ページ 27 | 今日もだらだら、読書日記。

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帝都つくもがたり

 

売れない作家の大久保のもとに、大学からの腐れ縁で、今は新聞記者の関が訪ねてきた。「怖がり役」として、怪談集めを手伝ってほしいという。嫌々ながら協力することになった大久保だが、先々で出遭ったのは、なぜか顔を思い出せない美しい婦人や、夜な夜な持ち主に近づいて来る市松人形など、哀しい人間の“業”にからめとられた、あやかし達だった―。西へ東へ、帝都に潜む怪異を集める、腐れ縁コンビのあやかし巡り!

男の腐れ縁とか悪友とかそういう忌憚のない関係が好きなら〜とおすすめされたのですが、面白かった!軽口をたたき合う中に時折覗くお互いをかけがえのない友人と思っているようなやりとりが大変に楽しいのだけど、二人の関係を掘り下げるクライマックスがとても良かった!男男間の巨大感情は良いものです。

腐れ縁の男二人、ふたりでひとつの「ひゃくものがたり」

酒浸りの三文作家・大久保は腐れ縁の新聞記者・関に誘われて、様々な怪異を追うという記事の取材に「怖がり役」として同行する羽目に。取材として怪異に纏わる人々の業に触れるたび、大久保の胸の内にとある思いが芽生えていって…。

昭和初期を舞台に、人が引き起こす怪異とその顛末を描く連作短編。「怪異」ということでホラー的なちょっと怖い話を想像していたのですがどちらかというと描かれるのは怪異を引き起こすような人の深い業で、少し物悲しいお話が多かったです。また、重い話を重くしすぎない大久保・関という二人の腐れ縁の男たちの軽妙な掛け合いが楽しかった。

死に惹かれる男と死を忌憚する男、対象的な男ふたりの巨大感情

怪異を引き起こす人間の業に共感し、徐々に思い入れていってしまう大久保。対称的に、怪異を引き起こす人間達に興味はなく時に辛辣な言葉も浴びせるが、相手がどんな人間であれ人死にが出そうな場面では必死になって食い止めようとする関。正反対のふたりの腐れ縁なやりとりが大変楽しく、二人が同時に時折覗かせる信頼関係、執着みたいなものにそわそわしてしまう。

そんなふたりの関係を深く掘り下げていくのが大久保自身の怪異のお話「捌話 鏡のむこう」で、これまでの物語で人の業に共感し続けた大久保が死に囚われてしまうお話なんだけど、プライドをかなぐり捨ててでも大久保を救おうとする関の奇妙なまでに必死な姿と、そんな彼が吐露した本音がとても良かった。

過去の自己否定の経験を礎に死を怖がりながらもどうしようもなく死に惹かれてしまう大久保と、様々な死別の経験を礎に死を忌憚し、これ以上自分の周りで人が死ぬことこそを恐れる関。大久保自身の生命を掛けて繰り広げられる腐れ縁二人の対峙が印象的でした。大久保の他者共感がどこまでも自分自身を見つめる行為であるように、関が自分とかかわった人間の死を許せないのも自分自身のための行為であるとおもうんだけど、どこまでも自分自身の為であると同時にお互いの存在に救われている/縋らなければ生きていけない姿がたまらない。

ちょっと痕を残すような後味の物語達が楽しい

個人的には読みやすい短編と読みづらい短編が真っ二つで楽しみ切れたとは言いづらいのですが、大久保が美しい女性と恋らしき何かにとらわれるお話であり、物語のターニングポイントでもある「参話 雨宿りのひと」がすごくよかった。ジャパニーズホラー的な展開でありながら、雨の日、影のある女性との一瞬の逢瀬というムーディーな展開と生き生きと描かれる彼女の生きざまがおそろしさを感じさせず、ほろ苦い後味だけを残していくのがたまらない。

あと、大久保の担当編集・菱田が怪異に巻き込まれる「肆話 とおい本棚」が超好き。本が好きすぎて編集者になった男が奇妙な古書店と遭遇するお話で、怪異にとらわれて欲望の赴くままなにもかもを投げ出してしまいそうになる姿が大変に恐ろしいのですけど、彼を現世につなぎ留めたのも物語への執着であるという展開が本当に本読みとは業の深い生き物だなと……。そして菱田の言い分が本読み的に「わかる…」しか言えないので困る。その後も怪異を振り切れてないラストも「わかる…」しか言えない。

好きなシリーズほど速攻で打ち切られるのはなんなんでしょうねホントに!!!

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悪役令嬢レベル99 その2 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

 
Tea

「とりあえず山と魔物を消し飛ばせば農地ができるよね」RPG系乙女ゲームに悪役ならぬ裏ボス令嬢として転生しながら、ひとまず無事魔王を倒し、学園を卒業した私、ユミエラ。恋人同士になった(ような気もする)パトリックも領地についてきてくれるとのことなので、人生順風満帆だ。だが、治めるべき領地は両親のせいで荒れ放題。腐敗貴族達も第二王子を担ぎ上げて、何やら企み始めているらしい。まあ力業で何とかしますよ──ってどうして止めるの、パトリック? え、私が暴れるほうが被害甚大だからやめろ!?

俺TUEE物というよりコミュ力ポンコツな脳筋令嬢と彼女のフォローをしてくれる奥手な青年貴族のポンコツ系ラブコメ(コメ強め)としての色合いが強くなってきて超楽しかった!全然噛み合ってない会話の応酬で何度も笑ってしまう。それにしてもユミエラは本当にこのコミュ力で前世社会人やっていけてたの……?(ブーメラン発言)

思った以上に優しい世界になってる…!?

両親とのごたごたの末、両親の地位を(半ば強制的に)譲り受けて新たなドルクネス伯爵となったユミエラ。長いこと代官にまかせきりだった領地は荒れており、代官から渡された報告書にも不審な点があるという。第二王子エドウィンを担ぎ出そうとする過激派が盛り上がり、不穏な空気が漂う王都を尻目にパトリックとともに領地に向かった彼女を待っていたのは、領民達の意外な反応で…。

あらすじからして内政話をやるのかな?とおもったらそのへんは9割位は力技で解決していて流石でした。やはり筋肉(ダンジョン周回)は全てを解決するんだよなあ。

ユミエラ幼少期の悪行(レベル上げ)がまさかの結果オーライに。ユミエラの両親とアリシア&その取り巻き達が1巻時点で排除されてしまったせいか、よくも悪くも「悪人」の居ない世界観になったなという印象。代官もパトリックの実家も予想外に「良い人」達で……だからといって、主人公の最大のライバルが無機物(結界)なのはどうなんでしょうかね!?ユミエラのそういうとこほんと好きだけどさ!!

奥手×恋愛オンチのポンコツラブコメ(コメ寄り)が最高に楽しい

ユミエラのバトルジャンキー&脳筋具合は相変わらず健在なんだけど、それ以上に今巻はコミュ力底辺恋愛ポンコツ娘なユミエラと奥手でいいヤツなパトリックが繰り広げるラブコメ(コメ寄り)が最高に楽しかった!もう完全に両想いで1巻のラストで恋人同士になっているはずなのに本人も知らない間にバッキバキに恋愛フラグを叩き折っていくユミエラと、勇気を出してユミエラにアタックしては勘違いされて砕け散るパトリックの恋愛模様が可愛くてたまらない。指輪の件とかは正直サプライズにするよりも本人を交えて選んだほうが後腐れもすれ違いもなかったのでは!?と思わなくもないんですが、喋れば喋るほど恋愛とは程遠い方向にズレていく会話の応酬に何度も腹抱えて笑ってしまった。いやもうほんと、こういうギャグ要素の強い残念なラブコメ、めちゃくちゃ好きなんですよ!!

一方、何かと誤解を与えやすいユミエラの行動をパトリックが不断の努力で誤解を生まないよう立ち回ってくれるのが読んでて凄く高感度高いんですよね。修復不可能だと思われていたエドウィン王子とユミエラの関係を修復することができたのも彼の行動があってこそでしたし。そして、こんなに自分のために一生懸命になってくれる男の子にユミエラが惚れないわけがないんですよね。パトリックの挙動挙動にときめいてしまうユミエラの姿にニヤニヤが止まらないんですが、なんでここまで解ってるのに自分への好意だけは理解できないのかなこの娘は〜〜!!

エレノーラとユミエラの「友情」もアツかった

第二王子・エドウィンを担ぎ上げようとする過激派貴族の筆頭・ヒルローズ公爵。そして、彼の娘でありながら底抜けのお人好しで騙されやすい令嬢エレノーラ。エレノーラに懐かれたことを「面倒くさい」と思っていたユミエラが、少しずつ彼女の境遇に共感し、感情移入していく姿が印象的でした。立場は違えど自らの生まれ持ったもののせいで同性の友人と呼べる存在に恵まれなかった二人が距離を縮めていく姿が印象的。

そして、圧倒的な力を持つ反面、なんだかんだと人が良いユミエラの「弱点」を突いてくるヒルローズ伯爵との対峙。カンストしていても決して無敵ではない彼女の窮地を再び救ったのは常に彼女に並び立たんと不断の努力を続けてきたパトリック、というのがまた良かった!一種の俺TUEEモノでありながら、最初から一貫してパトリックがユミエラの「ヒーロー」として描かれているの本当に良いですね……。

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Fate/Requiem 1 「星巡る少年」

 
NOCO
 
原作
TYPE-MOON

―――昔、大きな戦争があった。 戦争は終わり、世界は平和になった。今では誰もが“聖杯”を持ち、運命の示すサーヴァントを召喚する。 ただ一人の少女、宇津見エリセだけがそれを持たない。 少女は、世界で最後に召喚されたサーヴァントの少年と出会う。 だが彼女はまだ、自分の運命を知らない。

1巻が無料配信されていたので駆け込みで読みました。他のFateシリーズとは一味違った、「FGO」の設定を思わせる世界観が印象的な“最新”のFate。個人的には今やってるコラボイベのマップ・設定・ビジュアルが頭にあったせいでかなり読みやすかったな思うんですが、現在FGOにログインするともれなく色んなネタバレを喰らうのでネタバレを踏みたくないひとは強く生きてほしい。

その日、少女は待ち望んだ「運命」と出会う

聖杯戦争によって大きく変貌した世界。そこでは誰もが聖杯と令呪を持ち、サーヴァントを召喚することが出来る。そんな世界でただひとり聖杯も令呪も持たない少女・宇津見エリセは「臨海都市」となった秋葉原でサーヴァントを狩る“死神”と呼ばれていた。

主人公のエリセが世界中でただひとり聖杯も令呪も持たざる身でありながら、「英霊」という存在に憧れ、彼らの存在をどれだけ尊んでいるのかそこかしこから伝わってきて、そんな彼女がサーヴァントを“狩る”存在であることになんとも言えないもどかしさを感じた。英霊を狩る存在だからこそ彼らのことを深く知りたい、自分が滅ぼす彼らのことを覚えていたい、出来れば消滅させずに収めたい……と、彼らに真摯に向き合おうとする姿が印象的でした。

当たり前のように自分のサーヴァントを持つ住民達、そして本物の「令呪」を持つ魔術師である祖母に囲まれて育ち、ひたすらにその憧れを育み続けた彼女だからこそ、1巻まるまる使って描かれる彼女自身の「運命」との出会いに胸が熱くなってしまいました。

FGOをやってるとニヤリとするかも

誰もが聖杯と令呪を持ちサーヴァントと契約することが出来る、本物の聖杯戦争ほどの強さは持ち得ないが令呪は時間で回復するという世界観設定に物凄く「FGO」っぽさを感じる。Fateシリーズは元々シリーズによってかなり聖杯戦争やサーヴァントの立ち位置が異なるのですが、これは特に「聖杯戦争によって変化した後の世界の物語」ということで、かなり特異な立ち位置なのかなと。あとやはり設定上、登場するサーヴァントの数がぶっちぎりで多いのでチョイ役であんな鯖やこんな鯖が出てくるのにニヤニヤしちゃう。

個人的には、レクイエムコラボでかなり世界観や物語への興味をかきたてられたなという印象なのですが、同時に今FGOにログインすると普通にガチャ画面で1巻のラストで明かされるはずの謎(=少年の真名)とか盛大に明かされてますし、エリセの能力なども普通にイベント中にネタバレしていくスタイルなのでネタバレに触らずに読みたいという人はゲームには触れずに先にこちらを読んだほうが良いかも(このSNS社会でそこに触れずに読み切ることが出来るのか?という問題は横においておいて)。

コラボ限定のマイルーム背景とコラボのマップ画面がめちゃくちゃ好きで「おおっ!」となったんですよね。原作の口絵のイラストもめちゃくちゃ良いですがイベントマップで俯瞰状態で眺められるのめちゃくちゃいいな〜って思いました。絶妙に現在の「秋葉原」の知ってる所がそこかしこに残ってて、知ってる場所でありながら知らない場所になっているのにすごくロマンを感じました。

物語としてはまだほんの序盤

1巻ではエリセと少年サーヴァントが契約を結ぶところまでで、面白くなるのは次巻からかなという印象。少年サーヴァントに関してはこちらよりもFGOコラボの方が深堀りされているのではってレベルだし鬼女紅葉の再臨段階なんか今後のネタバレなのでは!?ってならなくもないんですが。

今後どうなっていくのか読めないので、次巻を楽しみにしていようと思います。

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悪役令嬢レベル99 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

 
Tea

RPG系乙女ゲームに悪役令嬢ユミエラとして転生した私。でも実はユミエラは、本編ではショボいが、エンディング後には裏ボスとして再登場し勇者と渡り合うキャラで―つまり超絶ハイスペック!ついゲーマー魂に火がついて鍛えた結果、学園入学時点で私はレベル99に達してしまっていた。ゲームのストーリーには関わらず目立たず平穏に過ごすつもりが、入学早々レベルがバレて、ヒロインや攻略対象達には魔王と疑われてしまい…!?

前世でやりこんだ乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生した主人公。いずれゲームクリア後の世界で裏ダンジョンの隠しボスとして覚醒する予定の彼女は、前世知識をフル活用して破滅フラグを回避する──のではなく、前世のゲーム知識をフル活用して猛然とレベル上げをしはじめる。そう、主人公は乙女ゲーマーではなく、周回プレイ・レベル上げが大好きなやりこみゲーマーだったのです…。

やりこみゲーマーの私TUEE×もどかしラブコメ

序盤は突っかかってくるヒロインや攻略対象たち、彼女の持つ圧倒的な力を利用しようとする勢力をパワーでなぎ倒して黙らせていく私TUEEモノ。物語開始直後に速攻でカンストしてしまうのでなろう小説にありがちなレベリング描写が殆どないのが特徴的でした。ところが、彼女の数少ない理解者・パトリックと出会った辺りから物語がすこしずつ色を変えていきます。

人命無視&効率優先の無茶なパワーレベリングを提案するユミエラにドン引きしつつも彼女のブレーキ役となり状況をまとめるパトリック、という遠慮のない関係性が滅茶苦茶に好きなのですが、更にそこから物語が進むにつれて少しずつ二人の距離が縮まっていくのが最高に可愛い。圧倒的な力と忌み嫌われる黒髪と闇魔法を持つせいで孤立していたユミエラがパトリックという存在を通して他のクラスメイト達との繋がりを獲得していくのが印象的でした。

前世ではオタクをこじらせ、今生では孤立してしまったユミエラが不器用ながらも「パトリックに嫌われたくない」と考えるようになるまでの流れと、ユミエラと対等で居たいパトリックがユミエラが予防線として口にしていた「自分より強い人が好み」という言葉を拗らせてなかなかユミエラに気持ちを伝えられなくなってしまい、だいぶ前から両想いなのになかなか思いを伝えあえないというもどかしさにニヤニヤが止まらない。

やはり筋肉(ルビ:レベル上げ)は全てを解決する

一方で、ユミエラの無茶苦茶なレベリングが現状の改善に作用していくのも印象的でした。ゲーム本編において彼女の心情は語られないので想像を重ねていくしかないのですが、本来家柄が良いわけでもなく、黒髪を持つせいで両親からも周囲からも疎まれ、学園内に居場所を作ることが出来ず悪役令嬢の立場に追いやられてしまった“ユミエラ”が、ゲーム版の展開とは違ってパトリックという理解者を得て自分の居場所を作り、責任のある立場になってでも世の中を変えたいと思うまで成長することが出来たのは、間違いなくレベルを上げていたおかげなんですよね。やっぱり筋肉は全てを解決するんだなあ……。

自分の危険も顧みないレベリングによってこれまでの全てを勝ち取ってきたユミエラが、最後の最後で「大切な相手のために自分を大事にする」ということを学び、そのおかげで最大の窮地を脱することができるという展開がまた熱かったです。余談ですが両親の育児放棄の件についてユミエラが「精神年齢30歳だし両親からの干渉なくてむしろ快適だった」みたいなこといってるのはかなりインパクトありました。確かに精神年齢30歳だと、育児放棄についてはほぼ嫌がらせにはならないよね…。

ゲームヒロインちゃんにはなにかフォローがあってもよかった

ユミエラとは対象的に、ゲームとは違ってレベルをあげなかった、研鑽を怠ったせいで最後の最後で痛い目を見てしまうのがゲーム正ヒロインのアリシア。割とこの物語、クズ成分がアリシア及びユミエラの両親に集中していたのでこの辺どうフォローするのかとおもったんですが結構さっくり使い捨てキャラにされた感があり少し残念。アリシアが異常にユミエラを敵対視するのに原因とかあるのかなと思っていたのですが結局純粋に性格が悪かったから自分以上に目立った女が許せなかったということで良いのだろうか……エドウィン王子以外の取り巻きの使い捨て感もすごかった。

まあその辺は続刊でフォローされるのに期待、と思っていたのですがなろうで原作の該当部分ざっくり読むと地味に展開が変わっていて、どうかんがえてもフォローなさそう。というか彼女の処遇に関しては、今後フォローがない感じならなろう版の結末の方がしっくりくるなあ……。

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3巻無料にかこつけて『ようこそ実力至上主義の教室へ』を布教する

「キミラノ」とMF文庫Jのコラボ企画で、
5/15〜297/19〜8/18まで『ようこそ実力至上主義の教室へ』が3巻無料になるそうです。


いつか作品をまとめて語る機会があれば語りたい……と思っていた作品だったのでここぞとばかりに布教記事を書きました。気になる!!気になった!!!というひとはこの機会に読んでみてほしいし出来れば4巻以降も読んでみてほしい。なんなら知り合いになら4巻のギフトコードを送ることも辞さない。どうぞよろしくおねがいします。(こちら2020年に書いた記事ですが、2021年7月にまた3巻無料キャンペーンが来たので序文だけ書き換えました)

あらすじ(※軽くネタバレあり)

生徒達を『実力』で4つのクラスに振り分け、独自のカリキュラムによる次代の人材育成を行う全寮制の学校・高度育成高等学校。卒業後はあらゆる進路が確約されるが、その恩恵を受けることが出来るのはAクラスで卒業した生徒達だけ。定期的に開催される過酷な『特別試験』では退学者を排出することも。かくして、Aクラスで卒業することを目的としたクラスカースト争奪戦が幕を開けるのだった。

──そんな中で最底辺のDクラスに振り分けられたものの、Aクラスへの成り上がりには興味がない主人公・綾小路清隆。子どもたちを集め、過酷なカリキュラムにより天才へと育成する機関「ホワイトルーム」唯一の成功例であった彼は、高度育成高等学校に入学することで得られる俗世間との完全隔離=「3年間の自由」を満喫するため、ことなかれ主義と嘯きながら目立たない一生徒を演じようとしていた。Aクラスへの昇格に拘るクラスメイトの掘北鈴音に力を貸し、あるときは巧みに利用したりしながら平穏な毎日を送ろうとする綾小路。ところが、彼を連れ戻そうとする「ホワイトルーム」からの妨害工作が始まり──。

個人的に推してる所

主人公・綾小路清隆の超ハイスペックな「ひとでなし」ぶり

幼少の頃より社会から隔離され、人間としての感情を削り落とされるような過酷なカリキュラムによって後天的に作られた「天才」である綾小路。事なかれ主義を謳いながら掘北や櫛田とラブコメ的な何かをしていた頃は典型的なやれやれ系ラノベ主人公(死語)かな…と思ったのですが、物語が進むにつれ、その裏にある「自分以外の誰がどうなろうと構わない、最後に自分が勝ってさえいればいい」という信念が明らかになっていきます。

味方であるはずのクラスメイト達すらも欺き、その裏で(綾小路にとっての)完全勝利を掴んでいく姿は爽快でこの作品が「主人公最強」とか「俺TUEE」と言われる所以であるわけですが、同時に、読めば読むほど綾小路の人間としての欠落・不完全さが気になってきてしまう。世間と隔離されて生み出された天才であるが故に「一般人の正解」が解らずに突拍子もない行動を取ってしまったり。他人の情緒が理解できなかったり(※理解できないだけでそこを計算に入れて動くことは出来る)。一年間の高校生活で自分の中に覚醒め始めた感情を他人事のように眺めている節があったり。特に、綾小路の情緒面での成長…というか移り変わりは今後の展開におけるキモなのかなと勝手に思っていて、今後掘り下げが来るのを楽しみにしています。

それにしても最近の話で序盤の頃のやれやれキャラは、世間に疎い綾小路が無理して作った「普通の男子高校生っぽい人格」だったことが発覚しましたが、一体彼は入学前に何を読んで普通の男子高校生を理解しようとしてたんでしょうね……ラノベかなにかか?

「Aクラスでの卒業」を巡り、繰り広げられるそれぞれの生存戦略

生徒達の普段の行動、テストでの成績、そして定期的に開催される「特別試験」の成績を加味して各クラスに「クラスポイント」が与えられ、そのポイントの増減によってクラスのランクが決定される。また、月初のクラスポイントによって生活費含む学内のあらゆることに使える「個人ポイント」が支給され、相応の個人ポイントを払えば任意のクラスに転入することさえ出来る。

以上を踏まえて繰り広げられる、各クラス同士、時には学年を超えて繰り広げられるポイント争奪戦が熱い。クラスが一枚岩となって戦う必要があると同時に、個人ポイントを稼ぎさえすれば自分だけAクラスに転入することも出来るため、クラスの中でも様々な思惑が交錯するのが面白いですね。他のクラスと内通してクラスメイトを欺こうとする者、様々な奇策を用いて個人ポイントを集め、ランクアップを狙う者……様々な動きが見えてくるのが印象的。

原作の副読本としておすすめしたいアニメ版

原作1〜3巻に4.5巻の内容の一部を入れ込んだアニメ版ですが、個人的にめちゃくちゃ楽しかったのがエンディングのキャストロールに各キャラクターの持ち点が表示されている所。どの場面で誰が何点くらい持ってるのかわかるので(原作と完全に同じ点数なのかどうかはわからないけど)、いろいろな想像が膨らむ。

綾小路の本心が最終話まで見ないと明かされなかったり…と、若干原作を読んでないと分かりづらいところがあるラノベアニメにありがちな作りではあるのですが、原作を踏まえてみるとめちゃくちゃ面白かったです。あと綾小路役の千葉翔也さんの棒読み推せる(序盤はまじで棒読み感あって心配になるけどだんだん演技してる感じの棒読みになってくるような気がするし、特に茶柱先生から父親の事を追求されたときに一瞬だけ感情込めてしゃべってくる感じとかたまらない)。Amazonプライム等で見放題配信されているので興味のある人は見てみてください。

個人的に好きなエピソード

「ようこそ実力至上主義の教室へ3」→感想
今この瞬間だけ、本心で語ろう
無人島サバイバル編。初めての「特別試験」、各クラスのやり口が示される初めての巻でもあり、これまで地の文ですら本心を偽ってきた綾小路がはじめて「本心」を吐露する(地の文で)エピソード。とりあえず、読み始めたら最低でもここまでは読んでほしい。アニメもここまで。
「ようこそ実力至上主義の教室へ4」→感想
恋愛側ヒロイン・軽井沢さん爆誕
3巻で本心を少しだけ見せた綾小路が、手加減なしにえげつないやり口を発揮する回。恣意的に過去のトラウマを再現させ、マッチポンプで軽井沢の感情を自分へと向けさせようとする綾小路のやり口がどこまでもひとでなしな上に、ここで見いだされるヒロイン軽井沢恵がこんな出会いなのに4.5巻以降のエピソードで真っ当に綾小路に恋してしまうのがしんどいofしんどい。今回無料になる原作小説3巻分までだと彼女の魅力は殆どわからないので、3巻まで読んだ人は騙されたと思って4巻も読んでほしい。
「ようこそ実力至上主義の教室へ5」→感想
世間の「普通」がわからない綾小路の行動が楽しい
普段のテストではわざと間違えて点数を調節していた綾小路が初めて「一般人の平均」を掴みそこねてうっかり目立ってしまうエピソード。運動神経が人外な須藤の基準を参考にして高すぎる数値を出してしまうのにはつい笑ってしまいますがそこまで細かく調整できるってことはさぁ…。本編も、Cクラスの龍園に追い詰められた堀北が「他人を頼る」事を覚えるエピソードでとても熱い。堀北鈴音の水面下での成長は正統派に面白いし少年漫画の王道主人公的ですらあるんですが、これそういう話じゃないんでこの辺から影薄くなりがちなんだよな…。
「ようこそ実力至上主義の教室へ7」→感想
龍園と綾小路の殴り合いが最高(腐女子なみのコメント)
堀北の裏にいる黒幕(=綾小路)のあぶり出しを狙うCクラスのリーダー・龍園と、その龍園からの追求を逃れて表舞台から消えたい綾小路の正面対決。どこまでも汚い手口と暴力を使って周囲をねじ伏せる龍園をそれ以上の汚い手口と暴力で屈服させる綾小路のやり口がどう考えても真っ当な主人公のやることじゃないんですけど綾小路と龍園の殴り合いの挿絵が最高すぎて無理。とばっちりで過去のトラウマを掘り起こされる軽井沢さんは本当に幸せになってほしい…。
「ようこそ実力至上主義の教室へ7.5 」→感想
はじめての雪でテンション上がる綾小路が可愛い(挿絵付き)
冬休みの出来事を描く息抜き的な短編集なんですけど、人生で初めての雪にテンション上がってるっぽい綾小路が可愛いにすぎるので全ラノベ好き女子オタク読んでほしい回。あと、綾小路への想いを自覚した軽井沢さんがどこまでも可愛い巻なんですけど7巻で何があったかを思い出すと全く安心して見守れないのが困る。この出会いが仕組まれた物であると知りながら綾小路に惹かれていく自分を止められない軽井沢さん本当に可愛いんだけど綾小路によって仕組まれた出会いなんだよな…。
「ようこそ実力至上主義の教室へ8」→感想
男子生徒に焦点を当てたエピソード(綾小路は巨○ン)
男女別れて上級生と組んでの特別試験、綾小路の友人である幸村の内面での成長劇、クラスきっての問題児である高円寺との対峙などなど、男子生徒に焦点を当てたエピソードなんですがそんなことより突然はじまった男風呂での男のシンボル対決が忘れられないどうしてこうなった。どこまでもシモネタで突っ走る展開が、なんというかエロゲライターさんの書く文章だなあ〜〜という感じで大好きだし笑いが止まらない。綾小路は大きい。
「ようこそ実力至上主義の教室へ9」→感想
裏から事態を操り美味しいところを攫う、原点回帰な面白さ
Bクラスのリーダー・一之瀬が陥った窮地を救うために動く裏でAクラス&新生徒会の動きを牽制し、身内の敵である櫛田と取引し、今後の自分の行動に対して利になりそうな相手に繋ぎをつける。展開としては割と地味だけど「黒幕・綾小路清隆」という存在の面白さが全部凝縮したような話なんですよね。あと個人的に9巻の挿絵がめっちゃ好きなんですよ…悪い笑顔の綾小路の挿絵めっちゃ好き。
「ようこそ実力至上主義の教室へ11.5」→感想
短編集という名の「一年生編」エピローグ。
綾小路が本気を出して強敵・Aクラスに挑む11巻も最高に楽しかったのですけど(というかあれは面白くないわけがないお話)、短編という名でこれまでの人物たちの成長とこれからを描く11.5巻が本当に「1年生編」エピローグとしてポイント高い。なにより衝撃的だったのはやはりラストの軽井沢とのやりとりと綾小路の「独白」。感情の機微を理解できない綾小路が軽井沢というパートナーを得てどう変わるのか。それとも何も変わらないのか。2年生編のプロローグとしてもポイント高いエピソード。

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スキルが強すぎてヒロインになれません

 

クラスメイトの高遠くんに片思いをしている女子高生のアリアは、今日もいつも通り部活で活躍する彼を遠くから見守るはずだった。ところが、彼女は目撃してしまった――彼が勇者として異世界に召喚されそうになっているところを!? とっさに追いかけたアリアは、神様の恩情で勇者のおまけとしてついていけることになったけれど……。神様がくれた「人類にできることは何でもできる力」が強すぎて、可愛さもモテる要素もないんですけど!? 恋する乙女なのにヒロイン感0な少女のスキル無双異世界召喚ラブファンタジー!

片思い中のクラスメイト・高遠くんが「勇者」として異世界に転移するところを偶然目撃したアリア。半ば強引に勇者(高遠)のおまけとして同じ世界に飛ばしてもらえることになった彼女は、その際に神様から自分の『愛読書』をモチーフにしたスキルを授かる。だが、本なんか読まないアリアの愛読書として選ばれたのは、偶然自室にあった某「世界記録を集めた本」で……。

恋する女子高生(じんるいさいきょう)vs異世界ファンタジー

ギ○スブックに記載されている記録ならばなんでも再現できるというチートスキルを授かってしまった女子高生が、憧れのクラスメイト男子と共に魔王を倒して異世界を平和にしようと頑張るお話。相手は剣も魔法もある異世界ファンタジーの世界なのでギ○スがそこまで強いのか!?と疑問に思ったのもつかの間、そこには世界記録を全て自分のものとした女子高生(ルビ:じんるいさいきょう)が爆誕していたのであった。普通にドチャクソ強かった。

「魔法に対する防御手段がない」という弱点こそあれど、トンデモ身体能力のオンパレードで普通に一人で無双できそうな私TUEEっぷりと、それとは裏腹に「こんなゴリラになってしまった私を憧れの彼に見せたくない!!!」と思う乙女心が錯綜していくのがめちゃくちゃ面白かった。正統派な異能スキルを手に入れた憧れの彼を前に、必死に自分の脳力を隠しながらバトルとなれば高遠くんをも圧倒してしまいまた頭を抱える姿が可愛い以上に面白すぎました。

不器用でポジティブな恋愛模様がたまらない

高遠君が好きすぎて異世界にまで飛び込んでいってしまったアリアが、高遠君とちょっとした接触をするたびに貪欲に喜んでしまう姿がめちゃくちゃに可愛い。一方、一緒に旅をしていく間に少しずつアリアの素直で善良な人間性に惹かれていく高遠君が徐々に独占欲をこじらせていく姿がこれまた微笑ましい。そんな心配しなくてもアリアは最初から高遠君ひとすじだから…!!とアドバイスしてあげたくなるけど、アリアがまた無自覚で次々と旅の最中に出会った男性達と仲良くなってしまうので高遠君の悩みはどこまでも尽きないのであった。

旅を続けるうちに高遠君が完璧な王子様なんかじゃないってことがわかってきて(というか中盤以降はアリアの一人称を持ってしても隠しきれない高遠君の残念さが大変微笑ましい)、それでもありのままの彼が好き、新たな一面が見えて嬉しい、仲良くなれて嬉しい!と、どこまでも自分の恋に対してポジティブなアリアの姿がポイント高かったです。船酔いしてる高遠君とアリアのやりとりとか可愛くて好き。あと、操られたアリアを高遠君が正気に戻す所、高遠君が微妙にわかってなくて無自覚ああいうことやっちゃってるの本当にニヤニヤが止まらないんですけど!?アリアの第一声がわかりすぎる。

私達の冒険はまだまだこれからだ

高校生男女の恋の甘酸っぱさ、俺TUEE的な爽快感を損なわず、でもしっかりと歯ごたえのある魔族達とのバトル、何よりもそこかしこに散りばめられたラブコメ要素がひたすらに楽しいお話でした。普通に単巻完結かな?と思っていたら思い切り続いたので個人的には是非2巻も出してほしいです。アリアのスキルもまだまだ底が知れないので、さらなるトンデモ成長を期待しちゃう。

まだなろう小説の書籍化で1年位のブランクなら慌てる時間じゃないはず……。

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腐女子が選ぶ、腐女子が主役のラノベ7選

ずっと待ってた「腐男子先生!!!!!」完結巻発売で居ても立っても居られなくなったので、腐女子が主人公/メインヒロインな物語で好きなやつをざっくりまとめてみました。ざっくり下の方に要素の強さとかジャンルとか入れてますが個人的な感覚なので読んで間違ってても怒らないでください。良質な腐女子主人公ラノベの情報がありましたらツイッターかこちらのフォームまでお寄せください。

「腐女子が脇役」のラノベは結構色々思い浮かぶんですけど、「腐女子が主役」の作品って意外にないんですよね……いや私があまり読んでないラブコメラノベ方面とかに手を伸ばせば割と掘り出せそうな気がしますが。

なお、腐女子の脇役で好きなのは「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」の海老名さんです。あの熟成された腐った感じと表向きのキャラの裏に隠された繊細なキャラクターがほんとたまらないな。今週から始まる俺ガイルのアニメ3期みんなみてください。

瀧ことは「腐男子先生!!!!!」→感想
「オタクあるある」にあふれる腐女子と腐男子のラブコメ
応援上映、コラボカフェなどWeb小説ならではの「最近の女子方面オタク事情」を踏まえたネタの鮮度の高さが絶妙で楽しい。リアルタイム連載は4年前からなので、ピンと来るネタも多いハズ。気の合うオタク男女、作家と読者、生徒と教師──と変幻自在に色を変えていく関係性も必見です。
Tag : [腐要素★★★★★][二次創作][現代・恋愛][オタクあるある][読者×作家][男の友情・腐れ縁]
3巻はラブコメ色強め。しかし1〜2巻の腐ネタ・オタクあるあるは特筆したい楽しさが。
節トキ「悪役腐令嬢様とお呼び!」→感想
腐女子悪役令嬢×百合オタ王子、腐れ縁二人の掛け合いが超楽しい
好きでもない乙女ゲーの世界の破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった主人公が破滅フラグはほっといてBL布教に勤しむお話。かなり強引に布教していく様子に思わず目をそらしたくなるときもあるけれど、中盤から登場する前世からの腐れ縁の百合オタ男子との掛け合いが楽しく、主人公によって覚醒させられた腐令嬢達とのドタバタも楽しかったです。
Tag : [腐要素★★★★★][オリジナル・ナマモノ][異世界・令嬢][恋愛未満のケンカップル][破滅フラグ]
同じ腐女子だからこそウワーッてなる部分もあるけど、個性豊かな令嬢達の性癖にはニヤリとしちゃう。
森美紗乃「奥様は貴腐人 旦那様はボイスマイスター」→感想
貴腐人×売れない声優、年の差カップルの成長ドラマ
BLドラマの主役(総受)に抜擢された売れない声優の主人公と、7つ年上の奥さん(腐女子OL)が織りなす物語。アダルト展開のあるBLの演技に最初は苦手感すら持っていた主人公がどう向き合っていくのか。奥さんの視点から描かれるMRのお話もこの頃の少女小説としては割と希少な感じで楽しかったです。それはそうと作中劇のBLゲームのシナリオがめちゃくちゃ性癖なので定期的に読み返してしまう……。
Tag : [腐要素★★★★][商業ボーイズラブ][現代・恋愛][お仕事もの][四角(?)関係]
主人公の価値観はやや発売年代を伺わせる。声優変更アリのリメイクゲームという悩ましいお題。
壱月龍一「ラ・のべつまくなし」→感想
純文系ラノベ作家×発酵系文学少女。ライトノベルを巡る恋物語。
二次元イラストが直視できない純文崩れのラノベ作家が、自作の大ファンである腐女子に一目惚れをして…から始まる恋のお話。今や少し古めかしくなったメール交換から始まるやりとりが甘酸っぱく、「ライトノベル」の存在意義を直球で問うていく熱い物語はラノベ読み全員に読んでほしい。主人公の親友との熱い男の友情もあるよ!!
Tag : [腐要素★★★][二次創作方面][現代・恋愛][ライトノベル業界][作家×読者][男の友情]
ヒロインが割と主人公達で妄想するけどそこが主題ではない感あります。ところで私は圭介×学ですね。
岩佐まもる「ROBOTICS;NOTES」→感想
天才プログラマー腐女子の視点から描かれる、スピンオフノベライズ
同名ゲームの物語を、メインキャラのひとり・腐女子で天才プログラマーの神代フラウの視点から描くスピンオフノベライズ。作中で語られる腐萌え語りがじっくり読めるだけでも楽しいんだけど、不器用でコミュ障気味な彼女の、主人公視点からは見えづらい本当の想いが描かれていくのが大変に楽しかったです。原作知ってる前提のノベライズなので興味が湧いたらアニメかコミカライズかゲームを追ってほしい(メインストーリーのノベライズは1巻で討ち死にしてしまったので……)
Tag : [腐要素★★★][雑食][ノベライズ][近未来・SF][オタク]
ゲーム内でのフラウたんのBL妄想が好きな科学ADVのオタク向け。なお舞台は近未来であるところの去年(2019)。
まめちょろ「私はご都合主義な解決担当の王女である」→感想
「BL世界のモブ女」になるのは思った以上に大変です
大好きなBL小説の脇役女キャラに転生してしまったけど、そこは男同士の恋愛が尊ばれ女が都合よく扱われる世界だった。思った以上にしんどい世界観だけど、異性に振り向いてもらえず死んだ魚のような目になっている女性達の悲哀がコミカルに描かれているので重くなりすぎずに読めてしまう。ハードモードな世界でBLに萌えてる場合じゃねえ!!ってなりながら生きていく主人公の姿は必見。
Tag : [腐要素★][二次創作(?)][転生令嬢][世界観設定が面白い][主従関係][BL界のモブ(女)]
ほんとこれ読んでくと「萌えてる場合じゃない」なんだよなあ
小林来夏「キスとDO-JIN!」
世間に疎いお嬢様(腐女子)の同人界シンデレラストーリー(with執事さんは心配症)
壮絶な筆の速さと正確な技術を持つ世間知らずのお嬢様が、初めて参加したイベントでとある大手作家の目に止まり…から始まる同人界シンデレラストーリー。専業やら転売やら脱税やら、同人界の危ないネタを攻めていくスタイルと同人大手のアレコレネタは普通にサークルやってるだけではなかなか見えてこない世界なので楽しかった。あと執事の強烈なキャラはまじで必見。問題はレーベル死亡済+電子書籍なしという入手難易度の高さですね…(でもこの話するなら入れたかった)
Tag : [腐要素★★][二次創作・一次創作][現代・恋愛][同人業界][大手サークル][執事がつよい]
腐というよりは同人業界と描き手のあるあるかなぁという気はする。執事は必見。

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悪役腐令嬢様とお呼び!

 

異世界のトラブルはすべてBLで解決!? 大神那央は自他共に認めるBL大好き女子――いわゆる腐女子である。 しかし十九歳になってすぐに事故死。そして生まれ変わったものの、そこはなんと嫌々プレイしていた乙女ゲームの世界だった。おまけにポジションはヒロインをいじめ倒すライバルの悪役令嬢。 (ちなみにこの悪役令嬢のクラティラス・レヴァンタ、どのルートを辿っても必ず死ぬという運命にある) クラティラスとして生きることになった那央は悲惨な未来を受け入れ、可憐なるヒロイン・リゲルをいじめ……たりせず、彼女を始めとする女子達にBLの素晴らしさを布教し、同志の輪を広げていくのだった――。

事故で死んだ那央が転生したのは、生前嫌々ながらにプレイした乙女ゲームの悪役令嬢・クラティラス。どうあがいても死ぬ運命だと気づいた彼女は破滅フラグを回避するべき奔走──なんてことはせず、「どうせ死ぬなら来世に期待して今生は好きなことやって死のう」と、前世から受け継いだ画力を駆使してイケメンを描きまくり、周囲の令嬢達にBLを布教しはじめたのだった……。

悪役令嬢に転生した腐女子の暴走劇

主人公のクラティラスがかなり痛い腐女子で、序盤の展開がかなりしんどい。転生先の乙女ゲームをディスりまくる姿には「自称毒舌」女子を見ているときの気持ちになるし、去るものは追わずスタイルとはいえなりふり構わず一方的にBLを布教していく姿には若干のもんやり感を覚えてしまう。

何より転生前の彼女本来の乱暴な言葉遣いが貴族社会の中では壮絶に浮いてて、事実以上に「痛い」キャラに見えてしまうんだよね。このくらい口が悪いオタク女子って普通にいると思うんだけど、文字媒体だけだと細かいニュアンス伝わらなくてすごく横暴なキャラに見えてしまっているのがちょっと勿体ない。

でもこのクラティラス、BL文化が現れるのを待つのではなく、自ら語り、そして描くことで周囲をBLに覚醒めさせようとするという前向きな行動力はめちゃくちゃ好感度高かった。他の覚醒めた令嬢達の萌えを(BLである限りは)絶対に否定しないし、コンテンツに対するスタンスも「一度触れたコンテンツは絶対に最後まで追う」とかですごく真摯に向き合ってくれるんですよね。

百合オタ王子が出てきてからが本番。

そして第三王子イリオスの「正体」が明らかになり、彼と半ば無理やり婚約させられるところからめちゃくちゃ面白くなる。お互い趣味が合わないの知っているからこそ変に押し付け合わないし、お互いへの遠慮もない。序盤はしんどかった乱暴な言葉遣いも「お互いへの遠慮のないやりとり」へと変化してしまうので不思議です。喧嘩するほど仲が良い腐れ縁というか、ふたりの気のおけない対等な関係性にときめいてしまった。

最初は強引だった「BL仲間」の令嬢達との関係が徐々に本物の友情へと変化していくのも印象的。それぞれが別個の性癖を持っていて、互いの性癖には干渉しあわない、お互いを尊重しあえる距離感が楽しい。クラティラスは前述のように、どんな性癖でもBLならば暖かく見守る(むしろ伸ばして育てる)方向性なのが結構バランス良いんだよな。庶民出でクラティラスから詩の才能を見いだされていずれは乙女ゲームのヒロインとなるリゲル、イリオスから託されてまさかの同キャラカップリングに開眼してしまった護衛のステファニとも徐々に身分や立ち位置を気にしない・気のおけない付き合いになっていくのにニコニコしました。

果たして二人は、「破滅の未来」を阻止できるのか。

乙女ゲームの正ヒロインであるリゲルと無二の親友となり、これで破滅エンドは回避したのでは…?と思うのだけど、この世界には乙女ゲームで起きた出来事に物事を収束させるような、謎の強制力があるらしい。しかも、自らの死がこの国の未来にもたらす悲劇をうっすらと知ってしまって、割り切っていたはずの破滅の未来に、再び感情が揺れていく。

未来に待ち受けるであろう死亡エンドの事はどこか他人事のように受け流しているクラティラスが自分のことを溺愛していた兄・ヴァリティタの態度の変化を見て、いつかは自ら気づいた友人達との関係をも断ち切られてしまうのではないか、と不安にかられる姿が印象的でした。自分が死ぬのは(一度死んだ身だし)構わないけれど、今ここに生きている友人たちが辛い思いをするのは避けたい。でも、そんなクラティラスの不安を払拭するような友人たちの行動がすごく暖かくて。これなら絶対に大丈夫──と思うものの相手は世界の強制力的ななにかなわけで。思いを同じくするイリオスとともに、破滅的な未来を阻止することができるのか。本当に今後どうなってしまうのか。続きが楽しみです。

それはそれとして世界観が緩いなんちゃってファンタジー乙女ゲー原作の続編がファンタジー○○物ライトノベルってどういうことなんです??脚本日日日先生かなにかか?(酷い風評被害)

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腐男子先生!!!!!3

 

オタク生活に卒業という文字はない!……はず?? 腐女子JK・朱葉(神絵師)もついに高校3年生に進級! イケメン生物教師としてのオンの顔と、残念なオタクのオフの顔を持つ担任の腐男子先生・桐生(信者)との関係にモヤモヤしつつ 進路相談(三者面談)をすると、まさかの反応が……!? 受験に向け、同人活動休止にゲームも漫画もアニメも自制! 我慢の先にある二人の未来は……?? 「オタクの予定は半年先まで決まり続けるからな」 共感しすぎるオタクラブコメ、堂々完結!!!!!

高校3年生になり、大学受験が目前に迫ってきた朱葉。母親を踏まえた三者面談で桐生から何気なしに出てきた言葉にショックを受ける。桐生にとって自分はただの生徒でしかないのか?ジャンルが変われば次の「神」をみつけてしまう程度の存在なのか……と、なんとなしに桐生を避けるようになったまま、高校生活最後の同人イベントを迎えることに……。

「卒業」おめでとうございました!!!

いやもうまず本当に3巻が出てくれたことがめちゃくちゃ嬉しいしめでたい!!!前巻から一年以上経ったし、色々と文庫での完結は難しいのかなと思い始めた矢先の出来事だったので喜びもひとしおでした……。同人オタクの悲喜こもごもを描くお話だからこそ、「紙の本」で最後まで読めるのにはまた一層の感慨深さがあります。いやもう本当に好きな話なので素直に紙で読めてよかったWeb版初読時の感想はこちらです!!

っていうかもうあのシーンやこのシーンに挿絵がついたことに喜びを感じざるを得ないのですが、特に文化祭編のふだせん挿絵最高でしたそこに挿入ると信じてましたーーー!!!あとほんとラストの挿絵はもうね、ああやって気合い入れて描かれると、泣くしかないよね。

変幻自在に色を変える桐生と朱葉の関係性が楽しい。

あるときは気の合うオタク友達、またあるときは同人作家とその信者、そしてあるときは教師と生徒──と、色とりどりに変化していく二人の関係性がとても良かった。特に、今巻で語られる作家と読者の関係性の話がめちゃくちゃ好き。「神様は、信者を選べない」という言葉の本当の意味に、神作家と信者として始まった関係が徐々にそれだけではない、かけがえのない相手へと変化していった道程を感じて胸が熱くなってしまう。

後半に行くにつれて不器用ながらにお互いの気持ちを自覚した二人の関係が少しずつ甘くなっていくのがたまらないのですけど、それはそれとして終始挟み込まれる気の合うオタク男女なやりとりが大変に楽しく。最後まで一貫して「オタク楽しい!」のお話なのが最高でした。

きりゅせんほんと「そういうとこ」だぞーーー!!!

朱葉との関係や問題児・都築の進路指導を経て、桐生にとって“擬態”でしかなかった教師という職業が彼にとっての天職となっていく姿が印象的でした。教え子たちに一生モノの“好き”を見つけてほしいという桐生の願いにも似た信念は、紛れもなく彼が“オタク”として生きてきてそして見つけ出した人生観なわけで、タイトルの通りの“腐男子先生”になっただなあと。いや、だからといって都築への進路指導の結末は色々とどうかと思うんですけどね!?あとやっぱり何度読んでもあの流れからの個室焼き肉はいかがなものかとおもいます!!!いやそこ選ぶのわかるし、あながち間違いではないんですけど、ムードぶちこわしだからね!!?ホントそういうとこだぞ!!??

都築くんといえば電子書籍版の短編がめちゃくちゃよかったので全都築くん好きのオタクに読んでほしい…………。あと小説家になろう版の後日談のマリカさんと都築くんの話がめちゃくちゃ好きなので全マリカさんと都築くんが好きなオタク読んでほしい…………。(小説家になろう版、特に3巻は削られた部分が多いので書籍版から入った人には読んでほしいんですよね。都築の進路指導の話とかも結構削られてたし。あと後日談が好き。R18書く書かないのやり取りとかもニヤニヤする)

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私はご都合主義な解決担当の王女である 3

 

転生腐女子の結婚回避ラブコメ、準舞踏会編クライマックス! 忌々しい過去と向き合い、護衛の騎士クリフォードの制服を涙と鼻水で濡らした私――王女オクタヴィアは、気付けば反王家派の物騒な諍いに巻き込まれていた。 しかも、一緒に訪れていた兄の恋人(男)シル様が行方不明に!! できれば関わりたくなかった(詳細は2巻で)仮面の男ルストの導きにより、シル様を捜して辿り着いた先には……!? 準舞踏会編完結!

クリフォードの支えを得て、改めて仮面の男ルストと対峙する覚悟を決めたオクタヴィア。ところが、話の途中で侵入者の襲撃を受ける。彼らの狙いは、兄の恋人(男)・シル様だと知ったオクタヴィアは、クリフォードと共にルストの案内で彼の行方を追うことになるが…。

準舞踏会編後半戦。戦いの中で育まれる絆が熱い。

オクタヴィアを狙う謎の集団、そして行方をくらませたシル様を巡る小競り合い。そしてクリフォード以外の『従』との対決──お城の中で展開された1巻、華やかな準舞踏会でのやり取りが中心だった2巻と比べて一気にバトル要素の強い3巻でした。クリフォードの邪魔にならないよう立ち振る舞おうとするオクタヴィアを尻目に、非戦闘員である彼女が側にいても色褪せない強さを見せつけるクリフォードの姿に圧倒されてしまう。

そんな中で、どこか自分の犠牲を顧みないオクタヴィアのとある行動を、絶対であるはずの『主』からの命令すらも超えて抑止しようと動いてしまうクリフォードの姿が印象的。たとえそれが彼女の本意であったとしても彼女が傷つくのが許せない、と。少しずつ、クリフォードがオクタヴィアに対して主従の線引きを超えた感情を持ち始めているのが伝わってくるのがたまらなく楽しかったです。同時に、オクタヴィアの方も今回の準舞踏会での件を経てクリフォードとの絆を深めたようで……二人の関係性の変化を思わせる、最後の1行に思わずニヤニヤしてしまった。

レイフが語った『オンガルヌの使者』が“不可能を可能にした『従』”であるという可能性も含めて、先が楽しみで仕方がない。

良くも悪くもスッキリしない終わり方…

ただ、準舞踏会編の展開をまとめて思い出すと総合的には凄く面白かったんですが、準舞踏会編後半である3巻自体はちょっとカタルシスに欠ける、スッキリしない終わり方だなあと。2巻で明かされた様々な真実がめちゃくちゃ面白かっただけに、バトルは派手だったけどむしろ物語の謎が深まっただけの展開にはどこかスッキリしないものを感じてしまった。Web小説原作にはありがちな話だけどとにかく物語の動き方が遅い。準舞踏会の内容、1冊で読みたかったなという気持ちがすごい。ラスト自体は良かったんだけど、本来あるべきCパートがとれてないアニメの録画みたいになっちゃってるのがちょっと気になる。

っていうか元々の彼女の目的であったはずの偽装恋人の話とかマジで完全に有耶無耶になってしまったというか、ルストのアレコレを考えるとむしろ完全にふりだしに戻ってるんですけど!?ルストやおじさまが恋人相手の手がかりを持ってるとかそのくらいの手がかりがあっても良かった気がする。(っていうかこれだけラブラブなわけですしクリフォードじゃだめなんですかねえ!!)

続きが気になる展開、なんだけど…

2巻でたのが一昨年、という話を見てWeb版見に行ったらここ(3巻ラスト)からほとんど進んでないんですよね。
これ続きいつになるかなあ……1巻分まとまってから続きを投稿してるってかんじでもないんだよなあ。

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