“庭” の検索結果 | ページ 2 | 今日もだらだら、読書日記。

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魔術師クノンは見えている

 
Laruha

魔術で「目」を作りたい――その好奇心が少年を水魔術の天才へ飛躍させる!
 目の見えない少年クノンの目標は、水魔術で新たな目を作ること。魔術を習い始めて僅か五ヵ月で教師の実力を追い越したクノンは、その史上初の挑戦の中でさらに才能を開花!  魔力で周囲の色を感知したり、水魔術の応用で懐炉や湿布を作ったり、初級魔術だけで猫を再現したりーー。  その技術と発想は王宮魔術師も舌を巻くほどで、クノンは実力を買われ、最高の腕を持つ魔技師の弟子になることに!?  好奇心で世界を切り拓く、天才少年の発明ファンタジー!

生まれた時から目が見えない子供として生まれてきたクノン。その欠落は「英雄の傷跡」として尊ばれたが、ひとりでは何もできないことを突きつけられたクノンは生きることに絶望してしまう。そんな彼が、家庭教師の軽率な一言を切っ掛けにして「魔術を使って視界を得る」という目標を見出して……!?

どこまでもポジティブで明るい、魔術探究のお話

盲目の主人公が魔術で「目」を作ろうとする話……と聞いてなんとなく結構重たい話なのかな?と思っていたら全然違った!人生に絶望していた主人公が魔術を使えば「目」が作れるかもしれない、と希望を見出してそれ以降はただひたすらに真っ直ぐにそしてポジティブに魔術の深淵に向かって突き進むお話。重苦しいのは最初の一瞬だけでしたね。

1巻の序盤は基本的に実家の離れに引きこもっていて外部との接触は殆どないんだけど、やたらと明るい侍女・ニコの影響もあってか覚醒したクノンがものすごい勢いで明るいキャラになっていくのが頼もしいし、めちゃくちゃ高いテンションで繰り広げられるニコとのやりとりが楽しい。ついには口調だけは軽薄なエセ紳士になってしまったし、かつての絶望していた頃の彼を知っているだけにテンションの高すぎるニコとクノンのやりとりを好ましく思いながらも「本当にこれでよかったのか?」って一瞬なってしまう周囲にニヤニヤが止まらなかった。メインはそこじゃないんだけどほんと、会話の応酬だけでめちゃくちゃ楽しいな。

そしてそんな彼が家庭教師の手を離れて王宮の魔術師達と出会う話がまた、楽しくて仕方ない。クノンが「目」を作る研究の課程で作り出した魔術の発明の数々に興味津々な(というかもう普通に童心に戻ってエンジョイしちゃってる)大人の魔術師達の大人気なさがひたすら微笑ましかった。

徐々に前向きになっていく周囲の変化が良かった

このお話、生に絶望していたクノンが魔術と出会って生きる希望を見出す話であると同時に、前向きになったクノンが周囲を変えていく話でもあるんですよね。家庭教師のジェニエは一度は挫折していた魔術師の道を再び志すことを決意し、第九王女という立場に甘んじていた許嫁のミリカはクノンと共に生きるために相応しい力を手に入れる決意をする。クノンをずっと見守ってきた侍女のニコも自分の生に後悔をしないために婚活を決意して……と、とにかく皆が前向きに変わっていくのが読んでいて気持ち良い。

軽妙な会話が楽しく、魔術士達のちょっぴりマッドなやりとりも楽しめて、作中を貫くポジティブな空気もあいまって、読むと元気が貰える1冊でした。一応1巻でひとまずの目標は達成されて、続きものとはいえ1冊目で話がそこそこ綺麗にまとまっているのもポイント高し。物語としては序章も序章という雰囲気なので、2巻がどうなっていくのかがとても楽しみです。


大伝説の勇者の伝説16 昼寝男の結婚

 

つきつけられた最悪の選択肢。ライナの決断とは――!?
突如始まった“神からの干渉”。再び黒い勇者に堕とされんとするシオンを救うために、ライナに突きつけられたのは4つの選択。誰かを犠牲にしなければならない選択に、ライナはどんな答えを出すのか!?

唐突に再開された神からの干渉。このままでは7ヶ月後を待たずに今すぐにでもシオンは『堕ちた黒い勇者』となり、世界は終焉を迎えてしまう。それを止めるためにライナの中の『悪魔』から提示されたのは、その場に居るシオン以外の「誰か」を犠牲にする4つの選択肢。どれも選べず苦悩するライナに、数多の「絶望の未来」が突きつけられる……。

前巻からの温度差が酷い!!!

レムルスが結界を張ってから──大伝12巻から15巻までの展開は本当に色々と不穏なフラグに怯えつつも神からの干渉から開放された彼等を見るのがめちゃくちゃ楽しかった。それだけに神からの干渉が再開……という展開だけでめちゃくちゃしんどいし、それ以上にライナが見せられた幾多の未来という名の地獄絵図がひたすらしんどい。一見幸せそうに見えた「全てを諦めてフェリスと幸せな家庭を築く未来」の絶望が一番深かったというライナの言葉が本当にしんどかったですね……そこに逃げることすら許されないのかと。

ライナが家庭を築く未来の甘い絶望もなかなかのものでしたが、個人的には戦場で終わりのない戦いの中で生命を落とす世界の絶望もなかなか酷い。というかこの間に入るライナとシオンの挿絵、ぱっと見今巻の表紙と近い二人の顔が近いイラストで、表紙は二人が仲良く笑い合ってるのにこちらは絶望の中で死んでいくイラスト……ってなってるのがめちゃくちゃしんどいんですよ……いや意図してこうなってるのかは知らないんですけどどうしてもこのイラストを見た時表紙を連想してしまったので……。

血を吐くように絶望しながら選んだ(選ばれた)のは、犠牲をもって力を得て、シオンのなかの勇者を……神からの干渉を再び止める選択。なんかほんとう、前巻って奇跡のような一瞬だったんだなあと。いやでも本当に、人間らしい顔をしてライナ達のわちゃわちゃに加わってくるこの人の姿をもっと見ていたかったなあ……。

なにかを「選ぶ」ということは

なんとか再び7ヶ月の猶予期間を確保することはできたものの、今回の一件で改めて世界に残された時間の短さに気づいてしまったライナ達。同じ頃、エルトリアとガスタークの戦いに巻き込まれて意識不明になっていたカルネが意識を回復する。戦争だから、釣り合わないから、自分の背負った宿命……色々な理由をつけて自分の気持ちに素直に慣れなかった男子達が次々と自分の気持を伝えることを決意していくのが印象的でした。返事そのものは描かれないけど、随所でカップルが出来ていっているであろう展開は想像すると正直楽しい。(いやノアとエスリナが二人からの告白を拒むわけ無いじゃん!?という強い気持ち)(なんだかんだでこのあとクラウとカルネが言いそこねる展開はありうる)

そんな中でライナも、自分の中の気持ちに決着をつけることを決める。自分が好きなのは誰なのか……誰を失ったら耐えられないのか。前巻のハーレムラブコメ展開が本当に楽しかったので残念ではあるんだけど、ずっとずっと誰かを「選ぶ」ことから逃げ続けて両手では抱えきれないほどの仲間たちを手放せずにいたライナがフェリスとシオンのたったふたりを「選ぶ」展開、ものすごくよかった。たとえそれが、彼を想う誰かの気持ちを拒む結果になるのだとしても。

ラストの挿絵が良い仕事してる〜〜〜と言うか今回は今まで以上に挿絵が最高の高でした……絶望も希望もここにある……。


悪の華道を行きましょう

 

王太子に婚約破棄された末、ハゲデブオヤジと結婚することになってしまったセレスティーヌ。しかし、彼女は式の最中気づいてしまう。ここは似非貴族風の学園乙女ゲームの世界で、自分はヒロインに散々嫌がらせをした挙句、中年宰相の元へ無理やり嫁がされる悪役令嬢であること。そして、目の前のガマガエルそっくりなハゲデブ宰相の醜悪な容姿が……悪くない、むしろ……大好きなことに──! コミカライズで話題沸騰&人気大爆発! 枯れ専悪役令嬢セレスティーヌの麗しき覇道を描いた爽快スッキリラブコメディ、ファン待望の書籍化!!

王太子から婚約破棄され、更には報復として悪い噂が耐えない宰相に嫁ぐこととなったセレスティーヌ。結婚式の最中に前世の記憶を思い出した彼女は自分が乙女ゲームの悪役令嬢であったこと、そして「枯れ専」という自らの性癖を思い出してしまう。そして目の前には、前世の自分にとって「好みにピッタリ」の中年男の姿があって……!?何の因果か性癖が噛み合ってしまった美女と野獣夫婦が義理の息子(イケメン)をはじめとした周囲の人々を巻き込みつつ悪いことしながらイチャイチャするお話。

モブ顔のおっさん×転生悪役令嬢が歩む悪の夫婦道

※この場合の「モブ顔」は男性向けの名無しの竿役とかの方向性をイメージして欲しい
先に始まってたコミカライズのインパクトが良くも悪くも強すぎて小説版が後に出るとインパクト負けしない!?大丈夫!?という気持ちが正直かなりあったのですが、小説版は小説版で宰相閣下の気持ち悪さ5割り増し、セレスティーヌの枯れ専語りの早口さが3割増し、心象描写の追加でふたりのイチャイチャが2倍増しという感じで全体的に描写が濃厚になっていてとても良かった。原作が「小説家になろう」にあるんですけど、単話完結形式で1話ごとに投稿されてて私が使ってるアプリだとちょっと読みづらかったので書籍化嬉しい。コミカライズ版が気になる方は試読版で1話がまるっと読めるのでこちらもチェックしてみてください

タイトル通り「悪の華道」を邁進する二人がイチャイチャしながら自分達に都合の悪いものを斬る!的な、単話完結形式の悪役もの。それぞれの家庭環境が原因で愛を知らずに育った二人が「真実の愛」と出会い、ふたり寄り添って生きていく姿は感動的ですらあるのですが、宰相様はテキストで読むとイラストのミニキャラ的な可愛らしさよりも気持ち悪いほうが目立っていて「かっこよくない」中年の描写がすごいし、一方セレスティーヌは本気でその宰相様が世界で一番かっこいいと思っていて前世がオタクだっただけあり時折オタク特有の早口まで繰り出してくるのでギャップがすごい。そんなこんなで、随所に挟まれる宰相とセレスティーヌのイチャイチャ描写が絶妙に気持ち悪い(※褒めてる)。

その一方で、王国を陰から操るフィクサーと傾国の美女のカップル……ということで全体的に悪事のスケールがデカく、各話で出てくる小悪党達があっさりと蹴散らされていくのが爽快でした。そして排除されなかった者達はセレスティーヌの魔性に惹かれ、彼女達にとって都合良いように転がされていく。虎視眈々と宰相の後釜を狙う義理の息子とか、隣国の絶倫女王に傅きながらも復縁を狙う元婚約者とか、家族もほっぽってセレスティーヌの絵画だけをひたすら描きまくる画家とか、冷静に考えるとヤベえ奴ばっかり残ってる気がしなくもないですがそんな彼らを手のひらの上で転がしてこその「悪の華」なのだろうな。そんな中でそれとなく強かに生きてる庭師のハンズレムの話の顛末が夫婦にとっては最高に意趣返しでニヤリとしてしまった。個人的には作中では赤ん坊だった息子のリュカが成長したらどれだけ厄介なセレスティーヌ強火担になるのか、正直将来が楽しみで仕方がない。1巻で綺麗にまとまっている話ではあるのですが、逆に続けようとすればどこまでも続けられそうなお話なので続巻が出るのを密かに楽しみにしています。

ところで、電子書籍版の特典SS『愛別離苦』が大変良かったです。何物であっても手に入れてきた筈の宰相の、彼が愛してやまない存在との「別れ」のお話。いや、これだけ本編で夫婦の全盛期描いてきて描き下ろしで彼らの別れを描くなんてしんどすぎでは……とおもったらまさかの〇〇のことだったのでもう笑うしかなかった。


オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!2

 
雪子

同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活、その続き。
相沢咲月はドルオタで同僚の滝本さんにプロポーズされ、無事籍を入れる。 結婚式の写真も撮りすっかり新婚ムード。趣味も近くて、お互いに理解のあるふたりの打算で始めた偽装結婚は、徐々にかけがえのない本当の結婚へと変わっていって……。 超打算で結婚した咲月と、打算の顔して実は咲月がずっと好きだった滝本さんの偽装結婚――から本当の結婚になる、ふたりのオタクの話、第2弾。

苦手意識しかない実家に、偽装結婚相手である滝本と共に帰省することになった咲月。ところが、滝本の徹底的なリサーチや気配りによって今年の帰省はいつもよりも居心地が悪くなかった。帰省の帰り道、偽装結婚から始まった二人はついに正式な夫婦になって……。

本当の夫婦になっても変わらぬ距離感がとても良かった

偽装結婚から始まるオタク男女の適切な距離感が保たれた上質な同居生活、シリーズ第2巻。しょっぱなから第1巻から続く形で咲月の実家の話が描かれて色々な意味でしょっぱなからクライマックス感凄くてどうなることかとおもったけど、本当に安心の滝本さんのリサーチ力で感心してしまった。地方にある古い体質の家の中で立場も肩身も狭い子、という問題を好きなアーティストや舞台俳優の話題から切り開いていくのオタクならではの感覚だなと思ったし滝本さんのリサーチ力が強い。その他の場面でも細々と気を回してくれるのが伝わってきて、そりゃ咲月も惚れてしまうわよ……。

実家編を境に偽装夫婦から本当の夫婦に……ということで、恋愛感情を交えることで1巻で感じた心地よい関係性が崩れてしまうのでは?と少しだけ心配をしていたのですが、引き続きお互いにオタクとしてのパーソナルスペースが保たれた、無理のない距離感で付き合っていくのがすごく良かった!個人的に一番共感したのは『朝は昨日の夜流れたツイッターのタイムラインをチェックしたりしたいから一人のほうが気楽なので基本的に別々』ですね。本当にわっかる〜!!!!!

その一方で、互いを名前呼びするところから始まって、出張で離れ離れになってお互いの存在の大きさを実感したり、会社の中でも公認の関係になったり……と一歩一歩夫婦として距離が近くなっていくのが気持ちよかったです。一緒にいるために自分の楽しいことを犠牲にしているわけではなくて、大好きな相手のために何かをすることが「とても楽しい」だから一緒にいる時間が増えていく……という、まさしくタイトル通りの生活なんだよなあ。パーソナルスペースは保たれたまま、そのパーソナルスペースの一部が重なる感覚というか。「咲月に似合いそうな洋服を買ってあげたい」滝本と「着るものに拘りはないけど滝本が喜ぶならいつもと違った格好をしたい」咲月、といったように互いのフィーリングがバッチリ合うというところも多分にあるのだけど、とにかくこんな生活だったら他人と暮らすことも悪くない、と思わせる展開が多くてこちらまで幸せな気持ちになってしまった。

というか、1巻では咲月への恋愛感情をひた隠しにしてきた滝本が少しずつ遠慮しなくなっていくのが大変微笑ましいですよね。家庭環境的に他人により掛かるのが苦手な滝本が少しずつ咲月さんにも自分の荷物を持ってもらうようになるまでの過程も大変良かったですが、「エロ隆太」さんとか、笑うしかない。いやほんと、我慢しなくてよくなってよかったねぇ…。

相変わらずオタ活描写も楽しい

二人でイチャイチャする時間が増えていく一方で、オタクとしての活動もしっかり描かれていて楽しい。1巻であまり生きてなかったように思うボカロP設定がここぞとばかりに出てくるのも楽しかったし、咲月さんがおかっぱ男子好きが嵩じて昔のアニメのおかっぱキャラの同人誌作る流れには思わず笑ってしまった。他の作品は伏せ字対応なのにガンダムSEEDだけまんまなのはやっぱりKADOKAWAから出版されてるからなんだろうか……私もおかっぱというとアスランじゃなくてイザークを連想します。

個人的にデザロズ周りの話が好きなので今回あまりデザロズ関係の話がなくて残念だな……とおもっていたら28話の咲月が滝本にデザロズ絵を描いてそれがうっかりバズる話がなかなかデザロズ的に濃厚で超満足。今回はデザロズといい従姉妹の樹里ちゃんのVtuberプロデュースの話といい、前巻よりももっと踏み込んだ形で夫婦で一緒にオタ活してる描写が入ってきたの楽しかったです。それにしても滝本さんは本当に有能Pだな……。


ロクでなし魔術講師と追想日誌 9

 

私が生きている意味はーーこれだったんだ
「Project: Revive Life」から生まれ、グレンに救い出されたリィエル=レイフォード。しかし、彼女には生きる意志が消えていた。帝国に存在を偽り、彼女を育てることに決めたグレンは……

生きる気力を失ったリィエルにかつての自分を重ねるグレンが印象的。一度はグレンに依存させることで立ち直らせるしかなくて……という苦味が沁みるラストから、リィエルが本当に守りたいもの・「生きる理由」を改めて実感する本編の時間軸につなげていく構成にホロリとしてしまった。それにしてもレーン先生の短編もっとください。

レーン先生の短編もっとください。(大事なことなので2回略)

まさかのレーン先生再登場!!な短編「レーンの受難」でテンション上がりまくってしまった。女子寮に出没した下着ドロを捕まえて欲しいというマリアからの依頼を受け、グレン先生写真集(どうみても盗撮)で懐柔されたセリカがグレンを再び女体化させ、女子寮に送り込む!!!という内容なんですけどグレンの実態をよく知らない下級生達から歓待され、マリアに迫られて不純同性交遊の疑いをかけられたり、一転下着ドロの容疑者として冷たい目を向けられたり…と始終女子生徒たちに振り回されがちなグレンの様子にニヤニヤが止まりませんでした。これまで本編にしか出てこなくて割とシリアス要因だったマリアちゃん、コメディに回すとこれまで出てきたヒロインたちとは違う形でグレンを振り回す、良いキャラでしたね。彼女が学園主体の短編に登場できる時系列が限られすぎてるんだけど、レーン先生主体の回をもう一回くらいやってほしい気持ちが凄い。本編も終わりが見えてきているこのタイミングですが、ぜひシリーズ化して!!!

普通の人間のような楽しみを書物でしか知らないナムルスがルミアの身体を借りてグレンと1日デートする「名も無きビューティフル・デイ」。例によってナムルスの壊滅的なファッションセンスから始まり、現実と書物の区別がついてなかったりシスティーナから借りた本のラインナップのせいか半端に恋愛脳になっちゃってるナムルスの姿に思わずニヤニヤしてしまうんだけど、そんな彼女を意外にしっかりエスコートするグレンが良かったです。いつものメンツだとこういう状況の時、割とグレンが寄りかかっても問題ない人材が揃ってますからね……そんなグレンをこっそり尾行した結果、巻き添えでシロッテの枝をかじることになってしまったシスティーナは強く生きて欲しい。

君に教えたいこと」もよかった。グレンが訳あり母子家庭の親子からの依頼で家庭教師を引き受け、親子を襲うトラブルを解決するというまさに正統派なロクアカ短編な内容で、シンプルに良かった。ウル、本編で再登場してほしいなあ(もう色んな意味で最終決戦しか残っていないような状況ですが!)

過去から本編に連なる展開が印象的なリィエル過去編

書き下ろしの過去編『迷子の戦車』はグレン達が「Project: Revive Life」の産物であるリィエルを救い出し、まっとうな人間として生きていけるまで寄り添おうとするお話。正体を偽り天の智慧研究会の暗殺者として育てられていた少女を保護する…という形で特務分室で身柄を預かることになったものの、「天の智慧研究会」という組織の情報そのものが切望されており、軍部の心無い人間たちからその身を狙われてしまう。更に、天の智慧研究会からも追手が差し出され……周囲の協力も満足に受けられない状態で心神喪失状態のリィエルを介護しながら孤独な戦いを強いられることに。

生きる気力を失ったリィエルにかつての自分を重ねるグレンが印象的でした。自分がセリカに救われたように、自分も誰かの救いになることが出来れば……と奮闘してみるものの彼女が負った傷はあまりにも深く、一度はグレンに依存させることで立ち直らせるしかなくて。とりあえず生命の危機は脱したけれど、完全に立ち直らせる事はできなくかった……という、グレンのひとかけらの後悔が心に沁みました。少しホロ苦いラストから一転、フェジテを襲う死者の群れに敢然と立ち向かうリィエルがアルザーノ学院の仲間達に囲まれて自分が本当に守りたいもの、「生きる理由」を見出していく。過去編から本編の展開に連ねていく構成が今回もとても良かったです。

しかしラストのリィエルや生徒たちとのやりとりが素晴らしいだけに、現在(グレン達が過去から帰還した時点)のフェジテがどうなっているのか本当に気になる。20巻が早く読みたい…!!


女王の化粧師3

 

「女王として、どんな国を作りたい――?」時代に翻弄された女王候補と化粧師の物語第3弾!
紆余曲折を経て、マリアージュの下で化粧師としての居場所を揺るぎないものとしたダイ。 そんなダイに最有力の女王候補アリシュエルからも化粧の依頼が舞い込む。 一方でダイは、花街時代の友人である医師ロウエンから、アリシュエル宛ての伝言を託される。 貴族と平民。身分差があるはずの二人がなぜ――。 困惑しつつもダイはアリシュエルの元を訪れるが!?

休暇を取って街に下りたダイは、花街で懇意にしていた医者・ロウエンと再会し、彼からとある人への伝言を頼まれる。数日後、女王候補の筆頭格であるアリシュエルに招かれ、どこかギクシャクとした家庭環境や意外な素顔の一面を目にすることになり……。

夜会(の準備)楽しいなあ!!!

今回はとにかくもうミズウィーリ家で開催された「夜会」(の準備)の話が好きすぎて!!資金力に乏しいミズウィーリ家ではたった1度催すのが限界で女王選に向けて失敗できない夜会、人員も資金も足りない中でマリアージュがダイの化粧の力を駆使したとある催し──「仮面舞踏会」を思いつく、というお話なんだけど、女王候補として支援者が少ないこと、人員整理するのに致命的に人数が足りないこと、更には貴族たちが「化粧」に偏見を持っていること……などといういくつもの問題を画期的に解決していくという展開がとにかく気持ち良いし、その上でゲストたちが偏見を捨てて素直に「化粧の楽しさを味わえる」イベントになっていくのがめちゃくちゃ楽しくて、それに向けて主催するミズウィーリ家の人たちも忙しくなりながらも楽しく準備している姿を見ているのが楽しくて仕方なかった。そしてそれを企画したのがマリアージュ様というのがまた、2巻までの彼女を見ていると感慨深いものがありますね。

あとがきでも言われてたけどイベント本体はオマケすごくわかります。

楽しい夜会からの報われない恋のお話に、感情が追いつかない

楽しい夜会の後は…というかまあ夜会の前から伏線は張られていたのですが、女王候補の最有力者・アリシュエルと花街の医者・ロウエンをめぐるお話。アリシュエルの幸せを願いって国を離れようとするロウエンと、父親からの過剰な監視を受けて疲弊していくアリシュエル。お互いに深く想い合うがゆえにすれ違ってしまう二人の恋の結末に、胸が苦しくなりました。決して万人に祝福される関係ではなかったのですけど、少しでも何かが噛み合っていたらもっと幸せな結末がどこかにあったと思うんですよね。ロウエンがアリシュエルともう少し良く話し合っていたら、ダイがヒースに二人のことを打ち明けられていたら……しかもそれがすべて、二人のことを思っての行動だったことがまたとてもやるせない。

まあそれはそれとしてどうかんがえてもヤバいのはアリシュエルの父親だったので彼の人には相応しい報いを受けて欲しい…と思わずにいられない。しかしなんかこれ、結構本人はのうのうと生きてそうなのがまた本当にやるせないわけですが……。

成長したマリアージュ様のかっこよさがすごい

楽しいお話も悲しいお話もあって感情のジェットコースター的な意味で盛りだくさんだった3巻ですが、今回はとにかくマリアージュ様の成長で胸がいっぱいになってしまう巻でした。夜会の催しに関してこれまでになく積極的に周囲を引っ張っていこうとする姿には館の女主人としての成長を感じましたし、何よりも一番のライバルであり複雑な感情を抱いているアリシュエルを助け、叱咤する姿がかっこよすぎました。まだまだ軽い癇癪を起こしてダイ達を困らせるような部分もないわけじゃないけど、次期女王としての貫禄が身についてきたと言うか……いやこんなのはアリシュエルだって惚れてしまう。

それにしてもあとがきによるとこの3巻でもまだ序章でしかないのか。女王選のシステムが面白くてこれがメインのお話のような気がしていたけど、確かにタイトルは「女王の」化粧師なのでどう考えても女王になってからが本番なんですよね……次はいよいよ序章である女王選の完結編とのことで、続巻が読めるのを楽しみにしています。


オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!

 
雪子

同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まる楽しすぎる結婚生活。
同人作家という秘密以外は普通のOL・相沢咲月は、ある日イベント会場で突然プロポーズされた。相手はメガネ姿のドルオタ……じゃなくて、イケメン同僚の滝本さんで!? 偽装結婚から始まる幸せ結婚生活物語。

金銭面に余裕のあるオタク男女が偽装結婚をして、広い家でシェアハウス的な共同生活を送る話。適度な距離感の保たれた楽しそうな「上質な暮らし」が、読んでて心地よかった。オタク要素はあらすじから想像したものと比較してやや薄めという印象を受けましたが、旦那のハマっている「地下アイドル」話が奇抜な設定で面白かったです。ただ、ちょっと起承転結の転のまっただなかで切れちゃってる感じなのが少し残念で、出来ればもう少し先まで読みたかったなあ。

隠れオタクの男女が織りなす、“上質な暮らし”。

会社には内緒で同人作家をやっているOL・相沢咲月。イベント会場で「結婚しろ」と口うるさい母親の愚痴を言っていたら、なぜかその場に居合わせた会社の同僚・滝本(※隠れアイドルオタク)から「それなら僕と偽装結婚しませんか?」とプロポーズをされてしまい!? 話を聞いてみると向こうにも結婚を急ぎたい家庭の事情があるようで……お互いの利害が一致して偽装夫婦になったふたりが“夫婦生活”と言う名のシェアハウス生活を送るお話。

親戚から管理を任されている一軒家の2階に滝本を住まわせ、基本的には別個の生活を送りつつも時折なにかあれば「同居人」としてお付き合いをする。社会の中でそれなりにうまくやっているふたりが首都圏郊外にある広い家の一階と二階で一定の距離感を保ちながら趣味や生活にお金をかけていくという生活、なんというかすごく生活に潤いがあって読んでいて心地良い。そしてお互いの趣味に没頭しながらも「ふたりぐらし」という新しい生活をエンジョイしている様子がとにかく楽しそう。一時期BLで「上質な暮らし」という概念が流行ったけど、まさにこういう話のようなもののことをいうんだろうなあと思った。もうとにかく暮らしの質が高いんですよね……。

滝本のハマってる「地下アイドル」の話が濃い

出会いの場が同人イベントの会場ということもあってどうしてもあらすじを読んだ時点ではオタク男女のラブコメ的な要素を想像してしまっていたんですが、同人オタク的な要素はかなり薄くてどちらかというと滝本がハマっている地下アイドル・デザートローズの話の比重が多め。宇宙からやってきたアイドルユニットという設定に対してアイドルもプロデューサーもファンもその世界観に即した活動をしている…というのがかなり奇抜で面白いし、メジャーなアイドルではないからこそのファンと公式の距離の近さが印象的。書籍版書き下ろしで描かれる、「デザートローズ」の結成秘話も濃厚な女の子同士の巨大感情案件で楽しかったです。

滝本側の趣味の話がめちゃくちゃおもしろい分相沢の同人活動の話が薄めなのが若干気になってしまうんだけど、正直同人オタクの話は今かなりメジャーな題材になってきているので無理に深堀りしなくてもいいのかもとも。それにしても毎日定時で仕事を済ませて原稿をコツコツ仕上げるて二次創作では壁サー+一次創作では商業を少々…いう姿勢がデキるオタクにもほどがあって、締切前にまとめて原稿するタイプのオタクは震えた。こんなところまで生活の質が高い。

ラブコメとしてはまだ、はじまったばかり

実は結婚を申し入れる前から相沢に好意を持っていた滝本。営業マンとして、そして地下アイドルのオタク活動で磨いたリサーチ力を駆使して彼女の好きなことや嫌いなことをリサーチし、着実に相沢の好感度を上げていくのが良かった。下心があるにはあるんですけどどちらかというと純粋に「好かれたい」という感情が主な感じで、いやらしさが感じられないというか彼の行動が純粋に二人の生活の暮らしやすさに繋がっている感じなのが良かった。相沢の一挙挙動に内心で「かわいい!」と転がっている姿も微笑ましい。

ただ、恋愛ものとしては始まったばかりというかまだ滝本の独り相撲感が拭えない。特に相沢の方には毒親問題が立ちふさがっているのでそっちを解決させないと恋愛的なアレコレは考えられないんだろうな。逆に相沢の実家問題さえどうにかなればあっさり両思いになってしまいそうな雰囲気を感じるんだけど……1巻そこで切るのか〜!!原作のカクヨムの方を見ると今回くらいの分量×3巻でピッタリ終わるくらいの内容っぽいので、たしかにこれはここで切って残りは2巻回しになるのかな〜って感じなんですけど、正直ちょっと本が厚めになってもいいから相沢の実家の件が解決するところまでは入れてほしかったな。良くも悪くもなろう小説の書籍化1冊目にありがちな、中途半端な終わり方してるのが残念。

相沢とのふたりぐらしの暮らしやすさを支えていたのは滝本の営業マンとしてのリサーチ力だったと思うので、今度はそれが相沢の実家に対してどう働くのか、母親の攻略には自信ありそうだけど相沢の話を聞いてると癌は兄貴っぽいけどそのへんもどうなのか。いろいろな意味で2巻が楽しみです。


ロクでなし魔術講師と禁忌教典17

 

公爵家イグナイトの裏切り。クーデター『炎の一刻半』
魔術祭典決勝を襲った最大級の悲劇と天の智慧研究会の最高指導者、大導師フェロード=ベリフの登場――歴史の大いなる転換点で、アルザーノ帝国女王府国軍大臣・アゼル=ル=イグナイトもついに動き出す――。

衝撃のラストだった前巻、突然発生したクーデターに対して一度は心を打ち砕かれたイヴがグレン達の力を借り、戦局を完全に読み切り、絶望的な戦況をひっくり返して家族と対峙していく姿が熱い。これまでの本編・追想日誌の内容の総決算とも言える内容でめちゃくちゃに楽しかった!しかしそれ以上の事件が起きるぞといわんばかりの終わり方に動揺する。いやいや、久しぶりに本編読んだら本当に本当に面白かったんですけどまだまだ面白くなってしまうのかこのシリーズは……。

イヴ、どん底からの再起──大逆転劇がアツい!

そう前巻めちゃくちゃ衝撃のラストで終わってたんですよね…。魔術祭典が衝撃の展開で中断された裏では天の智慧研究会によって邪神降臨の儀式が執り行われようとしていた──ジャティスのその身を顧みない奸計により天の智慧研究会の最高指導者の顔が遂に明らかに…なったのはいいけど、邪神召喚の儀式は完遂されてしまうし(というかむしろおおむねジャティスガやった)街にはその眷属たる《根》が溢れるし、しかも混乱の隙を付く形でイヴの父・イグナイト卿がクーデターを起こし、グレン達は命からがら身を隠す羽目に…という、四面楚歌すぎる展開からのスタート。

イヴの父親の蜂起、というだけでイヴにはしんどい話なのに、更に彼の横にはかつて自分を庇い魔力を失ったはずの姉・リディアの姿が。なぜか自分のことを覚えていない彼女に違和感を覚えつつも二人を目の前にして動揺し、一度は心を折られてしまう。そんな彼女がグレンの叱咤と励ましを受けて立ち直り、長いこと超えることが出来なかった大きな壁、父と姉を超えていく姿に胸を打たれました。また、立ち直ってからのイヴの采配の見事なこと。圧倒的不利に見える戦況を根気よく整理し、戦術により分断して「勝てるかもしれない」と思わせるところまで敵の数を減らしてしまう姿が本当に鮮やか。これはグレンも手放しで褒めるわ。

これまでの総決算のような内容で、面白かった。

イヴとイグナイトの家庭の事情もそうですが、パウエルとアルベルトの因縁などこれまでの本編・追想日誌の内容の総決算、様々な因縁が集約するような展開が最高に面白かった!追想日誌の方は長いこと積んでしまっていたんだけど、この話の前に4〜6をまとめて読めたのは逆に良かった気がする。イヴとアルベルトの過去もそうですが序盤のジャティスの自分の身すら顧みない行動も5巻の過去話を踏まえて読むと説得力が増すなというか…(いやでもアイツ絶対になんだかんだいいながら戻ってくるでしょ…)

また、今回はあくまでイヴとグレンがメインではあったけれど、そんな中で様々な修羅場を乗り越えて大きく成長した生徒達の姿も印象的でした。システィーナにルミアやリィエルといったメインヒロインとも言える少女達の成長はもちろんなんだけど、それ以外の生徒達の成長もしっかりと描かれるのがいかにもこのシリーズらしい。ヒロイン達は色々な意味で今回はお鉢を奪われた形でしたが…イヴとグレンの急接近で動揺する三人娘の姿がなんとも微笑ましかった。

しかし、多大な犠牲を払いながらもなんとか一段落〜と思った矢先に最後の最後で前巻ラスト以上の爆弾をぶちこんでくるのはどういうことなんでしょうねえ!!表紙からしても、次は今回言及のなかったセリカの話か。今回の話がこれだけ面白かったのに、更に盛り上がりそうなラストに興奮が止まらない。次巻が楽しみです!


乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…5

 

乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。破滅エンドを回避したはずが、なぜか最大の破滅フラグだったジオルド王子との婚約は継続中。「私、いつでも身を引きますから!」そう本人にも宣言しているのだけど…。ジオルド王子の婚約者の座を狙う令嬢が現れるライバル登場編、ニコルのお見合い編ほか、カタリナたちの日々や意外な人物にスポットをあてた過去編も収録。大人気★破滅回避コメディ第5弾は、コミック大増量で掲載!

各キャラの視点から描かれたちょっとした話や本編では描かれない脇役達の物語、ショートコミックも収録した短編集。メインとは関係ないところで色んな意味で「カタリナシンパ」が増えてるんだな……としみじみしてしまった。元ライバル令嬢の女の子の顛末に笑ってしまう。

主に他キャラ視点を中心に描かれる短編集

ジオルド・キース・アラン・ニコルの4人の視点から描かれる長めの短編とラファエル・女の子たちを主体にした短編、Webに掲載されているサブキャラ達の視点からのショートショート。コミックの方でアンが淡々とゲームのメインキャラたちの存在感を喰っていく姿に笑ってしまう。最後のキャラデータではしっかりとサブ攻略キャラと同じスペースを確保していた。

割とゲームの攻略キャラ達との絡み以外は描かれないので、学園ではそれ以外の人脈は出来ていない感じなのかなと思っていたのですが予想以上に無自覚でシンパを増やしていましたね。庭師とメイド長の話は本当に短かったけど最近放送しているアニメでもそれとなく話題を振られていた部分だったのでこのタイミングで読めてよかった。パジャマパーティの話はアニメにもなってたけど、アニメのタイミング的にラファエル・ソラが登場できないのが少し残念だったな。

ジオルド&メアリ(腹黒コンビ)の圧が強い

個人的にキースとジオルドがやりあったり、メアリが水面下で奔走したりする所が見れる「ライバルあらわる」が楽しかった。他キャラ視点はこのシリーズの十八番であるけど、コンセプト的に「カタリナ一人称の裏側」として描かれることが殆どなので彼女の絡まないところで綴られる視点が新鮮。

カタリナを妬むライバル令嬢が彼女を蹴落とすために色々画策して返り討ちに遭うお話なんだけど、多少の嫌がらせ程度では暖簾に腕押し状態なカタリナが強いし、度を超えた嫌がらせをしてきた相手をめちゃくちゃ普通に排除しようとする周囲(というかジオルド)が強かった。というかジオルドとメアリの挿絵が最高に「圧」強くて好き。ジオルドが助力を求めるのが最大のライバルであるキースじゃなくて「似た者同士」のメアリというところがわかってるなと思う。

メアリはその後のガールズトーク短編でかつての姿が描かれるのが印象的で、もはやすっかりジオルドと並ぶ「カタリナ過激派」と化した彼女がかつては気の弱い人見知りだったことを思い出すと感慨深かったし、彼女がここに至るまでの血のにじむような努力とそれに報いてくれたカタリナのエピソードを見るとそりゃカタリナ過激派にもなるよねと。別に好きな人が居る同士であるアランと、恋愛ではないけれど良いパートナーしてる姿にもにっこりしてしまった。

新展開が楽しみ

カタリナたちも無事に学園を卒業し、次巻からはじまるであろう新展開の前の息抜き的な巻でした。魔法省編がどうなるのかも楽しみです。

ところでニコルのお見合いの話に出てきた生徒会の後輩ちゃんが割と意味深でしたが、今後出番とかありますかね?モブキャラにしては目立っていたのでちょっと気になる。


転生先が少女漫画の白豚令嬢だった

 

気がついたら前世で愛読していた少女漫画の悪役令嬢のとりまき、白豚令嬢に転生していたブリトニー(80kg)。このままのルートだと悪役令嬢に全ての罪を着せられて処刑エンド!?回避するには人生やり直すしかない!「よし、ダイエットしよう!」─美形従兄や元婚約者の登場でまさかの恋愛フラグも?ぽっちゃり令嬢のダイエット★ラブコメ!! (「BOOK」データベースより)

少女漫画と美容と化粧品づくりが趣味の大学生が転生してしまった先は、好きだった少女漫画の悪役王女…の取り巻きのふくよかな令嬢ブリトニー。性格の悪さとその見た目で読者から「白豚令嬢」と呼ばれていた彼女は、物語の中では悪役王女の罪を押し付けられて処刑されている。最悪の未来を阻止するためダイエットを始めたが、これがなかなか前途多難で……!?

悪役王女の取り巻きになったから無実の罪で殺される→悪役王女は自分よりブスな女しか取り巻きに選ばない→彼女の目に止まらないために、ダイエットして美人になろう!!という感じで、一見関係なさそうな「痩せる」という目標が破滅フラグの回避と密接に結び付けられているのが面白い。デブの悪臭をなんとかするために温泉を引いたり、石鹸や化粧水を自作していくとそれが口コミで広がって家計を助ける……と他の問題の解決にも次々と繋がっていくのも楽しかった。

体型の件もあるけど、それ以上に性格が悪くて愚かだったブリトニーと周囲の関係はほぼ最悪で。甘やかしで孫をダメにする系の祖父しか味方の居ない状態から、少しずつ足場を固めて周囲との関係を改善していく流れが印象的でした。最初は取り繕って「いい兄」を演じていた従兄・リュゼがどんどん本性出してくるのには笑ってしまったけど。

そしてなにより、物語のしょっぱなで婚約破棄された元婚約者・リカルドとの関係が良かった!最初は婚約破棄を逆手に「取引」という形で関係を持っていたのが、こちらが誠意を見せることで改善していって、少しずつ距離が縮まっていくのがめちゃくちゃ可愛い。最後の最後で吊り橋効果的に一気に距離が縮まるのにもにんまりしてしまった。

それでも、ブリトニーを性格と体格が歪んでいたのは元からではなく、幼い頃の家庭環境にあったというのがなんというか、本来の少女漫画での彼女の末路を考えると複雑な気持ちになる。「白豚令嬢」という単語からしてデブへの当たりがキツくて軽く敬遠していたタイトルだったんですが、読んでみたら予想以上に面白かったです。デブが悪いんじゃない……歪んだ環境がデブをうむんだ……(私もブリトニーを見習ってちょっとお外歩いて来ます)。

ところで、個人的にこの手の悪役令嬢物、割と前世の記憶を思い出した後は前世側の人格に上書きされることが多くてもう少し本来の人物の人格が残ればいいのに……みたいなこと思うんですけど、物語の途中で「寝てる間に無意識にブリトニーの身体が食べ物を求めて夜食を漁っていた」設定には笑ってしまった。心は(前世に)屈しても身体までは自由にならなかったかーーー。