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はたらけ!おじさんの森4

 

最高のおつまみが決定!? 大人気ゲームの世界にトリップしたおじさん達の無人島ライフはますますハッピーに!
ライオン族のあにまる、ライオネスが島リーダーを務める完全武闘派の異色島、ぶどう島と友好関係を築いた、サラリーマン森進率いるおじさん島。今まさに、島ランキング一位と二位の島との同盟締結式が行われようとしていた。そこに集まったのはふどう島の傘下島のおじさん達。(中略) 進司会の下、開催される第一回おじさん超会議!「最高のおつまみはなんだ?」という永遠の命題に、おじさん達が大激論を繰り広げる!!!そんなテンションにあにまるの子供達は、ついていけるのかッッッ!!??そして、ネコミ達はフラワー島に子供達だけでお泊まり。ワクワク気分の子供達を見送るおじさん達は寂しさと心配に満ちた表情で、まるでお通夜のよう。子供達のいなくなった島の夜を、おじさん達は耐えられるのかッッッ!!??更には借金システム導入に木林のプログラミング授業の他、不思議な島の謎に名探偵ネコミちゃんが挑む!?おじさんとあにまるが織り成す、のんびり無人島ライフ第4巻、ここに開幕!

前巻で対決した「ぶどう島」及びその傘下の島々との同盟締結からはじまる新展開の4巻。(公式のあらすじが中略しても長すぎるのでここでのあらすじ紹介は極力削りました)

同盟島の面々を加えて「おじさん島」はますます賑やかに!

基本的にはこれまで通りのスローライフを送りつつ、これまで以上に同盟島の面々が絡んでくる展開が楽しかった!すっかりお馴染みとなった初めての同盟島・フラワー島に子どもたちがお泊まりに出かける回で総親バカ化するおじさん島の面々が微笑ましすぎる。これは見守られるあにまるたちもドン引きするし、フラワー島のおじさんたちにもしっかりムーブが見抜かれているのに笑ってしまった。色々な意味でこれ、最終的に子離れ出来るのか気になりすぎるな……。

今回同盟島となった新たな面々の掘り下げも少しずつ。ぶどう島のポイント獲得全振りQOL全無視スタイルには笑ってしまったし、公務員島だと思われていたGANMA島の業の深さもヤバい。何のこととは申しませんが4人目のおじさんに対するリスペクトと気遣いを欠かさないが内心で全力で続きマダーしたい他のおじさん達という微妙すぎる関係の間に外部からやってきた秋良が欲望のまま全力でカチ込んでいくの笑ってしまった。他の同盟島の面々はまだ顔見せレベルという感じだったけど、どこの島もなかなかに濃厚な雰囲気を漂わせていて今後絡んでくるのが楽しみだなあ。

そんな楽しいお話の合間にも、少しずつ世界観そのものへの考察・掘り下げが進んでいく気配。1巻から結構な世界観のどんでん返しがあった本作だけど、これまで以上にただの「ゲーム世界への転移」じゃなさそうな気配が匂わせされてきて、どう進んでいくのか気になる。果たして、「あにまるわーるど」と現実世界の関係はいかに?そろそろ大きく話が動きそうで、楽しみです。


はたらけ!おじさんの森 1

 

二足歩行の動物が暮らす島にやってきたのは…おじさん? 人気ゲームにトリップした人とあにまるの交流を描く、ほのぼの問題作!
大ヒットゲーム『あつまれ! あにまるの森』。その新作発売日に、行列から離れて、買いそびれてしまったサラリーマンがいた。 森進(もりすすむ)・42歳独身、中堅企業総務部に勤務するサラリーマン。落ち込む進は「おじきち」と名乗るおじさんから、見たこともないゲームソフトをもらう。 帰宅しておそるおそるプレイしてみると------ゲームの中にある島にトリップしてしまった。そこは言葉を話す二足歩行の動物、通称「あにまる」が暮らす不思議な世界・「あにまるワールド」。 戸惑う進の前に再び現れたおじきちが言う。「今日から皆さんには、この島で楽しい共同生活を送って、エンジョイして欲しいオジ」 水を探し、食料を調達し、火をおこし、魚を釣り……ビールを飲む!? 4人のおじさんと4匹のあにまるの心の交流が胸アツ!? さぁ、ハートウォーミングおじさん島ライフにログイン!!

休日の早朝から並んで買うつもりだった人気のスローライフゲーム『あつまれ! あにまるの森』の新作を、迷子の子供を助けたために買い逃してしまった総務のサラリーマン・森進。と、彼の後ろに並んでいて同じく列を抜けてしまった森秋良。大人しくゲームを諦めて帰ろうとしたその時、謎のおじさんからゲームソフトを貰う。そのタイトルは『あつまれ! あにまるの森』……ではなく、『はたらけ!おじさんの森』。とりあえずゲームをプレイしようとしたところ、何故か意識を失ってしまい……!?

「おじさん」と「あにまる」が織りなす、ゆるゆる無人島スローライフ

タイトルの出オチ感に反して、人が良くて有能な「おじさん」たち4人と彼らに庇護されることになった「あにまる」の子供達が異世界の無人島を舞台に某ゲームのようなほのぼのスローライフを送るというハートフル異世界転移物でした。どうみても元ネタであろう例のゲームはやったことないので理解できるかな……という気持ちもあったのですが、元ネタ(多分)のゲームをプレイしていなくても全然楽しめました。

主人公である4人のおじさんがまた本当に良いキャラしてるんですよね。物腰が柔らかくて気遣いの人・総務部のサラリーマンとして皆を取り仕切る主人公の進、最年少(38歳)でガラが悪くすぐに頭に血が登ってしまうけど本当は感動屋・あにまる達が健気な行動をするとすぐに感極まって茂みに駆け込んで涙ぐんでしまう秋良、一番年上で頑固職人タイプのおじいちゃん・山太郎、絵に描いたような引きこもり(リモートワーク)の中年オタクだが時折とんでもないポテンシャルを発揮する木林。彼らがそれぞれの強みを発揮して「わかもの」によって傷つけられたあにまる達の心を癒やし、島で起きるちょっとしたトラブルに次々と立ち向かっていくのが頼もしかった。ただかっこいい・心優しいだけでなく、かまいすぎてうっとおしがられたり、おじさんならではの面倒臭さがあるのもたまらない。隙あらばビールで乾杯しはじめる描写から絶妙な加齢臭がする!!

無人島を発展させたり、「あにまる」達と仲良くなることでポイントを得ることができて、任意の物との交換に使用できる……という神から用意されたシステムも良かった。無理のない範囲で作れるものは自作して、自分たちでの対応が難しい物をポイント交換するという仕組みによってイージーモードな無人島サバイバルを送ることが出来て、コンセプト通りの「スローライフ」を楽しめるわけなんですよね。ミッションやポイント交換のシステムが「できそうなことは自分でやってみよう」というモチベにもつながっていくのが上手い。その他『島のテーマソングを作ろう』なんて突拍子もないミッションが、進の手によって交流企画として仕立て上げられたりするのも面白かった。

競争相手である他の島の住人は今巻では殆ど登場しなかったけど、基本的に子供・動物に優しいおじさんたちが異世界転移に選ばれているので基本的には悪い人の居ない世界観となっていそうではあり、そこも良かったです。「おじさんに悪い人が居ない」世界観なんだけど、おじさん概念への過剰な賛美ではなくて純粋に良いおじさんしか選んでいないという理由と原因がある。あと、明日夢さんの島の顛末にニヤニヤが止まらない。

予想外にハードな世界観がどう動いていくのかも気になる

物語の後半では、「あにまる」たちが度々口にする「わかもの」とは何者なのか、なぜ彼らは「おじさん」という概念を知らないのか。そしておじさん4人をこの島に召喚した自称この世界の神「おじきち」の正体が語られます。いや予想以上に重たい世界観でびっくり。

2巻以後も基本的には無人島ゆるゆるスローライフが中心になるようだけど、「わかもの」達との因縁も提示された以上は続いていくんだろうなあ。どう動いていくのか気になる。


顔さえよければいい教室 2.竜姫ブレイクビーツ

 
necomi

妹の才能を轟かせよ! 次なる課題はヒップホップ!?
学園内で一大勢力を結成した楽斗と詩歌。次なる課題は踊ってみた配信の人気争奪戦!? 詩歌の致命的なダンスセンスを克服すべく、楽斗はダンス学科首席である竜姫のもとを訪れる――最先端の音楽エンタメ第二弾!!

ミュージシャン学科同学年トップの渋谷エリオや狛江乃輝亜、情報屋の秋葉原麻奈と共に《渋谷軍団》というチームを結成した池江袋兄妹。向かう所敵なし……と思ったのもつかの間、期末考査の課題として義務付けられらのは詩歌が苦手とする「ダンス動画の投稿」だった。ダンス学科主席で仲の良い大塚竜姫に協力を仰ぐが、ひょんなことから優勝候補の千石ライアンとダンス動画対決をする羽目になり……!?

タイトル要素の回収の仕方がめちゃくちゃ好きだなあ

顔出し限定の動画投稿サイトでの再生数がパワーになる芸能系の学園を舞台に、天才的な歌の才能を持つ妹と彼女を支える平凡な兄が天才たちと鎬を削る物語、シリーズ第二巻。今回はどうかんがえてもインドア系の詩歌にとっては鬼門なダンス勝負……ということでどうなるのかと思いきや、色々なイレギュラー要素があったとはいえそのへんは割りと無難に切り抜けてしまった感じでした。いや、突然ダンスの天才として覚醒するわけではないんだけど、そこを補っていくのがこのシリーズが幾度も主張していく「顔さえよければいい」部分なわけで。

主題はダンスでの対決であるけれど、ここでも重要視されるのは才能そのものじゃなくて再生数であり、ひいては「動画の見た目」。見栄えを上げるためにはファッション学科の生徒の協力が不可欠──というわけで、ファッション学科主席の原宿亜寿沙の新作衣装争奪戦が勃発!!という展開になってしまうのがこの物語ならではで、面白い。前巻を読んだときにも感じましたが、圧倒的な才能を持つ天才達のぶつかり合いみたいな物語であると同時にしっかりと「顔さえよければいい」の要素を回収しに来るんですよね。一見正反対のようにみえる2つの要素がしっかりと噛み合ってるのが凄く面白かったです。

初めて描かれる詩歌の「作曲」シーンが凄絶

前巻では以前に詩歌が作った彼女自身の曲が題材として使われていましたが、今回は自分のダンスの方向性に迷いを覚えた大塚竜姫に詩歌が曲を作り、提供するという場面があります。詩歌が作った曲が道に迷っていた竜姫の背中を後押しして、道を踏み外しかけていた彼女の親友をも救う。圧倒的な才能と芸術が迷える少女たちを救ってしまう展開がとてもアツかったのですが、その作曲シーンがなかなか凄絶で。

他人の感情を「色」として見てしまう詩歌が竜姫に真正面から向き合い、内に秘めている情熱と強い想いを感じて、彼女自身を知って、その過去や信念を掘り下げて、自分ではない彼女のそれに共感・肯定して、その人生・信念そのものを一つの「作品」へと仕立て上げていく。魂を削るかのような作曲への道程が印象的でした。作曲までの流れも凄かったけど、曲を作った後のどこかのネジが外れてしまったような詩歌の姿が衝撃的で。こんなん確かに頻繁にやってたら大変なことだし、兄も禁じ手にするよね。

彼女が竜姫のための作曲に打ち込む裏で、他の仲間達によって《渋谷軍団》の方のダンス動画もフォローアップされている展開が急造チームの中で確かに育ちつつある信頼・絆を感じさせて良かった。今回の乃輝亜くんの頑張りにはいつかどこかでスポットがあたってほしい感じがあるんですけど、強敵とのライバル対決を征する決め手となるのがダンスの質というよりも麻奈と楽斗が仕掛けた情報戦、いわば「話題性」であるところが重ねてこの物語の面白いところだなと。その一方で、そういったことには翻弄されずに後追いで登場した詩歌作曲による竜姫のダンス動画が正当な評価を受けて上がっていく展開がまた美味しい。

そんな風に天才たちが鎬を削る裏で、また兄は彼らを煩わせる元凶を排除するためにアングラ的に動くのであった──とかいってたらそこに颯爽と現れる女優先輩なんなんですか!?強盗カップルもとい神田依桜さんおもしれえ女すぎてメチャクチャ笑った。ノリが良すぎる。


このラノベの男男間の巨大/複雑感情が好きだ2022決定盤

タイトル通りの記事です。

このラノベの男同士のクソデカ感情いいよね!!というタイトルを独断と偏見で25タイトル紹介します。長年まとめ記事作るよ作るよって言い続けて気がついたら10年経ってたよ……関連記事の方に昔の同系統のまとめをリンクしておりますので良かったら併せてどうぞ。一応関係性で「親友・相棒」「ライバル・共闘」「因縁・敵対」の3つに分けてます。

関係性のみに焦点を絞っているので内容があまり女子読者向けじゃないものや未完のまま数年止まっているものも含まれます。予めご注意ください。

親友・相棒

楽山 「俺の召喚獣、死んでる」→感想
「友人を馬鹿にされて、僕が笑って許すようにみえるのか?」
苦学生でありとある事情から自分の召喚獣の正体を隠して戦わざるをえない主人公フェイルとそのチームメイトであり名家の子息でもあり一番の理解者でもあるシリル。フェイルが巻き起こす常識外の行動にダメ出しやお説教をしたりする反面その実力を誰よりも信頼していて、他人がフェイルを理不尽な理由でバカにするのは許せないシリルの姿にニヤニヤしてしまいました。
有象 利路「サキュバスとニート」→感想
「和友とオレの間に割り込むのは姐さんといえどもマジでキレますよ」
引きこもりの主人公・和友と彼の高校時代の親友でありコンビニ店長の琥太朗。高校時代の女房役(野球的な意味で)でもあった彼がとある事件によって夢を失って絶望した和友のことを影に日向に心配しつつ、本人の居ない所で彼に対して強い執着を見せる姿が大変良かったです。
大樹 連司「ボンクラーズ、ドントクライ」→感想
そんな彼を裏切る算段を僕は立てている。たかが、桐香なんて存在のために。
男二人だけの映画研究会にやってきた新入部員。友達同士の気軽なだけの部活動はその日から姿を変えていく。新入部員・桐香に恋心を抱いてしまった主人公の肇が彼女に振り向いてもらえないことに絶望し、その一方で親友・藤岡との楽しいだけだった関係性を「恋心」なんてものによって壊されてしまうことを恐れる、という葛藤が印象的でした。
壱月龍一「ラ・のべつまくなし」→感想
「……あいつが書いて、オレが編集やって……なんて。まあ、俺らの夢っつーかなんつーか、はは、超青臭いっすけど」
純文学からライトノベル作家に転向した主人公の矢文学と、彼の学生時代からの親友で編集者志望の北見圭介。ふたりの夢は、コンビを組んで最高の作品を送り出すこと。腐女子のヒロインがうっかり誤解しちゃうくらい仲の良い男二人の、熱い友情が美味しかったです!(あとブンガクくんの作風絶対わたしの好みだから現実に降臨してほしい〜〜)
井上 堅二「Lady!? Steady,GO!!」→感想
「お前にできないことは俺がやる。俺に出来ないことはお前がやる」「そうしたら、俺たちにできないことは何もないだろう?」
名家の分家に生まれて下男のような扱いを受ける圭と、本家の長男でありながら「出来損ない」と見捨てられた燐之介。完璧な人間でありながら大きな欠落を抱える燐之介と平凡だがその欠落を補って支えることが出来る圭という2人の関係性がとても良かったです。最大の問題は2巻が出なかったことだけど2人の関係性としては1巻で綺麗にまとまってるので……。
瘤久保 慎司「錆喰いビスコ」→感想
「俺が矢で、お前が弓だ。俺たちは弓矢だ!そういう、二人だった!」
お尋ね者の賞金首・赤星ビスコと心優しき町医者・猫柳ミロ。一見正反対のふたりが同じ目的のためにコンビを組んで旅を始め、やがてかけがえのない相棒となっていく。相棒ならではのお互いに気を使わない関係と、深い「愛」によって結ばれた関係性が良かった。アニメは原作1巻分だけなので、2巻以降も読んでほしい。
羊 太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」→感想
「……行こうか。頼りにしてるぜ、相棒」「抜かせ、誰が相棒だ。寝言は寝て言え」
かつて特務分室で汚れ仕事や裏仕事を行っていたグレンと、特務分室時代の相棒であったアルベルト。現在は別々の組織に身を置く彼らですが、それでも手を組めば最強という構図が最高。グレンの甘い理想とは相容れないと思う反面、かつての自分が切り捨てた理想を背負い続けるグレンに期待せずにいられない姿がよかったです。
鏡 貴也「伝説の勇者の伝説」→感想
「……引き戻すぞ。おまえがどこにいても、引き戻す」
『複写眼』という異能を持ち子供の頃から過酷な環境で生きてきたライナと、後ろ盾のない母から生まれて兄王達に命を狙われ続けてきたシオン。生まれも育ちも違うふたりは、やがて「悪魔」と「勇者」という世界の行く末を握る運命に翻弄されていく。仲の良い親友であるふたりが運命に引き裂かれながらも手を伸ばさずにはいられない姿が印象的でした。本編のシリアスな彼らも、短編でのコミカルな掛け合いも良。
井上 堅二「バカとテストと召喚獣」→感想
「確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニのように、お前にも秀でている部分がある。だから俺はお前を信頼している」
学園でも有名なバカの主人公・明久と、問題児ばかりのFクラスをあの手この手でまとめ上げる雄二。考え方も得意分野も正反対で普段は喧嘩してばかりの悪友ふたりが共通の目的のためとなれば最高のコンビネーションを発揮するのがたまりません。相手が落ち込んでいれば何も言わずに背中をぶん殴るような言葉で言わなくても通じ合う関係性が最高。

ライバル・共闘

紫 大悟「魔王2099」→感想
「君は……まだ僕を勇者と呼んでくれるんだな……」
魔術と科学が融合した近未来都市新宿で500年ぶりに目覚めた不老不死の魔王ベルトールと、望まぬ形で人としての枠を超えた不老の勇者グラム。すでに時代から忘れら去られたグラムの「勇者」としての役割を、宿敵であったはずの「魔王」ベルトールこそが求めるという関係性が良かった。あくまで不倶戴天の敵同士である彼らの一時共闘が美味しい!
九岡 望「地獄に祈れ。天に堕ちろ。」→感想
「……共同戦線だ。あーあ」「手ぇ組むぞ、畜生が!」
生き残った妹のために死者を狩る聖職者嫌いの死者ミソギと、死んだ姉に心を囚われたまま死んだように死者を狩る死者嫌いの聖職者アッシュ。絶対に相容れないふたりが亡者の街・東凶を舞台に共同戦線を張るというお話。何もかも相容れないふたりが自分の想いを貫くためにある時はぶつかり合い、ある時は共闘する展開が良かった!
望公太「最強喰いのダークヒーロー」→感想
ルイ=ミシェル・ヴィレット。(中略)いかなる者にも最悪の蔑称を授ける阿木双士郎をして、『王子』と呼ぶ他なかった男である。
ソードウォウ最弱の選手でありながら、強敵も味方も手のひらの上で転がす奇策な作戦で勝ち続ける双士郎と、そんな双士郎に救われて以来、その奇策を全部良い方に解釈して持ち上げていくルイ(強くて善人)という関係性がコミカルで良かった。双士郎が、ルイだけ微妙に転がしきれてない感じが楽しいんですよねえこれ…。
渡航(Speakeasy)「クオリディア・コード」→感想
昔も今もこの先も、きっと違う方向を向いて、違う道を選ぶのだろう。それでも、今は確かに、並び立っていた。
異形によって脅かされている世界を守るため、そして大切な少女達を守るために戦うふたり。性格も考えも正反対で本来ならば手を取り合うこともなかったであろう壱弥と霞が、自分にない部分に憧れ、誰よりも強く信頼し合っているという関係性が良かった。ノベライズ版はアニメと内容ほぼ同じなのですが、特に3巻の壱弥・霞の心象描写がとても濃厚で良いので副読本としても是非!(過去話も良いです)
師走 トオル「ファイフステル・サーガ」→感想
今でこそカレルは王家の味方だが、数十年後に余計な野心を抱かないという保証はどこにもないのだ。
来るべき魔王の襲来に立ち向かおうとする英雄達が時に手を組み、時には対立しながら人間たちをまとめようとしていく物語。アレンヘムの傭兵団の若き団長・カレルとフーデルス王国の摂政・ヴェッセルの関係が良かった!序盤から手を組んでいる彼らなのですが、それぞれお互いの国の思惑の下で動いていて、完全な味方ではないんですよね。稀に覗かせる剣呑な雰囲気がとても良かったです。
柳実 冬貴「Re:バカは世界を救えるか?」→感想
その闇の中で、心路は──(略)現実世界で唯一負の感情を抱くことのできる、好敵手の声をはっきりと聞いた。
他者の異能の「劣化コピー」を作る異能を持つ主人公・佐藤光一と、他人の異能を完全にコピーできる秋雨心路。最初は相容れない敵同士だった彼らが、少しずつ「好敵手」へと変化していく課程がたまらない。能力の代償として感情が薄れていく心路の心を唯一揺さぶることが出来るのが光一というのがまた。
賀東 招二「甘城ブリリアントパーク」→感想
(『汚いことをしなければならない』か。ならば、それをするのはぼくだよ)
ポンコツ遊園地の支配人代行となった主人公・可児江西也と遊園地のキャスト代表を務めるマスコット・モッフル。犬猿の仲だが遊園地の未来を誰よりも真剣に考えている彼らの目的が一致するがゆえの共闘が大変美味しいのですが、特に原作1巻終盤に起こったとある事件をきっかけにしたある種の「共犯関係」が、とても良かった。アニメ版とは全く違う展開ですが、どちらも良いので両方見てほしい。
渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」→感想
俺はもうとっくに気づいている。葉山隼人が、けしてただの善人ではないことを。
渡航が描く「お互いに相容れないからこそ誰よりも深く理解し合う」男男間複雑感情が大好きなので、例によって葉山隼人と比企谷八幡の関係性も大好きです。普段は優等生の仮面を被っている葉山隼人がそんな表の顔が通用しない比企谷八幡にだけは時折素顔で接しているのがたまらない。
田尾 典丈「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」→感想
「これから何があっても、みんなを愛し続けてほしい。それが、俺の望みだ。任せたぜ、初めての、親友」
とあるギャルゲーのヒロインたちが現実世界に投影され、彼女達が抱える問題をゲームの1ファンである都築武紀が解決する物語。クリア後のハーレム展開を謳歌していた武紀が明確に「全員を幸せにする現実のハーレムエンド」を目指して行動し始めるのが4巻のゲーム主人公・正樹との対決でした。同じヒロインを愛する主人公同士として・親友として次元を超えた友情を築いていく展開が熱い。

因縁・敵対

落葉 沙夢「─異能─」→感想
あいつは俺を赤根凛空ではなく、友人のアカとして扱ってくれていた。その存在は俺にとって小さくなかった。
複数の人物の視点から事件が描かれる群像劇形式のサバイバル異能バトル。過酷な展開の中でうっすら語られる「主人公」の祐樹とその友人・赤根凛空の関係性が印象的でした。物語で起こった惨劇を考えるとお互いにさっぱりしすぎと感じる部分もあるんですが、描写が短くてもお互いにリスペクトしあっていたことが伝わるふたりの独白が良かったなあ。
水瀬葉月「ぼくと魔女式アポカリプス」
「宵本澪っていうクソッタレな友達は──どうやら、俺が思ってたよりも少しだけお人好しらしい。」
絶滅寸前の魔術種達が生き残りを掛けて行う生存競争に巻き込まれた「死者」達が繰り広げる異能系サバイバルバトル。『普通』に埋没したくなくて学園生活からはみ出していた主人公・澪と可愛いショタの皮をかぶった女に見境ないクズ・草太の友人関係が独特で面白かった。二人の出会い話がどっかに合ったと思うんだけど収録されてないんだよな……。
衣笠 彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ」→感想
ああ、それだ龍園。おまえにも見えたんだろう?恐怖という感情は、己の中に確かに存在する、ということを。
Dクラスの黒幕として暗躍する綾小路と黒幕の存在を追うCクラスのリーダー・龍園。1年生2学期をたっぷり使って水面下で行われる長いかくれんぼ、その末に待つ直接対決がとても良かった。この直接対決の後の微妙に共闘的な関係になっていく綾小路と龍園の関係性も美味しいけど、やっぱりとりあえずは原作4〜7巻をよろしくお願いします!!ってなりますね!
賀東 招二「フルメタル・パニック!」
「カシム、カシムと……。馴れ馴れしいんだ、クソ野郎」
主人公である相良宗介に強く執着する、序盤にして最悪の強敵ガウルン。自分が恋い焦がれてやまない「殺人聖者・カシム」に宗介を引き戻すために自身の命すらも厭わない様はめちゃくちゃなインパクトがありました。フルメタ、なんだかんだで彼以上にヤバい敵出てこなかった気がするの凄いよね……。
ツカサ「銃皇無尽のファフニール」→感想
切れ長の目が画面の向こうから俺を射る。それだけで感覚が引き戻される。彼の部下だった長く暗い日々へと。
男性で唯一ドラゴンの力を持った“D”の少年・物部悠。同じ異能を持つ少女達が集まる学園・ミッドガルに入学するが……ミッドガル入学する前、軍事組織ニブルでの元上司であるロキ少佐がミッドガルに入学した後も悠に対して強い執着を覗かせていく展開が大変美味しかったです。いやこれ、俗に言う「元彼」概念なんですよね……美味い……。
羊 太郎「ロクでなし魔術講師と追想日誌」→感想
「今は、曲がりなりにも母屋を同じくする同志だけど……いつか、必ず僕らは決別する。……互いの信じる正義ゆえに」
相棒概念の所でも取り上げたロクアカですが、どうしてもジャティスの話したかったなどと供述しており……アルベルトと同じく元特務分室での同僚であったジャティスが特務分室を離れて犯罪者となり、事ある毎にグレンと衝突していく本編での展開も大変美味しいのですが、そんなジャティスがグレンを初めて宿敵として認めた追想日誌5巻がとてもよかったです。あとほんと本編は次巻が楽しみ…!!
月夜涙「回復術士のやり直し 〜即死魔法とスキルコピーの超越ヒール〜」
変だな。一周目では、あいつに怯えて、逃げたい、怖いとばかり思っていたのに、二周目の今はあいつに会いたくて仕方ない。
人生をやり直しながら1周目の人生で自分を虐待した勇者達に復讐を行ってきた【癒】の勇者ケヤル。その復讐も残るは【砲】の勇者で少年性愛者ブレットを残すのみとなるが、その復讐は国を巻き込み人類の存亡を掛けた戦争へと発展していく。メインは凌辱メインのエッチな復讐劇なのですが、その合間でケヤルとブレッドが見せる互いへの執着と、裏の裏までを読み合う心理戦が大変良かったです。ブレットの行方を追う回が「想い人を探す」なのとか最高。


純白と黄金2

 

ここは想い出と約束の無法地帯。ヤンキー学園バトルアクション第二弾。
ヤンキー全盛時代。 東京最大の喧嘩都市・猫丘区では第二の《純白の悪魔》を生み出すため、六つの高校が参戦する盛大な喧嘩が始まっていた。 かつて圧倒的な力でヤンキー界の頂点に君臨した少年・安室レンジは、オタクとして高校生活を楽しむために、過去を捨てて猫丘区に降り立った。 彼が転校した古豪・黒淵高校は、激戦の末に圧黄高校との戦いを制したが、その直後に緑織農業高校の筆頭ヤンキーにして《天下逆上》が一人・威風カズマによるカチコミを受けてしまい……? 次なる戦いは新たな出会いを呼び、封印したはずの少年の力の解放が始まる――。 唯一無二なる新時代の最強エンタメ、予測不可能な物語に刮目せよ――。

第二の《純白の悪魔》を生み出すため、6つの高校が覇権を争うシマトリー。圧黄高校とのバトルを勝ち抜きテリトリーを増やした黒淵高校だったが、その直後に緑織高校から模擬喧嘩を吹っかけられる。戦力の不足を感じた黒淵高校の筆頭ヤンキー・赤城ザクラは「大修行大会」を宣言するが……?一方、かつて《純白の悪魔》と恐れられた伝説のヤンキー・安室レンジは秋葉原でオタク活動をエンジョイしていた!

激突!!元ヤンヤクザvsオタクinアキハバラ

ここあんまりメインじゃないんですけど秋葉原の花井ハルカのサイン会の所で元ヤンとバトルするオタクでめちゃくちゃ笑ってしまった。ヤンキーに染まってるの、東北と猫丘区だけかとおもってたら普通に芸能界やオタク業界にもしっかりとヤンキー仕草が……!!!サイン会開始=「愛怒流とオタクがカチ合おうとしていた」でもう腹筋が攣る。やっぱこのトンチキ感、クセになるな。

そんなこんなでオタ活エンジョイするために東京にやってきたレンジが無事にオタ友を作って更には憧れの愛怒流声優とも顔見知りになるという大変微笑ましい回でした。カチコミル(※ヤンキー専用SNS)がちゃんとオタクの交流の場として活用されている…!!!

レンジのオタ活の模様も大変微笑ましかったですが、新キャラであり新たな転校生でありレンジの憧れの人である花井ハルカが黒淵高校でヤンキーにちょっと及び腰になりつつ、アオイやスイといった数少ない女ヤンキー達とおっかなびっくり普通の女子高生のような交流を暖めていくのも微笑ましかったです。レンジやコウへの態度、なかなかハードな彼女の過去を知ってやはりこんな殺伐としたヤンキー時代、愛怒流声優もふてぶてしくないと生きていけないんだな……と思ったんですが、その直後にアオイやスイと絡む羽目になり、相手がヤンキーだということもあるけど友達付き合いに慣れてなくて及び腰になるハルカちゃんかわいい。

元《天下逆上》意外に普通に仲が良いな…

今回のメインは元《天下逆上》のひとり・威風カズマ率いる緑織高校と圧黄を取り込んだ新生黒淵高校のバトル。一同に介したわけではないけれど紫・青・赤と残りの元《天下逆上》の面々も登場。更には彼らをうまいこと利用したい大人(ヤクザ)たちの思惑も絡んできて、いろいろな意味で盛り上がってまいりました。

圧黄高校の土塔ハジメが仲間になったこと、今回は傲岸モンジュが所属する紫想学園が場所を提供して新生黒淵の修行大会が繰り広げられているという展開も相まって気がつけば元《天下逆上》のメンバーが3人集まってエナドリで晩酌が始まったりしててこいつら、思ったより仲が良いな!?プレミアムプレハブ小屋で健気に毎日6人分のお茶の準備して待ってる威風カズマくんも誘ってあげてほしい。カチコミルで愚民に翻弄されて涙目になってるカズマきゅんかわいそう。

彼らがどうして袂を分かつことになったのか(1巻でザクラが言っていた理由だけじゃないようにも思える)、一見仲良さそうな彼らが過去の因縁や大人たちの手によって対決することになり本音をぶつけ合い更に熱い絆で結ばれた仲間になる様はいろいろな意味で少年漫画コンテンツなのでこれはレンジもかぶりつきですよね(彼は別の現場に行っていたので今回は見れなかったけど……いやでもそれをスルーして有り余るものがあったでしょう花井ハルカちゃんの生歌)。

ただ、今回仲良さそうにしていた傲岸モンジュも正直ただの好意で修行大会の場を提供した雰囲気では全くなかったし、なによりヤクザとの繋がりを匂わせてきた覇乱ガウスなんかも今後どう関わってくるのか未知数な感じ。次巻は青火高校の話になりそうなのでその2人との対決は先のことになりそうだけど、青火高校の話はまた全然毛色が違う話になりそうで、どうなっていくのかとても楽しみです。


顔さえよければいい教室 1.詩歌クレッシェンド

 
necomi

大人気タッグが贈る、天才たちによる人気獲得学園バトル。
音楽、ダンス、ファッション――あらゆる分野の天才が集う芸能学校・私立繚蘭高校。 だがその実態は、「顔」をはじめとした外見ですべての評価が左右される教室だった。 俺の妹・池袋詩歌はヒキコモリで、兄ナシでは生活できない要介護人間のせいか、配信のセンスもスター性も壊滅的。 この学校では最弱かと思われた。 だが俺は知っている。ネットで顔を隠して伝説になったVSINGER。その正体こそが詩歌だと。 「――青、この曲の色。私はそれに合わせて歌うだけ」 ゆえに詩歌の歌声は唯一無二。学校のあらゆる常識を覆し、彼女の才能は見出されていく――!

天才的な歌の感性を持つが生活能力は壊滅的かつ極度の人見知りである妹・池袋詩歌とそんな彼女を甲斐甲斐しく世話しつつ彼女の才で金を稼ぐ「自称マネージャー」の兄・学斗。顔を隠してヴァーチャルシンガーとして活動していた兄妹が『学費免除・更に生活費まで貰える』という条件に釣られて芸能学校・私立繚蘭高校のスカウトを受ける。ところが生活費を稼ぐためには、「顔出しの動画配信」で人気を得る必要があって…!?

歌の才能だけでは生きていけない顔出し配信の世界がリアル

「再生数」がパワーになる学園でしのぎを削る少年少女達の物語。舞台となるのが本名・顔出し強制の動画サイトということで、才能があるだけでは生き残れない展開が今時で面白かった!歌が上手くて友達いない生徒よりも特に光るものもないけど友達が多い生徒の方が最低数の下駄履けるところとか、まとめ・情報動画に需要が集まる展開がリアル。

バーチャルシンガーとして歌一本で勝負して匿名動画の世界で着実に再生数を伸ばしてきた主人公兄妹が、最初の配信では身内しか「いいね」してくれないというどん底の状態からスタート。まずは見た目を整えて、クラスメイトにコラボの打診をして……と正統派に「動画を見てもらうための努力」を重ねていく展開がアツかった。その努力が実ってクラスの中でも一目置かれる存在になって漸く、詩歌の歌そのものを評価してもらえるんだなあ。

そしてクラスメイトの作曲家・狛江とのコラボ効果もあり100万再生を突破した詩歌を待っていたのは、クラスの中でも抜群の再生数を誇る渋谷エリオとの中間考査を使った対決。「顔さえ良ければいい」というタイトルからしてもっと奇策を駆使して成り上がる物語かと思っていたのですが、見た目はあくまでスタートラインでしかなくて、その後ろに待っているお互いに譲れない「面子」を掛けた熱い青春と音楽の物語が、6オクターブという圧倒的な音域を誇るエリオと感情を「色」として受け取り「絵画」のように自らの歌の世界を織り上げる詩歌という対称的なふたりの「天才」の対決が最高に熱かった。

渋谷エリオさんが可愛い(とてもかわいい)

歌以外のことは何もできない妹とそれを介護する自称マネージャーの兄。過去に何かあった臭をそこかしこから漂わせるタダモノではない距離が近い兄妹……という構図の時点で割と好きな人は大好きなやつですね!!という感じなんですが、彼らを取り巻くキャラクター達がまたとても良かった。まとめ動画で一定の需要を得ているけど音楽方面の才能はまだ全く分からない・何かと楽斗にいいように使われてる都合の良い女感が凄い秋葉、ノリの軽いナンパな男の友人枠かと思いきや詩歌に惚れてしまって以来めちゃくちゃ純情ムーブしてくる作曲家の狛江。他学年の先輩たちも色々と絡んできそうな気配で、今後の展開が気になる。

しかしやっぱり個人的に渋谷エリオが!可愛い!!序盤は完全に詩歌をライバル視してやたらと突っかかってくる嫌な女だったんですが、プライドが高く嫉妬深いけど裏表がなくて何事にも一生懸命で明るく周囲を引っ張っていく、台風の目みたいな女渋谷エリオさんの勝負終わった後の姿が可愛すぎてしんだ。いや、色々行き違いがあって嫌な女みたいに見えていたけどいい女じゃないですか〜!!!もうこれはいろいろな意味で2巻が楽しみしかない。


「このラノ2022」感想と自分の投票の話

『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) 「このライトノベルがすごい! 2022」
『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) (著)
宝島社
発行:2021-11-25T00:00:01Z

多分5年ぶりくらいで「このラノ」アンケートに参加したのでざっくり本の感想と自分が投票した作品の話をします。昔は協力者でしたが今はそんなに読めてないのでWebアンケート経由でした。

いろんな切り口のランキングがあって面白かった

去年買ったときもつぶやいた気がするんですけど「年代別ランキング」と「女性票ランキング」いいよね〜!!少女向け作品はこの手のランキングでどうしても弱くなりがちなので女性票ランキングでランキング圏外作品が入ってるのみると嬉しくなってしまいます。女性主人公モノが強い中、「よう実」と「86」が比較的上位に入ってるのもわかるー。

総合ランキングのラインナップについては特に言うことないんですが、「春夏秋冬代行者」の冬主従が男男だと知って読みたくなりました。「佐々木とピーちゃん」は実は詰んでるので読みたい。あとキャラクターランキングはTOP5の代わり映えしなさがちょっと面白いですね……。

概ね私が参加した頃よりも紙面充実してる〜!!いいね〜!!って感想なんですけど、電書で読むと文字が小さすぎるのと「心が震えた名セリフ」のコーナーが消えてしまったのは残念でならないです。心が震えた名セリフのコーナー復活させてくれ。いやでもランキングと関係ないし紙面作る人の労力凄そうってのもわかる……。あと電書といえば、「このラノ2020」がおおむね2010年代ベスト的な内容で紙面としてめちゃくちゃ面白かったので後追いで電書化してくれないかなーって思ってる。

「人の推しコメントを見たい」欲が満たされた

わたし概ね「このラノ」についてはランキングじゃなくて自分の好きな作品の良質な推しコメントを摂取するために買ってるのですけど(人が好きな作品について語っているのを見るのは健康に良いので)、ここ数年のこのラノはコメント部分がめちゃくちゃ強化されていたのでそうだよ!これが読みたかったんだよ!!ってなりました。作品部門は文庫・新書部門合わせて30位まで載ってるし新作やキャラクター部門のコメント採用も拡張されてるし、ランキングとは関係ない後半の「ライトノベルジャンル別ガイド」の方にもしぶとくコメントが載ってる。印象的だったコメントのピックアップもある。推しコメント見たくて本買ってる身としてはこんなに嬉しいことはないですね。

投票する側としてもあまりマイナーな作品や少女レーベルの作品に投票しても死票が増えるだけで面白くないのである程度界隈で人気のある傾向の作品にハマれてない時期は投票へのモチベ下がってたみたいな部分があったんですが、こういう形でコメント採用されるとなるとランキング圏外確定な作品にも入れやすくなって良いなあと思いました。いやだって、コメント考える労力もタダじゃないじゃん……。

あと、協力者の投票については別個誰が何に投票したか、投票した人の所感が書かれているの凄く良かったです。実は2010年〜2014年の5年間「このラノ」の協力者として参加させていただいていたのですが、協力者の票って割と死票率高かったと記憶しているので……まああの頃はブログ文化が今よりも活発だったのでブログや当時の「好きラノ」が代わりを果たしていた気がしなくもないですが。

なお、たいへんな余談ですが「人様の推しコメントを摂取したい」という気持ちが昂じてラノベの推し作品を推してもらう企画本を3冊ほど出してます。3冊目は全文WEBから読めますので興味のあるかたはぜひどうぞ。こちらから読めます。以上宣伝でした!!!

これに投票しました

「声優ラジオのウラオモテ」だけコメント採用していただいてたので省いてます。声優ラジオ、コメントの採用があそこだけ全員30代以上なの地味に面白かったんですが読者の年齢層高めだったのか?いやフォローしてる20代の人も推してたからそんなことないはず……(震え声)

作品部門

1:紫大悟「魔王2099」→感想
サイバーパンクとファンタジーが融合した世界観に加えて、デジタル技術の恩恵を受けられない魔王が「動画配信」で力を取り戻す、という展開が面白かった。時代に忘れられた者同士である魔王と勇者の不倶戴天の敵同士でありながら背中を預けられる存在、という関係性も良い。
2:羊太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」→感想
短編を含め20巻の大台を突破した本作だが、衰えないどころかクライマックスに向けて加速していくばかりの面白さは随一。キャラクターたちの謎も次々と明かされ、この後に待ち受けているであろう最終決戦に向けて期待が高まるばかり。
3:衣笠彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」→感想
学校全体で争われる特別試験で、3学年分のキャラクターたちの攻防を余すことなく描ききる展開がとにかく凄かった。ホワイトルーム生との水面下の戦い、綾小路を巡るラブコメ戦線もますます盛り上がってきており、更に波乱の予感しか感じさせない二学期に期待しかない。
4:石川博品「ボクは再生数、ボクは死」→感想
現実はでないVR空間上だからこそのインモラルな展開が最高に面白かった。どこまでも「命の軽い」軽薄な世界観と、それでいて物悲しくてロマンチックなラストが良かったです。
5:二月公「声優ラジオのウラオモテ」→感想

女性キャラクター部門

◆イヴ=イグナイト(「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」)
「デキる女」としての一面とは対象的に、私生活ではポンコツ気味なところがたまらない。実は世話焼きで苦労性なところもかわいい。

◆軽井沢恵(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
彼女にはどんな形であれ幸せになってもらいたい。

◆堀北鈴音(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
軽井沢とは違う方向で綾小路の「相棒」として成長してきた彼女の姿が頼もしい。

男性キャラクター部門

◆綾小路清隆(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
冷徹無比な強キャラとしての一面とは別に、世間慣れしていない一面を時折覗かせるので目を離せなくなってしまう。特に軽井沢との「恋愛」が彼に何をもたらすのか、少し怖い反面楽しみで仕方がない。

◆グレン=レーダス(「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」)
普段のやる気のない言動とは裏腹に、誰よりも熱い心を持っているところ。システィーナやルミアなどヒロインたちの「ヒーロー」であると同時に、情に脆くて家族の情に厚い一面を覗かせる最近のセリカとの展開がとても良かった。

◆龍園翔(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
登場当初は暴力に頼るチンピラのような男だったのが、巻を重ねる毎に綾小路の好敵手として成長していく姿がたまらなくかっこいい。


声優ラジオのウラオモテ #04 夕陽とやすみは力になりたい?

 

素直になれない夕陽とやすみ、大好きな乙女姉さんのピンチに、一時休戦!?
「夕陽と」「やすみの」「「コーコーセーラジオ、修学旅行編!」」  先輩声優めくると花火に、仲良しの極意を学ぼう! ということで始まりました修学旅行!! お揃いのセーラー服に身を包み、仲良くはしゃいでリスナーを安心させよう……なんて簡単にできたら今まで苦労はしてない夕陽とやすみ。 「佐藤って、セーラー服似合わないわね」 「は、腹立つ?……、なんだあいつ……」  めくると花火も巻き込んで、揉めたり照れたり忙しい最中、人気沸騰中でひっぱりだこな乙女の様子が何やらおかしい。大好きな先輩のピンチに、力になりたい夕陽とやすみ、束の間の休戦!?

歯に衣着せぬ物言いで一定の人気を獲得していた「夕陽とやすみのコーコーセーラジオ」。ところが、あまりにも容赦ない物言いが原因でリスナーから「ガチ不仲説」を取り沙汰されるように。そんな噂を跳ね除けるため、仲良し声優コンビとして有名な柚日咲めくる・夜祭花火をゲストに呼んで、『仲良しの極意』を学ぶという一泊二日のロケ(※ただし行き先は都内)が開催されることになって…!?

“不仲営業”って難しい

今回もめちゃくちゃおもしろかった…!!今回は声優というよりは「声優コンビ」としての二人の関係性が一歩先に進む回でしたが、ただ気持ちの強さを育むのではなくて、それをいかに商売として売っていくかという視点が入ってくるのが他作品にはない視点で面白かったです。相変わらず丁々発止な二人の口喧嘩も(ふたりの本心を知っている読者視点から見ると)楽しいし、女同士のイチャイチャだけじゃなくて時折声優業界のシリアスでダークな話題に話を振ってくるバランス感も好き。

歌種やすみと夕暮夕陽が互いには絶対に聞かせたくない「本音」を、周囲があの手この手で言わせてそれを相方どころか全国のリスナーに電波に乗せて発信する展開、冷静に考えるとかなり酷い気がするんですがその関係性を「売り」にするとふたりが決めた以上通らないといけない道なんだよなあ。このシリーズの読者にとっては当たり前の、ふたりが実はお互いを尊敬しあっているという関係性は確かに地文を読めないリスナーは伝わってないわけで。めくるの「本当に仲が悪い二人が煽り合っているだけなら、それは楽しいものではない」という言葉に納得してしまった。

まあそういう細かい建前の話はおいておいて、相方からの本音を聞かされて普通に恥ずかしいし、それが全国の電波に乗って流れてますます恥ずかしくて、私生活でもお仕事中でもギクシャクしてしまうふたりの甘酸っぱさにニヤニヤが止まらなかったです。やらなくてはいけないことでもそういう建前と「恥ずかしい」という感情は別物だから!!でもこれやらなきゃいけないことだから!!カワイイヤッターーーーー!!!

そして、そんな二人の横で相変わらず「厳しい先輩声優」やりつつも「歌種やすみ・桜並木乙女の大ファンな声優オタク」やってるめくる先輩の面倒くさいファンぶりが可愛すぎてひっくり返る。由美子ではなく「歌種やすみ」から個人的なファンサ貰って厳しい先輩声優としての顔が保てなくてすごい勢いで動揺する姿が健康に良すぎる。今回は特に、素の彼女の事を誰よりも知っている夜祭花火がすごい勢いでふたりの知らないところの隠された柚日咲めくるを暴露しまくってくるので特に破壊力が高かったです。いや、もうさ〜〜本当にこの人、“歌種やすみ”のこと好きすぎるんですよね!!!

もう一組の、「学ぶべき先輩コンビ」

ガチ不仲説を跳ね除けるため色々やってみたものの、中々成果が上がらない。そんなもどかしい状況の中、由美子が公私ともに懇意にしている先輩・桜並木乙女が過労で倒れてしまう。心を病んでしまった乙女を立ち直らせるために、かつて彼女のライバルだった元声優・秋空紅葉の元を訪れる由美子と千佳だったが、声優を引退して別の人生を歩んでいる紅葉は、由美子に『自分のようになったらどうする?』と問いかけるのだった……。

後半は声優業界の闇(主にブラック労働的な方向)と、3巻で軽く語られていた乙女の過去のお話。過労については事務所のせいでも乙女のせいでもマネージャーのせいでもない、とちゃんと説明されるわけですけど、それにしてももうちょっと上手くコントロールしてくれなかったのか…とか考えてしまいますね。というか、意識してブラック労働させるよりもめちゃくちゃ気を使っていたはずなのに本人が過労で倒れるまで誰も気づけない方がヤバくない?そのマネージャーさん、確かにいい人なのかもしれないけどスケジュール管理出来てない時点で乙女と相性あんま良くなくない……??

紅葉からの問いかけによって、「桜並木乙女」と「秋空紅葉」の関係性に自分たちを重ねる由美子と千佳。由美子は『このまま仕事がなくなって夕暮夕陽においていかれるかもしれない』恐怖と、千佳は『歌種やすみという声優がいつか自分を追い抜いていくかもしれない』恐怖と向き合うことになる。奇しくも仲間である前に「ライバル」であった乙女と紅葉の関係性、ライバルである前に「仲良し」であった柚日咲めくる・夜祭花火とは違った意味で学ぶ部分の多すぎる先輩コンビなんだよな……周囲にお膳立てされた、仕組まれた流れではなくて、自分達自身で目をそらしていた壁と向き合い、声優コンビとして更に成長していこうとする由美子と千佳の姿が印象的でした。サブタイの通り「乙女の力になりたい」という話でもあったけど、それ以上に乙女の過去を知ることで自分たちが成長するお話になってました。

めちゃくちゃさりげなくラストで次は重大発表!!みたいな終わり方をしてて、そっちも気になる。次巻がどういう展開になるのかもとても楽しみです!(といいながら5巻のあらすじでネタバレを確認してしまうのだった)


日和ちゃんのお願いは絶対

 

まるで、世界が終わりたがっているみたい──それは。最後の恋物語。
「──わたしのお願いは、絶対なの」 どんな「お願い」でも叶えられる葉群日和。始まるはずじゃなかった彼女との恋は、俺の人生を、世界すべてを、決定的に変えていく──。 ほんわかしていて、かわいくて、どこかちょっと流されがちで。 それなのに、聞いてしまえば誰も逆らう気になどなれない「お願い」の力を持つ日和と、ただの一般人なのにその運命に付き添うことになってしまった俺。 「──でも、もう忘れてください」 世界なんて案外簡単に壊れてしまうのに、俺たちの恋だけが、どうしても終わってくれない──。 これは終われないセカイの、もしかして、最後の恋物語。

不思議なチカラを持つ日和と、彼女に近づけば近づくほど彼女の存在を遠くに感じてしまう深春の関係がなんとももどかしく、それでも世界とか能力とかどうでもよくて、ただの彼氏と彼女として恋をして共に歩もうとするふたりの姿が印象的でした。懐かしの「セカイ系」だこれーー!!!!!

壊れかけの世界で、最終兵器な彼女と普通の少年が恋をする

同じクラスのちょっと可愛くて優柔不断な女の子・葉群日和から告白された深春。彼女は「お願い」すればなんでも相手が言うことを聞いてくれるという不思議な力を持っているという。最初は高校生らしいお付き合いをしていたふたりだが、とある事件をきっかけに彼女の正体を知ってしまう……。

世界すら揺るがしかねない力を持った最終兵器な彼女と何の変哲もない普通の少年が恋をする物語。高校生カップルらしいもどかしい恋愛模様とは裏腹に、日和に惹かれていく一方で近づけば近づくほど彼女を遠く感じてしまう深春と、深春を巻き込みたくないと願う一方で縋るように精神的支柱を彼に求めていく日和の姿が印象的でした。

あくまでこの「現実」と地続きのものなのだと伺わせる世界観設定が新鮮でした。大学入試制度の改革の話や新型ウィルスの蔓延の話とか、身近に体験したばかりの話が出てきてネタが新しい…。世界観情勢の話で伏せ字が多すぎてわからんってなるときもあるんですけど明らかに現実の人物をモデルにしている話が多くてこりゃ伏せるよなっていう。そんな(現実の)世界を描きながら、ヒロインに「世界が終わりたがっているみたい」って言わせちゃうのがあまりにもパワーある。

令和の世に生まれ落ちた新「セカイ系」ラノベ

自分の「お願い」を相手に強制的に叶えさせてしまう力を持った日和。草の根から始まった彼女の活動は徐々に活動範囲を広げ、深春と付き合い始める頃には既に世界をも左右する存在となっていた。「彼女の力になれることが自分にもあるはず」と自分を頼ってくれない日和にもどかしさを感じていた深春だが、とある事件をきっかけに彼女の能力が時に相手の尊厳さえも歪ませ、踏みにじるものだと知ってしまう。

あくまで日和は自らの意思で能力を使って「この理不尽な現実」を良くしていこうとしていて、彼女の非日常の中に深春の存在は求めてない。架空ではなく現実を思わせる世界、巻き込まれるのではなくあくまで自分の意思で非日常に身を置く日和とそこに関わりたいのに関わらせてもらえない深春の関係がどこか新鮮でした。惹かれ合い、すれ違い、傷つけ合い、一度はお互いの手を手放して──それでも手を取り合うことはできるのだと、別々の世界に身を置くふたりが、今度こそ「お願い」の力ではなくてただ手を取り合って再び歩き出すラストがアツかったです。

私の中の「セカイ系」とは、大きな力を持ってしまったがために世界の中の大きななにかに翻弄され、押しつぶされそうな少女とそんな彼女の事情には何も出来ない少年が手に手を取ってふたりだけのセカイに行こうとする(けどうまくいくとは言ってない)物語だったのですけど、自ら世界の中に飛び込んで押しつぶされそうになりながらも大人たちを巻き込み世界を変革しようとする少女とその彼女の手を握ろうと手をのばすけど何も出来ない少年が、それでも「ありふれた高校生男女」でいようとあるき出すこの物語はなんていうか令和に生まれ落ちた「新しいセカイ系」なのだろうなあみたいなことを思いました。うまく言葉に出来てないけどなんか凄く昔懐かしい反面新しいお話であった。

挿絵が超よかった。

現実の世界と地続きであるかのような物語の世界を表すかのように、写真にイラストを組み合わせた口絵と、章毎に挟まれる風景写真の使い方が面白かったです。

特に、日和の秘密が明かされる所の挿絵の大胆な使い方がめちゃくちゃ好き。そしてその挿絵を惜しげもなくツイッターで作品紹介に使ってくる作者さんの大胆さがすごいなとおもいました。いやだってこれ完全にネタバレじゃん……、でもこの挿絵見なかったら普通の最近よくあるエモい青春ラブコメだと思って手を出さなかったと思うのですごく正しい。セカイ系なんて今めったに見ないのでそこアピールしていってほしい。

私はこのツイートを見て買いました!!!(リンク先軽いネタバレ注意)

余談ですが「新しいセカイ系」とかいいつつもどうしてもセカイ系の代表作である「最終兵器彼女」を連想せずにいられなかったのですが、あとがきにアツい「最終兵器彼女」語りとセカイ系へのリスペクトがあったのでニヤリとしてしまった。めちゃくちゃな名作なのでこの作品が楽しかった人で未読だったら是非触れてほしい。多分好きなはず。ラノベなら「イリヤの空、UFOの夏」も。イリヤは今から読み始めるとリアルUFOの日までに読めるのでタイミングも良いはず。

「最終兵器彼女(1) (ビッグコミックス)」
高橋しん(著) (著)
小学館
発行:2000-05-30T00:00:00.000Z
「イリヤの空、UFOの夏 その1 (電撃文庫)」
秋山 瑞人(著), 駒都 えーじ(イラスト) (著)
KADOKAWA
発行:2013-12-26T00:00:00.000Z


Fate/Requiem 1 「星巡る少年」

 
NOCO
 
原作
TYPE-MOON

―――昔、大きな戦争があった。 戦争は終わり、世界は平和になった。今では誰もが“聖杯”を持ち、運命の示すサーヴァントを召喚する。 ただ一人の少女、宇津見エリセだけがそれを持たない。 少女は、世界で最後に召喚されたサーヴァントの少年と出会う。 だが彼女はまだ、自分の運命を知らない。

1巻が無料配信されていたので駆け込みで読みました。他のFateシリーズとは一味違った、「FGO」の設定を思わせる世界観が印象的な“最新”のFate。個人的には今やってるコラボイベのマップ・設定・ビジュアルが頭にあったせいでかなり読みやすかったな思うんですが、現在FGOにログインするともれなく色んなネタバレを喰らうのでネタバレを踏みたくないひとは強く生きてほしい。

その日、少女は待ち望んだ「運命」と出会う

聖杯戦争によって大きく変貌した世界。そこでは誰もが聖杯と令呪を持ち、サーヴァントを召喚することが出来る。そんな世界でただひとり聖杯も令呪も持たない少女・宇津見エリセは「臨海都市」となった秋葉原でサーヴァントを狩る“死神”と呼ばれていた。

主人公のエリセが世界中でただひとり聖杯も令呪も持たざる身でありながら、「英霊」という存在に憧れ、彼らの存在をどれだけ尊んでいるのかそこかしこから伝わってきて、そんな彼女がサーヴァントを“狩る”存在であることになんとも言えないもどかしさを感じた。英霊を狩る存在だからこそ彼らのことを深く知りたい、自分が滅ぼす彼らのことを覚えていたい、出来れば消滅させずに収めたい……と、彼らに真摯に向き合おうとする姿が印象的でした。

当たり前のように自分のサーヴァントを持つ住民達、そして本物の「令呪」を持つ魔術師である祖母に囲まれて育ち、ひたすらにその憧れを育み続けた彼女だからこそ、1巻まるまる使って描かれる彼女自身の「運命」との出会いに胸が熱くなってしまいました。

FGOをやってるとニヤリとするかも

誰もが聖杯と令呪を持ちサーヴァントと契約することが出来る、本物の聖杯戦争ほどの強さは持ち得ないが令呪は時間で回復するという世界観設定に物凄く「FGO」っぽさを感じる。Fateシリーズは元々シリーズによってかなり聖杯戦争やサーヴァントの立ち位置が異なるのですが、これは特に「聖杯戦争によって変化した後の世界の物語」ということで、かなり特異な立ち位置なのかなと。あとやはり設定上、登場するサーヴァントの数がぶっちぎりで多いのでチョイ役であんな鯖やこんな鯖が出てくるのにニヤニヤしちゃう。

個人的には、レクイエムコラボでかなり世界観や物語への興味をかきたてられたなという印象なのですが、同時に今FGOにログインすると普通にガチャ画面で1巻のラストで明かされるはずの謎(=少年の真名)とか盛大に明かされてますし、エリセの能力なども普通にイベント中にネタバレしていくスタイルなのでネタバレに触らずに読みたいという人はゲームには触れずに先にこちらを読んだほうが良いかも(このSNS社会でそこに触れずに読み切ることが出来るのか?という問題は横においておいて)。

コラボ限定のマイルーム背景とコラボのマップ画面がめちゃくちゃ好きで「おおっ!」となったんですよね。原作の口絵のイラストもめちゃくちゃ良いですがイベントマップで俯瞰状態で眺められるのめちゃくちゃいいな〜って思いました。絶妙に現在の「秋葉原」の知ってる所がそこかしこに残ってて、知ってる場所でありながら知らない場所になっているのにすごくロマンを感じました。

物語としてはまだほんの序盤

1巻ではエリセと少年サーヴァントが契約を結ぶところまでで、面白くなるのは次巻からかなという印象。少年サーヴァントに関してはこちらよりもFGOコラボの方が深堀りされているのではってレベルだし鬼女紅葉の再臨段階なんか今後のネタバレなのでは!?ってならなくもないんですが。

今後どうなっていくのか読めないので、次巻を楽しみにしていようと思います。