ページ 27 | 今日もだらだら、読書日記。

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悪役令嬢レベル99 その3 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

 
Tea

ユミエラVSユミエラ!? 魔王より強い裏ボス令嬢、Wで大暴れ! 突如現れた神を名乗る少年から「並行世界から、世界を滅ぼしたユミエラがやってくる」と告げられたユミエラ。最初は興味が薄かったが、自分を倒せばレベル上限が解放されると聞いて俄然やる気になってしまい??!?

物語開始当初からカンスト状態だったユミエラのパワーアップ回。並行世界のユミエラとの罵り合い殴り合いを交えつつもお互いを嫌いになれない関係がとても良かったし、「最強」のふたり(+1人)が繰り広げる初めての──ギリギリの戦いがアツかった。それにしてもエレノーラはいつからこんな大天使に?

別の魂でありながら確かに「同一人物」なふたり

乙女ゲームの世界通りであれば「裏ボス」として覚醒し、アリシア達「勇者一行」に倒されるはずだったユミエラ。彼女の屍が無数に横たわる並行世界の中にあってただひとつ、奇跡的にユミエラがアリシア達を倒し、ユミエラによって滅ぼされた世界があった。その並行世界のユミエラがレベル上限を突破するために唯一生き残った並行世界のユミエラ(=この物語の主人公のことである)を倒しにやってくるという。一方、並行世界の自分を倒せばレベルキャップが開放されると聞かされたこの物語の主人公である方のユミエラも、地味にテンション上げていくのだった。

前の巻でユミエラ2号=「ゲーム本来のユミエラ」が裏ボス化するまでの流れについては既に考察が行われて(そしてその想像がおおよそ正しかったことが今回の冒頭の2号の回想によって示されて)いるので、これだけ殺し合いのお膳立てをされていたのにふたりのユミエラがなんだかんだいいつつ仲良くなってしまう話が自然に始まるの上手いなあ。いや、元々ユミエラはちょっと誤解されやすくレベル上げジャンキーなだけの良い子なので、人間らしい少女の側面を覗かせる2号を見たらその時点で殺してまでレベル上限突破を果たそうとはしなかったでしょうけど。

ユミエラと2号が同じ身体を持つ別の魂であることを明示した上で、それでも彼女たちが明暗を分けたのは(他にも理由はあるけれど)魂の違いではなくてパトリックの手を取れたかどうかなのだと暗に語られていくのにニヤニヤしてしまう。この世界のユミエラだって、孤立を深めた挙げ句に世界を滅ぼしてしまうような結末はありえたわけだし、並行世界にも彼女に手を伸ばそうとするパトリックやどこまでもお人好しなエレノーラが存在したわけで。本当にこの物語の、パトリックが一貫して「ユミエラにとってのヒーロー」として描かれていく所が最高に好きだなあ。

お互いに殴り合い罵り合いつつもお互いのことを嫌いになれない二人のユミエラの関係がかわいかったです。また、親切なようで人間の「個」に興味がない闇の神、神らしい無関心さを装いながら人間らしい感情を捨てられない光の神の姿も印象的でした。ところでエレノーラは3巻になったとたんどうしてこんな大天使になってしまったのか!?たしかに1巻からチョロ可愛い娘だったですけど…ユミエラが手のひら返しすぎじゃありません!?

ふたりのユミエラ、『神』殺しに挑む

小競り合いをすることはあれどユミエラを害そうとはしなかった2号。彼女の真の目的は、彼女をそそのかして世界を滅ぼさせた『邪神』を退治することで…かくして、ユミエラはおおよそ初めての「勝ち目の薄い戦い」に挑むことになる。

それにしても、ふたりのユミエラ(Lv99)+パトリック(おおよそ99)を持ってしても倒せるかどうかわからない相手に対し、少しでも勝率をあげようとダンジョンから強い武器を拾ってこようとして、だいたい以前ユミエラが取得済みという流れに腹抱えて笑ってしまった。夏のダンジョンボス周回祭りありましたね…。

やっぱりレベル上げは全てを解決する

2巻を読んだときにパトリックのレベル上限到達が早すぎると思っていたんですよね。予想以上にオーバーキルキルしていた…。ユミエラにとってのヒーローは絶対にパトリックなんだけど、勝利のカギはパトリックじゃなくて筋肉(たゆまぬレベル上げ)なところ、本当に最初から最後まで論点ゆがまなくて好きです。

ユミエラと2号の道を分けたのが「パトリックの手を取れたかどうか」という話も、そこは本当にアツいところなんですけど、それはそれとして2号とその他のユミエラの明暗を分けたのは「ユミエラ式レベリングをしたかどうか」なんですよね。どういうことかわからないとおもうが明らかにそうなんだよ……やはり筋肉(レベル上げ)は全てを解決するんだな……。

しかし、こうなると次巻はいったいどうなってしまうのか。どんどんレベル上限を開放していったら大変なことになりそうだな…。いろいろな意味で気になります。

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声優ラジオのウラオモテ #02 夕陽とやすみは諦めきれない?

 

第26回電撃小説大賞、選考委員満場一致の《大賞》受賞作!! 第1弾は発売即日重版で話題の青春声優エンタメ、おまちかねの第2弾です! 裏営業スキャンダルが何とか収束を迎え「コーコーセーラジオ!」も、めでたく続行決定! ――とほっとしたのも束の間…… 「本当甘ちゃんだよね。ふわふわ友情ごっこがしたいならよそでやれよ」 ストイックな実力派の先輩声優・柚日咲めくるに突然浴びせられた強烈な罵倒。でもそんな彼女も実は、秘密の《ウラオモテ》を隠していて…… さらに、夕陽とやすみの高校まで追いかけてくる、不躾な視線やシャッター音。事態に業を煮やした夕陽の母が、ふたりに課した超難題とは!? こじらせ先輩声優めくるのホントの思いも明らかに――! 「そのまま行け、ふたりとも――ッ!」 声優生命最大の危機でも、夕陽とやすみは止まれない、中途半端じゃ辞められない……! 諦めきれないふたりの声優ラジオ、ここに再びON AIR!!

1巻に引き続き仲が良くて仲が悪い主役二人の言葉の応酬とアツい展開がとても楽しかった!クライマックスはいろいろな意味で現実ならありえない展開だなと思うんですけど、現実にありえないからこそ胸が熱くなってしまう。ところで余談ですが2巻の表紙が1巻の表紙に対応したやすみピンのものに変わったみたいなんですが、1巻のふたり表紙が良かっただけに「ええ?」となってしまう。これ2巻と3巻の表紙を対にするんじゃいけなかったんですかね…(2巻完結か?とおもったけど、どうとでも続けられそうな終わり方なんだよな)

前回やらかしてしまったことへの「けじめ」のお話

ラジオの打ち切り騒動や夕暮夕陽の炎上騒ぎも乗り越え、なんとか平和な毎日に戻った…はずの由美子と千佳。ところが、炎上騒ぎの結果『アイドル声優』という顔を棄てざるをえなくなった影響は思ったより大きかった。仕事にも大きな影響が出た上に学校前で待ち伏せされたり、先輩声優からキツい言葉を浴びせられたり……由美子自身も現在の状況にスッキリしないものを感じていて!?

1巻のラストが素のキャラを出したおかげでラジオの人気が好転して──という終わり方だったのでこのままなしくずしに次のステップに進むのかな?と思っていたのですが、2巻では彼女たちが「キャラ変」をした悪影響と、それに対する「けじめ」の物語でした。

1巻であれだけアイドル声優としてのキャラ作りを切り捨てたふたりが、2巻で元の性格を強調した「キャラ作り」を要求されるのめちゃくちゃ元の木阿弥っぽくてしんどいんだけど、そんな中でふたたび「アイドル声優だった自分たち」に焦点を充てていく展開が印象的でした。1巻はアイドル声優であるふたりが声優として成長するお話だったけど、2巻は彼女たちが「アイドル」という声優業の一面を受け入れるお話だったのかなあと(正直声優さんの中身は知りたくない派なので本当にいい演技してくれればいいじゃんって思うんだけど、たとえアイドル声優じゃなくなったとしたって現在の業界だとほぼ芸能人みたいなもんではあるよな…)。

夕陽の炎上騒ぎに介入したことで事務所に迷惑をかけたこと、千佳のアイドル声優としての生命まで共に奪ってしまったことを反省しつつも「後悔はしていない」と言い切る由美子がかっこよかったし、その後の展開でどんなにしんどくても同じ轍を踏むことは出来ない彼女の姿が良かったです。たとえそこに元売れっ子である千佳への嫉妬や「他人の事に自分の声優生命までは賭けられない」という後ろ暗い本音があったとしても、前回と同じような短慮に走らなかったのは成長といって良いんだと思う。

現実にはありえないけどだからこそアツいラストが素晴らしい

自分たち本来のキャラを強く印象づけることで再起を図ろうと奔走するふたり。以前よりも無理してキャラを作らなくて良くなったはずなのに以前よりも息苦しさを感じるのはなぜなのか──そんな状況に少しずつ答えが見えてきた中、ファンの粘着騒ぎを重く見た千佳の母が「夕暮夕陽」の声優活動の休止を事務所側に申し入れてくる。何も出来ない事にもどかしさを感じる由美子だが、話を聞いた由美子の母が更にとんでもないことを言い出して──!?

いろいろな意味で、クライマックスの勝負の件はこんなご都合展開ありえないでしょって思うんですけど!!現実にありえないからこそ最高にアツい展開でした。アイドルだった頃のふたりのファンの皆も、面倒くさい先輩も、「売れない元アイドル声優・歌種やすみ」本人ですらも。みんな腹に後ろ暗い思いを抱えつつも「それでもあなたにここから居なくならないでほしい」と声を大きくして叫べる世界があまりにも優しい。いや本当にこんなご都合展開ありえないだし、千佳母の言う通り厳密には負け条件抵触してるよな!?(オタクの独り言が多すぎる!)ですけど!!それでも、彼女たちを害そうとする人たち以上に彼女たちを応援したいと思う人達がたくさんいて──それを理解してくれたからこそのラストなのだと思いたい。

そしてエピローグの展開がいろいろな意味で声優さんならではだな〜と思って笑ってしまうというか、昔の声優ラジオの間に挟まれるドラマCDみたいなことになってますね!?この対応ファン的にどうだったのかすげー気になるので、なんとかして3巻も出してほしいです。

ところで新キャラの「柚日咲めくる」さんが好きです。

ところでストーリーの本編とは微妙にズレてしまうのですが、新キャラで夕暮夕陽の先輩声優・柚日咲めくるがめちゃくちゃ好きです。序盤からツンデレの気配を感じていたんですけどそれ以上に面倒くさいオタクじゃないですかやだーーー!!!本性明らかになったときのバレかた最高に可愛いし、クライマックスの一番良いところを持っていく彼女の発言がいちいち面倒くさくて可愛くて好きです!!

といったら電子書籍版特典SSがめくるさん視点の話だったので小躍りした。完全に面倒くさい声優オタクで可愛い。短編とかでじっくり彼女視点の話やってほしい。

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日和ちゃんのお願いは絶対

 

まるで、世界が終わりたがっているみたい──それは。最後の恋物語。
「──わたしのお願いは、絶対なの」 どんな「お願い」でも叶えられる葉群日和。始まるはずじゃなかった彼女との恋は、俺の人生を、世界すべてを、決定的に変えていく──。 ほんわかしていて、かわいくて、どこかちょっと流されがちで。 それなのに、聞いてしまえば誰も逆らう気になどなれない「お願い」の力を持つ日和と、ただの一般人なのにその運命に付き添うことになってしまった俺。 「──でも、もう忘れてください」 世界なんて案外簡単に壊れてしまうのに、俺たちの恋だけが、どうしても終わってくれない──。 これは終われないセカイの、もしかして、最後の恋物語。

不思議なチカラを持つ日和と、彼女に近づけば近づくほど彼女の存在を遠くに感じてしまう深春の関係がなんとももどかしく、それでも世界とか能力とかどうでもよくて、ただの彼氏と彼女として恋をして共に歩もうとするふたりの姿が印象的でした。懐かしの「セカイ系」だこれーー!!!!!

壊れかけの世界で、最終兵器な彼女と普通の少年が恋をする

同じクラスのちょっと可愛くて優柔不断な女の子・葉群日和から告白された深春。彼女は「お願い」すればなんでも相手が言うことを聞いてくれるという不思議な力を持っているという。最初は高校生らしいお付き合いをしていたふたりだが、とある事件をきっかけに彼女の正体を知ってしまう……。

世界すら揺るがしかねない力を持った最終兵器な彼女と何の変哲もない普通の少年が恋をする物語。高校生カップルらしいもどかしい恋愛模様とは裏腹に、日和に惹かれていく一方で近づけば近づくほど彼女を遠く感じてしまう深春と、深春を巻き込みたくないと願う一方で縋るように精神的支柱を彼に求めていく日和の姿が印象的でした。

あくまでこの「現実」と地続きのものなのだと伺わせる世界観設定が新鮮でした。大学入試制度の改革の話や新型ウィルスの蔓延の話とか、身近に体験したばかりの話が出てきてネタが新しい…。世界観情勢の話で伏せ字が多すぎてわからんってなるときもあるんですけど明らかに現実の人物をモデルにしている話が多くてこりゃ伏せるよなっていう。そんな(現実の)世界を描きながら、ヒロインに「世界が終わりたがっているみたい」って言わせちゃうのがあまりにもパワーある。

令和の世に生まれ落ちた新「セカイ系」ラノベ

自分の「お願い」を相手に強制的に叶えさせてしまう力を持った日和。草の根から始まった彼女の活動は徐々に活動範囲を広げ、深春と付き合い始める頃には既に世界をも左右する存在となっていた。「彼女の力になれることが自分にもあるはず」と自分を頼ってくれない日和にもどかしさを感じていた深春だが、とある事件をきっかけに彼女の能力が時に相手の尊厳さえも歪ませ、踏みにじるものだと知ってしまう。

あくまで日和は自らの意思で能力を使って「この理不尽な現実」を良くしていこうとしていて、彼女の非日常の中に深春の存在は求めてない。架空ではなく現実を思わせる世界、巻き込まれるのではなくあくまで自分の意思で非日常に身を置く日和とそこに関わりたいのに関わらせてもらえない深春の関係がどこか新鮮でした。惹かれ合い、すれ違い、傷つけ合い、一度はお互いの手を手放して──それでも手を取り合うことはできるのだと、別々の世界に身を置くふたりが、今度こそ「お願い」の力ではなくてただ手を取り合って再び歩き出すラストがアツかったです。

私の中の「セカイ系」とは、大きな力を持ってしまったがために世界の中の大きななにかに翻弄され、押しつぶされそうな少女とそんな彼女の事情には何も出来ない少年が手に手を取ってふたりだけのセカイに行こうとする(けどうまくいくとは言ってない)物語だったのですけど、自ら世界の中に飛び込んで押しつぶされそうになりながらも大人たちを巻き込み世界を変革しようとする少女とその彼女の手を握ろうと手をのばすけど何も出来ない少年が、それでも「ありふれた高校生男女」でいようとあるき出すこの物語はなんていうか令和に生まれ落ちた「新しいセカイ系」なのだろうなあみたいなことを思いました。うまく言葉に出来てないけどなんか凄く昔懐かしい反面新しいお話であった。

挿絵が超よかった。

現実の世界と地続きであるかのような物語の世界を表すかのように、写真にイラストを組み合わせた口絵と、章毎に挟まれる風景写真の使い方が面白かったです。

特に、日和の秘密が明かされる所の挿絵の大胆な使い方がめちゃくちゃ好き。そしてその挿絵を惜しげもなくツイッターで作品紹介に使ってくる作者さんの大胆さがすごいなとおもいました。いやだってこれ完全にネタバレじゃん……、でもこの挿絵見なかったら普通の最近よくあるエモい青春ラブコメだと思って手を出さなかったと思うのですごく正しい。セカイ系なんて今めったに見ないのでそこアピールしていってほしい。

私はこのツイートを見て買いました!!!(リンク先軽いネタバレ注意)

余談ですが「新しいセカイ系」とかいいつつもどうしてもセカイ系の代表作である「最終兵器彼女」を連想せずにいられなかったのですが、あとがきにアツい「最終兵器彼女」語りとセカイ系へのリスペクトがあったのでニヤリとしてしまった。めちゃくちゃな名作なのでこの作品が楽しかった人で未読だったら是非触れてほしい。多分好きなはず。ラノベなら「イリヤの空、UFOの夏」も。イリヤは今から読み始めるとリアルUFOの日までに読めるのでタイミングも良いはず。

「最終兵器彼女(1) (ビッグコミックス)」
高橋しん(著) (著)
小学館
発行:2000-05-30T00:00:00.000Z
「イリヤの空、UFOの夏 その1 (電撃文庫)」
秋山 瑞人(著), 駒都 えーじ(イラスト) (著)
KADOKAWA
発行:2013-12-26T00:00:00.000Z

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ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?

 

荒廃した24世紀の東京は合成食糧や電子ドラッグが巷に溢れ、荒くれ者たちが鎬を削る…それでも、やっぱりお腹は減るんです。日々の戦いに疲れたら、奇蹟の食堂―“伽藍堂”へ!厨房を受け持つのは「食の博物館」の異名を持ち、天使の微笑みをたたえる少女ウカ。狩人兼給仕を担うのは、無法者に睨みを利かせる、こわもて奔放娘リコ。二人は今日も未知なる食材求めて、てんやわんやの大騒ぎ。「おいしい!」の笑顔のためならば、人を喰らうドラゴンから、食べたら即死の毒キノコ、はたまた棄てられた戦車まで!?なんでもおいしく、そして仲良くいただきます!リコとウカの風味絶佳な日常を皆さんどうぞ召し上がれ。

終末世界の東京で食堂を営む女の子二人のちょっと不思議な食材探求の日々。戦車やドラゴンなどちょっと変わった食材にじわじわお腹が減ってくる飯テロ具合と、殺伐とした世界観でありながら「それでも同じ食卓を囲めばみんな仲良し」という展開にほっこりしました。主役二人の百……仲良し具合も大変可愛い。

飯テロ…とまではいかないけど、好奇心を掻き立てられる未知の食物達

人間が霊長類の頂点から滑り落りた24世紀の東京。危険な生物たちと無法者が跋扈する地上の「休戦地帯」として存在する食堂《伽藍堂》は、メイド服を着て厨房に立つ料理人の少女・ウカと狩人兼給仕を担当する少女・リコの二人で切り盛りされている。未知なる食材を求めて市場にやってきたふたりを待ち受けるのは、旧時代に廃棄されたはずの──!?

戦車を食材として食べる」という衝撃的な展開から始まる本作。どうなっているんです!?と思いながら読みすすめると気がつけば美味しそうに見えてくる、不思議な物語でした。「お腹が減る」「飯テロ」というよりは「ちょっと食べたくなってしまう」という力が強い。主人公のひとり・ウカが作る料理の数々はどれも思わず食べたくなってしまうような料理ばかりなんですが、それ以外の食べ物にもつい興味を惹かれてしまうモノが多かったです。

個人的に気になったのは途中でジャンクの代表格として出てきたオイルバー。アメリカ産の高カロリーゲロ甘チョコバーを更にギドギドにしたような感じなのでしょうか。ひとくちでキツくなってしまいそうだけどひとくち齧ってみたい。

色鮮やかに描き出される世界の姿が印象的

人間をほぼ不死の身体にし、同時に人類を霊長類の頂点から引きずり下ろした元凶でもある薬品「PAC」。肥大化したインターネットとそれに魅せられた人々。危険な進化を遂げ、人類を脅かし始めた大自然。それを受けて一部の人類は地球を棄てて宇宙に上がり/地下に潜る。物語を読みすすめるごとに明かされていく、物語の裏に根付く「世界が荒廃するまでのものがたり」が印象的でした。

食べ物の話もそうだけど、「架空の未来」が強い質感を持って描かれていて、物語世界の空気感をありありと感じることが出来ました。だからこそトンデモ食材でも違和感がないんだよね。

(身も蓋もないけど)良い百合でした

目新しい食材に目のないウカの「食材調達」に毎度振り回されるリコ。ふたりの遠慮のない掛け合い、なんだかんだでウカの「お願い」に弱いリコが毎回無茶な狩りに挑む羽目になってしまう姿がなんとも微笑ましい。また、殺伐とした地上世界にありながら、たとえ普段は敵対しあっていても「それでも同じ食卓を囲めばみんな仲良し」になってしまう、幸せいっぱいの食事シーンに毎回ほっこりとさせられる。

そんなか、ウカが突然意識を失ってしまう。彼女の正体を聞き、彼女にとっての自分の存在はなんだったのかと不安になってしまうリコ。そんな彼女の縋るような想いに応える、目を覚ましたウカの言葉に思わず胸が熱くなりました。そのへんは色々とネタバレなのでアレなのですが、彼女の正体を知った上でその言葉を聞くと、もうね!

メインはあくまで食材探求で、まえがきで描かれたような《伽藍堂》の普段の様子はあまり描かれなかったのが少しだけ残念だったのですが、各章のラストに挿入されるリコとウカの食事の場面を見ると「細かいことは良いんだよ!!!」ってなるから仕方ないんだよね。とても良い百合でした。

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乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…5

 

乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。破滅エンドを回避したはずが、なぜか最大の破滅フラグだったジオルド王子との婚約は継続中。「私、いつでも身を引きますから!」そう本人にも宣言しているのだけど…。ジオルド王子の婚約者の座を狙う令嬢が現れるライバル登場編、ニコルのお見合い編ほか、カタリナたちの日々や意外な人物にスポットをあてた過去編も収録。大人気★破滅回避コメディ第5弾は、コミック大増量で掲載!

各キャラの視点から描かれたちょっとした話や本編では描かれない脇役達の物語、ショートコミックも収録した短編集。メインとは関係ないところで色んな意味で「カタリナシンパ」が増えてるんだな……としみじみしてしまった。元ライバル令嬢の女の子の顛末に笑ってしまう。

主に他キャラ視点を中心に描かれる短編集

ジオルド・キース・アラン・ニコルの4人の視点から描かれる長めの短編とラファエル・女の子たちを主体にした短編、Webに掲載されているサブキャラ達の視点からのショートショート。コミックの方でアンが淡々とゲームのメインキャラたちの存在感を喰っていく姿に笑ってしまう。最後のキャラデータではしっかりとサブ攻略キャラと同じスペースを確保していた。

割とゲームの攻略キャラ達との絡み以外は描かれないので、学園ではそれ以外の人脈は出来ていない感じなのかなと思っていたのですが予想以上に無自覚でシンパを増やしていましたね。庭師とメイド長の話は本当に短かったけど最近放送しているアニメでもそれとなく話題を振られていた部分だったのでこのタイミングで読めてよかった。パジャマパーティの話はアニメにもなってたけど、アニメのタイミング的にラファエル・ソラが登場できないのが少し残念だったな。

ジオルド&メアリ(腹黒コンビ)の圧が強い

個人的にキースとジオルドがやりあったり、メアリが水面下で奔走したりする所が見れる「ライバルあらわる」が楽しかった。他キャラ視点はこのシリーズの十八番であるけど、コンセプト的に「カタリナ一人称の裏側」として描かれることが殆どなので彼女の絡まないところで綴られる視点が新鮮。

カタリナを妬むライバル令嬢が彼女を蹴落とすために色々画策して返り討ちに遭うお話なんだけど、多少の嫌がらせ程度では暖簾に腕押し状態なカタリナが強いし、度を超えた嫌がらせをしてきた相手をめちゃくちゃ普通に排除しようとする周囲(というかジオルド)が強かった。というかジオルドとメアリの挿絵が最高に「圧」強くて好き。ジオルドが助力を求めるのが最大のライバルであるキースじゃなくて「似た者同士」のメアリというところがわかってるなと思う。

メアリはその後のガールズトーク短編でかつての姿が描かれるのが印象的で、もはやすっかりジオルドと並ぶ「カタリナ過激派」と化した彼女がかつては気の弱い人見知りだったことを思い出すと感慨深かったし、彼女がここに至るまでの血のにじむような努力とそれに報いてくれたカタリナのエピソードを見るとそりゃカタリナ過激派にもなるよねと。別に好きな人が居る同士であるアランと、恋愛ではないけれど良いパートナーしてる姿にもにっこりしてしまった。

新展開が楽しみ

カタリナたちも無事に学園を卒業し、次巻からはじまるであろう新展開の前の息抜き的な巻でした。魔法省編がどうなるのかも楽しみです。

ところでニコルのお見合いの話に出てきた生徒会の後輩ちゃんが割と意味深でしたが、今後出番とかありますかね?モブキャラにしては目立っていたのでちょっと気になる。

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帝都つくもがたり

 

売れない作家の大久保のもとに、大学からの腐れ縁で、今は新聞記者の関が訪ねてきた。「怖がり役」として、怪談集めを手伝ってほしいという。嫌々ながら協力することになった大久保だが、先々で出遭ったのは、なぜか顔を思い出せない美しい婦人や、夜な夜な持ち主に近づいて来る市松人形など、哀しい人間の“業”にからめとられた、あやかし達だった―。西へ東へ、帝都に潜む怪異を集める、腐れ縁コンビのあやかし巡り!

男の腐れ縁とか悪友とかそういう忌憚のない関係が好きなら〜とおすすめされたのですが、面白かった!軽口をたたき合う中に時折覗くお互いをかけがえのない友人と思っているようなやりとりが大変に楽しいのだけど、二人の関係を掘り下げるクライマックスがとても良かった!男男間の巨大感情は良いものです。

腐れ縁の男二人、ふたりでひとつの「ひゃくものがたり」

酒浸りの三文作家・大久保は腐れ縁の新聞記者・関に誘われて、様々な怪異を追うという記事の取材に「怖がり役」として同行する羽目に。取材として怪異に纏わる人々の業に触れるたび、大久保の胸の内にとある思いが芽生えていって…。

昭和初期を舞台に、人が引き起こす怪異とその顛末を描く連作短編。「怪異」ということでホラー的なちょっと怖い話を想像していたのですがどちらかというと描かれるのは怪異を引き起こすような人の深い業で、少し物悲しいお話が多かったです。また、重い話を重くしすぎない大久保・関という二人の腐れ縁の男たちの軽妙な掛け合いが楽しかった。

死に惹かれる男と死を忌憚する男、対象的な男ふたりの巨大感情

怪異を引き起こす人間の業に共感し、徐々に思い入れていってしまう大久保。対称的に、怪異を引き起こす人間達に興味はなく時に辛辣な言葉も浴びせるが、相手がどんな人間であれ人死にが出そうな場面では必死になって食い止めようとする関。正反対のふたりの腐れ縁なやりとりが大変楽しく、二人が同時に時折覗かせる信頼関係、執着みたいなものにそわそわしてしまう。

そんなふたりの関係を深く掘り下げていくのが大久保自身の怪異のお話「捌話 鏡のむこう」で、これまでの物語で人の業に共感し続けた大久保が死に囚われてしまうお話なんだけど、プライドをかなぐり捨ててでも大久保を救おうとする関の奇妙なまでに必死な姿と、そんな彼が吐露した本音がとても良かった。

過去の自己否定の経験を礎に死を怖がりながらもどうしようもなく死に惹かれてしまう大久保と、様々な死別の経験を礎に死を忌憚し、これ以上自分の周りで人が死ぬことこそを恐れる関。大久保自身の生命を掛けて繰り広げられる腐れ縁二人の対峙が印象的でした。大久保の他者共感がどこまでも自分自身を見つめる行為であるように、関が自分とかかわった人間の死を許せないのも自分自身のための行為であるとおもうんだけど、どこまでも自分自身の為であると同時にお互いの存在に救われている/縋らなければ生きていけない姿がたまらない。

ちょっと痕を残すような後味の物語達が楽しい

個人的には読みやすい短編と読みづらい短編が真っ二つで楽しみ切れたとは言いづらいのですが、大久保が美しい女性と恋らしき何かにとらわれるお話であり、物語のターニングポイントでもある「参話 雨宿りのひと」がすごくよかった。ジャパニーズホラー的な展開でありながら、雨の日、影のある女性との一瞬の逢瀬というムーディーな展開と生き生きと描かれる彼女の生きざまがおそろしさを感じさせず、ほろ苦い後味だけを残していくのがたまらない。

あと、大久保の担当編集・菱田が怪異に巻き込まれる「肆話 とおい本棚」が超好き。本が好きすぎて編集者になった男が奇妙な古書店と遭遇するお話で、怪異にとらわれて欲望の赴くままなにもかもを投げ出してしまいそうになる姿が大変に恐ろしいのですけど、彼を現世につなぎ留めたのも物語への執着であるという展開が本当に本読みとは業の深い生き物だなと……。そして菱田の言い分が本読み的に「わかる…」しか言えないので困る。その後も怪異を振り切れてないラストも「わかる…」しか言えない。

好きなシリーズほど速攻で打ち切られるのはなんなんでしょうねホントに!!!

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悪役令嬢レベル99 その2 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

 
Tea

「とりあえず山と魔物を消し飛ばせば農地ができるよね」RPG系乙女ゲームに悪役ならぬ裏ボス令嬢として転生しながら、ひとまず無事魔王を倒し、学園を卒業した私、ユミエラ。恋人同士になった(ような気もする)パトリックも領地についてきてくれるとのことなので、人生順風満帆だ。だが、治めるべき領地は両親のせいで荒れ放題。腐敗貴族達も第二王子を担ぎ上げて、何やら企み始めているらしい。まあ力業で何とかしますよ──ってどうして止めるの、パトリック? え、私が暴れるほうが被害甚大だからやめろ!?

俺TUEE物というよりコミュ力ポンコツな脳筋令嬢と彼女のフォローをしてくれる奥手な青年貴族のポンコツ系ラブコメ(コメ強め)としての色合いが強くなってきて超楽しかった!全然噛み合ってない会話の応酬で何度も笑ってしまう。それにしてもユミエラは本当にこのコミュ力で前世社会人やっていけてたの……?(ブーメラン発言)

思った以上に優しい世界になってる…!?

両親とのごたごたの末、両親の地位を(半ば強制的に)譲り受けて新たなドルクネス伯爵となったユミエラ。長いこと代官にまかせきりだった領地は荒れており、代官から渡された報告書にも不審な点があるという。第二王子エドウィンを担ぎ出そうとする過激派が盛り上がり、不穏な空気が漂う王都を尻目にパトリックとともに領地に向かった彼女を待っていたのは、領民達の意外な反応で…。

あらすじからして内政話をやるのかな?とおもったらそのへんは9割位は力技で解決していて流石でした。やはり筋肉(ダンジョン周回)は全てを解決するんだよなあ。

ユミエラ幼少期の悪行(レベル上げ)がまさかの結果オーライに。ユミエラの両親とアリシア&その取り巻き達が1巻時点で排除されてしまったせいか、よくも悪くも「悪人」の居ない世界観になったなという印象。代官もパトリックの実家も予想外に「良い人」達で……だからといって、主人公の最大のライバルが無機物(結界)なのはどうなんでしょうかね!?ユミエラのそういうとこほんと好きだけどさ!!

奥手×恋愛オンチのポンコツラブコメ(コメ寄り)が最高に楽しい

ユミエラのバトルジャンキー&脳筋具合は相変わらず健在なんだけど、それ以上に今巻はコミュ力底辺恋愛ポンコツ娘なユミエラと奥手でいいヤツなパトリックが繰り広げるラブコメ(コメ寄り)が最高に楽しかった!もう完全に両想いで1巻のラストで恋人同士になっているはずなのに本人も知らない間にバッキバキに恋愛フラグを叩き折っていくユミエラと、勇気を出してユミエラにアタックしては勘違いされて砕け散るパトリックの恋愛模様が可愛くてたまらない。指輪の件とかは正直サプライズにするよりも本人を交えて選んだほうが後腐れもすれ違いもなかったのでは!?と思わなくもないんですが、喋れば喋るほど恋愛とは程遠い方向にズレていく会話の応酬に何度も腹抱えて笑ってしまった。いやもうほんと、こういうギャグ要素の強い残念なラブコメ、めちゃくちゃ好きなんですよ!!

一方、何かと誤解を与えやすいユミエラの行動をパトリックが不断の努力で誤解を生まないよう立ち回ってくれるのが読んでて凄く高感度高いんですよね。修復不可能だと思われていたエドウィン王子とユミエラの関係を修復することができたのも彼の行動があってこそでしたし。そして、こんなに自分のために一生懸命になってくれる男の子にユミエラが惚れないわけがないんですよね。パトリックの挙動挙動にときめいてしまうユミエラの姿にニヤニヤが止まらないんですが、なんでここまで解ってるのに自分への好意だけは理解できないのかなこの娘は〜〜!!

エレノーラとユミエラの「友情」もアツかった

第二王子・エドウィンを担ぎ上げようとする過激派貴族の筆頭・ヒルローズ公爵。そして、彼の娘でありながら底抜けのお人好しで騙されやすい令嬢エレノーラ。エレノーラに懐かれたことを「面倒くさい」と思っていたユミエラが、少しずつ彼女の境遇に共感し、感情移入していく姿が印象的でした。立場は違えど自らの生まれ持ったもののせいで同性の友人と呼べる存在に恵まれなかった二人が距離を縮めていく姿が印象的。

そして、圧倒的な力を持つ反面、なんだかんだと人が良いユミエラの「弱点」を突いてくるヒルローズ伯爵との対峙。カンストしていても決して無敵ではない彼女の窮地を再び救ったのは常に彼女に並び立たんと不断の努力を続けてきたパトリック、というのがまた良かった!一種の俺TUEEモノでありながら、最初から一貫してパトリックがユミエラの「ヒーロー」として描かれているの本当に良いですね……。

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Fate/Requiem 1 「星巡る少年」

 
NOCO
 
原作
TYPE-MOON

―――昔、大きな戦争があった。 戦争は終わり、世界は平和になった。今では誰もが“聖杯”を持ち、運命の示すサーヴァントを召喚する。 ただ一人の少女、宇津見エリセだけがそれを持たない。 少女は、世界で最後に召喚されたサーヴァントの少年と出会う。 だが彼女はまだ、自分の運命を知らない。

1巻が無料配信されていたので駆け込みで読みました。他のFateシリーズとは一味違った、「FGO」の設定を思わせる世界観が印象的な“最新”のFate。個人的には今やってるコラボイベのマップ・設定・ビジュアルが頭にあったせいでかなり読みやすかったな思うんですが、現在FGOにログインするともれなく色んなネタバレを喰らうのでネタバレを踏みたくないひとは強く生きてほしい。

その日、少女は待ち望んだ「運命」と出会う

聖杯戦争によって大きく変貌した世界。そこでは誰もが聖杯と令呪を持ち、サーヴァントを召喚することが出来る。そんな世界でただひとり聖杯も令呪も持たない少女・宇津見エリセは「臨海都市」となった秋葉原でサーヴァントを狩る“死神”と呼ばれていた。

主人公のエリセが世界中でただひとり聖杯も令呪も持たざる身でありながら、「英霊」という存在に憧れ、彼らの存在をどれだけ尊んでいるのかそこかしこから伝わってきて、そんな彼女がサーヴァントを“狩る”存在であることになんとも言えないもどかしさを感じた。英霊を狩る存在だからこそ彼らのことを深く知りたい、自分が滅ぼす彼らのことを覚えていたい、出来れば消滅させずに収めたい……と、彼らに真摯に向き合おうとする姿が印象的でした。

当たり前のように自分のサーヴァントを持つ住民達、そして本物の「令呪」を持つ魔術師である祖母に囲まれて育ち、ひたすらにその憧れを育み続けた彼女だからこそ、1巻まるまる使って描かれる彼女自身の「運命」との出会いに胸が熱くなってしまいました。

FGOをやってるとニヤリとするかも

誰もが聖杯と令呪を持ちサーヴァントと契約することが出来る、本物の聖杯戦争ほどの強さは持ち得ないが令呪は時間で回復するという世界観設定に物凄く「FGO」っぽさを感じる。Fateシリーズは元々シリーズによってかなり聖杯戦争やサーヴァントの立ち位置が異なるのですが、これは特に「聖杯戦争によって変化した後の世界の物語」ということで、かなり特異な立ち位置なのかなと。あとやはり設定上、登場するサーヴァントの数がぶっちぎりで多いのでチョイ役であんな鯖やこんな鯖が出てくるのにニヤニヤしちゃう。

個人的には、レクイエムコラボでかなり世界観や物語への興味をかきたてられたなという印象なのですが、同時に今FGOにログインすると普通にガチャ画面で1巻のラストで明かされるはずの謎(=少年の真名)とか盛大に明かされてますし、エリセの能力なども普通にイベント中にネタバレしていくスタイルなのでネタバレに触らずに読みたいという人はゲームには触れずに先にこちらを読んだほうが良いかも(このSNS社会でそこに触れずに読み切ることが出来るのか?という問題は横においておいて)。

コラボ限定のマイルーム背景とコラボのマップ画面がめちゃくちゃ好きで「おおっ!」となったんですよね。原作の口絵のイラストもめちゃくちゃ良いですがイベントマップで俯瞰状態で眺められるのめちゃくちゃいいな〜って思いました。絶妙に現在の「秋葉原」の知ってる所がそこかしこに残ってて、知ってる場所でありながら知らない場所になっているのにすごくロマンを感じました。

物語としてはまだほんの序盤

1巻ではエリセと少年サーヴァントが契約を結ぶところまでで、面白くなるのは次巻からかなという印象。少年サーヴァントに関してはこちらよりもFGOコラボの方が深堀りされているのではってレベルだし鬼女紅葉の再臨段階なんか今後のネタバレなのでは!?ってならなくもないんですが。

今後どうなっていくのか読めないので、次巻を楽しみにしていようと思います。

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悪役令嬢レベル99 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

 
Tea

RPG系乙女ゲームに悪役令嬢ユミエラとして転生した私。でも実はユミエラは、本編ではショボいが、エンディング後には裏ボスとして再登場し勇者と渡り合うキャラで―つまり超絶ハイスペック!ついゲーマー魂に火がついて鍛えた結果、学園入学時点で私はレベル99に達してしまっていた。ゲームのストーリーには関わらず目立たず平穏に過ごすつもりが、入学早々レベルがバレて、ヒロインや攻略対象達には魔王と疑われてしまい…!?

前世でやりこんだ乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生した主人公。いずれゲームクリア後の世界で裏ダンジョンの隠しボスとして覚醒する予定の彼女は、前世知識をフル活用して破滅フラグを回避する──のではなく、前世のゲーム知識をフル活用して猛然とレベル上げをしはじめる。そう、主人公は乙女ゲーマーではなく、周回プレイ・レベル上げが大好きなやりこみゲーマーだったのです…。

やりこみゲーマーの私TUEE×もどかしラブコメ

序盤は突っかかってくるヒロインや攻略対象たち、彼女の持つ圧倒的な力を利用しようとする勢力をパワーでなぎ倒して黙らせていく私TUEEモノ。物語開始直後に速攻でカンストしてしまうのでなろう小説にありがちなレベリング描写が殆どないのが特徴的でした。ところが、彼女の数少ない理解者・パトリックと出会った辺りから物語がすこしずつ色を変えていきます。

人命無視&効率優先の無茶なパワーレベリングを提案するユミエラにドン引きしつつも彼女のブレーキ役となり状況をまとめるパトリック、という遠慮のない関係性が滅茶苦茶に好きなのですが、更にそこから物語が進むにつれて少しずつ二人の距離が縮まっていくのが最高に可愛い。圧倒的な力と忌み嫌われる黒髪と闇魔法を持つせいで孤立していたユミエラがパトリックという存在を通して他のクラスメイト達との繋がりを獲得していくのが印象的でした。

前世ではオタクをこじらせ、今生では孤立してしまったユミエラが不器用ながらも「パトリックに嫌われたくない」と考えるようになるまでの流れと、ユミエラと対等で居たいパトリックがユミエラが予防線として口にしていた「自分より強い人が好み」という言葉を拗らせてなかなかユミエラに気持ちを伝えられなくなってしまい、だいぶ前から両想いなのになかなか思いを伝えあえないというもどかしさにニヤニヤが止まらない。

やはり筋肉(ルビ:レベル上げ)は全てを解決する

一方で、ユミエラの無茶苦茶なレベリングが現状の改善に作用していくのも印象的でした。ゲーム本編において彼女の心情は語られないので想像を重ねていくしかないのですが、本来家柄が良いわけでもなく、黒髪を持つせいで両親からも周囲からも疎まれ、学園内に居場所を作ることが出来ず悪役令嬢の立場に追いやられてしまった“ユミエラ”が、ゲーム版の展開とは違ってパトリックという理解者を得て自分の居場所を作り、責任のある立場になってでも世の中を変えたいと思うまで成長することが出来たのは、間違いなくレベルを上げていたおかげなんですよね。やっぱり筋肉は全てを解決するんだなあ……。

自分の危険も顧みないレベリングによってこれまでの全てを勝ち取ってきたユミエラが、最後の最後で「大切な相手のために自分を大事にする」ということを学び、そのおかげで最大の窮地を脱することができるという展開がまた熱かったです。余談ですが両親の育児放棄の件についてユミエラが「精神年齢30歳だし両親からの干渉なくてむしろ快適だった」みたいなこといってるのはかなりインパクトありました。確かに精神年齢30歳だと、育児放棄についてはほぼ嫌がらせにはならないよね…。

ゲームヒロインちゃんにはなにかフォローがあってもよかった

ユミエラとは対象的に、ゲームとは違ってレベルをあげなかった、研鑽を怠ったせいで最後の最後で痛い目を見てしまうのがゲーム正ヒロインのアリシア。割とこの物語、クズ成分がアリシア及びユミエラの両親に集中していたのでこの辺どうフォローするのかとおもったんですが結構さっくり使い捨てキャラにされた感があり少し残念。アリシアが異常にユミエラを敵対視するのに原因とかあるのかなと思っていたのですが結局純粋に性格が悪かったから自分以上に目立った女が許せなかったということで良いのだろうか……エドウィン王子以外の取り巻きの使い捨て感もすごかった。

まあその辺は続刊でフォローされるのに期待、と思っていたのですがなろうで原作の該当部分ざっくり読むと地味に展開が変わっていて、どうかんがえてもフォローなさそう。というか彼女の処遇に関しては、今後フォローがない感じならなろう版の結末の方がしっくりくるなあ……。

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3巻無料にかこつけて『ようこそ実力至上主義の教室へ』を布教する

「キミラノ」とMF文庫Jのコラボ企画で、
5/15〜297/19〜8/18まで『ようこそ実力至上主義の教室へ』が3巻無料になるそうです。


いつか作品をまとめて語る機会があれば語りたい……と思っていた作品だったのでここぞとばかりに布教記事を書きました。気になる!!気になった!!!というひとはこの機会に読んでみてほしいし出来れば4巻以降も読んでみてほしい。なんなら知り合いになら4巻のギフトコードを送ることも辞さない。どうぞよろしくおねがいします。(こちら2020年に書いた記事ですが、2021年7月にまた3巻無料キャンペーンが来たので序文だけ書き換えました)

あらすじ(※軽くネタバレあり)

生徒達を『実力』で4つのクラスに振り分け、独自のカリキュラムによる次代の人材育成を行う全寮制の学校・高度育成高等学校。卒業後はあらゆる進路が確約されるが、その恩恵を受けることが出来るのはAクラスで卒業した生徒達だけ。定期的に開催される過酷な『特別試験』では退学者を排出することも。かくして、Aクラスで卒業することを目的としたクラスカースト争奪戦が幕を開けるのだった。

──そんな中で最底辺のDクラスに振り分けられたものの、Aクラスへの成り上がりには興味がない主人公・綾小路清隆。子どもたちを集め、過酷なカリキュラムにより天才へと育成する機関「ホワイトルーム」唯一の成功例であった彼は、高度育成高等学校に入学することで得られる俗世間との完全隔離=「3年間の自由」を満喫するため、ことなかれ主義と嘯きながら目立たない一生徒を演じようとしていた。Aクラスへの昇格に拘るクラスメイトの掘北鈴音に力を貸し、あるときは巧みに利用したりしながら平穏な毎日を送ろうとする綾小路。ところが、彼を連れ戻そうとする「ホワイトルーム」からの妨害工作が始まり──。

個人的に推してる所

主人公・綾小路清隆の超ハイスペックな「ひとでなし」ぶり

幼少の頃より社会から隔離され、人間としての感情を削り落とされるような過酷なカリキュラムによって後天的に作られた「天才」である綾小路。事なかれ主義を謳いながら掘北や櫛田とラブコメ的な何かをしていた頃は典型的なやれやれ系ラノベ主人公(死語)かな…と思ったのですが、物語が進むにつれ、その裏にある「自分以外の誰がどうなろうと構わない、最後に自分が勝ってさえいればいい」という信念が明らかになっていきます。

味方であるはずのクラスメイト達すらも欺き、その裏で(綾小路にとっての)完全勝利を掴んでいく姿は爽快でこの作品が「主人公最強」とか「俺TUEE」と言われる所以であるわけですが、同時に、読めば読むほど綾小路の人間としての欠落・不完全さが気になってきてしまう。世間と隔離されて生み出された天才であるが故に「一般人の正解」が解らずに突拍子もない行動を取ってしまったり。他人の情緒が理解できなかったり(※理解できないだけでそこを計算に入れて動くことは出来る)。一年間の高校生活で自分の中に覚醒め始めた感情を他人事のように眺めている節があったり。特に、綾小路の情緒面での成長…というか移り変わりは今後の展開におけるキモなのかなと勝手に思っていて、今後掘り下げが来るのを楽しみにしています。

それにしても最近の話で序盤の頃のやれやれキャラは、世間に疎い綾小路が無理して作った「普通の男子高校生っぽい人格」だったことが発覚しましたが、一体彼は入学前に何を読んで普通の男子高校生を理解しようとしてたんでしょうね……ラノベかなにかか?

「Aクラスでの卒業」を巡り、繰り広げられるそれぞれの生存戦略

生徒達の普段の行動、テストでの成績、そして定期的に開催される「特別試験」の成績を加味して各クラスに「クラスポイント」が与えられ、そのポイントの増減によってクラスのランクが決定される。また、月初のクラスポイントによって生活費含む学内のあらゆることに使える「個人ポイント」が支給され、相応の個人ポイントを払えば任意のクラスに転入することさえ出来る。

以上を踏まえて繰り広げられる、各クラス同士、時には学年を超えて繰り広げられるポイント争奪戦が熱い。クラスが一枚岩となって戦う必要があると同時に、個人ポイントを稼ぎさえすれば自分だけAクラスに転入することも出来るため、クラスの中でも様々な思惑が交錯するのが面白いですね。他のクラスと内通してクラスメイトを欺こうとする者、様々な奇策を用いて個人ポイントを集め、ランクアップを狙う者……様々な動きが見えてくるのが印象的。

原作の副読本としておすすめしたいアニメ版

原作1〜3巻に4.5巻の内容の一部を入れ込んだアニメ版ですが、個人的にめちゃくちゃ楽しかったのがエンディングのキャストロールに各キャラクターの持ち点が表示されている所。どの場面で誰が何点くらい持ってるのかわかるので(原作と完全に同じ点数なのかどうかはわからないけど)、いろいろな想像が膨らむ。

綾小路の本心が最終話まで見ないと明かされなかったり…と、若干原作を読んでないと分かりづらいところがあるラノベアニメにありがちな作りではあるのですが、原作を踏まえてみるとめちゃくちゃ面白かったです。あと綾小路役の千葉翔也さんの棒読み推せる(序盤はまじで棒読み感あって心配になるけどだんだん演技してる感じの棒読みになってくるような気がするし、特に茶柱先生から父親の事を追求されたときに一瞬だけ感情込めてしゃべってくる感じとかたまらない)。Amazonプライム等で見放題配信されているので興味のある人は見てみてください。

個人的に好きなエピソード

「ようこそ実力至上主義の教室へ3」→感想
今この瞬間だけ、本心で語ろう
無人島サバイバル編。初めての「特別試験」、各クラスのやり口が示される初めての巻でもあり、これまで地の文ですら本心を偽ってきた綾小路がはじめて「本心」を吐露する(地の文で)エピソード。とりあえず、読み始めたら最低でもここまでは読んでほしい。アニメもここまで。
「ようこそ実力至上主義の教室へ4」→感想
恋愛側ヒロイン・軽井沢さん爆誕
3巻で本心を少しだけ見せた綾小路が、手加減なしにえげつないやり口を発揮する回。恣意的に過去のトラウマを再現させ、マッチポンプで軽井沢の感情を自分へと向けさせようとする綾小路のやり口がどこまでもひとでなしな上に、ここで見いだされるヒロイン軽井沢恵がこんな出会いなのに4.5巻以降のエピソードで真っ当に綾小路に恋してしまうのがしんどいofしんどい。今回無料になる原作小説3巻分までだと彼女の魅力は殆どわからないので、3巻まで読んだ人は騙されたと思って4巻も読んでほしい。
「ようこそ実力至上主義の教室へ5」→感想
世間の「普通」がわからない綾小路の行動が楽しい
普段のテストではわざと間違えて点数を調節していた綾小路が初めて「一般人の平均」を掴みそこねてうっかり目立ってしまうエピソード。運動神経が人外な須藤の基準を参考にして高すぎる数値を出してしまうのにはつい笑ってしまいますがそこまで細かく調整できるってことはさぁ…。本編も、Cクラスの龍園に追い詰められた堀北が「他人を頼る」事を覚えるエピソードでとても熱い。堀北鈴音の水面下での成長は正統派に面白いし少年漫画の王道主人公的ですらあるんですが、これそういう話じゃないんでこの辺から影薄くなりがちなんだよな…。
「ようこそ実力至上主義の教室へ7」→感想
龍園と綾小路の殴り合いが最高(腐女子なみのコメント)
堀北の裏にいる黒幕(=綾小路)のあぶり出しを狙うCクラスのリーダー・龍園と、その龍園からの追求を逃れて表舞台から消えたい綾小路の正面対決。どこまでも汚い手口と暴力を使って周囲をねじ伏せる龍園をそれ以上の汚い手口と暴力で屈服させる綾小路のやり口がどう考えても真っ当な主人公のやることじゃないんですけど綾小路と龍園の殴り合いの挿絵が最高すぎて無理。とばっちりで過去のトラウマを掘り起こされる軽井沢さんは本当に幸せになってほしい…。
「ようこそ実力至上主義の教室へ7.5 」→感想
はじめての雪でテンション上がる綾小路が可愛い(挿絵付き)
冬休みの出来事を描く息抜き的な短編集なんですけど、人生で初めての雪にテンション上がってるっぽい綾小路が可愛いにすぎるので全ラノベ好き女子オタク読んでほしい回。あと、綾小路への想いを自覚した軽井沢さんがどこまでも可愛い巻なんですけど7巻で何があったかを思い出すと全く安心して見守れないのが困る。この出会いが仕組まれた物であると知りながら綾小路に惹かれていく自分を止められない軽井沢さん本当に可愛いんだけど綾小路によって仕組まれた出会いなんだよな…。
「ようこそ実力至上主義の教室へ8」→感想
男子生徒に焦点を当てたエピソード(綾小路は巨○ン)
男女別れて上級生と組んでの特別試験、綾小路の友人である幸村の内面での成長劇、クラスきっての問題児である高円寺との対峙などなど、男子生徒に焦点を当てたエピソードなんですがそんなことより突然はじまった男風呂での男のシンボル対決が忘れられないどうしてこうなった。どこまでもシモネタで突っ走る展開が、なんというかエロゲライターさんの書く文章だなあ〜〜という感じで大好きだし笑いが止まらない。綾小路は大きい。
「ようこそ実力至上主義の教室へ9」→感想
裏から事態を操り美味しいところを攫う、原点回帰な面白さ
Bクラスのリーダー・一之瀬が陥った窮地を救うために動く裏でAクラス&新生徒会の動きを牽制し、身内の敵である櫛田と取引し、今後の自分の行動に対して利になりそうな相手に繋ぎをつける。展開としては割と地味だけど「黒幕・綾小路清隆」という存在の面白さが全部凝縮したような話なんですよね。あと個人的に9巻の挿絵がめっちゃ好きなんですよ…悪い笑顔の綾小路の挿絵めっちゃ好き。
「ようこそ実力至上主義の教室へ11.5」→感想
短編集という名の「一年生編」エピローグ。
綾小路が本気を出して強敵・Aクラスに挑む11巻も最高に楽しかったのですけど(というかあれは面白くないわけがないお話)、短編という名でこれまでの人物たちの成長とこれからを描く11.5巻が本当に「1年生編」エピローグとしてポイント高い。なにより衝撃的だったのはやはりラストの軽井沢とのやりとりと綾小路の「独白」。感情の機微を理解できない綾小路が軽井沢というパートナーを得てどう変わるのか。それとも何も変わらないのか。2年生編のプロローグとしてもポイント高いエピソード。

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