ページ 12 | 今日もだらだら、読書日記。

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ロクでなし魔術講師と禁忌教典21

 

絶体絶命のフェジテ決戦。そして、訪れる衝撃の幕切れ……!?
イヴ、アルベルト、リィエル……グレンが不在のなか、それぞれの使命と運命を背負い、決死の戦いが続いていた。頼みの切り札すら、覆されそうになる敵の底力。最後に待ち受ける戦いの幕切れを見逃すなーー!

フェジテに押し寄せる天の智慧研究会の幹部達と十万を超える死者の軍団。お互いの生命を削り合うかのような激突が各所で起こり、イヴやリィエル、アルベルトの活躍によって活路が見出される……と思われたが、それに対して天の智慧研究会側も様々な対抗策を打ってくる。全てを使い果たし、これまでか……と思ったその時──いよいよ「彼ら」がフェジテへと帰還する!!

フェジテの存亡を掛けた「天の智慧研究会」との最終決戦!!

前巻から引き続きのフェジテを巡る防衛戦、クライマックス。エリエーテの全てを捨てる剣技ではなく仲間を守るための最強の『光』を振るうリィエル、何よりも憎いはずの姉の仇パウエルを前にして復讐ではなく仲間のために戦うアルベルト、仲間達がここに戻ってくると信じてエレノアとの絶望的な戦いに身を投じるイヴ。幾度も絶望に押しつぶされそうになりながら、それでも立ち上がり、戦いの中でも成長していく彼等の姿がアツかった!そして必死に戦う三人を見て、共通の敵を前にして、満を持して力を貸してくれる強敵達の存在に胸が熱くなる。

何より、傷ついたリィエルを守ろうと必死に奮闘する教師達・生徒達の闘いが凄く良かった。ひとりひとりは大きな力も持たない、今にも戦いの余波を受けて倒れてしまいそうな生徒達の必死の頑張りこそが、リィエルが再起してエリエーテの『剣』をも上回る『光』を見つけるための最後のピースだったんだよな……。そして、リィエルも含めてそんな愛しい生徒達を守るために立ち上がる、普段はおちゃらけてばかりだったアルザーノの名物変人教師達の奮起にニヤリとしてしまう。

美味しいところを全部「アイツ」が持っていった!!!

文字とおり身を削るような戦いを経て、なんとか天の智慧研究会の幹部達に勝利を収めた面々。ところが、全てを出し尽くした彼らの前には首領・フェロードが立ちふさがる……というところから、満を持して新たな力とともに帰ってくるグレン&システィーナ&ルミア!!過去から、そして母親から受け継がれた圧倒的な力を見せつけていよいよフェロード&レ・ファリアとの最終決戦が始まr──というところで、最後の最後の最後でグレン達の横から良いところ全部持ってくやつがいるなーーーーそんな予感はあったなーーーー“読んでいた”なーーー!!!!!!

いやこの人絶対死んでないだろ……っていう絶対的な自信はあったし、どこか最高のタイミングでもどってくるんだろうなとは思っていたのですが、それにしたって良いところ持ってきすぎじゃないですかねえ!!!超魔法文明の昔から何千年も巡らせてきた策を雑に潰されるフェロードが一周回って可哀想になってきたけどやっぱりこの物語で出てきた大きめの事件は概ね全部コイツのせいなので全然かわいそうじゃないです。

世界を巡る戦いだったはずの何かが色々かっさらわれて絶対に相容れない男同士の複雑感情激突戦に落とし込まれる(であろう)の本当に楽しみしかないです。興奮する。最後の挿絵最高。本当にありがとうございました次巻が楽しみだなあ!!!

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声優ラジオのウラオモテ #07 柚日咲めくるは隠しきれない?

 

これは声優ファンの少女、藤井杏奈が、声優「柚日咲めくる」を認めるまでの物語。
「自分より、ほかの声優の方が良い」ファン心が邪魔をして、オーディションで実力を発揮できないめくる。役を取りあわなくて良いラジオを主戦場にしてきたが、声優としての限界が見え始める。 「いい加減、覚悟しないとダメなんだよ」 支え合ってきた相棒、花火の言葉にも動かされためくるは「声優ファン」を卒業するが、目からは輝きが失われて――。 厳しくて口が悪くて、でも本当は誰より優しい。可愛い先輩のために夕陽とやすみも一肌脱ぎます! 隠しきれないめくるの青春声優ストーリー、NOW ON AIR!

アイドル声優が大好きで、声優養成所の門を叩いた普通の女の子・藤井杏奈。両親の反対を押し切り、声優・柚日咲めくるとしてデビューした彼女だったが、「声優」が好きなあまりオーディションで本気を出せないという弱点を抱えていた。声優としての岐路に直面した彼女は、声優ファンとしての自分を封印しようと決意するが……。

限界オタクの推し語りは健康に良いので傑作(特大言語)

態度はキツいが頼れる先輩であり、限界声優オタクである柚日咲めくるが声優としての・オタクとしての自分に向き合うお話。柚日咲めくる……というか彼女の内に潜む「限界声優オタクの藤井杏奈さん」視点で語られる物語が楽しい。

そしてそんな彼女の内心を知っててわざと距離の近い営業してくる夕陽&やすみの後輩コンビがまた、めちゃくちゃ破壊力高い。周囲に気取られないように隙あらばファンサをかかさない生粋のアイドル声優・歌種やすみとそんな彼女のアドバイスを受けて人のいない所で不器用に迫ってくる夕暮夕陽の多重攻撃、破壊力が高すぎる。今回はめくるの一人称という時点で限界オタクの早口語りな一人称文体がめちゃくちゃ健康になるんですけど、同時にファンの視点から描かれる夕陽&やすみの姿がめちゃくちゃ印象的でした。いやこんなの藤井杏奈ちゃんじゃなくても死ぬわ。

「推せる自分」になるために

夕陽ややすみの視点から見ると「頼れる先輩」である柚日咲めくるの、彼女らには決して見せない葛藤と焦りが印象的でした。声優が好きすぎるあまり、自分が他の「声優」を押しのけて役を穫ることに違和感を感じてしまう彼女が、苦手なオーディションから逃げて、声優ラジオを通して「他の声優を生かす」役割を演じようとする。でもそれをちゃんとやるためには自分自身が売れっ子声優にならないといけない、というジレンマ。だがそもそも自分だって他人を背負えるほど安定しているわけではなくて……回り回って自分の中の自分を殺す決意をしてしまう彼女の思いが、胸に痛い。

でもそんなめくるに相方・夜祭花火や後輩達が示したのは、彼女自身を殺さない道。藤井杏奈こそが柚日咲めくるの一番のファンになれば良いという、考えてみたら当たり前の道で。彼女たちの後押しを受けて藤井杏奈ではなく「柚日咲めくる」として、声優として改めて一歩をふみだす姿が最高にアツかったです。

それにしてもこれ5巻(の作画崩壊限界アニメ現場の話)と同時進行で進んでいた6巻(アイドル声優ユニットのリーダーに抜擢され、問題児だらけの新人声優達と対決する話)のさらに裏に存在する物語ということになるわけですけどこの期間で事件起きすぎでは!?しかもこれ多分8巻は今回の話の後半の時間軸になりますよね。いやほんとに濃厚だな……。それにしても6巻の裏側、まさか相手が歌種やすみの限界オタクだとはつゆ知らずにやすみのこと愚痴ってくる飾利ものすごく趣深いな……。

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顔さえよければいい教室 1.詩歌クレッシェンド

 
necomi

大人気タッグが贈る、天才たちによる人気獲得学園バトル。
音楽、ダンス、ファッション――あらゆる分野の天才が集う芸能学校・私立繚蘭高校。 だがその実態は、「顔」をはじめとした外見ですべての評価が左右される教室だった。 俺の妹・池袋詩歌はヒキコモリで、兄ナシでは生活できない要介護人間のせいか、配信のセンスもスター性も壊滅的。 この学校では最弱かと思われた。 だが俺は知っている。ネットで顔を隠して伝説になったVSINGER。その正体こそが詩歌だと。 「――青、この曲の色。私はそれに合わせて歌うだけ」 ゆえに詩歌の歌声は唯一無二。学校のあらゆる常識を覆し、彼女の才能は見出されていく――!

天才的な歌の感性を持つが生活能力は壊滅的かつ極度の人見知りである妹・池袋詩歌とそんな彼女を甲斐甲斐しく世話しつつ彼女の才で金を稼ぐ「自称マネージャー」の兄・学斗。顔を隠してヴァーチャルシンガーとして活動していた兄妹が『学費免除・更に生活費まで貰える』という条件に釣られて芸能学校・私立繚蘭高校のスカウトを受ける。ところが生活費を稼ぐためには、「顔出しの動画配信」で人気を得る必要があって…!?

歌の才能だけでは生きていけない顔出し配信の世界がリアル

「再生数」がパワーになる学園でしのぎを削る少年少女達の物語。舞台となるのが本名・顔出し強制の動画サイトということで、才能があるだけでは生き残れない展開が今時で面白かった!歌が上手くて友達いない生徒よりも特に光るものもないけど友達が多い生徒の方が最低数の下駄履けるところとか、まとめ・情報動画に需要が集まる展開がリアル。

バーチャルシンガーとして歌一本で勝負して匿名動画の世界で着実に再生数を伸ばしてきた主人公兄妹が、最初の配信では身内しか「いいね」してくれないというどん底の状態からスタート。まずは見た目を整えて、クラスメイトにコラボの打診をして……と正統派に「動画を見てもらうための努力」を重ねていく展開がアツかった。その努力が実ってクラスの中でも一目置かれる存在になって漸く、詩歌の歌そのものを評価してもらえるんだなあ。

そしてクラスメイトの作曲家・狛江とのコラボ効果もあり100万再生を突破した詩歌を待っていたのは、クラスの中でも抜群の再生数を誇る渋谷エリオとの中間考査を使った対決。「顔さえ良ければいい」というタイトルからしてもっと奇策を駆使して成り上がる物語かと思っていたのですが、見た目はあくまでスタートラインでしかなくて、その後ろに待っているお互いに譲れない「面子」を掛けた熱い青春と音楽の物語が、6オクターブという圧倒的な音域を誇るエリオと感情を「色」として受け取り「絵画」のように自らの歌の世界を織り上げる詩歌という対称的なふたりの「天才」の対決が最高に熱かった。

渋谷エリオさんが可愛い(とてもかわいい)

歌以外のことは何もできない妹とそれを介護する自称マネージャーの兄。過去に何かあった臭をそこかしこから漂わせるタダモノではない距離が近い兄妹……という構図の時点で割と好きな人は大好きなやつですね!!という感じなんですが、彼らを取り巻くキャラクター達がまたとても良かった。まとめ動画で一定の需要を得ているけど音楽方面の才能はまだ全く分からない・何かと楽斗にいいように使われてる都合の良い女感が凄い秋葉、ノリの軽いナンパな男の友人枠かと思いきや詩歌に惚れてしまって以来めちゃくちゃ純情ムーブしてくる作曲家の狛江。他学年の先輩たちも色々と絡んできそうな気配で、今後の展開が気になる。

しかしやっぱり個人的に渋谷エリオが!可愛い!!序盤は完全に詩歌をライバル視してやたらと突っかかってくる嫌な女だったんですが、プライドが高く嫉妬深いけど裏表がなくて何事にも一生懸命で明るく周囲を引っ張っていく、台風の目みたいな女渋谷エリオさんの勝負終わった後の姿が可愛すぎてしんだ。いや、色々行き違いがあって嫌な女みたいに見えていたけどいい女じゃないですか〜!!!もうこれはいろいろな意味で2巻が楽しみしかない。

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悪役令嬢レベル99 その5 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

 
Tea

裏ボス令嬢、エレノーラのためドロドロ政争に殴り込み!
装備を作ると騙されて王都に連れ出され、結婚式の衣装の準備をさせられむくれたりしつつも、平穏な日々を過ごす私、ユミエラ。 そんなときにエレノーラが学園時代の旧友に会いに行くのについていったら、家が政争で王都追放寸前なのを何とかしてくれと頼まれてしまう。 だが、裏で糸を引く財務大臣は魔王と恐れられる私の動きまで計算に入れて立ち回っていて――あれ、これ腕力だけじゃ解決しない感じ!? でもこれは売られた喧嘩、高値で買って真っ正面から粉砕します!!

なんでも好きな防具をオーダーメイドさせてくれる…という甘い言葉に騙されて、実際は結婚式のドレスの採寸をするため王都にやってきたユミエラ。採寸の帰りにエレノーラの希望で彼女の取り巻きをしていた少女の家を尋ねるが、ヒルローズ伯爵が失脚してしまったこともあって門前払いを食らってしまう。ところが翌日、何故か昨日門前払いを食らったばかりのアーキアム伯爵家から使いがやってきて……?

裏ボス令嬢、政争に巻き込まれる

王都にやってきたユミエラがヒルローズ伯爵亡きあとの(※別に死んでない)中央貴族達の権力争いに巻き込まれそうになるお話。政争には絶対関わりたくないのでいつものように力づくでも拒否したいが親友・エレノーラの望みは叶えてあげたい、彼女の意向に沿おうとするとお得意の力押しが使えない……という流れで、ユミエラがアーキアム伯爵家の老獪な執事や政争大好き穏健(?)派の筆頭貴族プライナン公爵からいいようにあしらわれてしまう展開が面白い。ユミエラも頭が悪いわけではないし、パトリックもなかなかキレ者なんだけどやっぱりこういう時の年の功って強い。

政治闘争がメインの巻で割りと真面目に頭脳戦をやってるんだけど、その反面コメディ部分がキレッキレな巻でもあって各所で腹抱えて笑ってしまった。ユミエラが作ろうとした装備がどう考えても立体機○装置だったり、人形作りが趣味な令嬢とガンプ○で理解りあったり……とメタネタも多かった。そして、パルシャイン王国の中央貴族達の現状を深刻にしすぎずにブラックに皮肉っていく展開がひたすら楽しい。家族全員が趣味人というアーキアム伯爵家の処遇を巡る顛末にはニヤニヤしてしまったし、あっちにこっちに取り入ろうと物語の枠内外で右往左往する中央貴族の皆様に笑ってしまう。

なにより、気がつけばヒルローズ伯爵がやっていた「過激派のまとめ役」という貧乏くじを押し付けられそうになって絶体絶命の大ピンチ──のはずが、最終的になんだかんだでやっぱりユミエラの暴力ではない力押しで切り抜けていくという結末が面白すぎてゲラゲラ笑ってしまった。政治の世界で生きてきた百戦錬磨のプライナン公爵が、ユミエラがレベル上げに掛ける情熱という名の「純粋すぎる狂気」に対して無力すぎるの本当にズルい。やはりレベル上げこそがすべてを解決するのでは?(混乱)そして彼が読みきれなかったもうひとつが「パトリックが本当にユミエラを愛していること」で、またこういう地味なところでユミエラをどうしようもなく救ってしまうパトリックに胸が熱くなってしまう。本当に縁の下の力持ちなんだよな彼は……。

それぞれの「家族」の形が印象的

華やか(?)な政争の裏で、王都に帰還したユミエラが3巻のヒルローズ親子や前巻でのアッシュバトン兄弟や今回のアーキアム伯爵家の家族のありかたを目にして、パトリックからの言葉にも感化されて現在は幽閉状態になっている両親と再び向き合う……という展開が印象的でした。娘にとっては育児放棄していた酷い両親で権力にしか興味のない駄目貴族だったけど、実は夫婦仲は良くて……そこにトンチンカンな赤子プレイで特攻していくユミエラも大概だが、夫妻で仲良くユミエラの凶行からお互いを守り合っている姿を見てしまうとどうしてその愛情を少しだけでも娘に掛けてやれなかったのかとやるせない気持ちにもなる。まあユミエラにはもうパトリックやエレノーラやリューくんが居るわけですし無理に和解する必要もないんですけど……ねぇ……。

そんなもう実質「家族」なパトリックとは関係性的には実質2巻の時点で結婚してたようなものなのに、結婚式が引き伸ばされすぎてこれは完結時のエピローグまで温存なのか??みたいな雰囲気になってきて本当にパトリックには頑張ってほしい。近頃は毎回ふたりの結婚式準備まわりのイチャイチャを見てによによしながら「でもこのふたり、まだ結婚式してないんですよ」っていってる気がする。いやほんとうに、まだ結婚してなかったんだよな彼ら……。

前巻でフラグたったままの月に関してもどうなるのか気になる。月に立っている旗……というと、アポロ11号のクルーが立てた星条旗しか連想できないんですが、それが立っているということはもしかして……?

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鈴波アミを待っています

 

「鈴波アミ」というVtuberがデビュー1周年を迎えた夜。しかし、待望の配信は始まらなかった。鈴波アミは突如失踪してしまったのだ。視聴者たちは彼女の復帰を信じ、1年間の配信アーカイブを同時視聴して待ち続けるが……ネット文化が生んだ感動のストーリー

1年掛けてシンデレラロードを駆け上がっていったVtuber鈴波アミ。彼女は1周年記念配信の直前に失踪してしまう。鈴波アミの帰りを待つファン達は、毎日彼女が配信を行っていた23時に1年前のアーカイブを同時視聴して彼女の帰りを待つようになるが、時間が経つに連れてメンバーも減っていき……。

ファン目線から見た、とあるVtuberの1年間の軌跡とその顛末

現実より少しだけVR技術が発展した日本。コロナ禍という非日常に世界が震撼する中、他のことには目もくれずに失踪した推しVtuberの帰りを待ち続けるとあるファンのお話。序盤はあらすじの通り、放置された一周年記念配信の「待機所」を舞台に失踪した彼女の半年間の軌跡を同じファンの仲間達と共に振り返る展開で、特に目新しい事をやっているわけではないんだけどどこか独特な世界観を持つ「鈴波アミ」が語る世界に惹きつけられていきました。喋りが上手くて、声が綺麗で、自分の好きなものにひたむきで……。そんな彼女が自分の大好きなコンテンツを作ったクリエイター達と知り合い、それがきっかけで周知され、人気Vtuberへと駆け上がっていく様子を見ていくのが楽しい。

鈴波アミの描写、最初の配信から鈴波アミを追いかけていた最古参ファンである主人公の視点から語られていくので相当推しフィルター掛かってる気がするんだけど、本人そのものではなくファンのオタクのフィルターを通した目線だからこそこんなにも美しいものとして映るんだろうな。第三者の目線から語られることで生み出されていく虚構のアイドル像が印象的でした。

どこか現実に足がついてない感じの彼女のシンデレラストーリーを楽しんでいたら、「失踪したVtuberを半年も待ち続けるキ○ガイたち!」みたいな煽りで待機所が晒されて……からの急転直下の展開が凄い。アンチの煽りに耐えきれずマジレスして炎上した主人公、その際に個人のアカウントを特定されてしまい、以後何をしても「鈴波アミの件で炎上した人」というレッテルがつきまとうことに。鈴波アミのリスナーの総称である「みんな」から逸脱し、ネット上での事件とは全く関係なくコロナ禍で仕事をクビになり、逃げ込んだはずのVR空間で失踪した鈴波アミの噂を聞く。アカウントを特定してVtuberへの復帰を願うが、彼女はVtuberとしての自分の記憶を失っており、Vtuberとしての復帰を拒み、次第に主人公をも拒絶するようになる……。このへん本当に厄介オタクの迷走と見当外れなお気持ち表明が痛々しく、それを身内でもファン同士でもない見知らぬ他人や記憶のない推し本人に直接ぶつけてしまうの、リアルな気持ち悪さが凄い。

そもそもこの物語、鈴波アミの最古参ファンである主人公の最古参ファンとしての面倒くせえ矜持・優越感とか、何も出来ない自分には出来ない事が出来るクリエイターたちに嫉妬するあまり視界を狭めていく厄介ぶり、ひたすら狭めた世界の中でさらに「推し」を美化して依存を高めていく精神性が一人称のはしばしから透けて見えて良くも悪くも痛々しいんですよね。いやでもドン引きしてる相手に逆に畳み掛けちゃうのとか最古参ファンの面倒くせえムーブとかあまり他人事ではない……気をつけよう……新規にウザがられない古参でありたい……。

ボロボロになりながらも掴み取った、最高の景色が美しかった

心の拠り所だった「鈴波アミ」から拒絶され、自暴自棄になった主人公を救ったのはVR世界での友人である「tos」さん。彼によって冷静さを取り戻した主人公は、自分が拒絶して狭めてしまっていた世界には鈴波アミを待ち続ける人たちが無数に存在することを教えられる。そして炎上によって繋がりを失ってしまっていた待機所で半年を過ごした仲間達と再会し、残された隠しメッセージの存在を知る。もう本当にtosさんが主人公を見捨ててたら普通に主人公が絶望して終わるだけだった気がするので本当にこの人が懐クソデカでよかったな……。

人脈を辿って鈴波アミを作り上げたクリエイターたちに連絡をとった主人公は自分が炎上したことすら反撃のための力に変えて、ファンもアンチも巻き込んで“彼女”を蘇らせるためのステージを築き上げていく。「鈴波アミを待っています」というシンプルなメッセージを彼女に伝えるためだけに用意された最高の景色。ネットに散らばる無数の想いが奇跡的に噛み合って一つの所に結実していくクライマックスが、何も持たない主人公だからこそ渡すことが出来た彼女の記憶の最後のピースが、とても美しかったです。

そしてエピローグ、特別な存在に恋い焦がれながらも「特別」になれたかもしれない機会を振り払ってふたたび「名無しの誰か」に戻っていく主人公の姿が印象的でした。やろうとすればいくらでも別人として1からスタートを切れるのがネットの良いところだよな……。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編7

 

「俺の話を理解できて、下手に口外しない人物だとおまえくらいしか浮かばなかった」
体育祭が終わり、高度育成高校初の文化祭が迫っていた。クラスに壁を作る長谷部や三宅、そして高円寺のような非協力的な生徒がいつつも、メイド喫茶の準備を秘密裏ながらも着々と進める綾小路たち。だが龍園はその動きを見逃さず堀北クラスとの協力契約を突如破棄。龍園クラスもまたコンセプトカフェの開催を宣言、さらに売上での一騎打ちを要求する。 一方、Aクラスへの可能性を失った自クラスに失望した神崎、そして綾小路に対決を反故にされ様子の変わった南雲生徒会長。2人に綾小路が自ら働きかけを始め――!? 「南雲生徒会長に提案があります。今度はオレから生徒会長へ勝負の提案をさせてもらえないでしょうか」

体育祭が無事終了し、いよいよ学園でも初の試みとなる文化祭がはじまる。様々な不安要素を抱えつつもメイド喫茶を中心とした出し物に注力する堀北クラスの面々だが、手を組んだはずの龍園クラスが突然コンセプトカフェでの対決を宣言してきて……!?

メイド!和装!!楽しいコンセプトカフェ対決!!!

ストーリー的にもこれまでの因縁が色々と決着する動きの大きい回でしたが、まず文化祭の出しものであるコンセプトカフェの運営話がめちゃくちゃ面白かった!いかにして客を呼ぶか、どうやって多くの客を効率的に捌くか、そしてどうやって客に金を使わせるか……経営バトル的な一面がアツかったし、次々と起きるトラブルを巧みに解決していく様子が最高に楽しい。生徒達だけを相手にすればよかったこれまでとはちがって、客として期間限定ポイントを持たされた来賓の面々にいかにアピールしてポイントを吐き出させるかが鍵になっていく展開、良いですね。

文化祭に備えて勉強した結果メイド喫茶に一家言持ってしまった綾小路が面白すぎるし、食事よりもメイドとの写真撮影で金を稼ごうとする姿がえげつないし、更には売上の為に担任教師すら利用してしまうやり口が最高にえげつなかった。発売前から公開されていた口絵の時点でそういうオチだろうとは思っていたけど予想以上に茶柱先生は公開処刑だったな……店舗特典SSに茶柱先生視点があったらマジで全力で獲りに行ってたけどなかったので残念。

一応龍園クラスとのコンセプトカフェ対決──という形をとっていたけど今回は他学年・他クラスとの表立った殴り合いもなく、なんだかんだで学園祭を楽しむ生徒達の生き生きとした姿がたいへんに微笑ましかったです。龍園さんと綾小路のWお誕生日会を龍園さんに蹴られてションボリしてる石崎可愛いかよ……テキ屋やってる宝泉が完全にその筋の者すぎて笑う。

退学は「死」ではない/綾小路グループの終焉

満場一致試験から続いてきたクラス内での不和や禍根の精算、そしていまだ新入生達の中で蠢くホワイトルーム生との対決……など、これまでの因縁をまとめて解決していく展開がとにかく爽快だった!復讐に囚われた波瑠加・彼女に連れ添う三宅との和解がおそらく今回一番のキモですが、クラス内で失った信用を取り戻そうと内外で自らのアンテナとコミュ力をフル活用する櫛田の活躍も凄まじい。MVPは間違いなく彼女ですよね。一ノ瀬を中心になかよしディストピアと化していたCクラス周りにもようやく再帰の光が見え始めましたが今回なんかろくに出し物の言及すらされてなくて当たり前のように学年内最下位でマジで本当に戦線復帰できるのか心配になる……神崎は強く生きて……。

退学は「死」ではないし、脱落者に待っているのは「終わり」ではない。たとえ道が分かたれても人生という物語は続いていく。退学した親友の「その後」を知って彼女と胸を張って再会できる卒業後の未来にたどり着くため、再び前を向いて歩き出した波瑠加の姿がすごく良かった。そして、久しぶりに笑い合う波瑠加と三宅と啓誠に背中を向ける綾小路の姿が印象的。愛里の退学によってほとんど終わっていたようなものでしたが、完全に「綾小路グループ」終わってしまったな……。

そして、綾小路の退学を狙うホワイトルーム生との対決ですが、綾小路が塩対応すぎてひたすら草生える。南雲生徒会長への塩対応もなかなかヒドかったですが、南雲や龍園や他の1年生を侮っていたホワイトルーム生の自業自得とはいえ、もはや自分は一切表に出ないで来賓を含む他の面子を一箇所に集めて殴らせるの、割りと全力で相手のプライドをへし折りにいってて笑う。一学期はわりと綾小路が遅れをとる展開が多くて鬱憤たまったけど、満場一致試験以後は綾小路の黒幕感・俺TUEEぶりが絶好調で本当に楽しいな!!一方で今回退場した彼と同じくらい塩対応受けてた南雲生徒会長にはやっと直接対決の機会が巡ってきそうでこっちも楽しみ。

綾小路に何かとアドバイス(?)する謎の存在も気になるけど、1年生編の終盤からずっと続いてきた「1年生の中に潜むホワイトルーム生と綾小路の対決」についてはとりあえず一段落?あとがきでシリーズ完結を伺わせる発言がありましたがこれだけ人気絶頂なのに3年生編やらずに2年生の最後で終わるのか。1-Cの椿・宇都宮が完全にこちらが知らない話してるの、椿主役のスピンオフでも始まりそうだなと思ってしまったが果たして。

ところであとがきで2期の円盤特典が綾小路の過去編という告知でひっくり返ってしまった。そんなんみんな(クソデカ主語)読みたいやつじゃん!!!!!!!

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VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった

 
伍長

スパチャで借金返済!? 俺がマイクになったVはクズでした……。
なぜかVTuber加々宮エリンのマイクに転身した俺。リアルに推しの声を聴けるなんて役得……と思ってたら、配信中にエリンがギャンブル狂いのクズだと発覚!? しかもスパチャで借金返済すると言い出して!?

ある時から推しVtuber・加々宮エリンのマイクに意識が移ってしまうようになってしまった、普通のVtuber好きの高校生・三樹春人。マイクとして知った彼女の「素」の姿を面白いと感じた彼は、故意的に配信事故を起こして彼女の正体を晒してしまう。はたしてエリンは、清楚でかわいいメイドさんアバターと多額の借金を抱えたギャンブルクズというギャップのあるキャラクターでVtuber戦国時代を下剋上していく──!?

Vtuber・加々宮エリンのキャラが最高におもろい

人間としてはあくまで善良だが、ギャンブルが大好きでヒリつくスリルが大好きで金銭感覚イカれてるだけで自然にギャンブルクズ発言しながらリスナーに金をせびり「スパチャで借金返済」と言い切る、存在自体がギャンブルみたいなエリンのキャラ(ほぼ素)がめちゃくちゃ良かった!!キャラクターコンセプトがメイドなのに、素の姿がバレてからは慇懃無礼にリスナーに金払わせようとしてくるところとかクセになる。連帯保証人多すぎません!?(※リスナーの愛称です)

個人的にお気に入りなのは競馬配信の回。オタク特有の早口で生き生きと予想をしているエリンの楽しそうな姿と隙あらばギャンブル性の高い賭け方をしようとするギャンブラーの生き様、そして笑いの神様に愛されてるとしか思えない顛末が面白すぎて、リスナーと一緒に一喜一憂してしまった。競馬のことは何もわからないけど、オタクが自分の好きなものについて語ってる話は健康に良いよね。エリン、笑いの神様には愛されているけどギャンブルの神様には全然愛されてないのが悲しい。

そして、キャラクターが面白いというだけではなくて、どんな逆境でも逆手にとって自分の魅力に変えてしまえるトーク力が凄すぎるんですよね。普段のリスナー達とのコメントの掛け合いももちろん楽しいんですけど、配信事故を起こしてしまってもただの事故で終わらせずに切り替えて自分の本性を混ぜ込んだ無茶苦茶なキャラクターを演じていくその対応力、アンチコメや意地悪な先輩からの心無い言葉すら自分のフィールドに持ち込んで笑いに変えてしまう所、本当に読んでいて安定感しかない。最終的に借金取りの担当者まで自分のファンに引き込んでしまう手腕には笑った。

主人公のプロデューサーとしての腕がじわりと光る

色々な意味でこの物語は「加々宮エリン」の個性の強さ・キャラクターとしての魅力で成り立っているんだけども、それを見守っているだけのようで巧みに彼女の方向性を舵取りしていく主人公の関わりかたがまた面白かった。配信事故をわざと起こすのはどんなに葛藤してても結果オーライだとしても普通に邪悪だとは思うし、やった相手が喋り強者のエリンじゃなかったら死んでたと思うが!!

自分の作った設定を意識しすぎて無難なキャラクターを演じていて鳴かず飛ばず状態だったエリンに配信事故を起こさせて本性を引き出し、それ以後は彼女の正体を知らないバイト先のエリンリスナーの同僚として彼女にそれとなく「アドバイス」をしていく。どんなに才能があっても売り方次第で埋もれてしまうVtuber戦国時代、良くも悪くも主人公の裏からのサポートがなければこの人材発掘できてないんですよね。それにしてもマイクがオンになると意識が強制的にそちらに移動してしまう設定、めちゃくちゃ面白いんですけど学校の授業中とかテストの最中にエリンがゲリラ配信とかはじめたら死んでしまうな……。

「マイク設定を弄るくらいしか出来ないマイク」の自分と「何も知らないバイト先の同僚」でしかない自分。出来ることが限られる中で巧みに加々宮エリンをプロデュースしていく主人公が面白かったです。そしてその活動の集大成ともいうべきクライマックス。憧れのVtuberとコラボすることになりガチガチに緊張していた彼女を最初の事故を彷彿させる展開で正気に返す展開、そこからの借金完済という展開がとにかくアツかった。その後の(リアルでの)オチまで含めて完全に笑いの神様が憑いてたけどな!!!

コメント欄との掛け合いも含め、気楽に読めるとても楽しいお話でした。綺麗にオチはついてたけどこれは続編作ろうとすればどうとでもなる終わり方ですよね!?続編待ってます!!

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死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから(※ただし好感度はゼロ)2

 

「次は僕が頑張る番というわけか」
オリアナの死を目の当たりにした直後に意識を失ったヴィンセントは、 気がつくと四歳の頃に巻き戻っていた。 次こそは死に戻りを乗り越えるために、 入学するまでに着々と準備を進めていたが、 今度は彼女に二巡目の人生の記憶がなかった。 自分を好きになってもらう努力?? 完全な不得意分野を、ヴィンセントはなんとか突き進む…! 前途多難な三巡目の魔法学校生活、スタート!

めでたく両想いになったのもつかの間、4歳の頃に死に戻りしてしまったヴィンセント。今度こそ死に戻りを乗り越えて彼女と幸せな未来を迎えようと独り奔走し、満を持して魔法学校への入学を迎えるが、今度はオリアナの方が死に戻る前の記憶を失っていて……。

前巻以上に恋愛を拗らせたヴィンセントの七転八倒可愛すぎる

記憶を持って死に戻ったヴィンセントと二巡目以前の記憶を持たないオリアナ、前巻とは正反対の立ち位置でスタートする三巡目を描くシリーズ第二巻。女性に対する経験が足りなさすぎるヴィンセントが表面上はお堅い優等生を装いながらオリアナとの距離の詰め方がわからなくて七転八倒してる姿が正直可愛すぎた!前巻でも相当オリアナへの想いを拗らせていましたが、死に戻りという異常現象に加えてオリアナの記憶喪失が相まって完全に恋愛面に関してポンコツになっちゃってるの微笑ましすぎる。「何故オリアナは僕のことが好きじゃないんだ」(※オリアナにとってはまともに話すの2回目くらいの頃)で腹抱えて笑ってしまった。それにしても本人も言ってましたがオリアナ談めちゃくちゃスマートに向こうから告白してくれて常にオリアナを巧みにリードしてくれたとかいう「ヴィンス」、オリアナ側のフィルターがかかっている可能性を差し引いてもどう考えても人生一巡目のヴィンセントじゃなくないですか……下手するとこれ全然ループ三周目なんて生易しいものじゃないのかもしれないぞ……。

入学前に書いたヴィンセントの宣誓書とか、毎年こっそり二巡目の人生での出来事を踏まえた花束を送るヴィンセントとか、エピソードがいちいち甘酸っぱすぎるんですが本当にこの人、人生二巡目とは思えないほど恋愛と言うか人間関係構築するのが下手クソだな……休暇中のオペラハウスでの邂逅とかもヴィンセントが苦労してオリアナと遭遇できるチャンスを探ってたのにオリアナが「冗談」だと済ませてしまうのとかも本当にニヤニヤしてしまう。距離感を図り間違えたら最後ストーカー扱いされても不思議ではないところをギリギリ「イケメン無罪」で切り抜けていく感じのヴィンセントの拗らせっぷり、本当に良かったです。

オリアナのことが好きすぎて彼女が何やっても可愛いし彼女の一番でありたいという気持ちが今にもはみ出しそう(はみ出してる)な反面オリアナ含むだれとも二巡目の人生での記憶を共有出来ないことに苦悩するヴィンセント。友達から始まって少しずつヴィンセントへの恋心を育ててきたけどヴィンセントが時折語る「大好きな女の子」(※二巡目の人生でのオリアナ)の話を聞いて自分が彼の眼中にないことに絶望して割り切ったつもりでも割り切れないオリアナ。オリアナを手に入れて二人の死亡フラグを阻止するために勉強に専念して二巡目よりも人間関係が希薄になってしまったヴィンセントと、第二クラスで友人達に囲まれて楽しそうに過ごしているオリアナ。1巻とは真逆になってしまった二人の立ち位置と両片想いの行方が印象的でした。いやでもいくら立場が入れ替わったとしてもここまで完璧にかつての相手と同じ想いを拗らせるこの二人、間違いなく相性バッチリだとおもうんですよね早く結婚した方がいいよ。

二人の立場が逆だからこそ見えてくる新事実、前と同じ道を辿っているようでいて少しずつ変わっていく展開も楽しかった。もちろん一番気になるのは二人の死を巡る謎の解明ですが、細々とした所が違うので同じイベントの話でもどこがどう違うのかワクワクしながら読むことが出来ました。特に一巡目では想いに気づけず、二巡目では悲恋に終わってしまったヤナとアズラクの関係、ヤナが自分の気持ちを打ち明けたりアズラクがオリアナのパンツを捕るイベントが発生しなかったりしたことが三巡目でどう変化するのかとても気になる。あとどう考えてもループに関係してそうなミゲルの意味深ムーブ……。

三巡目の途中でまだまだお互いへの気持ちを拗らせたまま完結編となる3巻へ続く。果たしてふたりは死に戻りを乗り越えることができるのか、最後にどういった結末が待っているのか楽しみで仕方ありません。

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強制的に悪役令嬢にされていたのでまずはおかゆを食べようと思います。

 

ラビィ・ヒースフェンは、16歳のある日前世の記憶を取り戻した。今生きているのは、死ぬ前にプレイしていた乙女ゲームの世界。そして自分は、ヒロインのネルラをいじめまくった挙句、ゲームの途中であっさり処刑されてしまう悪役令嬢であることを。 しかし、真の悪役はネルラの方だった。幼い頃にかけられた隷従の魔法によって、ラビィは長年、嫌われ者の「鶏ガラ令嬢」になるよう操られていたのだ。 今ついにその魔法が解け、ラビィは自由の身となった。それをネルラに悟られることなく、処刑の運命を回避するために必要なのは「体力」――起死回生の作戦は、屋敷の厨房に忍び込み、「おかゆ」を作って食べることから始まった。 毎晩おかゆを食べ続け、徐々に回復してきたラビィ。彼女を蔑んできた弟のフェルや、形だけの許嫁である第一皇子のバルド、バルドの命令でラビィの監視をしていたサイなど、周囲の目も変わり始め――!?

メイドのネルラから隷従の魔法を掛けられ、意に沿わず気の狂った令嬢を演じ続けていたラビィ。16歳の雨の日、奇跡的に魔法の影響から脱するのと共に前世の記憶を思い出す。ここが乙女ゲーム『ハリネズミの国にようこそ』の世界であり、自分は悪役令嬢としてヒロインのネルラを苛め抜き、婚約破棄から処刑エンドに至る脇役キャラであることを。処刑される前に逃げなければと思うものの、ネルラに操られていた頃の影響で味方もなければ体力もない。食事すらロクに取れない状態で……!?

雨垂れで岩を穿つかのような、努力と根性の物語

転生モノっぽいし、タイトルからなんとなく「おかゆ(※すごいマジックアイテム)」みたいなものかとおもったら違った!孤立無援の状態で目と鼻の先の破滅フラグを突きつけられた主人公がまずは「体力をつける」という本当に小さな一歩から始めて少しつづ人間としての矜持と尊厳を取り戻していくお話でした。

ネルラに隷属・監視される日々から抜け出したのは良かったものの10年以上食事をまともに与えられなかった彼女の見た目は骨と皮だけ、歩くのもやっとという重篤な栄養失調状態に。貴族の高カロリーな食事は胃が受け付けず、家族も含めて家の人間はネルラに骨抜きにされていて食事を任せられるような従者もおらず、仕方なく自ら夜な夜な食堂に赴いては前世の料理の知識を元に米を茹で、(他に食べられるものがないので)「おかゆ」を作って食べるという毎日を送ることに。

これに限らずとにかくレベル1どころかバッドステータス盛り盛り状態で身動きの取れない所から始めた主人公がチートもユニークスキルも使わずとにかく少しずつ自分のできる範囲で努力を積み重ねていく展開がとても良かったです。前世が営業職という設定も色んな意味でメンタル強くて草の根活動から頑張る彼女の行動に説得力を感じられてよかった。ヒロインの目を盗んで鍛錬(というか体力づくり)を繰り返し、おかゆから少しずつ味のある食べ物にステップアップしていって、魔法への理解を深め、国外逃亡のための資金を貯め、その中で周囲の人間達との確執も少しずつ取り払われていって……地道な行動によって少しずつ味方も増えてくる。そんな彼女の小さな努力が実を結んで国家を脅かす巨悪を打倒するという、雨垂れ岩を穿つを地で行くようなクライマックスでとても心地良かった。対して、敵であるゲームヒロイン・ネルラはラビィなどすぐに潰してしまえるような圧倒的な力を持っていて、いい感じにストーリーに緊張感がある。彼女とは開始直後に距離をおくことになるので意外に本編ではあまり関わってこないんですが、一度彼女が動いたら最後これまでラビィが地道に積み上げた物も全てひっくり返して即破滅目前!!みたいな状態になってしまうのでハラハラしながら見守る羽目になりました。

恋愛要素もちゃんとあるけど、破滅エンドに立ち向かうので精一杯なラビィが自分への恋愛感情に全く気づいていなくて、全てが終わってからようやく恋愛の方に意識が向くのさもありなんで良かったな。こんな極限の状況でイチャイチャされても反応に困るもんな。偶然ふたりのやりとりを目撃した弟のフェルから「姉さんがいやらしい目で見られてた!」みたいなこと言われてしまうの本当に微笑ましくて笑ってしまう。努力の人なヒロインとその努力にこそ価値を置く彼の人はお似合いだと思うし、幸せになって欲しい。

「乙女ゲーム」の使い方も面白かった

このお話、とにかくものすごい努力と根性の物語ではあるんだけど、元になった乙女ゲーム『ハリネズミの国にようこそ』の転生後世界の関わり方がめちゃくちゃ面白かった。そもそも乙女ゲームの悪役令嬢転生モノで「ゲームヒロインが悪」というのは割りと珍しくはないけど、ゲームの展開が何らかの事情で歪められていたりゲームヒロインも転生者で〜という展開が殆どなのでこの作品のように元々の設定としてゲームヒロインが悪・悪役令嬢が被害者となっているのはかなり新鮮に感じる。また、ゲームに登場するキャラクターの名前が動物モチーフで統一されていて、その名前がキャラクターの内面や立ち位置を理解する上でのヒントになっているのも興味深い。

果たして『最高のバッドエンドをあなたに』というキャッチは誰の視点から言われたものなのか?バッドエンドを謳っているのにヒーローと両想いになるエンディングがメインに据えられているのは何故なのか?ゲーム内に散りばめられた様々な伏線が、現在ラビィが生きる現実の世界で窮状を打開するためのヒントになっていく展開が最高に面白かったです。ネルラから逃れる方法を探していくうちに転生前には気づくことの出来なかった様々なゲーム世界の裏設定が明らかになっていくのが印象的でした。

1冊で綺麗にまとまっているし、そういう意味でも凄く良かったな。
小説家になろうに掲載されている番外編も良かったし、コミカライズも良かったです。オススメ!

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死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから(※ただし好感度はゼロ)1

 

「会いたかった!」 「申し訳ないが、人違いだろう」
オリアナにとって公爵家嫡男のヴィンセントは優しく一途な、最愛の恋人だった。 幸せな学校生活を送っていたが、十七歳の春に二人とも謎の死を迎えてしまう。 ――気がつくとオリアナは七歳の頃に巻き戻っていた。 入学式に念願の再会を果たすが、ヴィンセントには前の人生の記憶がなかった。 しかも、付き合っていたことをほら話だと思われてしまい、第一印象は最悪に……。 それでもオリアナは決意していた。この人生では必ず彼を守り抜くと。 彼が心配でなんとか傍に居続けようとがんばる女の子と、彼女が気になりながらも素直になれない男の子の、生きるか死ぬか二度目の魔法学校生活、スタート!

最愛の恋人と共に不可解な死を遂げたオリアナ。7歳から人生をやり直すことになった彼女は魔法学校で最愛の恋人・ヴィンセントと再会する。ところがヴィンセントには前回の生の記憶はなく、出会い方が変わったせいもあり初対面での好感度は最悪になってしまう……!?

人生2回目の少女×素直になれない少年が織りなす両片思いの複雑骨折

人生二周目で最愛の彼の死亡フラグを折るべく行動をはじめたものの一周目では向こうから告白してくれてずっとイチャイチャ状態だった相手からめちゃくちゃ塩対応されてしまって彼に死んでほしくないのは真実だけどいくら尽くしても報われない一方通行な想いと彼が別の女とくっついてしまうかもしれない焦燥に時折身を焼かれそうになるヒロイン・オリアナと、オリアナからの猛烈アタックを最初は煙たがっていたものの彼女の明るい性格に少しずつ心を許していったらその途端にオリアナから人生二周目の話を聞かされて「彼女が好きなのは一周目の人生での自分だ」と気づいてしまって彼女からどんな言葉を吐かれてもそれをまっすぐに信じられず不毛な方向に恋心を拗らせてしまったヴィンセント。両想いのはずなのに一周目の人生に翻弄されてお互いの本当の想いがわからなくなってしまったふたりが恋心を拗らせていく様子がめちゃくちゃ可愛かった!!報われなくてもいいからヴィンセントを死の運命から救いたいと思う反面かつて彼に愛されていた記憶がそれを邪魔してしまう、彼の傍に居るために捨ててきた一周目の人生での友人や楽しみに時折足を引っ張られてしまう、人生2周目だけどどうしようもなく年相応の少女でしかないオリアナの想いが印象的だったし、クールで大人っぽく近づき難い優等生だと思われていたヴィンセントが内心では凄く年相応の少年らしく恋心を拗らせていて、オリアナと仲の良い同級生男子どころか人生1周目の自分にすら嫉妬心を燃やしてしまうのが微笑ましい。最初はオリアナ→ヴィンセントの一方通行状態だったのが、ストーリーが進むにつれてヴィンセントの方が重たくなっていくのにはニヤニヤが止まりませんでした。

メインふたりの恋愛模様も大変良いのですけど、ふたりをとりまく周囲のキャラクター達も魅力的でした。特にオリアナの親友で異国の王女・ヤナとその護衛・アズラクの恋物語がとても切なくて。このふたり、良くも悪くも気持ちのちょっとした行き違いからの別れだったので今後の展開で幸せになるといいんですが……。あと、オリアナがこれだけ派手に求愛行動を繰り返していて、大きな虐めとかもなくクラスメイト達が暖かく見守ってくれてるのに大変ほっこりする。いやそういう描写が無いだけかもしれないですが……優しい世界……。

オリアナとヴィンセントのふたりがお互いの気持を拗らせまくりつつも少しずつ距離を縮めていった矢先……という所からの、なかなか衝撃的なラストで大変続きが気になる。なんとかして全員幸せになって欲しい!!

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