“向坂 氷緒” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

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384,403km あなたを月にさらったら

 

美由紀は幼稚園の頃に同じ組だった理世にずっと片思い中。私立小学校に進んだ理世と公立の学校に進んだ美由紀は離れ離れになり、月と地球にいるようなさみしさを感じていた。そんな彼女の念願が叶って理世の通う私立女子高に進学するが、理世はとある先輩の「お気に入り」になっていて…!?

ティアラ文庫、創刊ラインナップ以来のジャンル:「百合」。みりおんぐらむさんの感想がきっかけで手にとりました。主人公が、幼稚園児の頃から好きだった女の子を今度こそモノにするため、エスカレーター式のお嬢様学校に進学する…というお話。

主人公のキャラが楽しすぎて、最初から最後までニヤニヤが止まらなかった!これまで読んだティアラ文庫のラインナップの中でも最高に楽しめたかも。本人はあくまで「策士」のつもりでいるんだけど、考えていることがすぐに顔に出てしまったり、大事なところであっさり計略が破たんして茫然としたり……という壮絶なうかつな子っぷりが微笑ましい。「コードギアス」のルルーシュの女の子版、という言葉が脳裏をよぎったとかよぎらないとか。

また、美由紀の恋人である理世が非常に良い性格してる。おっとりした天然娘かと思わせておいて、予想外に客観的な視点を持っている、作中で何度も表現される通り「猫みたいな」女の子。彼女と美由紀が結ばれた後は理世の視点からも物語が語られるのですが、しょうもない計略を巡らせてはすっ転ぶ美由紀の姿と、そんな彼女をふりまわす天然小悪魔っぷりに笑いが止まりませんでした。

唯一、残念なのはティアラ文庫では定番の事ながらかませ犬ポジションの押しが不自然に弱い事。
特に恋敵であるまりあ先輩にはもうちょっと頑張ってほしかったな。良いキャラだったのに。
美由紀と理世が結ばれたとたんに完全に出番がなくなるのは正直どうかと思う。

あと、
理世×美由紀(with酒)を、どうしてカットしたし
せっかくエロありレーベルなんだから、そこはしっかり収録すべきだっただろおおおおお!


このラノベの女女間の巨大/複雑感情が好きだ!

同性間のクソデカ感情の話が好きだ。普段は男男間のクソデカ感情をこよなく愛していますが性別は問わない女女もやぶさかではない!という気持ちで前から以前作ったまとめの女性バージョンをやりたいなと思っていたんですが、最近「悪役令嬢の中の人」がバズったりしてちょくちょくその手の話題を見るので今しかない!!と自分の好きな作品を簡単なジャンル分けしつつまとめました。

↓あわせてどうぞ↓

タイトル通りの記事です。 このラノベの男同士のクソデカ感情いいよね!!というタイトルを独断と偏見で25タイトル紹介します。長年まとめ記事作るよ作るよって言い続けて気がついたら...

悪役令嬢・悪女

まきぶろ「悪役令嬢の中の人」→感想
…わたくしはただ、エミならしていただろうことをやっただけよ。
推しだった悪役令嬢レミリアに憑依転生したエミと、彼女の憑依体験によって愛を知ったレミリア。エミの持っていた異世界の知識を得たレミリアが本質・悪のまま、「エミのレミリア」として徹底した善性を演じながら復讐を完遂していく展開が良かった。定期的にレミリアが見せるエミへの執着、彼女以外の登場人物への酷薄なコメントがたまりません!
永瀬 さらさ「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」→感想
引き抜け。自分はプレイヤーだ。アイリーンを、自分が選んだ主人公を勝たせる、プレイヤーなのだ。
前世の記憶を取り戻し破滅回避を目指す悪役令嬢・アイリーンと、遅れて記憶を取り戻したヒロイン・リリア。記憶を取り戻してからはあくまで「ゲームプレイヤー」としての立場を貫くリリアが同じ転生者であるアイリーンへ向ける執着、悪役令嬢よりもずっと「悪役」らしく振る舞う彼女がアイリーンの生き様に触れ、真実の愛に出会って「ヒロイン」に戻っていく姿が印象的でした。いや悪のヒロイン・リリア様ほんと最高なんだ……。
中村 颯希「ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜」→感想
──あなた様こそが、わたくしの、ほうき星なのです。
病弱なこと以外は完璧な雛女・玲琳と彼女を妬む嫌われ者の鼠姫・慧月。呪術によって入れ替わってしまったふたりが陰謀だらけの雛宮で様々な事件に立ち向かっていく物語。一応ヒーロー的な存在はいるけど、本質は女女のバディ物なんだよなあ。真逆のふたりがお互いの持っていない部分に憧れ合う展開が大変楽しく、徐々に明かされていく玲琳の複雑な内面が印象的でした。

親友・ライバル・相棒

うえお 久光「紫色のクオリア」→感想
ただし、あたしは決して、ゆかりを忘れられない──だから。こんな世界は、必要ない──
自分以外の人間がロボットに見える少女・毬井ゆかりと普通の女子高生・波濤マナブ。過酷な運命に翻弄されるゆかりを救うため、彼女から与えられた異能を駆使してマナブが永劫の時を駆け抜けるすこし不思議な物語。前半のゆるいやりとりからハードな時空SFになる展開がたまらなく面白い、ゼロ年代の大傑作なので未読の人はみんな読んで欲しい。あとコミカライズが最高です。
二月 公「声優ラジオのウラオモテ」→感想
忘れてないでしょうね、歌種やすみ。あなたのライバルは、夕暮夕陽だってことを。
デビュー3年目で声優としては曲がり角の「歌種やすみ」と新人実力派声優・「夕暮夕陽」。実はクラスメイトだったふたりがお互いのない部分に憧れながら最強最大のライバルとして実力を競い合う物語。主役二人のライバル関係がとにかく心地よく、周囲の力を借りながら成長していくやすみとやすみからの憧憬に応えるために独りで抗う夕陽という関係性も良かった!
谷尾 銀「ゆるコワ!〜無敵のJKが心霊スポットに凸しまくる〜」→感想
彼女と一緒ならば、何だって楽しい。退屈ですら楽しいのだ。
元柔道部の女子高生・桜井梨沙と悪魔的頭脳を持つ茅野循の女子高生コンビが怪異やヒトコワ案件に自ら飛び込んでいくホラー小説。循が時折覗かせる梨沙へのわかりにくい好意と執念、その好意を全て理解した上で彼女との関係を楽しんでいる梨沙という関係性が良かった。「黒津神社」の後味の悪さが最高に好き!!
橘 公司(Speakeasy)「いつか世界を救うために -クオリディア・コード-」→感想
そう。ほたるは夢の中でずっと──舞姫に手を伸ばし続けていたのだ。
天河舞姫と凛堂ほたるの過去の「約束」と「再会」の物語。最強のガワの中に年齢相応の脆さを隠し持つ舞姫と彼女のための「剣」としての在り方を貫くほたるという関係性が大変良かったのでアニメも合わせて観てほしい。なお、この物語にネームド男性キャラは登場しないのでそこを頭に入れて読んでください。ほたると舞姫の幼馴染百合も良かったけど、私は利害関係からはじまる真里香と來栖の百合が好きです。

ジャンル越境(文芸より)作品

新井 素子「あなたにここにいて欲しい」
あなたにここにいて欲しかった。欲しかった。すでに過去形。
少し不思議な能力を持つ祥子といつも一緒だった幼馴染の真美。祥子のことなら何でもわかっていると思っていたのに、祥子は自分と同じ異能を持つ女性と出会ってから様子がおかしくなって……共依存だったふたりがお互いから脱却して新たな関係性を築いていく物語で、本音をぶつけ合うクライマックスが最高に好き。
桜庭 一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet」
あたしは藻屑にはまっていた。かわいそうで、苛立たしくて、きれいで、汚くて……。
田舎で理不尽さに抗う少女・山田なぎさと都会から転校してきた不思議な少女海野藻屑。未だ幼い少女ふたりが織りなす現実からの逃避行劇。『砂糖菓子の弾丸』という言葉の通りのふわふわと甘ったる藻屑とのやりとりと、戻ってきたなぎさを迎え入れる少しだけ優しくなった世界の姿が印象的でした。ミステリー文庫時代のイラストの表紙好きだったんだけどなくなっちゃったんだよな……。

百合・恋愛関係

七斗 七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」→感想
「好きになりそうはもう好きなんよ!手遅れなんよ!好きなら私のこと落としに来いよ!」
下ネタ担当の2期生・聖様を中心にした物語がとても良かった。女性だけのVtuber企業という閉じた虚構の世界を舞台にした物語の中で性的マイノリティの話に触れてくるの凄く印象的だったし、コンプレックスを克服し想い人と相思相愛になった聖様がただのバカップルになるの大分面白かった。他にも様々な形の女同士の関係が描かれているのでそういうのが好きな人にもおすすめ!
向坂 氷緒「384,403km あなたを月にさらったら」→感想
四月までの私は、月の海にひとり。理世のいる地球に焦がれて、いつもひとりきりで宇宙を見上げていた。「……地球って、すごい」
最後に、TLレーベルから本番ありの百合作品を。かつて愛した幼馴染の女の子を追いかけて女子高に入学したら、彼女は破廉恥な噂のある「魔女先輩」の「お気に入り」になっていて……というお話。自分をクールだと思っているけど色々と抜けてる主人公が状況に翻弄される姿が楽しく、そんな彼女を小悪魔のように翻弄する幼馴染とのやりとりが大変可愛い、エッチな百合作品でした。