“カット” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

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職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。

 

効率、出会い、トッププレイヤー争い、興味なし。 私はとにかく黙々と収拾、生産、販売作業ゲーがしたいのである。 ──そう思って、気ままにクラフトを楽しむVRMMO『きまくら。』で仕立屋になった少女・ビビア。推しキャラの服の作成やアイテム採集など、ゆるゆる服作りをエンジョイ中。図らずも革命イベントを発生させて一躍注目と賛否を集めると、お店は大繁盛&大炎上! まあ匿名世界だし、あんま気にしなくていっか、と叩いてくるアンチは全て無視、大荒れ掲示板も一切興味なし。だけど、作った服に特殊スキルが付与されるからか、注文は止まらない……。ただ楽しみたいだけの彼女は、やがて全プレーヤーを揺るがす存在となっていき──? 世知辛い世界をのんびり楽しみ尽くす、ほのぼのクラフトファンタジー!

クラフト要素目当てでVRMMO『きまくら。』をはじめたビビア。プレイヤーとの交流は殆どしないで、仕立て屋として洋服を作ったりNPCと交流する日々を続けていたがどうも周囲の様子がおかしい。どうやら彼女が偶然発生させてしまったイベントがゲーム世界前提を揺るがす重要イベントだったらしい。しかもこのMMORPG、ただのほのぼのクラフトゲーではないみたいで……!?

サバサバ女子、殺伐ネトゲで炎上しながら淡々と生きる

1巻読み終わるまでずっと動画配信モノだと勘違いしてました。この主人公がどんな流れで動画配信の道に!?ってずっと不思議に思ってたんだけど普通にそんな展開なかった。主人公がクラフト系のVRMMOしてる様子を淡々と(小説の地の文で)実況しているお話、といえばまぁ確かにそうなんだけど、配信モノの作品が増えてきた今このタイトルすこし紛らわしいなぁ……と思いつつ、「実況=動画配信ジャンル」という認識が自分の中で結構出来上がってしまっていることにも驚愕した。クラフトゲーやホラゲーの実況とか割と好きです。

ほのぼのクラフトゲーとは名ばかり、晒し上げ上等身内ノリ上等プライバシー皆無プレイヤー同士の競争要素ありという殺伐MMO『きまくら。』で淡々とクラフト要素を楽しんでいたところ、クラフト特化のプレイスタイルが福を呼び込んだのか様々な新要素を発見してしまう主人公のビビア。光速で特定されて炎上するも、全く気にせずにアンチとなんかうるせーやつは全員ブラックリストにぶちこんで淡々とクラフト&NPCとの交流を楽しむ……というサバサバっぷりが大変に良かった。NPC交流・クラフト要素に対する熱の入れように対してリアルプレイヤーに対する対応が塩すぎるの面白い。

主人公が新要素を発見しまくり、クラフトしたアイテムにスキル付けまくり……とゲーム内で無双してる要素にちゃんと理由があるのも良かった。服飾をやりたくてゲームを始めた彼女がゲームならではのショートカット系スキルを基本的に使わず、ひとつひとつ手作りで仕上げていったところそこにスキル付与の隠し要素が潜んでいたと。そりゃあ確かにゲーム慣れててゲームとしてクラフトを楽しむ層はやらないし見つけられないよなあ。おそらく、プレイヤー自身のデザインセンスの高さも関わってきている感じがするので誰でも出来るわけではないというのがまたエグい。彼女が発生させたシエルシャンタの親密度ストーリーだって完全にキャラクターへの愛情じゃなくてユーザーのデザインセンス次第じゃないですか。シエルシャンタ廃のゾエベルさんは強く生きて欲しい……。

しかし面白かったんだけど、色々と噛み合うまでが長かった。序盤はビビアが本当に淡々とクラフトゲーをやっているだけで、章間に挟まるユーザーチャットでのやりとりもある程度本編と繋がりが無いわけではないけどそんなに噛み合っておらず……中盤でビビアが「革命」イベントを発生させて炎上するまでは全体的に起伏の少ない状態が続くのでだいぶ掴みが弱い感じ。その代わりに、革命イベント発生後は一気にこれまで積み上げてきたユーザーチャットでの設定や会話が本編に生きてきて面白い。この辺の全体的な立ち上がりの遅さは良くも悪くもWeb小説ならではだなあ。

この手の、書籍化すると1巻の時点でストーリーの方向性が見えないまま終わる作品が多い感じなのもやや難で、というか1巻なのに地味に気になる終わり方するじゃないですか。リアルプレイヤーとの交流をサバサバとぶった切りすぎて、同じクラフトガチ勢であるキムチさんに怯えられてるの笑ったけど。発生させてしまったメインストーリーの展開は今後どうなっていくのか。色々不穏な要素も見え隠れするNPC交流の行方は、主人公はこのまま基本交流なしでサバサバやっていくのかそれともなんだかんだで交流が増えていくのか。「結社」とは一体………とりあえず、2巻でどうなっていくのか楽しみにしたいと思います。

それにしても、「治安の悪いネットコミュニティ」の描写がリアルすぎて地味に生々しいな。妹ちゃんの所属していたギルドの内輪もめの話も結構ネットあるある……だし、バレッタさんの初対面の相手にクレーム9:絶賛1のメッセージ投げて許されると思ってる感じとか、竹中さんの空気読めないオタクっぷりとか、『きまくら。』に「。」を付けないで発言すると自称警察が沸く流れとか。というか、この往年の匿名掲示板のようなノリのMMORPGにソシャゲもびっくりのランキング要素入れて札束でNPCの本妻争いさせるのエグいよ……。


小説 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(下)

   
原作
矢立肇・富野由悠季

大ヒット劇場アニメの正統ノベライズがここに!
TVシリーズの小説を手掛け、劇場本編の脚本にも参加する後藤リウによる正統ノベライズ! 小笠原智史が描く挿絵も、上巻より更に大ボリュームに! 小説ならではのエピソードや細やかな心情描写を堪能せよ!!

ファウンデーションが仕組んだ罠にハマり、彼らが率いるブラックナイツに敗れ……命からがらオーブのオノゴロ島に身を隠したキラ達。核攻撃を行った地球連邦国家への『報復』としてファウンデーションが持ち出してきたのは、なんと廃棄処分になったはずのレクイエムだった。彼らはコーディネイターの更に上位の存在「アコード」を名乗り、各国にデュランダル議長が推進しようとしたデスティニープランの施行を迫る。混乱に乗じて奪われたラクスを取り戻すため、そしてファウンデーションの暴走を止めるため、キラ達は再び宇宙に上がることを決意するが……!?

なるほど!分身ってそうやるのかぁーー!!(わからん)

「劇場版ガンダムSEED FREEDOM」の公式ノベライズ完結編。前巻に引き続き、本編の内容をなぞりつつわかりにくかった部分や心象描写を加えて本編の理解を更に深めることが出来る物語となっていて良かったです!あとがきで『フリーダム強奪事件』は続編として映像化する可能性があるので概要は秘密で……みたいな話がありましたが、映画大ヒットしたし実現するとよいですよね……とても見たい。

下巻で一番大きかった点というと、映画ではほぼバックグラウンドを語られなかったアウラ女帝からの視点があることかな。彼女が小さな身体になった理由、キラの父であるヒビキ博士との因縁。一貫してキラのことを「出来損ない」と呼んできた彼女だけど、あれ多分ヒビキ博士への敵愾心から来ていたと言うかそもそもキラとアコード達って理念からして全く別の存在なんだろうな。

アウラの歪んだ執着が、そして失敗を知らないアコード達の慢心が完璧とも思われた計画を次々に狂わせていく。計画の狂いを最後まで認められないオルフェ、ラクスが語る「愛」に憧れながらも道具として生きることをやめられなかったイングリッド、キラやアスランを倒すチャンスを与えられながらも刷り込まれた創造主への忠誠心に足元をとられてしまったシュラ、心が読めるが故にシンが戦場で見てきた地獄の一端と仲間たちの今際の際の叫びを受け止めきれなかったブラックナイツ。生まれたときからアウラの手で使命や運命に雁字搦めにされて、そこから抜け出すことができなかったアコード達の姿はどこか哀れですらありました。それはそれとしてまあ、やったことは最悪だし同情の余地はないしラクスにしろキラにしろ自身の全てを掛けて倒さなければならない理由があったんですけども。

クライマックスの戦闘シーンは劇場版だと割と勢いで見ている所が多かったしあのとき感じた圧倒的な勢いとかパワーは小説版にはどうしてもないんですが、文字で説明されることで初めて見えてくる情報もあって。様々な人物の視点がテンポ良く切り替わり戦場の様子を映し出していくのが大変楽しかったです。ラクスが予想以上にアコードとしての力を全開で使って戦ってるし、ミーアの今際の際の言葉ってずっとラクスに刺さったままだったんだなとか、キャットファイトのようなノリでいつのまにか本気のバトルに発展してたアグネスvsルナマリアとか、予想以上に生々しいカガリの妄想してそうなアスランさんとか。デスティニーの分身のところも謎粒子をばらまいてなんか分身してるってことがわかって一番謎のシーンの謎が解けて安心しま…………いややっぱり全然わからん。キラさんは基本コミュ障気味なので口では勝てないのでラクスさんに舌戦任せて自分はバトルに集中しててたまに合いの手入れてくるというラストバトル凄い理にかなってて良かったと思います。ところで敵も味方もミラージュコロイド便利に使いすぎじゃないですか!?それ禁止兵器扱いじゃなかったですっけ!?こいつは草葉の陰からニコルもニッコリだ!!

そしてエピローグで突然脱いだと噂のラクスとキラのシーン、長いこと立場に縛られて本当に手を取り合う事ができなかった二人が全てを脱ぎ捨てて手を取り合う場面として描かれていて賛否両論ありそうだけどとても良かったと思います。戦うことしかできないキラと強烈なカリスマで世界を導いてきたラクスがそれぞれの能力に見合った世界から離れる自由を持てることこそが、この物語の終着点なのだろうなと感じたし、何より政治に長けたラクスではなくカガリに政治を任せる理由を戦線離脱したキラの元友人・カズイの口から説明させる展開よかったよね。良い意味でキラとラクスの物語であった「ガンダムSEED」という物語の終着点を20年ぶりに見れたようなきがして、とても満足でした。とはいえ一線を退いたキラとラクスが周囲の空気読まずにイチャイチャしてるだけのお話とかも普通に見たいし、世界が危機になったらどうみてもバレバレな変装して介入してきてほしい感じある。ミスターブ◯ドーくらいバレバレなやつ頼みますよキラさん!!!ラクスさんもマスコミのカメラとか用意周到に壊して記録に残さないようにしながら堂々と演説しにきたりしてくれ。

個人的にエピローグはルナマリアにボコられたアグネスが追加されたシンルナいちゃいちゃカットのとばっちりで宇宙に放置されたことだけが不満です。劇場版ではちゃんとルナマリアが迎えに来るところまで入って完璧な運命最終回(スペシャルエディション版)のオマージュだったのにどうして運命最終回(テレビ放送版)のオマージュに退化させちゃうんですか!?その終わりかた、トラウマを刺激されるので好きじゃないなぁ!!


魔王の右腕になったので原作改悪します

木村
 

異世界転移して、大好きな魔王様をデッドエンドから救い(幸せにし)ます!
社畜OLの刈谷透が見つけた唯一のオアシス――漫画『ラピスラズリ・ワールド』の最推し《魔王》が死んだ。 絶望の中、ビルから落ちていく透。 しかし次に目を覚ますと、そこは魔王城の前だった!? 異世界転移した透はまさかの魔王に保護され、“トール”として仕えることに。 それならやることはひとつ!  「私が絶対魔王さんを幸せにしてみせます!」

主人公が「推しキャラ」である魔王さんにキュンキュンしてる時と、魔王さんを守るために奮闘している時のギャップがとても好み。主人公が元居た世界にも、魔王という存在にも明かされてない秘密がいろいろとありそうで先が気になる。それにしてもさすがに推し作品に「課金」できないとはいえ週刊誌を毎号1000冊購入(アンケ付き)は盛りすぎでは……リアルに時間足らないのでは……。

新鮮なオタクの叫びは健康に良い

ビルの上から突き落とされた社畜OL・刈谷透は、気が付くと重課金で推していた打ち切りマンガ「ラピスラズリ・ワールド」の世界に「落ちて」いた。最推しキャラであった魔王(最終回で勇者に殺され爆死する)に拾われ半ば強引に主従の契りを結んだ彼女は、前世での知識を駆使して原作漫画の展開を“改悪”し、魔王を幸せにしてみせると誓う。

意味ありげなSF&サスペンス風の導入から、いきなり落下中に「もうあと落ちて死ぬだけだから好きなことだけ考えるわ」ってアツい打ち切りマンガの布教が挿入されて噴いた。心を殺される社畜の日々の中で運命的な出会いをして沼に落ちるエピソードは一周回って感動的ですらあるし、打ち切りまでの重課金エピソードは色々ツッコミどころはありつつもオタクの馴れ初め系長文noteみたいな微笑ましさがあり、異世界に落ちて推しキャラであった魔王さんとリアルで出会い、彼と主従関係を結んでからも定期的に挟まれる魔王さんへの一連の推しコメントがツイッターに居る声がデカいオタク(※主語がデカい方ではなく、叫びがデカい方)そのものでニコニコしちゃう。毎号1000冊購入とか若干オタクのリアリティ的に気になるところはありましたが、魔王がちょっと萌えることするたびに逐一挟まれる「天使かな?」「魔王だが?」の掛け合いがテンポ良くて楽しかった。いやあ他人のオタクの叫びは健康に良いものですね!!

孤立していたふたりが心を寄せ合っていく

本来入ってこれないはずの居城に突然現れ、初対面からなぜか好感度MAXで、魔法で心を読んでも頭の悪い推し発言しかでてこない幼女(生前は24歳だったがこちらの世界に来て見た目が若返った)を不審に思いながらも、彼女の一途な「自分を幸せにしたい」という気持ちに心を溶かされていく魔王。一方、社畜OL時代に高い能力を持ちながらも周囲に認めてもらえず孤立していた透も、自分の行動が魔王に認められるたびに心に温かいものを宿し、二次元のキャラクターとしてではない魔王という人物自身に惹かれていく。不遇な扱いを受け「ひとり」で生きてきたふたりが少しずつ心を寄せ合っていく姿に胸が暖かくなりました。

魔王さんが普通に考えられているような悪い存在ではないことはしょっぱなの主人公の作品語りの時点で十分すぎるほどに語られるのですが、魔王と相対する勇者一行も普通に良い人達で、透が「箱推し」っていう気持ちもわかる。頭が悪く考えなしだがどこまでも真っ直ぐで人を惹き付ける魅力を持つ勇者、そんな勇者の頭の悪さに辟易しながらも彼に救われ、付き従う覚悟を決めているキースの主従関係も魅力的。というか私この作品リアルであったら勇者主従に萌えながら勇者と魔王早くもっと濃厚に絡め〜〜って叫びながら数少ない魔王の登場回を反芻し恋愛感情のない巨大感情をぶつけ合う薄い本探してたかもしれないのであぶなかった。いやほんとリアルに存在しなくてよかったな(見つからなくて飢える未来を幻視した)(文字にしたら予想以上にリアルにありそうな展開で怖かった)。

そんな勇者が自分の浅はかさ故に大きな「失敗」をしてしまうエピソードに介入し、魔王と勇者の関係性を変えることで原作の魔王爆死エンドを阻止しようとする透。魔王の助力が期待できない状況にありながら、魔力もなんの力も持たぬ彼女が冷静な判断力で難局を打ち破っていく姿が印象的。普段魔王の前で見せるテンションの高い魔王さん大好きオタクな彼女の姿とは対象的な、高い知性と発想力を併せ持つ“研究者”としての一面のギャップがものすごく好きです。彼女の素性は、魔王の素性以上に謎が多くて今後どういう形で明かされていくのか楽しみです。

コミック版との世界観の違いが気になる

城自体が意思を持つというちょっぴり不思議な魔王城と、魔法で彩られた「ラピワル」の世界観がとても楽しいお話なのですが、一方で透が元いた“現実”の世界にも色々と私達の住む世界よりもちょっとSF寄りの設定があるような気配で、そのへんがとても気になる。「私が死んだら対消滅戦が始まってしまう」とは一体……。そもそも両方の世界がどこか繋がってるような気配を感じるし、彼女を突き落とした上司が意図して彼女を送り込んだみたいな気配も感じるし、彼女がビルから落ちる際に聞いた“落ちてこい”というセリフも意味ありげ。

そんなこの作品、元々は裏サンデー×ピクシブ主催の「異世界転生・転移マンガ原作コンテスト」の大賞受賞作品だそうで、原作はpixiv小説、メディア展開的にはコミック版が主体。コミカライズは現在2巻まで発売されていてこちらの小説版よりもずっと先のほうまで進んでいるのですがそちら読むと透のSF的な設定がばさっとカットされているんですよね。死因も第三者による突き落としではなく事故で落下したことになってますし。というかpixiv小説版も触りだけ読んだけど突然ビルから落下してたので小説版の追加設定?なのかな?

基本的な展開は同じようなのですが、透の設定の違いが今後の展開にどう影響を与えていくのか、次巻でどのくらい変わるのかかなり気になります。だって小説版だと透のその辺の設定が割とキモだと思うので、完全に同じルートに行かない気がするんですけどどうなんでしょう…。

コミカライズ、小さくなったトールの冷静沈着な顔が大変に好みでした。2巻でいろいろと世界観バレや衝撃的な展開があったのでそのへん小説版の続きでも踏襲するのか気になります。

木村(著), じろあるば(著) 「魔王の右腕になったので原作改悪します(1) (裏サンデー女子部)」
木村(著), じろあるば(著) (著)
小学館
発行:2019-11-19T00:00:00.000Z


世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ) 2

 

平和すぎる日常に逆ギレし、世界の闇と戦う秘密結社・天照を作った佐護杵光。東京を救う自作自演イベントを終えた佐護のもとに異世界からの刺客が現れる。彼女はロナリア・リナリア・ババァニャン(905歳)。魔王が絶滅危惧種になり、手厚い保護を受けるほのぼの世界から、胸躍る巨悪との戦いを求めやってきた。ところが佐護の世界にも巨悪は存在せず、巻き起こる「世界の闇」と秘密結社の戦いは全て自作自演。世界が違っても平和すぎる日常は何一つ変わらなかった。そこでババァニャンは、秘密結社の根本を揺るがす、ある極秘計画を企て…?最強の超能力者が紡ぐ、圧倒的マッチポンプギャグコメディ、第2幕!! (「BOOK」データベースより)

「超水球事件」をきっかけに、東京ににわか超能力ブームが巻き起こっていた頃、秘密結社「天照」の元にひとりのロリババアが現れる。彼女は、血湧き肉躍る戦いを求め、身一つでやってきた異世界の存在だったが、やはりこの世界にもそんな非日常は存在せず……。

「日常」さんの強度が強すぎる。
2巻で早速本物の非日常やってきちゃったじゃん!!と思ったらそんなことはまったくなかった。いや異世界人という時点で非日常といえば非日常なのでは?と思わなくはないんですけど、異世界人がまざろうが警察が嗅ぎ回ろうが気にせずマッチポンプな非日常が続いていくのが面白かった。というか、超能力者、秘密組織、CIA、そして異世界人…とここまでそろった非日常要素をすべてひっくるめて包み込んで無効化しまう「日常」さん、ちょっと強すぎません?そりゃあ涼○ハルヒも内なる世界で暴れるよね(風評被害)

『裏切りイベント』の裏で水面下で進行する──!?
わりとちまちま非日常イベントを演出していた1巻とは打って変わって、前回の「超水球事件」に湧き上がる周囲の目から逃れつつ進行する、ババアニャンを主人公にした『長編・裏切りイベント』ににまにましてしまうんだけど、その裏では仲間になったと思われていたババアニャンが実は…!?という、二重に展開される物語が楽しかった。どこまでが本気か、それとも全てがマッチポンプなのか。先が見えそうで絶妙に先が見えない展開にハラハラしました。それにしても熊野警部はいろいろな意味で「適正」があったとはいえそれでお仕事を辞めてしまわれて大丈夫だったのでしょうか。

安定して面白かった……んですけど!?
2巻打ち切りってマジで!!!!??????(ソースは作者さんの日記

なろう版が今7巻目分くらいまで進んでいるし近いうちに完結予定のようなのでまあそっちで読めばいいんですけど……商業版で読み始めたなろう小説はやっぱり商業版で最後まで読みたいみたいなのあるじゃないですか。とても悲しい。各レーベルさんはもうちょっと拾ったなろう小説を責任持って育てて!!って思うけど、それ以上にWeb原作じゃない小説も責任持って育てて欲しいので難しい……。

ところで同作者の「婚活ダンジョンちゃん、東京に巣食う」が超面白かったです。36話まで読んだんですけど今確認したら完結していたので近いうちに読む。


世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)1

 

ある日突然、超能力に目覚めた佐護杵光。そしてその力を狙う悪の組織が、突如彼の前に現れ―なかった。隣の家の幼馴染が実は退魔師の子孫だと発覚し―なかった!謎の美少女が転入し―なかった!!平和過ぎる日常に逆ギレした佐護は、自分自身が秘密結社になる事を決意する。日本中を探して見つけた有能美女・鏑木栞を副官に引き入れ秘密結社「天照」を創設、資金調達事業も成功。蓮見燈華、高橋翔太という新メンバーも加えたところ、ついに世界を滅ぼす魔王が現れ―なかった!そこで佐護は、とある計画を思いつくことになり…?ひとりの最強能力者が紡ぐ、圧倒的マッチポンプギャグコメディ、開幕!!書き下ろし特別編も収録!! (「BOOK」データベースより)

ある日唐突に超能力を手に入れた主人公。手に入れた能力に磨きをかけ、世界をも滅ぼせるほどの能力を手に入れてしまうが真に望んでいた「非日常」は訪れなかった。特になにもないまま社会人になってしまった彼は、いっそのこと自分で「世界の敵」とそれに立ち向かう「秘密結社」を作って非日常をプロデュースしようと思い立って……。

超能力と大人の財力を使って超真剣に子供の頃に夢中になった「秘密基地ごっこ」をやってる感じにワクワクが止まらない。非日常は作れる。だいたいこういうのってごっこ遊びをしてるうちに本物の非日常が〜みたいな展開になりそうな気がするんですけど、本当に超能力者的な存在が主人公以外にいない世界なのか、本当にそういう展開は一切ないまま1冊終わるので強い。

主人公が手に入れた超能力という要素以外はあまりにも現実に即しすぎている世界観がめちゃくちゃ世知辛くて、望んでいたのは「超能力」じゃなくて「非日常」なのだという主人公の独白があまりにもわかってしまう。主人公が一人でボケもツッコミもこなすようなテンポの良い一人称が楽しかったです。

どこか夢見がちなパトロン・鏑木さんと、能力は非日常なのに性格がどこまでも現実的な主人公・佐護の共犯関係も良かった。鏑木さんは「中二拗らせ残念系パーフェクト整形美女(お金持ち)」というラノベヒロイン的にかなり美味しい設定してるはずのに変に男らしい性格が災いしてか全くラブコメ的な欲目を感じさせないのがすごいと思う。そして主人公は……非日常と一切無縁のまま超能力者として大成してしまったのって大体この現実的な性格が原因では!? 時に大胆な行動をしつつも現代のネット社会に生きるかしこい若者スタイルでネットの拡散やマスコミは徹底的に避けていってギリギリで大事にならない感じが絶妙。めちゃくちゃアナログの直感で行きてるニコラス刑事との、お互いに正体を知らないままの邂逅も楽しかったです。この紙一重的な楽しさはなんというか……ロードランナーとワイリーコヨーテかよ……(そのたとえは古いと思う)

このまま本当に最初から最後まで自作自演で突き進むのか、それとも超能力バトル的な方向に行くのかわかりませんがいろいろな意味で続きが楽しみな一冊でした。

それにしても、序盤のひたすら超能力を鍛えるだけのくだりがいかにもWeb小説っぽいノリだな〜と思っていたら本当に原作「小説家になろう」だったので噴いた。なんというか、なろう系小説序盤に割とあるひたすらレベル上げするとかただただステータス設定するみたいな部分ってなんでこんなに楽しいんでしょうね。商業だと割とストーリーの本線じゃないからって削られる部分かなって思うし実際こういうシーンがおおいせいでWeb小説の書籍化って割と立ち上がりが重いイメージあるんだけど、こういう描写ってめちゃくちゃ楽しいよな……。

なろうのほうで作者自身が書いたあらすじがキレッキレで個人的にめっちゃ好きなので見たことのない人は読みに行って欲しい。


ショートストーリーズ 僕とキミの15センチ

 

それは、明日起こるかもしれない、あなたの「if」の物語―。「僕とキミの15センチ」をテーマに、総勢二〇名の作家が参加した珠玉のショートストーリー集。Web小説投稿サイト『カクヨム』に掲載された作品に、『バカとテストと召喚獣』の井上堅二や『“文学少女”シリーズ』の野村美月、そして『東雲侑子シリーズ』の森橋ビンゴによる「あの作品×僕とキミの15センチ」のスペシャル書き下ろしショートストーリーを加えた全二〇篇収録!(「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

 ファミ通文庫19周年記念として「カクヨム」に掲載された"15センチ"をお題にしたファミ通文庫作家のオリジナル短編+公募作1編+「東雲侑子」「バカテス」「文学少女」の番外短編3編を集めたアンソロジー。番外短編3つ以外はすべて「カクヨム」の企画ページから読めるので、気になる作品があったらチェックしてみると良いかも。

 バカテスの短編目的で買ったんですけど、ラブコメありホラーありSFありの「全部盛り」なお祭り感がめちゃくちゃ楽しい。アンソロジーってだいたいひとつふたつは合わない作品があるんだけど、どれも凄く面白かった!ファミ通文庫は割とこの手のアンソロジー企画定期的にやってる印象なので、20周年となる来年も楽しみ。

  〜以下、タイトルクリックでカクヨムの第一話に飛びます。〜

記憶喪失の少年が目を覚ますと、目の前の少女との殺し合いを強要されていた。記憶に残っている物語の展開を思い出しながら事態に対処していこうとするが……。
文庫表紙のイラストから青春ラブコメアンソロみたいなのを想像して読むといきなりデスゲームの皮をかぶったSF的ななにかにぶん殴られる構成が最高に良い。「僕」と「私」の対話によって淡々と語られる物語と、少しずつ自らの存在が足元から揺らいで行くような展開が楽しかった。

15センチの距離で見つめ合う幼馴染のふたり。いつのまにかそれはどちらが先に離れるかという「いつもの勝負」になっていて……。
なんでもかんでも「勝負」になっちゃうケンカップルは好きですか!(大好きです!) 軽口を言い合ったり、お互いの羞恥を煽ってみたりという軽妙なテンポの掛け合いから、最後にド直球で責めてくるのがズルい。短くて爽やかな青春短編。

家の蔵の中には「コダマサマ」と呼ばれるミニ神社がある。コダマサマへのお供えを持って行った康太は、好奇心からお社の中を覗いてしまい……。
短い時間を濃密に生きる「コダマサマ」たちと不登校になってしまっていた少年の、数カ月間の短い交流。可愛いくてちょっぴり切ない、明日を生きる元気が湧いてくるような物語でした。可愛かった……。

付き合っている先輩と縁日デートに向かう途中、先輩の運転する車に「ぶつかってきた」不思議な少年。現場で拾ったスマホの中身を確認してみると……。
初めて恋に落ちた少年の色ボケ全開の日記が最高に頭悪くて、そこから段々「ちょっと不思議」なお話になっていく展開が楽しい。割と先が読める展開だったけどその王道ド直球ぶりが良かった。最後の「僕の天使」で思わずニッコリ。

クラスであぶれ者になった僕と出雲さん。クラスの中心となる生徒達の楽しそうな姿を横目に、彼女は“地面から十五センチだけ浮いた程度の物語”を所望する……。
もうこのタイトルだけで勝ってる感すごい。求めるのは退屈な日常からちょっとだけ乖離した非日常。クラスの輪の中に入り損ねた彼らがそれをdisりつつ、ちょっとだけ勇気を出してその“非日常”に飛び込もうとする姿に胸が熱くなりました。そしてその非日常感を「地面から十五センチだけ浮いた程度の物語」って言いかえるセンスがめちゃくちゃ好き。それにしてもちょっとしか出てこないけどカーストのてっぺんである花咲さんからは本物の強者の気配がしますね……勝てる気がしない。

展覧会をきっかけに惹かれあっていく華道家元の娘・彩華と書道教室の息子・涼介。涼介への恋心を自覚する彩華だが、彼は茶道教室の娘・花鈴と付き合っていた……。
「カクヨム」コンテストの最優秀作品。両親のせいで恋愛に懐疑的だった繊細な少女がひとりの少年と出会って変わっていく、爽やかなラブコメ……だとおもっていたら途中からうっかり彩華さんが間違った方向にふっきれてドロドロの三角関係に一直線。魔性の女みを上げていく彩華さんvs女の嫉妬全開の花鈴さんvs板挟みにされる涼介という、ひどい泥沼が展開されていきました。3Pルートには流石に入らなかった(でももうこれ3Pエンドだろと思ってた)けど、最後の涼介一人称からそこはかとなく漂う未練感がまた、最後まですっきりしなくて大変良かったです。

入学以来入り浸っている大学図書館で、なんとなく気になる存在であった彼女。ある日、彼女の方から声をかけてきて……。
近づいたり離れたり、もどかしい距離感がくすぐったいラブコメ。自意識過剰ではと警戒したり、女子慣れしてない&図書室慣れしてない感丸出しの主人公と、図書館大好きな女性・高坂さんがとてもかわいい。「15センチ」の中でひとつの物語が生まれたことを予感させるお話でした。

数カ月ごとに、実家のケーキ屋で5号(直径15?)のショートケーキをホールで買っていく少女。彼女が有名な走り幅跳びの選手であり、記録更新の度にケーキを買いに来ていると知って……。
幸せそうにケーキを買っていくゆっきーが本当に可愛いし、そんな彼女の姿に魅せられて、家業のケーキ作りを頑張り始める主人公がさらに可愛い。どこまでもケーキの様にふわふわで甘くて可愛いお話でした。

隣の席に座る、かなりミステリアスな美少女。彼女とのやりとりは、いつも何かがズレていて……。
いつも15センチほど目線がズレていたり、何故か自分のことを必要以上に知った風な口を利く美少女・十六夜さんと「僕」のすれ違いまくりの会話劇が楽しかった。「15」という数字にまつわるズレが沢山登場するのだけど、"十五文字分くらいズレている"なんか完全にWeb小説媒体だからこそのお遊びという感じがして好き。テンポよく会話が進み、最後はちょっと良い感じの雰囲気になって終わる、楽しいお話でした。

五軒先に住む幼馴染の少女の専属理容師をしていた俺。いつものようにカットをしていた最中、彼女が出来たことを伝えると……。
幼馴染なふたりの可愛くて甘酸っぱい恋物語。告白されたので流されるようにOKしたけど付き合えば付き合うほど幼馴染のあの娘と比べてしまって……隣にいるのが当たり前すぎて意識したことのなかった相手が、改めて自分の中で大きくなっていく様子が微笑ましかったです。また、付き合うことになった女の子がまたさばさばしてて可愛いんだよなあ。彼女の実際の気持ちは語られないままだけど、こういう流れになって笑顔で送り出してあげられるのほんとイイ女だなと思った。

クラスメイトの女子の写真を、スマホの中に大切に保存していた主人公。本人に見つかり、「盗撮」と疑われてしまって……。
全然下心なんかないよ盗撮じゃないよって弁明してる筈なのに読んでるこっちがくすぐったくなってしまうような直球の告白をしちゃってる主人公と、それを聞いて満更ではなく頬を真っ赤にしながらぷんぷん怒ってる女の子の姿が目に浮かぶような独白×2がとてもかわいい。もうなんかこっちも赤くなりながら「ご馳走様でした!!!!!」っていうしかないんですけど!?本当にかわいい。

商店街の片隅に存在する釣り堀「恵比寿屋」。そこに集まるお互いの事情も本名も知らない常連たちが、ある日、なんとなくお互いの事情を話す流れになって……。
仕事や家族から逃げてきたり、特に理由はないけどそこにいたり、いろんな事情でそこに来ている常連たちのお互いの事を知らないけれど確かにそこに存在した絆があったかくてたのしい。それにしてもラストそのどんでん返しは反則ですよ!!!(好き)

重箱職人をしている実家には、四段目の『与の重』を作った上で土蔵に封印するという奇妙な決まりがあった。土蔵の掃除を申し付けられた主人公が重箱の中を覗いてみると……。
家業を継ぐのを嫌がっていた主人公がご先祖様と出会い、彼女の描いた蒔絵の虜になる。二重の意味で彼の人生をひっくり返してしまうような出会いと、そこから始まる時をかける物語にきゅんとなった。それにしても最後、アイスキャンディの棒だけでは飽き足らずしっかりとハッピーエンドを自力で用意しているご先祖様のちゃっかり感には思わずにんまりしてしまう。

文芸部に所属するキモヲタの前に突然現れたのは、同じ学校に通う現役女子高生声優。彼女の「役作り」に協力することになって舞い上がったのもつかの間……。
オタクが憧れの声優と出会って素顔の彼女に惚れてしまう、素敵なボーイミーツガールだとおもったらめちゃくちゃ現実突き付けてくるしその後の展開がめちゃくちゃ気持ち悪くて最高にズルい。いやでもそこまで完膚無くフられたんだからもう開き直るしかないよな!!!最高にキモヲタみあふれる要望を気持ち悪がりながらもちゃんと受けてくれる先輩、声優の鏡すぎる。

中間試験の勉強中、自室に現れた小さなオジサン。自らを幸運の妖精と呼ぶオジサンを最初は気味悪がっていたけど……。
都市伝説上の存在「小さいオジサン」が現れ、難しいお年頃の父子の絆を取り持つお話。サイズはファンタジーだけど口を開くと普通にオヤジギャグ連発な小さいオジサンに少しずつ心を許していく主人公の女子高生の姿が微笑ましかったです。

アパートの自分の部屋の隣の部屋から、いつも物音がする。正体不明の隣人の正体を、何故か大学の同じゼミの女の子と見張ることに……。
主人公とヒロインのくっつきかたが強引すぎて解せぬという気持ちに凄いんだけど、○○からの圧力じゃ仕方ないな!?個人的にはもう少しこう短編とはいえなにかあと3本くらいはフラグが欲しかった気がします。しかしこの謎ときもすこしふしぎもうっちゃってトップスピードで主人公とヒロインをくっつけて去るスピード感、結構好き。

「彼女は絵本を書きはじめる」 森橋ビンゴ
人気作家として活躍を続ける彼女と同居している主人公。仕事の傍ら、彼女は子供向けの絵本を書き始めて……。
『東雲侑子は短編小説をあいしている』シリーズの後日談。原作読んでないので解らない部分も多かったんだけど、ヒロインから主人公への暖かい気持ちがあふれ出るような絵本の内容にとてもほっこりしました。

「僕とキミらと15センチにまつわる話」 井上堅二
大学入学前のある日、早くも高校の同窓会に誘われた二人。ところが待っていたのはいつもの異端審問会で、お互いの"彼女"との「15センチ」にまつわるエピソードを暴露する羽目に……。
『バカとテストと召喚獣』の後日談。高校を卒業してもあまりにも通常営業な彼らのやりとりと、めちゃくちゃ強引に「15cm」という共通お題を力技で突破していく感じ凄くいつものバカテスでした……。しかし、明久が大学に合格してることよりも、姫路さんとのバカップルぶりがあまりにもリア充すぎてこれはFFF団も15センチを振り回すしかない。ていうかイチャイチャするために同じインカレサークルに入る明久と姫路さんis何……めちゃくちゃ合コン帰りに酒の勢いで一線超えそう(偏見)。

「"文学少女"後日譚 つれない編集者(ミューズ)に捧げるスペシャリテ」 野村美月
作家と編集者という形で再び出会いを果たした心葉と遠子。編集者としての立場から以前のように心葉の物語を『食べる』のを躊躇う遠子に、心葉はとある悪戯を思いつく……。
『文学少女』シリーズの後日談。仕事上の関係をタテに取りなかなか素直になってくれない遠子を振り向かせようと彼女を強引な手口で振り回して「ごはん」責めにしちゃう、大人になったコノハくんのやり口が大変好みでズルいです!!!短編集のシメにふさわしい、甘いデザートのような短編でしたごちそうさまでした。


銃皇無尽のファフニール1 ドラゴンズ・エデン

 

突如現れたドラゴンと総称される怪物たちにより、世界は一変した―。やがて人間の中に、ドラゴンの力を持った“D”と呼ばれる異能の少女たちが生まれる。存在を秘匿された唯一の男の“D”である少年・物部悠は、“D”の少女たちが集まる学園・ミッドガルに強制的に放り込まれ、学園生の少女イリスの裸を見てしまう。さらに生き別れの妹・深月と再会した悠は、この学園に入学することになり…!?「本当にどうしようもなくなったら、俺がイリスを―殺してやる」「信じて…いいの?」最強の暗殺者になるはずだった少年と、落ちこぼれの少女が繰り広げる、“たった一つの物語”が幕を開ける―!アンリミテッド学園バトルアクション!(「BOOK」データベースより)

 アニメ・コミカライズで大まかな流れは知っていたんだけど、おもった以上にカットされた部分が多くて驚いた。本来女しかいないはずの「D」という特殊能力者。男でただひとりその能力を持っていた主人公の物部悠は軍でとある特殊部隊の一員として生きていた。ところが、任務として「D」の少女達が集う学校に呼び寄せられ……というお話。

 兵器としての教育を受け、今にも心を押し潰されそうになっていた悠が、ヒロイン・イリスと出会い、恋に落ちる事で自分の“人間”としての部分をどうしようもなく思い知り、すんでのところで救われるという流れが、なんというか凄くうつくしかった。アニメやコミカライズではなんでもない場面のように描かれている二人の出逢いの場面にこんな大きな意味があったとはと、改めて胸が熱くなる。

 その一方で、イリスと彼女が生きるセカイを守るため、“人間”として培った絆を手放して竜を殺すための兵器になっていくのが切なくて、やるせない。あと本当に悠の義妹である深月の想いが切なくて……この1巻の終わり方、凄く好きです。手放したくないものをピンポイントで喪っていく感じ、物凄くぞわぞわする。

 しかし元々、コミカライズで悠を“悪竜”として教育した張本人・ロキ少佐があまりにもいかがわしくてうっかり原作にまで手を出したわけですが、コミカライズともアニメともまた違った意味でロキ少佐がいかがわしかった……。ニブル時代の話がどうよみなおしてもこの身囚われても心までは囚われない系ほもなんですがどういうことなんですか?悠が地文で少佐を呼ぶ時の呼称が“彼”なんですがマジどういうことなんですか?“私の悪竜(と書いてファフニールと読みます)”ってやらしくないですか?心までは囚われないしイリスと出会って救われたんですけど、ミッドガルにきた今もなお身体に染み着いてる昔の男との関係性みたいなのまじなんなんですか…だ、大丈夫講ラノだよ!(震え声)

 アニメはロキ少佐のねっとりとしたボイスが大変いやらしく、コミカライズに至っては開始3Pでいきなりほもがはじまる(曲解)のでほんとうにわけがわからない。コミカライズはほんと開始3Pがちょっといみわからないのでほんと読んでください!!→公式サイトに1話試し読みがあります

スレイプニルはロキ少佐と8人の美少年達なんですかね……。
(悠のスレイプニル時代の番外編ください)


ログ・ホライズン2 キャメロットの騎士たち

 

〈腹ぐろ眼鏡〉のシロエ、いよいよ本領発揮!!表面的な穏やかさは取り戻したものの、一方ですさんだ空気をまとい続ける“アキバ”の街。教え子たる双子・トウヤとミノリの拘留が発覚し、アキバの情勢に嫌悪感をぬぐいきれなくなったシロエがついに動く!歴戦を制した猛者11人を結集させ、無法地帯アキバに「希望」を取り戻す。 (「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

 セララを救出し、アキバの街に帰還したシロエ達。だが、彼らが街を離れている間にアキバの街はますますおもしろくないものになっていた。同時に、大災害が起こった時に一緒に居た双子が初心者狙いの悪徳ギルド『ハーメルン』に囚われていると知ったシロエはとある企みを企てるのだが……円卓会議結成まで。

 事態の解決には関係なさそうな料理の発見から様々な手を積み重ね、遂には無法地帯と化していたアキバに「円卓会議」という統治システムを築き上げてしまうまでの流れがめちゃくちゃ面白かった!しかも同時並行で双子を勾留しているギルドを統治システムの効力を他のギルドにわからせるための「見せしめ」役にとして壊滅させてしまうという一挙両得ぶり。ほんと、軽食屋「クレセントムーン」あたりからの流れが鮮やかすぎて心が躍る。

 やはり、アニメ版とくらべて各キャラクターの心の動きがたくさん描かれているのが美味しいなあ。特に、アニメだと円卓会議の面々を相手に冷静にふてぶてしく動いているように見えていたシロエが案外周囲のメンツに緊張してるとか、とてもニヤニヤする。特にこの部分はアニメ版で第三者視点からのシロエがどういうふうに映っているか知っているから余計ニヤニヤしてしまった部分かもしれない。逆に、アニメを後から見たら内心どれだけ動揺してるかとか想像できて楽しかったんだろうなあ。円卓会議結成のあたりは挿絵でも文章でも盛り上げてくるので、テンション上がりっぱなしだった。

 ギルドという存在に根強い抵抗感を覚えていた彼が新たな仲間と歩き出す為に、待っていてくれた仲間たちと共に新たなギルド<記録の地平線>を作ることを決意するまでの心の動きが本当に美味しいんですけど、にゃんた班長をギルドに誘うシロエが可愛すぎてちょっとどうしたらいいかわからない。この、なんですか、このシロエは、いけない!!!萌えすぎていけない!!!アニメでこのセリフカットされたのがあまりにも惜しい!!!

 円卓会議の場面ではあれだけツンツンしておきながら、「戦闘訓練」と称してお掃除をして帰っていくアイザックさんはツンデレだと判断できます。


ROBOTICS;NOTES 3 キルバラッド・オンライン

   
原作
5pb.×ニトロプラス

関東を襲った大規模な太陽嵐。その直後、東京でロボットの反乱が発生する。失踪した母の残したメッセージ、そして君島レポートの予言がついに現実となったのだ。しかもその実行犯としてネット上には神代フラウの名前が出回っていた。仕組まれた陰謀に次第に追い詰められていくフラウだったが、そんなフラウの前に八汐海翔が現れ!?閉ざされた電脳空間で始まる、二人だけの孤独な最終決戦―フラウ編感動のクライマックス。(「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

 「Robotics;Notes」の物語を登場人物の1人・神代フラウの視点から追うノベライズ完結編。フラウの個別ルート終盤を追う内容に加え、淳和視点から淳和の個別ルートを描いたスピンアウトも収録されています。

 フラウの、母親である古郡みなみと彼女の遺した「ガンヴァレル」への強い想いが胸に痛い。ゲームで若干唐突感のあったお風呂場のシーンや「ガンヴァレルが汚されちゃう」という発言を更に補強するような、作品への強い想いを感じる場面の数々がとても好きでした。元々“母さんの残したガンヴァレルを忘れられたくない”という目的の為にあんな凄いゲームを作ってしまうような彼女が、自身の行動が原因で母親とガンヴァレルまで汚されることになってしまうという絶望はいかばかりのものか。自分自身がけなされるよりも悲しいことって、あるよね。

 個別ルートが終わるところまでしか描かれないので、このノベライズ単品で追っていると「俺たちの物語はここからだ!!」で終わってしまうのが若干面白味に欠けるかも。角川スニーカー文庫のノベライズはこれに限らず原作を全て読んでいるの前提の副読本みたいな役割をするものが殆どなのでその辺は割り切って読むしかないけど。あとがきでも言及されているとおり、この後の愛理ルートでのフラウの暗躍とか、ゲーム終盤であき穂と海翔が東京に行ってる間の種子島の様子とか凄く見たかった気はするんですが…。

 ただ、神代フラウという引きこもりが八汐海翔というゲームオタクと出会い、1人の少女らしい恋愛感情を自覚する事で引きこもりを脱するという成長物語としては物凄く面白かった。奇天烈な言動の裏で物凄く緊張してたり、幼馴染のあき穂との関係を気に掛けていたり……みたいな部分がとてもとても可愛かったです。

 後半に収録された淳和ルートの物語は、正直ページ余ったのでとりあえず入れましたみたいな感じが強くて正直…な部分はあるんだけど、元のシナリオ自体が単独でとても良い話なので、物語を復習する的な意味で、面白かった。海翔が大徳寺一家と邂逅する話がカットされてたのが本当に残念なのですが……というか大徳寺父・祖父のツイぽアカウント酷いwww



40887956874088794842しかし、フラウ関係のメディアミックスは全体的に恋愛色自体が薄いロボノの物語の中でひときわ糖度が高いので良いですね。ノベライズは原作をやったひと/アニメを最後まで見た人への補強シナリオの側面が強いので未読者にはあまりオススメできませんが、フラウ視点から少しだけ原作の展開を変えつつ展開するコミカライズ版のほうは、原作未経験者にも満面の笑みでオススメできます。

 原作よりも若干マッドプログラマー度強調(だけど恋する乙女)なこなちゃんとか、原作よりも更に格ゲーバカ一代な海翔さんがとても良いよ!!「多少特殊な能力を持つ普通の少年少女達がロボットを作るため頑張る」な原作に対し「ちょっとおかしな一芸秀でた秀才達が華麗に魅せる」物語になっていてこちらもあわせてオススメしたいです。


ルートダブル - Before Crime * After Days - √Before

 
Shiri
 
原作
イエティ/レジスタ

2030年9月16日午前6時19分。研究学園都市・鹿鳴市の郊外にある巨大施設、原子力生物学機構第6研究所・通称『ラボ』にて、深刻な事故が発生する。ある目的のために施設を訪れていた高校生・天川夏彦たちは、その内部に閉じ込められてしまう。迫り来る炎の中、なぜか過去の記憶を鮮明に思い出す夏彦。だが、その記憶の中には、生き延びるための重要なヒントが隠されていた。奇妙な感覚、事故の本当の原因、そして残酷な真実―。最悪の極限状況の中で、壮大な人間ドラマがいま幕を開ける。 (「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

 Xbox360で発売されたアドベンチャーゲーム「ルートダブル」のノベライズ。とある事件の顛末を立ち位置が全く違う2人の主人公の視点から追った物語で、今回発売された「√After」と「√Before」はひぐらし・うみねこでいう出題編のような位置づけになっています。√Bはごく普通の高校生“天川夏彦”が友人たちと共に、コミュニケーターと呼ばれる超能力者を狙うテロ事件に巻き込まれていく中で過去のトラウマと対面し、それを克服していく物語です。

 √Aが「メルトダウンした原子力研究所の中で繰り広げられる極限系人間ドラマ/サスペンス」なので√Bを読むといきなりの女子高生ハーレム状態と学園異能モノ具合に驚くことになること請け合い。確かに√AでもBCと呼ばれる超能力の存在については語られてきたんだけど、表立ってこの能力を使うキャラクターが存在しないため完全にステルス設定化してるんですよね。

 9年前、偶然ラボでの事件に巻き込まれて大きな精神的外傷を負った幼なじみの少女と、彼女を巻き込んだ事を負い目に感じながら平穏な生活を望むようになった主人公。殻に閉じこもる事で閉じた世界の中で停滞していた彼らが、√Afterで語られたラボでのメルトダウンに巻き込まれたことを切っ掛けに少しずつその心を開き、BC能力を開花させながらかつての姿を取り戻していく姿が熱い。

 少しずつ前向きに変化していった夏彦に9年前の事故の真実の一端が襲いかかる場面は本当に衝撃的なんだけど、原作でこの事実を知ってからノベライズを読み直すと改めて……な場面が結構あって、面白かった。特に、夏彦の事をずっと見守ってきた彼女の行動の不自然さとその意味がわかると、なんというか胸にじんわり来るものが。周りの人々の本当の気持ちに触れ、自分がどれだけ彼女達に愛されて育ったのか目の当たりにすることで完全に「かつての自分」を取り戻す姿が頼もしい。

 原作ゲームプレイ済視点からいくと彼女の動きをはじめとして小説だからこそ見えやすくなっている行動がある一方で、微妙にカットされたり変更された展開が多かったのが気になりました。√Aでも渡瀬がトイレで“彼女”の幻影を見るシーンがカットされたりしてるんだけど、√Bは夏彦達の放課後ショッピングや徹夜カラオケの描写が削られてしまったのがちょっと残念。個人的に、平穏な日常を象徴する二大ほのぼのエピソードだったんだけどなあ、あれ。

 原作のままでいくと次の√Currentがかなり短いシナリオになるはずなので、これまでの微妙に変更された場面はそちらに関わってくる伏線なのか。多分グランドエンディングルートに行くんだろうけど√Doubleのグッド・ノーマルエンドがとても好きなのでそちらのエッセンスも盛り込んで欲しいなあというか、残りのルートの書籍化の際は小説ではないと見られないなんらかの仕掛けに期待したいです。

 なお、原作ゲームではどちらのシナリオから進めても良いつくりになっていて、時系列的には√Afterの前、もう1人の主人公である“笠鷺渡瀬”が記憶を失う前の物語になるんだけど、√Afterに関する重大なネタばらしがあるので個人的には√After→√Beforeの順番で読み進めることをオススメしたいです。というか、√Aはやはり渡瀬の正体知らないまま読んで欲しいよね。記憶喪失のヒーローまじかっこいい。

 そして大事なことなのでもう一回言うけどPC版は9月28日発売ですよ!!