくるのでそこまでの重さは感じなかったというか、一種のギャグ漫画時空的ですらありましたよねこれ……。

性格に問題はあるが何気にゲームや戦闘面でのスペックが激高い「シノ」が、人気デザイナーが手掛けた一点ものの美少女アバターで配信者的にも性的にも無双していく展開がクレイジーでとにかく面白い。そしてかっこいい!作中の女性キャラであれば見境なくほぼ全員寝たまであったし、シノに抱かれた女達が「オンパコフレンズ」と呼ばれて親衛隊みたいになっていくのわらってしまうんだけど、それに説得力があるほど「シノ」がかっこいい女だから困るんだよな。

でもそれだからこそ、動画配信仲間のイツキ&キャッシュマネーをはじめとした作中でも数少ない「寝てない女性達」との関係が深堀りされていくのが印象的でした。

うってかわってセンチメンタルなラストが印象的

ある時、突然ツユソラが行方を晦ませてしまう。そこにはツユソラのリアル元カノを名乗る女性・マリカワの影が──。ツユソラを巡ってマリカワと対立した「シノ」は、最近リリースされたばかりのゲームで対決をする事に。しかしそれは、ゲーム内の死がアカウント削除に直結するデスマッチだった……。

マリカワとシノ達の対決、とにかく視聴者からのツッコミの使い方が痛快。いやほんとちゃんと見たこと無いんですけどVtuberの配信ってこういう感じなんだろうな〜これは面白いよな〜という再現度の高さが凄かったです。そして本垢で参加しているシノ達とは対称的に、捨て垢で参加するファン達のアバター達が雑に死んでいくのがめちゃくちゃ面白い。捨て垢の人たちのHNでいちいちわらってしまう。最近のソシャゲでたまにみる、残念な名前の人達だ!!

激戦の末に明かされた「ツユソラ」の正体。儚く消えていく彼女と、そんなセンチメンタルな気持ちをぶち壊すかのようなその後の展開が凄い。世界中に拡散していく「ツユソラ」にショックを受けながらもいつか「シノ」も彼女の後を追おう、拡散された中で今度こそ結ばれよう──という展開が、なんともロマンチックじゃないですか。

この物語って主人公・忍の一人称でありながら、思えばVR空間内の行動はどこまでも第三者「シノ」のものとして描かれてるんですよね。忍にとって「シノ」は自分であり、それでいて自分ではない、常に自分とは別のところで動く存在。そして自分を超えていく存在──それを印象づけるようなラストがすごく印象的でした。

それにしても、「中の人」が男の女性キャラと実はオンパコ未遂して、リアルで会う羽目になり気まずい雰囲気になってるのわらってしまった。これオンパコしてたらどうなってたんでしょうね。いや、シノだって男なわけだし中の人的に男×男になってる可能性を一度でも想像したことがないとは言えないですけど、その相手とリアルで会うことは全く考えてなかっただろうからな……百合無双してた弊害がこんなところに。

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