同盟国に行く予定だった天才少女の姉・グリンダが失踪。彼女の双子の弟のシャールが身代わりになることになってしまう。ドレス姿で王様の子供達の家庭教師をさせられることになったけど、子供達は一癖も二癖もある面々で……!?
あらすじを見ると女装物っぽい感じだったけど、女装物というよりも入れ替わり物として面白かったー。天才の姉を持つ平凡な弟の苦悩とか、男だとバレそうになるハプニングが満載でとても楽しい。しかも、本人は一生懸命バレないように努力したりして気を揉んでいるというのに、殆どの人たちは“彼女”の行動を勝手に良い方に良い方にと“解釈”してしまうので、噂と誤解がどんどんあらぬほうに一人歩きしていく展開が面白かった。姉のような天才を理解できないと考える一方、「彼女が居ればなんとかなる」みたいな、どうしようもなく彼女の存在に依存しているシャールの弟ぶりも可愛かったです。
個性豊かな王様の子供達や国の人たちに囲まれて、姉の戻りを待ちながらなんとかやっていく“彼女”なんだけど……一体何本のフラグを乱立させてるんですかこのフラグ建築士!!敵味方・性別すらも関係なくどんどんフラグが立ってしまう終盤の展開が面白すぎて!まだまだ入れ替わりは続きそうな気配ですが色々な意味でこれはどうなってしまうのか楽しみです。
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“夕顔” ヒカルが地球にいたころ……(2)
是光が頼まれたのは、かつてヒカルと心を通わせた引きこもり少女・夕雨との『約束を果たす』ことだった。ところが、その約束の内容が判然としない。ヒカルも教えてくれず、困っているところになんだか話がややこしくなってきて……というお話。
是光のフラグ建築力が順調すぎる。このままだと平均で1巻1人ずつフラグを立てていく感じになってしまうがよろしいのか!!今回の夕雨はともかくとして、知らないところでフラグを建築して一切気づいてない是光が罪作りすぎて、是光の反応に一喜一憂する式部さんが可愛すぎてつらい。
日陰で傷みを解り合おうとするヒカルと彼女と似たような傷みを持ちながらも日向へ連れ出そうとする是光。全く対照的な二人に夕雨が惹かれていく姿が甘酸っぱく、彼女に関わった人間達が少しずつすれ違ってしまった結果ともいえる真実はせつなかった。正直今回も式部さん可愛すぎたので是光の初恋にかんしては「なん……だと…!?」となってしまった自分がいるけど。
ヒカルの死の真相といい、後ろに色々と黒いものが見え隠れしていてそっちが明かされていくのも楽しみ。
"葵" ヒカルが地球にいたころ……(1)
気はいい奴だけどとにかく目つきや表情がきついせいでヤンキー呼ばわりされたり噂に尾ひれがつきまくって皆に敬遠されている是光が、学園のイケメン皇子の幽霊になつかれてしまい、彼の“心残り”を晴らすために行動することになるお話。
それぞれの理由から友人関係に恵まれず、孤独を感じていた是光とヒカルが、だんだんとかけがえのない「親友」になっていく姿がたまりませんでした!!上手く笑えない不器用ヒーローと、上手く泣けないイケメン皇子ってもうその組み合わせだけで萌えるんですけど!!それだけでなく、ヒカルが女の子にだらしなくなってしまった理由とか、ヒカルが是光に声をかけた理由とか、是光の字が上手い理由とか是光が謝られることが苦手な理由とか細かいところでジワジワツボを刺激してくる。凄くジワジワくる。
男子二人のやりとりだけでもうご飯おかわりいけるんですけど、女子がまた物凄く可愛い。クールビューティなツン女子だと思われていた式部さんの意外な一面が暴露されるところからどんどんデレが入ってくる流れとか本当に可愛すぎて、困る。葵がかたくなに閉ざしていた心を少しずつ溶かしていくのもよかった。
ヒカルが死んだ理由や彼を取り巻く人間関係など今後に続くような謎も多くあって、続きが楽しみでしょうがないです。
“文学少女”と恋する挿話集2
[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂 明るくてちょっぴりお節介で早とちりで下の名前を呼ばれるのが大苦手な女子高生・森ちゃん。彼女はいつもちょっと不機嫌そうな顔をしている図書委員の琴吹ななせとひょんなことから友人になるが…!? |
反町くんと森ちゃんの初々しいカップルが様々なアクシデントやらなにやらに邪魔されて次の一歩を踏み出せない様子も非常に可愛らしいのですが、森ちゃん&反町くんの視点から、そして自身の視点から語られるななせの気持ちがものすごいあまずっぱくて、同時に物語の結末を知っているから切なくなってくる。敢えて本にまとまるまで読まないでおいたけど、これはむしろ本編最終巻を読む前と読んだあとで2回読むべきだったなあ。「ななせの恋日記」だけはリアルタイムで読んでゴロゴロした記憶があるのですが……普段のツンツン発言と、メールの時のキャピキャピキャラとのギャップが激しくて可愛いよ、ななせ!!!
ななせも森ちゃんも可愛いんだけど、とにかく反町くんの行動が楽しすぎて目が離せませんでした。森ちゃんとの進展に一喜一憂する姿も微笑ましいのですが、遠子先輩に本を薦められてなんだかんだいいながら読んでその言葉が頭から離れなくなってしまう姿にニヤニヤが止まらない。特に「愛を叫ぶ詩人(ハイネ)」で最初はイヤイヤだったのに、段々面白くなってしまって最後には大騒ぎしながら本を読んでいくという描写が本当に楽しそうで、読んでるこっちまでにやにやしてた。
ななせのおせっかいばかり焼いている森ちゃんにないがしろにされまくりな反町くんですが、なんだかんだ言いながらも森ちゃんと同じくらいななせの事を心配している姿にキュンとなった。特に、心葉にフられたときの反町の言動は反則級だと思う。なんだこいつ……いい男すぎるだろう…!!正直私がななせなら、心葉なんかほっといてホレてしまいそうです。
しかし、書きおろしの「ななせの恋日記 特別編」は酷いな本当に。コノハが女泣かせすぎて酷いな!!!な、なんだこの、普段のヘタレっぷりから考えると嘘のような、キザでかっこいいコノハくん…ふざけてるの……これでななせが正ヒロインじゃないとか、ほんと酷い。ななせじゃなくてもうっかり泣く。
“文学少女”見習いの、初戀。
[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂 中学を卒業し4月から通う聖条学園にふらりと足を運んだ日坂菜乃。彼女は校庭で一人、誰も居ない正門に向かって寂しそうな声を上げる一人の少年の姿を偶然目にし、恋に落ちる。高校に入学した菜乃はその先輩を追いかけて文芸部に入部するが、その先輩—井上心葉先輩には忘れられない女性が居て… |
遠子先輩の文学薀蓄のない“文学少女”シリーズなんて…!!と思ったのですが、巧みに各キャラクター達の立ち位置を入れ替えて、これまでの良い部分を殆ど引き継いだ上で新しい物語が展開されていくのが嬉しかった。ちょっとだけ新しい文芸部の雰囲気や、なんだかんだと変わらないレギュラーメンバーの姿にニヤニヤしました。つたないながらも破天荒な三題話を作ったり、遠子先輩とは一味違う、彼女自身の感覚で読んだ本の“味”を表現しようとする菜乃に対して、すっかりつれない態度の心葉が可愛らしい。最初の短編ではやたらと笑顔が爽やかな先輩になってしまっていてびっくりしましたが、すぐにいつも通りのツンデレコノハちゃんになってくれて安心した!!!
初代“文学少女”から物語の探偵役を引き継いだもののまだまだ未熟な部分も多い心葉の推理を、そこを直感型な菜乃の“想像”が補っていくという構図が、これまでの“文学少女”にはない部分で面白かったです。遠子先輩とはまるで違うのに、どこか彼女と同じ雰囲気を持つ菜乃の姿を見ていると、「頑張れ!」と素直に応援してあげたくなってきます。まあ心葉くんは遠子先輩の嫁だけど!(※違います)
「もうちょっとだけ続きます」という言葉通り、そんなに長く続くことなく終わるのかもしれませんが、新しい立ち位置や新しいキャラクターたちがおりなす物語の数々がとても楽しみ。次巻では今回出てこなかった
しかし、物語本編も間違いなく、文句なしに面白かったのですが正直、最後の最後で美羽様に全て持っていかれた気がしてならない。いつのまにかななせとメル友になってる美羽様!心葉君の所有欲と嫉妬心丸出しな美羽様!!遠子先輩をめっちゃライバル視してる美羽様!!!芥川君に不意打ちくらう美羽様!!!!(※超重要ポイント)
“文学少女”と恋する挿話集 1 / “文学少女”の追想画廊
[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂 柔道部主将の牛園たくみが恋したのは、文芸部に所属する可憐な“文学少女”天野遠子だった。しかし彼女は近頃、生意気な1年生にご執心の様子で……そんな彼の元に、思わぬところから救いの手が!?“文学少女”天野遠子と彼女を取り巻く人々が織りなす短編集第一弾。 |
「FBオンライン」で掲載されていた短編と書き下ろしを中心にした、“文学少女”シリーズの短編集第1弾。
遠子先輩の文学語りがメインな「今日のおやつ」のほか、日常のなんてことない騒動を中心に描かれている短編が多いので「美味しそうな」物語を思う存分堪能しました。本編終盤のシリアスな物語展開も秀逸だったけど、やっぱり美味しそうに「ごはん」を平らげる遠子先輩の蘊蓄は格別なものがあるよね!!
のーみそ筋肉な牛魔王こと牛園くんや、文芸部とひょんなことから『盟友』関係となったボート部の皆さんなど、短編にしか出てこないキャラクター達もコミカルに動き回って、彼らや遠子先輩に振り回されるコノハの姿にニヤニヤせざるをえません。しかし、「革命する労働者」のコノハくんは最高に“受”だよねー。遠子先輩の「裂けちゃって大変」にはおもわず緑茶噴いた。コラボでチラリと披露された遠子先輩の腐女子な一面は「おやつ」の方でもっと何回か披露されていた気がするので、次巻に超期待です。
その他、姫倉さんと遠子先輩の出会いや流人くんが巻き起こす大騒動を描いた短編など、サブキャラクターに視点を当てた短編がいくつか収録されていますが、一番印象に残ったのはやはり美羽と芥川のその後を描く「無口な王子と歩き下手の人魚」。不器用な芥川君と、ツンデレ全開な美羽のやりとりが可愛いのなんの。決して甘いだけの短編ではないのですが、このシリーズらしいほろ苦さでとても良かったです。
【追想画廊】
竹岡さんのイラストに野村さんの文章と短編が添えられた、画集…というかファンブック。
アニメイトで買うと初回特典で野村さんの短編がもう1個読めます。「神に臨む?」で遠子先輩が心葉の為にシュークリームを作るお話で、流人くんの目線から描かれる恋する乙女な遠子先輩がたまりません。
本編を思い出しながらイラストと添えられた文章を追っていくと、本編を読んだ時の胸の痛さがよみがえってきます。イラストの雰囲気も文章もぴったりとマッチしていて、存分に堪能できました。しかし、書き下ろしイラストの美羽が素でコノハちゃんに見えた私はどうしたらいいんだろう……
掲載されている短編は本編終了後、大学に入った心葉のお話。離れて暮らす二人の話なのに、本編最大級のラブラブっぷりなのはどういうことか。「恋する挿話集1」の方に掲載されている、大学に進んだ遠子の物語「今日のおやつ 特別編」と合わせて読むとなんだか感慨深いものがありますね。
っていうかこの短編でのラストの心葉のセリフはなんかもう、殺し文句すぎてズルいよ!
これ先に読んでいたら「このラノ2009」は間違いなくコノハに投票してたのに!
コラボアンソロジー2 "文学少女"はガーゴイルとバカの階段を昇る
[著]野村 美月、井上堅二、田口 仙年堂、櫂末 高彰 [絵]葉賀 ユイ、竹岡 美穂、日向 悠二、甘福 あまね 文芸部の活動の一環としてやってきた図書館で、姫路瑞希と出会った遠子と心葉。以前から遠子と仲が良いらしい彼女だが、ちょっと元気がない。そんな瑞希を救うため、今"文学少女"が立ち上がる—!? |
もうなんていうか……冬コミへの燃料投下ありがとうございます(鼻息荒く)
「"文学少女"と乙女に集う召喚獣」(文学少女×バカテス)
以前から噂だけ聞いてずっと気になっていた短編を、遂に読む事が出来たよ…!!姫路さんの話を聞いて何故か雄二と明久がデキていると勘違いした遠子先輩が、雄二達F組の面々と召喚獣勝負をする話。
遠子先輩の文学で鍛えた腐女子フィルターSUGEEEEE!!!!!
雄二と明久のいつものドツキ合いを見てあっさり「デキている」と言い切る彼女が最高すぎます。すげえ、すげえよこの人。かなり序盤から明久総受説を推奨してきた私ですが、遠子先輩の雄二×明久表現に新次元を見た気がする。「情熱的な視線の絡み具合」「甘えるような濡れた声」……想像するとエロい、エロいよ雄二×明久!!もう私、バカテスまともに見られない!!(腐女子的な意味で)
野村美月先生御本人による、華麗なる「遠子壊し」っぷりが壮絶。このコラボの裏タイトルは「本当はエロい"文学少女"」でいいと思います。この人きっと、心葉の居ないところでBLとか官能小説とかガッツリ摂取してるに違いない……
初々しく可愛らしい明久×瑞希とか、分かり合うペッタンココンビとかにもニヤニヤでした。そして葉賀さんの心葉くん可愛いよ心葉くん。心葉くんの召喚獣には是非別の機会にちゃんとバトルして欲しいなあ。あの武器でどうやって戦うのか見て見たい。
「"文学少女"と殺された莫迦」(バカテス×文学少女)※濃厚腐要素注意な初読感想:前編/後編
先行掲載されていた書きおろしコラボ。明久の国語力に将来の不安を抱いた遠子と心葉が文月学園を訪れたら、何故か殺人事件(!?)が起きて…というお話。この小説の感想については初読時に腐女子日記の方で散々痛々しく語っているので省略。
とりあえずコノハちゃん可愛いよコノハちゃん。コノハには女装が似合うと常々思ってた!!井上先生ありがとうありがとうありがとう大事な事なので3回言いました!!あとがきでの野村先生のはしゃぎっぷりにはごっついシンパシーを覚えます。
「天栗浜のガーゴイル」(ガーゴイル×階段)
旅行先で階段部の面々と遭遇した双葉が階段部の活動に興味を抱き、飛び入りで幸宏と階段レースをすることになるお話。
はっちゃけ率激高いコラボ群の中では割と正統派な短編。双葉をただの小学生だとナメてたら持ち前の運動神経とガーゴイルのサポートもあってかなりいいところまで追い詰められて…階段の爽やかスポ魂青春コメディと吉永さん家?のほのぼの具合が良い具合にマッチして、普通に面白かったです。筋肉部に筋肉を讃えられてドン引きする双葉が可愛い。それにしてもガーゴイルはどんどん妙な部分で器用になっていく…。
個人的にはガーゴイルのコラボはもう1個くらい見たかった気がします。というかガーゴイルに文月学園に乱入してもらって、卑怯な戦術をかますF組の面々に鉄拳制裁しまくる展開が見たかった。次の機会があったら是非そんな感じで……ってガーゴイル完結したからもう無理かな。
「バカと階段と召喚獣」(階段×バカテス)
文月学園が外部向けに行った召喚獣お披露目イベントの話を聞いた階段部が準備中のイベント会場に乗り込んで明久達と召喚獣で階段勝負をするお話。
序盤、かなり雰囲気の違う文月学園一同に違和感感じてもにょもにょしてしまってたのですが、だんだん読んでるうちに話に引き込まれて多少の違いは気にならなくなってしまいました。とりあえず、普段以上にバカ&ドジ5倍増しな明久や、所構わず足を引っ張り合いまくりな悪友コンビにニヤニヤが止まらない。
それより何より秀吉×雄二はじまりすぎた!!!すげえ、櫂末版秀吉最強じゃね!?ただ役になりきっただけとは到底思えない妖艶腹黒オーラに噴いた。雄二がツンデレなのは激しく同意!!「これの秀吉もう全然ちげー!」「でもこれはこれでイイ!!!」と脳内テンションMAXでした。
そしてこの作品の「あとがき」の破壊力は異常。もはや素で漫才の領域。櫂末先生が雄二、井上先生が明久に見えました。そういう幻視をしました。ごめんなさい。すいません。
一つだけ残念だったのは、この短編のみ文中挿絵がなかった事かなあ…甘福さんはこの後の文学少女×階段コラボでも挿絵を担当されているので負担が大きかった事は確かですが、唯一の表紙絵もメインは階段キャラでバカテス側は秀吉の召喚獣だけ。バカテスファンとしてはちょっと物足りなかったです。ううっ、甘福さんのイラスト好きなので楽しみにしてたのになぁ…
「"文学少女"とやってきた走者」(文学少女×階段)
他高校との交換入部で階段部に体験入部した心葉と、文芸部に体験入部した幸宏の一週間のお話。書きおろし。
普通に爽やか熱血青春スポ魂モノになっていて、純粋に楽しめました。なんだかんだと文芸部に馴染んでしまって平和な日々を謳歌するものの、どこか物足りなさを感じる幸宏と、典型的な文化系で階段部にちっとも馴染めず階段レースのタイムも上がらず疎外感を感じるばかりの心葉の姿が対照的。そんな2人の鬱屈を吹き飛ばすような最後の2日間での先輩達の行動に胸が熱くなりました。そして何気にLOVEもあるよ!!
一応全作品読んだ事があるというのは大きかったですが、どれも良い具合に各作品の雰囲気が融合していてとても面白い短編集でした。こういう企画は他のレーベルではやってないと思うので、今後も是非続けて欲しいです。やはり読んでない作品とのコラボはなかなか手を出し辛いものがあるとおもうので敷居は高そうだけど…
“文学少女” と神に臨む作家 下
[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂 様々な人に追い詰められる中、ななせの「書かなくてもいい」という言葉に救われた心葉。しかし、それが許せない流人の「琴吹さんのこと、壊しちゃうかもしれませんよ」という言葉が心葉の不安をかきたてる。そして、ななせを大切にしたいと感じる一方で遠子の事を見捨てて置けない自分も自覚して… |
上巻から引き続き、ひたすら重い展開の連続で、読んでるこちらの心臓的にも気が気じゃなかったのですが、それまでの鬱屈とした展開があっただけに事件が解決に向かい始めてからが凄すぎて、ただただ次々に明かされていく真実に息を呑むばかり。上巻を読んで立てていた予想が殆どひっくり返されるような状態で、本当に凄かった。最強ヤンデレ決定戦も美羽→流人→回りまわって元祖“文学少女”シリーズが誇るヤンデレ・竹田さんが優勝カップを持っていくような状況(それ関係ない)いや、今回の彼女は変な意味で光輝いていたなぁ…そして流人、あれだけかっこよくひっぱっといて後半ヘタレすぎる…(笑)
全然関係ありませんが、丁度これ読んでる最中地元では記録的集中豪雨と酷い雷に見舞われており、この物語の序盤を読むにはあまりにも雰囲気ぴったりすぎる状況に陥ってました。このゴロゴロ言いっぷりはきっとヤンデレカップルの呪いに違いない。
一見無関係だとばかり思っていた1巻からの全てのエピソードが少しずつ小さな役割を果たしてこのラストへと繋がっていくという展開が非常に素晴らしかった。そして全てのエピソードを経て大きく成長した心葉が今まで探偵役を務めてきた“文学少女”に代わって、“文学少女”自身の事件を解決していくシーンでは胸が熱くなりました。
そして遂に迎える遠子先輩の卒業シーン。この作品を読み返す前に「月花に孕く水妖」のエピローグから「神に臨む作家(上)」までを再読したのですが、2回目に読んだ時に「水妖」で語られる“未来”の解釈について物凄く違和感を感じて「あれっ?」と思ったのですが……(具体的に言うとななせを思わせる表現を使っておきながら一度もこの女性に関する人物名が断固として明かされなかった辺り)
あああああこういう結末か……。
再読時に一瞬だけ脳裏をよぎった展開が割りと冗談になってなかったという…個人的には、私は元々こっちの展開支持派だったんで嬉しいことは嬉しいんだけど、どんでん返しすぎて素直に喜べないというか……とりあえずななせのけなげな一途っぷりに涙が止まらない……。心葉と付き合いだしてからはヒロイン的な守られポジションに立っていた彼女ですが、精神的に一番強かったのは彼女だったんじゃないかしら。エピローグでの言葉が胸に刺さる。
というか、唯一不満点を挙げるとすればこの卒業の部分だったりします。叶子にあんな言葉を突きつけた以上、心葉と遠子はどんな形であっても「狭き門」を通ってはいけないんじゃないかと思ったんです。お互いに暖かい時間を築きながら、お互いを支えあいながら作家として再生してほしかった…。(以上ネタバレ)それが心葉のために必要な行動だったとはいえ、なんかそこだけは少しだけ残念でした。
とはいえ、最後の最後まで予想を裏切られる展開の連続でありながらも、物語のおもしろさという点では最後まで期待を裏切られない名シリーズでした。素晴らしいエンディングを、本当にありがとうございます。
コラボアンソロ、竹岡さんのコノハちゃん楽しみですハァハァ
(意訳:あとがきが色々と台無し!)
“文学少女”と神に臨む作家 上
[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂 ななせと付き合い始めた心葉はそれなりに幸せな日々を送っていた。ところが、そんな二人の間を流人が裂こうと画策し始める。一方、かつての“井上ミウ”の担当編集をしていた男性も心葉に接触を図る。そんな最悪のタイミングで、遠子先輩から激しい“裏切り”の言葉を向けられ、愕然とする心葉に追い討ちをかけるように事態は動いていって… |
そうかぁ?シリーズ最強のヤンデレは流人くんだったのかー。
今まで文学少女界のヤンデレ代表だった朝倉美羽のとってきた行動が子供の悪戯に見えるほど本気で怖いよ本気の流人くん。心葉の行動を読んで常にタイミングバッチリに行動を仕掛けてくる流人くんの姿に、もうホラー的な恐ろしさすら感じる。更に“死にたがり”こと竹田さんがサポートに回って、なんというか最悪のコンビが結成されてしまいました。もうなんていうかあれですね、男のヤンデレって流行ってるんですか?(違う)
流人くんの手の上で思うがままに転がされ、みるみる追い詰められていく心葉が不憫でなりません。
遠子先輩の両親と、彼女を引き取った流人の母親・櫻井叶子の3人がかつてたどった道、そして叶子描く物語『背徳の門』、そして現在の心葉・ななせ・遠子の関係の奇妙な一致がとても不吉な何かを指し示しているようでなりません。物語は次回で完結・最終巻とのことで、「月花を孕く水妖」でのエピローグを信じれば…非常に重いラストが待っているようにも。少しでも3人が幸せになるような結末が訪れますように。
…それにしても、遠子先輩の「本を食べる」性質とか、流人くんの最後の爆弾発言とかって、実際のところどうなんでしょうね。本を食べる遠子先輩という設定からして、ある程度の不思議要素が世界設定に織り込まれているであろう事はなんとなく想像つくんですが…。
“文学少女”と月花を孕く水妖
[著]野村 美月 [絵]竹岡 美穂 夏休みに遠子先輩たっての頼みで、半ば強引に麻貴先輩の別荘につれて来られた心葉。ところが、彼らの前に八十年前に起きたという惨殺事件の影が忍び寄る。八十年前の事件との様々な符合を自ら仕組んだ麻貴先輩の思惑とは…? |
単なる番外編かと思いきや、最後で物凄い不意打ちを喰らわせられました。なんとなく序盤から普段と違ってどこか不安そうな遠子先輩の描写が大量に出てくると思ったら、こういう幕引きですか!一気にクライマックスとなるであろう「卒業編」が待ち遠しくなってしまいました。ていうか、これでななせエンドがほぼ確定となった訳ですが!大どんでん返しで遠子エンドをちょっぴり期待してたのに!
麻貴先輩の別荘を舞台に巻き起こる八十年前の惨劇の謎解きや、文学作品の薀蓄も勿論、いつもの通り魅力的ですが、今回はとにかく遠子スペシャルといっても過言ではありません。麻貴先輩やお手伝いの魚谷さんにヤキモチを焼く遠子先輩、不安げで儚い遠子先輩、そしていつもの通りの“文学少女”な遠子先輩……と、彼女の魅力が余すことなく描写されています。最近は琴吹さんがヒロイン扱いで遠子先輩の影が薄かったと言うのもあるけど、とにかく遠子先輩がめちゃくちゃ可愛い。ななせさんも可愛いんだけどやはり遠子先輩好きだ…!
ところで、ラストの麻貴先輩と○○○のやりとりは…意味に気が付いたら本当にニヤニヤが止まりませんでしたね。麻貴先輩、ななせさん以上のツンデレ娘だと見た!そんな二人に全く気づいてない、ウブな心葉がまた微笑ましい。
今回取り上げられた泉鏡花の作品の如く、夢のように美しく、そして夢の終わりの儚さを感じさせる番外編でした。読み終わった後、しばらく余韻に浸ってしまった程。もうとにかく卒業編が楽しみです。