今日もだらだら、読書日記。

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職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。

 

効率、出会い、トッププレイヤー争い、興味なし。 私はとにかく黙々と収拾、生産、販売作業ゲーがしたいのである。 ──そう思って、気ままにクラフトを楽しむVRMMO『きまくら。』で仕立屋になった少女・ビビア。推しキャラの服の作成やアイテム採集など、ゆるゆる服作りをエンジョイ中。図らずも革命イベントを発生させて一躍注目と賛否を集めると、お店は大繁盛&大炎上! まあ匿名世界だし、あんま気にしなくていっか、と叩いてくるアンチは全て無視、大荒れ掲示板も一切興味なし。だけど、作った服に特殊スキルが付与されるからか、注文は止まらない……。ただ楽しみたいだけの彼女は、やがて全プレーヤーを揺るがす存在となっていき──? 世知辛い世界をのんびり楽しみ尽くす、ほのぼのクラフトファンタジー!

クラフト要素目当てでVRMMO『きまくら。』をはじめたビビア。プレイヤーとの交流は殆どしないで、仕立て屋として洋服を作ったりNPCと交流する日々を続けていたがどうも周囲の様子がおかしい。どうやら彼女が偶然発生させてしまったイベントがゲーム世界前提を揺るがす重要イベントだったらしい。しかもこのMMORPG、ただのほのぼのクラフトゲーではないみたいで……!?

サバサバ女子、殺伐ネトゲで炎上しながら淡々と生きる

1巻読み終わるまでずっと動画配信モノだと勘違いしてました。この主人公がどんな流れで動画配信の道に!?ってずっと不思議に思ってたんだけど普通にそんな展開なかった。主人公がクラフト系のVRMMOしてる様子を淡々と(小説の地の文で)実況しているお話、といえばまぁ確かにそうなんだけど、配信モノの作品が増えてきた今このタイトルすこし紛らわしいなぁ……と思いつつ、「実況=動画配信ジャンル」という認識が自分の中で結構出来上がってしまっていることにも驚愕した。クラフトゲーやホラゲーの実況とか割と好きです。

ほのぼのクラフトゲーとは名ばかり、晒し上げ上等身内ノリ上等プライバシー皆無プレイヤー同士の競争要素ありという殺伐MMO『きまくら。』で淡々とクラフト要素を楽しんでいたところ、クラフト特化のプレイスタイルが福を呼び込んだのか様々な新要素を発見してしまう主人公のビビア。光速で特定されて炎上するも、全く気にせずにアンチとなんかうるせーやつは全員ブラックリストにぶちこんで淡々とクラフト&NPCとの交流を楽しむ……というサバサバっぷりが大変に良かった。NPC交流・クラフト要素に対する熱の入れように対してリアルプレイヤーに対する対応が塩すぎるの面白い。

主人公が新要素を発見しまくり、クラフトしたアイテムにスキル付けまくり……とゲーム内で無双してる要素にちゃんと理由があるのも良かった。服飾をやりたくてゲームを始めた彼女がゲームならではのショートカット系スキルを基本的に使わず、ひとつひとつ手作りで仕上げていったところそこにスキル付与の隠し要素が潜んでいたと。そりゃあ確かにゲーム慣れててゲームとしてクラフトを楽しむ層はやらないし見つけられないよなあ。おそらく、プレイヤー自身のデザインセンスの高さも関わってきている感じがするので誰でも出来るわけではないというのがまたエグい。彼女が発生させたシエルシャンタの親密度ストーリーだって完全にキャラクターへの愛情じゃなくてユーザーのデザインセンス次第じゃないですか。シエルシャンタ廃のゾエベルさんは強く生きて欲しい……。

しかし面白かったんだけど、色々と噛み合うまでが長かった。序盤はビビアが本当に淡々とクラフトゲーをやっているだけで、章間に挟まるユーザーチャットでのやりとりもある程度本編と繋がりが無いわけではないけどそんなに噛み合っておらず……中盤でビビアが「革命」イベントを発生させて炎上するまでは全体的に起伏の少ない状態が続くのでだいぶ掴みが弱い感じ。その代わりに、革命イベント発生後は一気にこれまで積み上げてきたユーザーチャットでの設定や会話が本編に生きてきて面白い。この辺の全体的な立ち上がりの遅さは良くも悪くもWeb小説ならではだなあ。

この手の、書籍化すると1巻の時点でストーリーの方向性が見えないまま終わる作品が多い感じなのもやや難で、というか1巻なのに地味に気になる終わり方するじゃないですか。リアルプレイヤーとの交流をサバサバとぶった切りすぎて、同じクラフトガチ勢であるキムチさんに怯えられてるの笑ったけど。発生させてしまったメインストーリーの展開は今後どうなっていくのか。色々不穏な要素も見え隠れするNPC交流の行方は、主人公はこのまま基本交流なしでサバサバやっていくのかそれともなんだかんだで交流が増えていくのか。「結社」とは一体………とりあえず、2巻でどうなっていくのか楽しみにしたいと思います。

それにしても、「治安の悪いネットコミュニティ」の描写がリアルすぎて地味に生々しいな。妹ちゃんの所属していたギルドの内輪もめの話も結構ネットあるある……だし、バレッタさんの初対面の相手にクレーム9:絶賛1のメッセージ投げて許されると思ってる感じとか、竹中さんの空気読めないオタクっぷりとか、『きまくら。』に「。」を付けないで発言すると自称警察が沸く流れとか。というか、この往年の匿名掲示板のようなノリのMMORPGにソシャゲもびっくりのランキング要素入れて札束でNPCの本妻争いさせるのエグいよ……。

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【悲報】お嬢様系底辺ダンジョン配信者、配信切り忘れに気づかず同業者をボコってしまう 2〜けど相手が若手最強の迷惑系配信者だったらしくアホ程バズって伝説になってますわ!?〜

 

カクヨム年間総合1位の超人気作!
バズリまくってついに収益化を達成したカリン。 記念すべき初回配信に現れたのは、憧れのセツナお嬢様の“生みの親”もちもちたまご先生で……?  一方、カリンをバズらせるきっかけとなった迷惑系配信者・通称ゲロも、虎視眈々とカリンを狙っていた。 あらゆる注目を集めつづけるカリンだが、その実力はまだまだ未知数。まさかダンジョン崩壊を機に、“フィスト●ァックお嬢様”を超える伝説が生まれることになろうとは、カリン本人を含む誰も知らないのだった――。 人気すぎておハーブ大農園!!! 規格外お嬢様のダンジョン無双バズ、第2弾!

若手迷惑系配信者を成敗したチンピラお嬢様として頭角を現し、迷宮攻略生配信で各所に衝撃を与えた山田カリン。ところが、配信中のちょっとした行動や失言が原因でおかしなネットミームが生まれつつあった。マイナスイメージを払拭するため、取り急ぎ雑談配信を行うことにするが、そこで再び衝撃の事実が発覚して……!?

(読者とリスナーと配信者自身の)新鮮な悲鳴は健康に良い

1巻の時点で驚きの連続だったのでもう驚かねーぞ!!と思いながら読んだけど1巻の内容なんて全然まだ氷山の一角でしたね!!今回も最初から最後まで驚きの連続だったしめちゃくちゃ笑った……いやもう本当に、ここまで頭をからっぽにしてケタケタ笑いながら読める作品って貴重なのでこのままのノリでどこまでも行って欲しい。

1巻の時点で大分情報量が積載過多という感じあったんですけど、彼女のトレードマークであるドレスの素材の話をキッカケにしてまた次から次へと明かされていく驚きの新情報に困惑するしかない視聴者に笑ってしまう。ひょっとして今見せられてる実力も氷山の一角なのでは……?と思っているうちにそれを実証するような出来事が発生するの笑うし、それはそれとして全然関係ないところで勝手に変なことやって自滅しているお嬢様が可愛くておハーブ。

個人的には収益化記念配信の話が凄い好きで、配信を見ている限りどうみても苦学生なカリンに金を持て余した大人たちがすごい勢いで赤スパ投げるのを最初は微笑ましく眺めてたんですけど、いやいくらなんでも額がヤバすぎない!?とだんだん真顔になってきて、最後にカリンがこよなく愛するセツナお姉様の生みの親・もちもちたまご先生まで現れてしかも喋るたびにスパチャの限界額投げてくるの本当にまあそのくらい投げても全然問題ないくらい今回の件で儲かってるだろうし感謝してるんでしょうけど普通に額が怖い。そして収益化配信の時点で十分ヤバかったのにその後のカリンお嬢様が渋谷を救った後の配信に至っては彼女の活躍に感銘を受けた視聴者からガチで彼女に生命を救われた人までがこぞって限界額を投げ始めるので更にヤバい。いや本当にみんな未成年の金銭感覚壊そうとするんじゃないですよ!!???こんなん実際に貰ってしまったら頭おかしくなるわ!!!

書き下ろしの真冬ちゃんの過去話が良かった

いろいろな意味で脇の甘いカリンお嬢様の配信を影に日向に支える名サポーターが同じ高校の同級生であり親友の真冬ちゃん。本来は未成年が持ち帰れないはずの素材を活用するための裏技を伝授したり、配信についても致命的な失敗をしないように(でもできる限り自由に動けるような形で)カリンに知恵を授けていて今回じわじわと「ただの高校生じゃない」感を出してきた真冬ですが書籍書き下ろしで掲載されていた彼女の過去話がとても良かったです。優秀なダンジョン探索者として国に生かされてきた彼女が大きな挫折を味わい一線を退き、失意の中でカリンと出会い、彼女の突拍子もない言動に振り回されながらも少しずつその姿に心を癒やされていって……やがて、彼女のダンジョン配信を見守っていきたいというささやかな願いを持つに至る。一方で実は真冬ちゃんの事情や実力をなんとなく察しているカリンも同世代の強者として彼女を尊敬し、いつか彼女に恩を返せる日が来るのを心待ちにしている……という珠玉の女の子同士のクソデカ感情エピソードが大変良かった。

でも、やっぱり最後の最後でカリンお嬢様の無双っぷりとその実力を目の当たりにする羽目になり、普通にドン引きする元歴戦の猛者・真冬ちゃんの姿におハーブ生え散らかすわけですが。いやでも本当にいろいろな意味で脇の甘いカリンお嬢様の配信が普通に笑える感じで収まってるの完全に真冬ちゃんがコントロールしてるおかげだと思うので今後も仲良くしていって欲しいですよね……いや本当に主に生活費の使い方と金銭感覚のあたりは上手くコントロールしてあげて欲しい…………頼んだよ真冬ちゃん………………。

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これが魔法使いの切り札 2.竜の少女

 

妹分の正体は――竜!? 波乱を呼ぶ魔法学園ファンタジー第2弾
「このままならば――貴様は退学だ」「なんでぇ!?」 その特異な体質から魔法学院の在籍を許されたリクス。だがシノの付きっ切りの指導もむなしく、壊滅的な成績を叩き出し至極真っ当な理由(?)で退学の危機に瀕してしまう。 「団へ帰るっす! それを拒むというなら、力尽くでもッ!」 さらにそこに傭兵時代の妹分・トランがリクスを連れ戻そうと学院にやってくる。学院の中で“竜”の力を存分に振るう彼女のせいでこのままでは即刻退学!? 学院に残るため、リクスはトランを自身の召喚獣にしようと彼女との契約を狙うが―― え? トランって元々は俺の召喚獣だったの? なにそれ!?

魔術師の適性が皆無と診断されたものの、なんとかエストリア魔法学院に残留できることになったリクス。ところが、ペーパーテストの成績が壊滅的という真っ当な理由で再び退学の危機に。部活動での評価アップを狙って部活見学をはじめたが、そこに傭兵団時代の同僚の少女・トランが現れて……!?

色々と謎が深まってきたなあ……!!

一難去ってまた一難、リクスを追って学院にやってきたトラン(※正体はリクスと中途半端な形で繋がっている竜の少女)を巡って騒動が勃発するシリーズ第2巻。魔術師としての才能が無いリクスとトランがどうして不完全な形とはいえ召喚契約で繋がっているのか、その契約を正式なものにするためにはどうすれば良いのか。召喚契約を不完全な物のままだと即退学という崖っぷち、さらにそこに祈祷派を黒幕としたよからぬ企みを持つ連中がトランを狙いはじめる。崖っぷちの状況を打開するまでの流れでリクスが夢を通してかつての『黎明の剣士』の旅路を垣間見ていく……という展開がなかなか楽しかったのですが、最後の最後でシノの爆弾発言で吹き飛んでしまった。色々と謎が深まってきた……!!

シノがそうだったことだし、リクスも『黎明の剣士』の生まれ変わりなんだと1巻のラストを読んで思いこんでいたけど確かに名言はされてなかったな……と。リクスのスフィアの閉じ方の話とかも自然にああなった感じではなさそうだし、1巻で軽く語られていた過去話も含めてまだまだ不穏な過去話が埋まってそうな雰囲気なんですよね。というか、どうしても前作読者としては黎明の剣士というとロクアカに登場した「彼女」を連想するわけで……生まれ変わりじゃないとすると割と血なまぐさい連想をしちゃうんですが……。匂わせだけのスターシステムかも知れないけど、ロクアカと用語や単語の重複が多いの本当に気になるな……。

個人的には1巻以上に謎めいてきたリクスの出自やますます不穏になっていく祈祷派の動きなど、ますます続きが気になる終わり方で今後の物語がとても楽しみなんですが、それはそれとして今回も部活見学で魔術師達の中でリクスが物理で無双するみたいなコミカル展開もめちゃくちゃ楽しいので、両方バランスよく摂取できると嬉しいな。というかこのシリーズ、結構普通に本誌でドタバタしてるだけの短編とか読みたいんですけど……!!本誌で連載してるロクアカが終わるまで二作同時進行は流石にないと思うけど終わったらやってほしい気持ちが凄い。よろしくおねがいします。

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小説 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(下)

   
原作
矢立肇・富野由悠季

大ヒット劇場アニメの正統ノベライズがここに!
TVシリーズの小説を手掛け、劇場本編の脚本にも参加する後藤リウによる正統ノベライズ! 小笠原智史が描く挿絵も、上巻より更に大ボリュームに! 小説ならではのエピソードや細やかな心情描写を堪能せよ!!

ファウンデーションが仕組んだ罠にハマり、彼らが率いるブラックナイツに敗れ……命からがらオーブのオノゴロ島に身を隠したキラ達。核攻撃を行った地球連邦国家への『報復』としてファウンデーションが持ち出してきたのは、なんと廃棄処分になったはずのレクイエムだった。彼らはコーディネイターの更に上位の存在「アコード」を名乗り、各国にデュランダル議長が推進しようとしたデスティニープランの施行を迫る。混乱に乗じて奪われたラクスを取り戻すため、そしてファウンデーションの暴走を止めるため、キラ達は再び宇宙に上がることを決意するが……!?

なるほど!分身ってそうやるのかぁーー!!(わからん)

「劇場版ガンダムSEED FREEDOM」の公式ノベライズ完結編。前巻に引き続き、本編の内容をなぞりつつわかりにくかった部分や心象描写を加えて本編の理解を更に深めることが出来る物語となっていて良かったです!あとがきで『フリーダム強奪事件』は続編として映像化する可能性があるので概要は秘密で……みたいな話がありましたが、映画大ヒットしたし実現するとよいですよね……とても見たい。

下巻で一番大きかった点というと、映画ではほぼバックグラウンドを語られなかったアウラ女帝からの視点があることかな。彼女が小さな身体になった理由、キラの父であるヒビキ博士との因縁。一貫してキラのことを「出来損ない」と呼んできた彼女だけど、あれ多分ヒビキ博士への敵愾心から来ていたと言うかそもそもキラとアコード達って理念からして全く別の存在なんだろうな。

アウラの歪んだ執着が、そして失敗を知らないアコード達の慢心が完璧とも思われた計画を次々に狂わせていく。計画の狂いを最後まで認められないオルフェ、ラクスが語る「愛」に憧れながらも道具として生きることをやめられなかったイングリッド、キラやアスランを倒すチャンスを与えられながらも刷り込まれた創造主への忠誠心に足元をとられてしまったシュラ、心が読めるが故にシンが戦場で見てきた地獄の一端と仲間たちの今際の際の叫びを受け止めきれなかったブラックナイツ。生まれたときからアウラの手で使命や運命に雁字搦めにされて、そこから抜け出すことができなかったアコード達の姿はどこか哀れですらありました。それはそれとしてまあ、やったことは最悪だし同情の余地はないしラクスにしろキラにしろ自身の全てを掛けて倒さなければならない理由があったんですけども。

クライマックスの戦闘シーンは劇場版だと割と勢いで見ている所が多かったしあのとき感じた圧倒的な勢いとかパワーは小説版にはどうしてもないんですが、文字で説明されることで初めて見えてくる情報もあって。様々な人物の視点がテンポ良く切り替わり戦場の様子を映し出していくのが大変楽しかったです。ラクスが予想以上にアコードとしての力を全開で使って戦ってるし、ミーアの今際の際の言葉ってずっとラクスに刺さったままだったんだなとか、キャットファイトのようなノリでいつのまにか本気のバトルに発展してたアグネスvsルナマリアとか、予想以上に生々しいカガリの妄想してそうなアスランさんとか。デスティニーの分身のところも謎粒子をばらまいてなんか分身してるってことがわかって一番謎のシーンの謎が解けて安心しま…………いややっぱり全然わからん。キラさんは基本コミュ障気味なので口では勝てないのでラクスさんに舌戦任せて自分はバトルに集中しててたまに合いの手入れてくるというラストバトル凄い理にかなってて良かったと思います。ところで敵も味方もミラージュコロイド便利に使いすぎじゃないですか!?それ禁止兵器扱いじゃなかったですっけ!?こいつは草葉の陰からニコルもニッコリだ!!

そしてエピローグで突然脱いだと噂のラクスとキラのシーン、長いこと立場に縛られて本当に手を取り合う事ができなかった二人が全てを脱ぎ捨てて手を取り合う場面として描かれていて賛否両論ありそうだけどとても良かったと思います。戦うことしかできないキラと強烈なカリスマで世界を導いてきたラクスがそれぞれの能力に見合った世界から離れる自由を持てることこそが、この物語の終着点なのだろうなと感じたし、何より政治に長けたラクスではなくカガリに政治を任せる理由を戦線離脱したキラの元友人・カズイの口から説明させる展開よかったよね。良い意味でキラとラクスの物語であった「ガンダムSEED」という物語の終着点を20年ぶりに見れたようなきがして、とても満足でした。とはいえ一線を退いたキラとラクスが周囲の空気読まずにイチャイチャしてるだけのお話とかも普通に見たいし、世界が危機になったらどうみてもバレバレな変装して介入してきてほしい感じある。ミスターブ◯ドーくらいバレバレなやつ頼みますよキラさん!!!ラクスさんもマスコミのカメラとか用意周到に壊して記録に残さないようにしながら堂々と演説しにきたりしてくれ。

個人的にエピローグはルナマリアにボコられたアグネスが追加されたシンルナいちゃいちゃカットのとばっちりで宇宙に放置されたことだけが不満です。劇場版ではちゃんとルナマリアが迎えに来るところまで入って完璧な運命最終回(スペシャルエディション版)のオマージュだったのにどうして運命最終回(テレビ放送版)のオマージュに退化させちゃうんですか!?その終わりかた、トラウマを刺激されるので好きじゃないなぁ!!

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やさぐれ執事Vtuberとネガティブポンコツ令嬢Vtuberの虚実混在な配信生活

 

謎の執事Vtuber・正時廻叉は、無表情・無感情だけど流暢な辛口トークと人を魅了する演技を武器に絶賛売り出し中。 役者の道を挫折し、新たなスタートを切ったものの、いまいち伸び悩む登録者数に試行錯誤を繰り返していた。 そんな中、告知されたのは所属グループRe:BIRTH UNION【リバユニ】の新メンバーオーディション! 審査員として参加した面接で出会ったのはーー 「あなたの元で生まれ変わりたいんです……!」 ──彼に救われた内気な美少女・ユリアだった。 慕ってくれる初めての後輩をデビュー配信へと導くことはできるのか!? 毒舌執事×元引きこもり令嬢、異色の二人がVtuber界にセンセーションを巻き起こす!新感覚成長ラブコメ配信スタート!

役者としての道を諦め、現在は企業所属の執事系Vtuberとしてトーク配信や朗読などを行っている正時廻叉。Vtuberとしての活動に楽しさと手応えを感じてはいたが、登録者数が思ったように伸びないことが少し気にかかっていた。そんな中、所属するVtuberユニットの新メンバーオーディションに面接官として参加することになるが、そこで自分の雑談配信に救われたと言う引きこもりの少女・三摺木弓奈と出逢い……。

歌い手、イラストレーター、元役者。理由(ワケ)あって、Vtuber!!

バーチャルシンガー、ラッパー、ギタリスト、イラストレーター、役者。全員が芸術家気質であり、それぞれの道で挫折してワケあってVtuberに転身したという過去を持つ異色の企業Vtuberユニット「Re:BIRTH UNION(通称リバユニ)」。そこに所属する元役者の執事系Vtuber・正時廻叉がひとりの引きこもりの少女を少しだけ前向きにさせ、自分を追いかけてきた彼女の存在に少しだけ救われる……というお話。芸術家気質というかそれぞれが生命を掛けてでも続けたい何かを持っていて、更にそのことで挫折を経験している……という共通の過去を持つリバユニメンバーのVtuberとしてのあり方がこれまで読んできたVtuber物の中ではかなり異質で、とても印象深かった。当たり前のように自然に自分のやりたいことに生命を掛けていくVtuber達の姿に心を揺さぶられる。

Vtuber物、ガワを被りながらもあくまで「ありのままの自分」を見せていって、それが受け入れられる……という趣旨の物語が全体的に多い気がするのですが、この作品のメインとなるリバユニはVtuberというガワと剥き出しの自分を使って本来の自分とは全く別のナニカになろうとしている文脈を感じるというか……0期生のステラ・フリークスを頂点に彼ら彼女らが全員で一つの大きな「物語」を作ろうとしていく姿が面白かったです。彼らの作ろうとしているものはまだ全く見えてこないけど、なにかとてつもなく面白いことが始まろうとしている気がしてワクワクする。

そんなユニットの中で、虚構と現実……ふたつの日常を行き来するうちにお互いが混ざり合っていく……そんな主人公の私生活が印象的でした。伝説的なバーチャルシンガーであるステラ・フリークスに傅きながら仲間たちと共にひとつの世界を作り上げ、リスナー達と濃厚な時間を過ごしていく……という「リバユニのVtuber2期生・正時廻叉」としての虚構の世界。役者として挫折した過去のこと、現在の登録者数が伸び悩んでいること、生活費や上京のこと……悩み多くもありふれた毎日を送る「元役者の青年・境正辰」の現実。ふたつの自分が混ざり合う感覚、タイトル通りに虚実混在していく現実に警鐘を鳴らす自分もどこかにいて。

そんな悩み多き正時廻叉/境正辰の日々に変化が訪れたのは、新人オーディションに現れた少女・三摺木弓奈との出会い。自分の配信によって救われた……と語る弓奈の言葉に登録者数が増えないことを思い悩んでいた正辰自身も救われて、という関係性が良かった……のですが、少し残念なのは彼女のVtuberデビュー直後で1巻が終わっていることか。書籍化を想定してないWeb小説の書籍化1巻目だと割とよくあるパターンで、続きは2巻で……ということだとは思うんだけど今回はほぼほぼ正時廻叉の物語で終わってしまったし、もう少し先まで入れてほしかった感じはするよなあ。廻叉自身もちょっとしたキッカケで伸びそうなキャラではあるしここから伸びます!みたいな伏線も沢山貼られているんですが、そのへんも匂わせだけで終わってしまったのでやや不完全燃焼みある。

いろいろな意味で起承転結の起で終わっちゃったみたいな部分あったので、次巻でどういう方向に進んでいくのか楽しみにしてます。

ところで、電子版特典SSで掲載されていたステラ・フリークスの過去編がとても良かったです。良い意味でリバユニの「物語性」を補強してくれるストーリーだったというか、「最初の七人」と呼ばれた伝説のVtuber達が一度だけ手を取り合い伝説となり……そのまま永久に手を離した物語。いや、もうこんなの神話じゃん……。

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アラサーがVTuberになった話。4

 

【速報】元同期、転生!?
私が神坂怜としてデビューし早7ヶ月。最近は大きな炎上に巻き込まれることもなく、ラジオ出演やゲーム案件配信などの大きなお仕事も決まりそれなりにチャンネル登録者を増やせるようになってきていた。だがそんなある日、解雇された元同期の長谷川氏が別事務所の新人Vの『中の人』を決める公開オーディションに参加するとの情報が舞い込んできた!? 案の定彼の過去のやらかしはネット上で掘り返され、こちらにまで非難のコメントが飛び火してくる。いつも通り私は嵐が過ぎ去るのを黙って待つつもりだったのだが、なんと状況を見かねた柊先輩たちが鎮火のために立ち上がってくれて――!?

なんとか登録者数も一万人を越え、少しずつ配信活動も軌道に……と思いはじめた矢先、とある企業のVtuber公開オーディションに元同期のハセガワらしき人物が参加しているという話が話題になる。それのとばっちりで何故か元同期である神坂の配信にまでコメントを求める声が波及。挙げ句、初期の低評価動画のアーカイブが蒸し返されはじめて……!?

きなくさい中での男子V組のわちゃわちゃ、たまらんです。

久しぶりの炎上回で、ずっときな臭い一冊だった。というかなんか不穏なまま終わったな…リアルご近所の女性声優・陽葵さんとの絡みもちょっと不穏なフラグ立ってたし次巻が心配すぎる。それにしてもあの影尾って人、神坂に個人的な恨みとかあるんですかね?結構無理やり燃やしに行ってる印象受けるんですけど。

ハセガワ復活疑惑が鎮火しきらないうちに妹ちゃんのリアル友人V・十六夜真の炎上騒動が続いて他の箱を舞台にした炎上劇という自分の力だけではどうにもならない状況に遭遇した神坂が──過去の人間関係のトラウマから心の奥底で他人を信用することがどうしてもできなかった彼が、初めて事件の解決に他人を巻き込もうとする姿がとても良かったです(いや、前巻の花火企画もなんだかんだで先輩総出で巻き込んでたので少しずつその呪縛から解き放たれてはいたとおもうんですけど)。他人を巻き込んではいけないと思い続けてきた彼の考えを決定的に打ち砕いたのは、直前の炎上の際に自分のことを「家族」だと言ってフォローしてくれた仲間の存在で。そして、なけなしの勇気と信頼を絞り出して神坂が吐き出したSOSをしっかり受け取って全力で応えてくれる畳もとい柊冬夜先輩があまりにもかっこよすぎる。いやもう……ほんと……こんなの薄い本が厚くならざるを得ないじゃん!!

そして1冊ずっと不穏な何かが漂う中、とにかくあんだーらいぶ男子V4人のわちゃわちゃが癒やしでした。3巻の畳・あさちゃん・神坂のトリオでのサバゲー配信関係も大変に美味しかったんですが、ミカァ!!こと御影和也がそこに加わってきて絶妙にダメな後輩わんこ感出してくるのたまらん。特にミカァ!のお部屋片付け配信。これがてぇてぇという感情(以下略)

今明かされる「あんだーらいぶ」昔話

本当に今回はずっと畳のターン!!すぎて、畳かっこよすぎて草なんですけど、その反面でめちゃくちゃかっこよく先輩してる畳の言葉の端々から同僚を救えなかったことの未練と後悔が透けて見えてくるのが印象的でした。いやほんと、「俺は数字を取ることしかできない」っていうセリフが、聞きようによっては自慢とも受け取られかねないその言葉からあふれる深い自虐の念が、彼もただ光の中を歩んできただけのVtuberじゃないってビンビンに匂わせてきて、切ないんだよな……。

そしてこれは正確には本編の感想ではないんですけど、本編の畳に加えてゲーマーズ限定版冊子についてきた特典小説「ニートのおしごと+あんだーらいぶ誕生秘話」がめちゃくちゃ泣ける話で卑怯だったんですよね…。配信を行わない異色のVtuber・新戸先輩の視点から4巻の物語とあんだーらいぶ設立当時のエピソードを振り返るお話なんですけど、なぜ彼女が配信をしない「ニート」になったのか。普段表に出てこない彼女がいかに「あんだーらいぶ」という箱に思い入れを持っているかが語られるお話で、これを本編に収録しないのはさすがに後からハマった人に優しくなさすぎる。一つ前の感想でも同じ話したばっかりですけど本編匂わせのあったエピソードやみんなが知りたいエピソード・ゼロを限定版特典や円盤小説でやるなマジで。畳の作中での発言、この短編読まないと意味が理解できないのは普通に卑怯だとおもうんですがー!!!私も店舗特典は全部当たりきれてなくて、完結後とかでもいいので店舗特典系の短編をみんなが読める形にちゃんとまとめてほしいなぁ……そしてこの作品のファンで未読の人は在庫が枯れる前にゲーマーズ限定版を確保しておいて欲しい。

……ところで、掲示板の方には新たなコテハン登場してましたね。1巻以来ご無沙汰だったアンチくんはともかく、占い師一体何者なんだ……(なんか内部事情知ってる人っぽいけど本当になにものなんだ……!?)

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空戦魔導士候補生の教官 EXTRA MISSION

 

これは全ての始まりに至る物語だ。
空戦魔導士育成機関《ミストガン》。その絶対的エース、カナタ・エイジが《黒の剣聖》だった頃、そして《裏切り者》と呼ばれるに至った前日譚エピソードを始め、空士たちの波乱万丈な活動を描く記録! ※電子限定での発売になります

《ファルシオン》の空戦魔導士本科1年に所属するノエルは、憧れの先輩を撃破した《黒の剣聖》から学びを得るために《ミストガン》への短期留学を決める。ところが、肝心の《黒の剣聖》──カナタ・エイジは思っていたのとは正反対の自由人で……!?

クロエルートもアリだったと思うんですよ(未練)

ドラマガの未収録短編7編にキャンペーン・限定版特典小説2編を加えた電子限定の短編集。本編の内容とは関係ないんですけど読まなくても問題ないけどノエルがミストガンに短期留学したときのエピソードを描いたキャンペーン限定300冊配布の「空戦0」、カナタが「裏切り者」と呼ばれることになったきっかけのエピソードを収録したアニメイト限定版冊子の「空戦0.5」、(入手難易度が)地獄の詰め合わせすぎませんか。これ地味にラノベあるあるな気がするけど、本編匂わせのあったエピソードやみんなが知りたいエピソード・ゼロを限定版特典や円盤小説でやらないでほしい。いや、最終的に収録されたから良いけどさぁ……。

アルコール入りのお菓子を食べて酔っ払ったクロエが大暴れして何故か学園浮遊都市に巣食う悪者を退治してしまう短編『微笑みのドランカー』がメッチャ好き。酔っ払って大胆になったクロエに対していつもは飄々としているカナタが年相応の男の子らしくドギマギしてしまう姿が微笑ましいし、なんだかんだでクロエに頭が上がらないところが可愛すぎる。というか最後でちょっぴり確信犯のクロエさん本当に可愛いじゃありませんか。やっぱ第三のエンディングとしてのクロエさんルートまだありますよ!!そしてクロエとカナタの話に的を絞るとめちゃくちゃ甘酸っぱい短編なのに、それ以外に目を向けると色々と大惨事なのが本当に笑える。

……からの、クロエがE601小隊の臨時教官に就任する『微笑みのデモンインストラクター』の破壊力がヤバい。柔らかな物腰しと穏やかな笑顔で人間の限界を超越した無茶な努力を課してくるの怖すぎるし相手のやり口は解っているのに次々とクロエの口車に乗せられて撃沈していくミソラ達は強く生きて欲しい。

更にもう一個S128小隊関係のネタで恐縮なんですが事務仕事を手伝ってもらえないロイドの不満が爆発してユーリとクロエに際どい衣装を着せたエッチなPV撮影が始まってしまう『悪賢いスマイルアベンジャー』もめちゃくちゃ好き。いや色々な意味で酷いんですけど、暴走したロイドを素の気遣いで収めて去っていくカナタがロイドの王子様すぎて……。

ちなみに密かに戦々恐々と(楽しみに)待ってた「最終決戦前にミストガンに戻ってきた時系列の短編」は、共にミストガンにやってきたブレアの妹・アリアの素行調査をする『姉妹のチェインオブボンズ』のみでした。ほっとしたようなその時系列の話ももう少し読みたかったような……。

最後に語られる、《はじまり》の物語

シリーズのオオトリを務めるのは、カナタが裏切り者と呼ばれるキッカケのエピソードを描く『決意したブラックトレイター』。この辺の話は本編でもミーナ先輩がざっくりと概要をかたっていましたが、実際に読むとなんとも言えない気持ちにさせられる物語でした。

ミストガンに帰還したカナタが目にしたものは、英雄として祭り上げられた自分を盲信して努力することを忘れて堕落する学生たちとカナタの挙げた成果を自分の手柄にしようとする上層部の姿。自分が信じる「空士の絆」が自分が原因で失われようとしていて、その満心が原因でこぼれ落ちる生命を目の当たりにして……自分が「戦えなくなった」ことを誰よりも知っているカナタは、そんな自分を裏切り者に仕立てて憎ませることで学生たちを奮起させようとする。目論見としては大成功だったし、カナタの理念のために自己を犠牲にできてしまう性格や本編の展開も踏まえてこうなるのは必然だったな…という展開ではあるのですが最後に苦いものが残ってしまう。そんなお話でした。

これ元々はアニメイト限定版に掲載された短編だったとのことなんですけど(※Twitter公式アカウント情報)、もしこれを完結前に読んでいたら本編の展開が進むに連れてじわじわと苦味が増す、しんどいお話だっただろうなあ。個人的には前巻で語られたカナタ・エイジの物語の結末を知った上で読めたのはちょうどよかったなという気がしていて、でもそれを踏まえても「かつてのカナタ」に対する誤解を解く機会が永久に失われてしまったことは(本人がそれで良いと思っていたとしても)本当に悔しいな。

電子限定の未収録短編集という形なのでこの形で最後の最後に「一番最初の話」が来るという流れは想定していなかったかもしれないけれど、全てが終わった後にこの短編を読めたのは個人的にはとても良かったなと思います。前巻の「未来」のお話と今回の「はじまり」のお話、繋がっていないようで繋がっている2つのエンデイングがとても良かったです。楽しかった!

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空戦魔導士候補生の教官14

 

空士たちのその後を描くアフターストーリー!
風邪を引き超絶頭脳派なミソラ。売れっ子作家になったユーリ。ペットコンテストに挑むレクティなどE601小隊の送る破天荒な日常! そして、カナタと、記憶を失ったミソラたちとの再会を描くアフターストーリー!

中間試験のウィングシューターにてチームワーク不足による全員脱落という前代未聞の成績を叩き出したE601小隊。なぜか最速記録にこだわるミソラ達に対し、カナタはとある「特訓」を提案する。それは、ミソラ・レクティ・リコの3人が女子寮で共同生活を送るというもので……!?

ミストガンでの愉快な日常短編を中心にした短編集第二弾

ミストガンでの愉快な日常を描いたドラマガ短編5編に描き下ろしの本編後日談を収録した短編集。7巻で短編集が出たときは本編も盛り上がっているタイミングで短編の出来も若干テンプレ感が強いというか……いまいち乗り切れないものがあったんですが、今回は本編完結後ということもあるし、短編そのものも面白くて楽しく読めました。あと描き下ろしの後日談が凄く良かった……。

カナタの特訓でミソラ達が同居生活を送る「本当のニューレコード」、本編でもちょくちょくやっていたカナタの突拍子もない特訓シリーズの1つではあるんですが、完結してから読むとあまりにもカナタ達が平穏な学園生活を送っていた時期が短すぎて「こういうちょっとした特訓話がもっと読みたかったんだよなあ〜〜」みたいな気持ちになる。あと、とにかく仲間を深く理解することが高度な小隊戦のチームワークに不可欠というカナタの教官としての理念がしっかり現れてるお話で良い。

今回の短編で特に好きだったのがカナタへの思いを綴ったユーリの日記が何故か商業出版されベストセラーになってしまう(犯人はロイド先輩)「赤裸々なアノニマス」。返送したユーリがサイン会の会場に向かったら恋愛小説など興味ないといっていたはずのE601小隊の面々が次々とサインを求めてきて……という展開がベタといえばベタなんだけどめちゃくちゃ面白かった。あとレクティのペット・ピヨちゃん(※怪鳥のヒナ)とコンテストに参加する「仲良し揃いのペットコンテスト」、怪鳥ピヨちゃんのトンチキムーブをレクティのピュアっぷりでゴリ押ししていくスタイルが以前の短編よりも更に洗練されていてひたすらズルい。リコの母親がミストガンを訪れてリコが借りてきた猫状態になる「恐怖のヴィズィティングデイ」もいつもと違い余裕のないリコの姿が見れて面白かった。ただ、風邪引いたミソラがめちゃくちゃ有能な別人格になってしまう短編はちょっとオチのミソラが可哀想すぎて……オチにもう一捻りというか本来のミソラへのフォローが欲しかったな……。

5編とも《ベベル》に渡る前の時間軸のお話で、本編終盤でめちゃくちゃ匂わされてた空戦舞踏祭〜最終決戦までの「空白の2ヶ月」のエピソードがまったく入って無いのが少し不思議だったんですが、最終巻(※ドラマガ短編連載の未収録分をまとめた電子書籍)が相当ボリュームありそうなのでこちらかな?楽しみです。

「教官」からの卒業、「教え子」からの卒業

そして本編完結後、ミストガンで再会したカナタとミソラたちのエピソードを描いた描き下ろしの終章「始まりのミートアゲイン」。カナタが改めて教官としてミソラ達と歩んでいく物語──だと思っていたんですが、むしろそれぞれが「E601小隊の教官」「カナタの教え子」というかつての立場から「卒業」して、今度は同じ空士として隣に並んで新たな未来を歩んでいくためのケジメの物語であると感じました。

カナタにとってはあまりにもコレまで通り、ミソラ達に取っては妙に馴れ馴れしい編入生(カナタ)の言動に困惑しながらも何故かそれが当たり前のようにも覚えて……そんなちぐはぐなやりとりに一抹の寂しさを感じながらも、記憶が無くても改めて関係を築いていけることにホッとしました。そして、クライマックスである601小隊(現在はCランク)とカナタが集めたドリームチームのバトルがめちゃくちゃ良かった!!本来の魔力を取り戻したカナタと大きく成長したミソラ達が何の禍根も制約もなくこれまでの鬱憤を晴らすように手加減なしでぶつかり合う姿が見ていて気持ち良いし、なによりめちゃくちゃ楽しそうに全力で戦うカナタに胸が熱くなる。そういわれてみるとカナタ、本編前半はずっと呪力を得たことによるパワーダウンを受けていて、それを克服して冥力を手に入れた後は力が大きすぎてうかつに全力出せなかったり、終盤は絶力の代償もあったからますます全力を出すわけには行かず……作中最初から最後までずっとデバフかかってるようなもんだったんだよな。そりゃあ教え子たちの前で最後に一回ちゃんとした「全力」出しておかなきゃってなる。本当に言葉にするのが難しいんですが、13巻を読んで感じた寂しさとか消化不良感・カナタやミソラ達の感じていた心残りが全て昇華されるような展開で……えぇ読者の私も成仏しましたとも……。

ミソラたちの中からかつてのカナタと過ごした記憶は永久に失われてしまったけど、カナタがミソラ達の中に残せた物も沢山あった。忘却という事実を変えるのではなくただ受け入れて、改めて出会い直したミソラ達とカナタがこれまで築き上げた物語の「先」を歩んでいくという結末が、どうしようもなくこの作品らしくて最高に良かったです。

真ヒロインが誰か問題については改めて本編の歩んだ道のりを思い返すと本当に平和に学園バトルラブコメしてた時期が短すぎて、これはまあ延長戦になるのも納得だなあと思ったんですが、後書きを読むと結構ギリギリまでユーリ先輩ルートで確定してたっぽくて本当に最後の最後で両手に花エンドに変わってよかったねミソラ……。それはそれとして敢えてクロエルートにいくのも悪くはないと思いますがどうですか。

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空戦魔導士候補生の教官13

 

人類の希望カナタVS魔甲蟲の王ゼス。世界を賭けた最終決戦……!
ついに最終決戦を迎えるカナタと魔甲蟲の王ゼス。開放すれば、皆の記憶から存在を抹消されてしまう《絶力》。人類の未来を護るため、カナタは全てを捨てる決断を下し、いま禁断のチカラを開放する――!!

仲間達の犠牲と協力を受けながら、ゼスが護る原初の魔甲蟲《ゲート》のもとにたどり着いたカナタ。ゼスを倒すにはカナタが持つ《絶力》を全開に使って戦う必要があるが、その力は開放するとカナタの記憶が周囲の人間たちの中から消えていってしまう諸刃の剣。何度も使える物ではないためできるだけ力を温存しながら戦っていくが、戦況は混迷を極めて……。

悲しかったけど最高にアツい、最高のラストバトルだった

シリーズ本編完結巻。いや、面白かった……最高に面白かったけど最高にしんどかった……。少しでもカナタの負担を減らそうと人工空島落としを決行するクロエ達、叶わない強敵を前にしてボロボロになりながらカナタのもとに駆けつけようとするユーリ。その思いも虚しく戦況は膠着し、少しずつカナタの存在が遠くなっていく。戦況が少しでもよくなるとすぐにそれ以上の悪い状況に陥ってしまうのは本当になぜなのか。ゼスの側近・キルスティのしつこさがヤバい。というかしょっぱなからプロローグで戦いの結末はうっすらと示唆されていて、その通りに傾いていく戦況がとにかくもどかしかった。

そんな中、耐えきれなくなったユーリがミソラ達に事情を話してしまって。前巻からずっと「ミソラたちにもちゃんと教えてあげて!!」と思っていたのは事実なのですが最終決戦の一番ひどい状況で伝えるのは逆効果になるのでは…!?と心配したのですが、ミソラ達はむしろ逆にそれまでよりも力強く、カナタのもとに向かうために前を向いて立ち上がって。結局5人の力だけでなんとかなったわけではないのですが、格上の相手を翻弄して最後まで諦めないその姿は文句なしに「カナタの教え子」の名にふさわしい活躍だったと思うし、カナタやユーリが思うより、読者の私達が思うよりもずっと強く成長していたんだなと思うと胸が熱くなりました。そしてなにより、ミストガンではただひとりカナタに本当の思いを伝えられないまま別れてしまったミソラがカナタに自分の想いを伝える機会を得ることが出来たことが、本当に良かった!

激しい戦闘の連続で今にも力尽きそうになっていたカナタが駆けつけてきた教え子達の姿を見て、最後の勇気を貰って……その強い思いと戦う姿はラスボスであるゼスの心すらも動かしていく。最後の鍵になるのが《絶力》なんかではなくて、E601小隊の面々を本気で指導し続けたからこそ手にしていた技の数々……というの本当に熱いし、カナタが使う戦技の意味をもう理解することができないE601小隊の面々の戸惑う姿がどうしようもなく悲しかった。沢山の人が犠牲になって、そして更に2つの大きな中身の分からない喪失を得て、完璧な勝利などとは言いたくないような少し物悲しい結末だったけれど、それはそれとしてほぼ最良の結果を掴み取ることが出来たんじゃないかなと思いました。本当にアツくて、涙なしには見られない最終決戦で良かったです。

そこからの、たとえ様々なものが失われても生きてさえいれば何度でもやり直せる……といわんばかりの、そして決して全てゼロからやり直すわけではないと希望の持てるエピローグがまたとてもよかった。いやしかしあの記憶忘却現象って実際、最終決戦中に相手の名前が聞き取れなかったり名前書いたのにその部分だけなぜか読めなくなったりみたいな超常現象的なアレがあったとおもうんですけどその辺って全部落ち着いた後に再会した場合どういう扱いになるんですかね?いつまでも何故か名前覚えられないとかそういう弊害あったりしない!?

次巻で後日談が入るみたいだからそっちを読めばわかるかな。楽しみです。

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空戦魔導士候補生の教官12

 

カナタの隣を飛べるのは――? ミソラとユーリ、本気の勝負!!
人類の切り札となったカナタと離れ、最終決戦に臨むことになったミソラたち。しかしミソラの脳裏にはユーリとカナタの抱き合う姿が焼き付いていて――。「ユーリさん、あたしと本気の真剣勝負してもらえませんか?」

人類と魔甲蟲の最終決戦がはじまった。カナタと離れて後方の補給部隊に配属されたE601小隊の面々だが来るべき《崩力》の持ち主との戦いに備えて準備を進めていく。どころが、ユーリの調子が少しおかしくて……ミストガンを立つ前、カナタとユーリが抱き合う場面を目撃したミソラは複雑な思いを抱えながら小隊長としてユーリと対峙することに。一方、最前線で特務部隊と共に人類の切り札として行動するカナタは特務部隊の面々から不評を買っており……。

仲間たちがそれぞれの場所で奮闘する、最終決戦の前哨戦!

いよいよはじまった最終決戦。それぞれの場所で行われる戦いがアツく、合間合間に挿入される別離の気配がとにかくしんどかった……んですが、いやコレ本当にカナタの事情、ミソラ達にも話してやってくださいよぉ〜!!ことある毎に未来の別離を匂わせてくるのがやるせない。2ヶ月もあったわけだし今のミソラ達ならそれを受け止めた上で立ち上がるだけの心の強さを得ていたと思うんだけどな。最終決戦に連れて行きたくないならそこで心を折ってしまっても良かったと思うんですが、やっぱなんだかんだでその辺はカナタの未練なんだろうなあ。カナタの事情をひとりで抱えてるユーリがしんどすぎるし、何も知らずに「この戦いが終わったら」の話をするミソラ達の姿に更にしんどくなってしまった。

空戦舞踏祭が終わるまでずっと空戦魔導士候補生達に焦点が当たってきていてこの世界の大人はどうなっているんだ?というのが若干の疑問だったのですが、今回はそんな大人達の活躍が印象的でした。特にカナタと一緒に行動することになった特務隊の面々、そしてカナタの一番近くで絡んでくる《コウライ》の生き残り・マオがとてもいいキャラしてた。(コウライは候補生のフリをした教皇直属の舞台だったと思うので、多分大人の空士だよね……?)

ゼオに仲間を全員殺されてただひとり生き残ったマオが最初は非協力的なカナタの姿に憤り、カナタの抱える事情の一端を垣間見てからは少しずつ親身になってくれて……最後には人類の世界を護るため、カナタをゲートに到達させるために自分の身を犠牲にしてでも道を作ってくれる。ずっと「教官」として教え導く立場であったカナタが大人の空士たちに導かれて最終決戦後に辿り着く姿がアツかった。本当に出番は少なかったんですが、とても印象的なキャラクターでした。

そして艱難辛苦を乗り越えてたどり着いた、この世界に「魔甲蟲」を生み出し続ける原初の存在《ゲート》。カナタとアンネローゼの持つ《絶力》でしか対抗出来ないはずのそれに対してカナタが打ち出した奇策は通用するのか。いよいよ物語も次巻完結でどうなってしまうのか……本当に楽しみです!!(少しでも、少しでも救いがありますように!!)

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