ページ 9 | 今日もだらだら、読書日記。

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100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。

 

「小説家になろう」で話題の「悪役令嬢」作品がGAノベルより刊行決定!! 大幅に加筆修正し、新規エピソードも掲載。
「100日後にきみは死ぬ」 公爵令嬢ルルーシェは神様から天啓を受けた。 ただでさえ婚約者の王太子殿下は他の女にうつつを抜かし、婚約破棄は目前と言われているのに……。 しかもその未来を知ったとて、ルルーシェの死は変えることができない。 だが、死に様やその影響は変えられる──そう教えられたルルーシェは神様に賭けを申し出る。 「わたくしの死に様が美しければ、褒美を下さい」 「いいよ。次の人生に望むモノを何でもあげる」 ルルーシェは残していく家族への支援や、己の死の裏で蠢く「陰謀」を止めようと行動するが──。 悔いのない優美な最期を迎えるため、神様すらも翻弄する、ルルーシェ最後の100日が始まる。

何者かに階段から突き落とされて意識を失った公爵令嬢ルルーシェは、神を名乗る存在から自分が100日後に婚約者の王子の手にかかって殺されることを告げられる。しかもその死を皮切りにして婚約者や家族、身近な人達も次々と悲惨な破滅を迎えるという。自分の死を変えることはできないが死後の未来を変えることは出来ると知った彼女は、未来を変えるため奔走するが……!?

「悪役令嬢もの」という概念の使い方が上手い

複数の感想ブログで絶賛されていて気になっていた作品なのですがとても良かった……!!自分がいなくなった後の未来を少しでも良くするために婚約者である王子の浮気相手の男爵令嬢を自分の跡継ぎとして教育し、引きこもっていた弟を外に引っ張り出し、浪費癖のついた両親に農業や料理といった新たな楽しみを教えて、暗殺者を止めるために剣術の訓練をして、夜は自分に未来を告げた『神』と夢の中でお話して……破滅の未来を変えるために一息吐く暇もなく動き回るルルーシェの生き様が鮮やかに描かれていました。それは決して彼女にとっては楽しいだけの道程ではなかったとおもうんだけど、物語の中を所狭しと動き回る姿がとても楽しそうで。

自分の感情を押し殺し、悪に徹することで物事を強引に推し進めていくルルーシェだが、その一方で少しずつ周囲の人々の本当の思惑が見えてくる。自分が婚約者に刺されるという未来の本当の状況、婚約者の王子サザンジールが自分の前でも「浮気相手」を連れ歩く理由、王子の弟ザフィルドの叶わぬ恋……ルルーシェも様々な誤解をしていたけれど、同じように読者である我々も気づかない間に同じような勘違いをしていて。真実が次々と明かされていく終盤に唸ってしまいましたし、読み終わってから最初に戻って一度読み直してしまった。たしかにそう言われてみるとそういう表現はされてなかったよなあ……!!

これはネタバレになってしまうかもしれないんですが最初にさりげなく使われた「まるで悪役令嬢だね」という言葉が色々と鍵になっていて……この物語本当に悪役令嬢という概念の使い方が上手。作中で言葉の意味を再定義させることでちょくちょく話題に登る「悪役令嬢なんて概念本当の乙女ゲームには存在しない」系反論をすり抜けていくし、その半面乙女ゲームの悪役令嬢という単語に付随する概念を物語の中に見事に取り入れてくる。まさしく彼女が悪役令嬢でなければいけなかった理由がしっかりあって……いや、ほんとネタバレにならない程度に、でも読んだ人には伝わる程度にこの話したいんだけどこれで伝わってる……!?

一方で何か、まだまだ世界観にさらなる真実が隠されていそうな……というかこれ実はゲームの世界でした系のどんでん返しが待っていそうな気がしてならないんですがこれは。『神』の名前の話とかルルーシェが何故か知っている指切り概念の話とか、ちょっと乙女ゲーム転生世界とかゲームの世界と現実が繋がってる話っぽい匂わせが複数あるんですよね。ルルーシェの残りの人生全てを賭けた未来改変は成功するのかも含め、次巻でどう決着が付くのか楽しみです。

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Twitterのリンク用サムネをアイキャッチとは別に作成・設定したい

ずっとやりたいと思っていたんですが……twitterでURLを貼ったときに表示されるサムネをマ●ュマロとかn●teのデフォルトみたいな文字主体の画像にしたいという話。

今は書影の画像をアイキャッチに設定してそれがTwitterのサムネにもなるようにしてたんですが、感想記事はともかく、まとめ記事系は書影貼ってもインパクト薄くないですか…?個人的に記事タイトルをドカンと見せたほうが強い気がしてるんですが……。ブログのアクセス数を稼ぐことに関してそこまで強い執念はないのですが、まとめ記事って毎回無駄に時間がかかるので出来ればもう少しtwitterで引きを強くしたい。同人サイトのアクセスは諦めているけどこちらのアクセスはモチベのために一定数維持したい。人付き合いは苦手だけどそれはそれとして沢山RT・いいねが欲しい(自分に正直)ので出来ればツイッターに流れてきた時に「おっ」と言わせる感じにしたい。

【ステップ1】サムネ画像を作る

まずNoteやマシュマロがやってるんだからテンプレ画像に指定した文字を載せた画像を自動的に出力するシステムはおそらくある。そして多分Wordpressとかのプラグインとかもあるはず!!と検索してみたのですがみつからなかった。そもそもTwitterCardとかブログカードとかで検索するとブログ内でリンクにリンク先のサムネを拾って表示させるアレが出てくる。そうじゃない。PHPで画像に文字を載せること自体は出来るっぽいんですがやりかた知ってる人が居たらご一報下さい(絶対あるとおもうんだよな…!!!!!!!)

検索するとブログ更新をガチで頑張ってる人は1つ1つオシャレなサムネを作成して付けているようなのですが、とにかくこれ以上ブログ更新までの敷居を上げたくないのでPhotoshop等でサムネを1つ1つ作成する流れも遠慮したい。プラグインがない以上全自動での作成は難しそうだけど、せめてブラウザ内で完結させたい。

ここで思い浮かんだのがGoogle傘下の画像編集アプリ「Canva」に作成したテンプレート画像をアップし、文字の挿入位置などをざっくり決めて保存。それをテンプレートにして出力用の画像を作成・ダウンロードするという手段でした。土台は自分で適当にPhotoshopで800×418pxの画像を作成しました。


Canvaのテンプレートには「Twitter投稿用」という項目があるので、特にこだわりがなければこの辺から好きなテンプレを拾ってくると良いかとおもいます。(※「有料素材を含む」という記載のあるテンプレートは無料使用に制限がかかるので注意)


↑取りあえずこんな感じで作成完了!!(右下の本らしきなにかは自分で描いた)

【ステップ2】作ったサムネ画像をTwitterCardとして設定する

作成した画像を早速ブログ記事のアイキャッチに登録、TwitterCardに反映させてみる。文字が目立ってなかなか良い感じ……なんですが、アイキャッチが正方形サイズで固定されるブログの一覧ページでは見た目がとても残念な雰囲気に。サイト内のアイキャッチ、ほぼアイコンとしての使用なのでこっちはこれまで通りの書影がいいなあ……。



ここでカスタムフィールドに「twittercard」という要素を追加し、フィールドタイプを「画像」に設定(私は「Advanced Custom Fields」というプラグインでやってます)。このカスタムフィールドに要素が入っているときはTwitterCardのサムネを書き換えるように設定。Simplicity2では「header-twitter-card.php」「header-ogp.php」を編集すればOKでした。他のテーマだとheader.phpあたりにあるかも。

最後に、作成したカスタムフィールドの「手順」欄に作成したCanvaの編集リンクを載せる。


テンプレ右上の「共有」ボタンを押してメニューを出す→「リンクをコピー」か「テンプレートのリンク」をクリックして編集用のリンクを取得。「リンクをコピー」だとテンプレを直接編集、「テンプレートのリンク」だと最初に作ったテンプレを複製してそちらを編集する形。元テンプレを編集するのはなにかで事故った時にリスク高いな……と思ったのですがテンプレを無限に増やすのもなんか嫌だったのでテンプレを複製し、複製したテンプレを編集する形でリンクを作成しました。

完成!!


これで概ねやりたいことは出来たかなと思います。とりあえずまとめ記事とか雑記系はTwitterCardを別に作成する形で運用してみようとおもうんですが、余力があったら感想記事用のテンプレも別に作ってみたいですね。版元ドットコムさんから画像を引っ張ってきて、右側に書影・左側にタイトルとキャッチとか入れると引きが強くなるかも。

追記

そうか!OGP画像っていうのか〜!!!(そういえばTwitterでしか見方を確認してないので気にしてなかったけどOGPって項目があったね……)
「OGP画像 自動作成」で検索したらメッチャ出てきました。結構難易度高そうなので元気のある時にチェックしてみる……。

↑具体的な画像作成方法


↑どんなサムネが良いのかレイアウト面まで含めて

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声優ラジオのウラオモテ #08 夕陽とやすみは負けられない?

 

「ねえ、佐藤」「なによ渡辺」「わたしたち、一緒に暮らさない?」
 『ティアラ☆スターズ』ライブの第一弾「ミラク」VS「アルタイル」が終了し、遂に乙女たち「アルフェッカ」に挑むことが決まった夕陽とやすみ。調子を取り戻した若手随一の人気声優・乙女に率いられて盤石な体制の「アルフェッカ」を前に、二人は一時休戦、協力して後輩の指導とチーム強化にあたることを決める。  しかしアイドル声優活動を疑問視する年上の新人・羽衣纏は、ライブへの注力に不満な様子。その姿を以前の自分と重ねた千佳は、ぎこちないながらも彼女と対話しようとするが――。

『ティアラ☆スターズ』ライブのサプライズゲスト・桜並木乙女に圧倒的な実力差を見せつけられた夕陽とやすみ。次のライブはそんな彼女が率いる「アルフェッカ」との対決で……なんとしても彼女に勝ちたいと闘志を燃やすふたりだが、ユニットメンバーであり年上の新人声優である羽衣纏が煮え切らない態度を見せる。彼女はアイドル声優としての活動そのものに否定的なようで……。

もうすっかり不仲が建前になってるんだよなぁ

どちらかというとふたりの「親友」「相棒」としての関係がクローズアップされてた回だと思うんですが、無理に対立する必要がないからか由美子から千佳への好意が基本的にダダモレだし、それを「あなたのそういうところ、本当に嫌い」で躱しながらも満更でもない顔の千佳にニヤニヤが止まりませんでした。いや、今回まじでことあるごとに千佳ちゃん「あなたのそういうところ〜」って言いすぎじゃなかったですか?もはや完全に好意を取り繕うのに使われてるんだよなあ。そんな流れから始まる一週間のお泊り合宿、新婚夫婦の仕草すぎて笑う。

メインとしては6巻で未解決のまま終わった羽衣纏の掘り下げが中心。「仕事用」ではない彼女の意外な素にはニヤニヤしてしまいましたけど、他の新人声優達と違い出だしが遅れてしまった彼女がアイドル声優活動をすることに対して感じる畏れは察して余りあるものがあり……そんな彼女に、不器用ながらも直球な夕陽が心を尽くして「どんな経験も役者として無駄にはならない」と伝えていく展開がとても良かったです。実際、彼女が内に抱える無理しすぎてしまうことへの畏れなんかは桜並木乙女の過労問題を解決した経験がなければ解く事ができなかったと思えて、回り道に見えたとしてもその経験は糧になっていると実感出来る展開も良かった。

その一方で、『ティアラ☆スターズ』での配役に自分たちの関係を重ねずにはいられない由美子は、アイドル声優活動に否定的な纏の言動を見てかつて彼女と同じ思いを抱いていた夕暮夕陽が現在のアイドル声優としての活動をどう感じているのか不安に感じ始める。彼女が現在の仕事のことをどう感じているかなんて、一番近くで見ていたやすみが一番よく理解しているはずなんですが……それでも実際に言葉にしてもらわないと不安な時ってあるよね。

夕陽がふと漏らした言葉によってその不安は加速し、なんとしてでも今回のライブでアルフェッカに勝ち、夕陽に「最高の景色」を見せようと意気込むやすみ。それでも、実力差は圧倒的で……焦りだけが空回りして少しずついつもの自分を保てなくなり、夕陽とも噛み合わなくなり……救いを求めるかのように自分が演じるキャラクター・レオンに感情移入していく彼女の姿が見ていて辛かった。

オタクくん生きてるーーー!?私死んでるーー!!!

……からのソシャゲの期間限定イベントのボイス再収録、そしてクライマックスのライブの流れ……もうここ、やすみと夕陽よりもライブを見ていたオタクのほうに感情移入せずにはいられない。レオン(※やすみのキャラ)のオタク、生きてる!?お前らライブでサイリウムちゃんと振れた!?私は感極まってサイリウム振るどころじゃなかった!!!隣に立ってたオタクに介護してもらわなきゃ……って思ったけどひとり参戦だった上に隣もレオンのオタクだったから誰も介護してくれなくて無言で崩れ落ちたし光る棒振るどころじゃなくて棒立ちでライブ見てたし中盤の演出に気付いてもう一回膝から崩れ落ちた(見てきたように幻覚の話をするオタク)……いやだってこんなの絶対耐えられないでしょ……めくる先輩よく最後まで平静保ってたよなこれ。

こういったライブって歌の上手さもダンスの上手さも確かに重要だけど、そんなことより「ここに確かにキャラクターが居る」とオタクたちに思わせることこそ重要、ホントそれなんですよね……だってこれはアイドルのライブじゃなくて「二次元アイドルコンテンツの声優ライブ」だから。あまりにも大正解で唸ってしまったし読んでいたら勝手に脳が架空の存在しないオタクになって幻覚を見てしまったので私はもうだめです。このシリーズ、割と「アイドル声優」としてのお仕事・「声優」としての演技のお話を別々にやってる印象だったんですが、アイドル声優としてのライブ演出を突き詰めた結果、一周回って声優としての演技力に話が戻ってくるのあまりにも完璧な帰結だし最高でした。これまでの7巻分の全ての物語があったからこそのこの結末で、文句なしに最高。

そしてライブでのやすみの演技を見た夕陽の反応がなにより最高ですよね自分で仕掛けておいてあのモノローグ…………この…このぉ…!!!二人はやっぱりこうでなくっちゃな!!!決め台詞とも言える「〜本当に嫌い」が最後に挿入されるのも最高で……イヤほんと、この作品アニメ化したら第一話から最終話までの夕陽役の声優の「あなたのそういうところ、本当に嫌い」の切り抜き比較動画を作って欲しい。第一話初回から今回のラストでどのくらい言葉のニュアンスが違うんですかって話で。もう公式が自ら切り抜き動画作るくらいの勢いでお願いします。改めましてアニメ化おめでとうございます!!!!!

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VTuberのエンディング、買い取ります。

 
Tiv

『推し』の最期をプロデュースする救済と再生の物語――
VTuberアイドルグループ『星ヶ丘ハイスクール』所属の VTuber――夢叶乃亜。 彼女を推すことに青春の全てを捧げ、V界隈でも名を馳せていた高校生の苅部業は、乃亜の魂の醜態がネット上に晒され、大炎上したことで人生が一変する。 「おれはあの夜に死んだ……」 運営から推しの臨終を告げられ絶望した業は、高校を休学し一年後VTuberの炎上ネタを扱うブロガーとして日々を過ごしていた。 そんな業の元に『自分のVTuberを炎上させてほしい』という依頼を持ち込む美少女、小鴉海那が現れ――。 「これは人助け……いえ、VTuber助けみたいなものです」 『推し』の最期をプロデュースする救済と再生の物語。 第35回ファンタジア大賞〈大賞〉受賞作!

Vtuber・夢叶乃亜を推すことに青春の全てを掛けていた高校生・苅部業。V界隈でも有名人だった彼の人生は乃亜がリアルバレ・炎上からの活動終了に追い込まれたことで一変する。光のトップヲタからVtuberの炎上を扱う闇のブロガーに転身した彼のもとに、元同担の少女・小鴉海那からとある依頼が持ち込まれて……?

Vtuberオタク達のエンディングノート

面白かった。かつて推しを炎上で亡くした主人公が自らも「炎上」を駆使して依頼を受けたVtuberの最期をプロデュースする物語……であるのと同時に、「夢叶乃亜」を推していたオタク達が彼女によって付けられた心の空白に対してケリをつけるエンディングノート的な物語だったなと思います。

彼女の影を追い自らもVtuber界隈に飛び込む者、新しい「推し」を見つけた者、他のVtuberに彼女の姿を投影しようとする者。そんなかつての同志であったオタク達の未練に対して主人公が炎上という手段を用いて容赦なく「引導」を渡していく。「Vtuber」と「Vtuber推しのオタク」、両方が納得の出来る終わり方を水面下で模索していく展開にはどこか救いがあって。いやほんと、炎上からのコンテンツ終了、辛いもんな……好きという気持ちをSNSに吐き出すことすら難易度の高い行動になってしまうのが特にキツい……私はV界隈のオタクじゃないけど全然対岸の火事ではない……。

どのエピソードも良かったのですが、個人的には特に綾小路ねいこのエピソードが好きでした。年配のオタクであるキャップン氏が年若い主人公に対して少しだけ感じてしまう負い目・憧憬も良かったし、やろうとすればもっと直接的なつながりを作ることも出来たであろうにあんな形で推しと接する姿もとても良い。最近涙腺が脆いのでタクシーのくだりで全てを察して泣いてしまった。

全ての「推し」を持つオタクに読んで欲しい物語(クソデカ主語)

依頼を受けたVtuberを燃やしていくという手法はいろいろな意味で賛否両論あると思いますが、物語を読み進めていくにつれて主人公の真意と、彼自身もまた夢叶乃亜の欠落を埋めるために足掻き続けている姿が見えてくる。炎上ブログでの活動を通して彼女の復活が有り得ないことを誰よりも実感していて……それでも時折『乃亜ちゃんに会いたい』と独り言ちずにはいられない。そんな彼が「もうひとりの自分」ともいうべき存在と──そして自分自身の傷跡と対峙するクライマックスはとてもアツいものでしたし、いなくなった推しだけを一途に見つめてきた彼が、一途に自分を想い続けるヒロインの手によって引導を渡されてしまうラストがまた良かった。あらすじで書かれている通り救済の物語であると同時に「再生」の物語でもあったと思います。

Vtuberモノというより、推しがいる全てのオタクに読んで欲しい物語(※面白かったオタクが感極まって使うクソデカ主語表現)でした。特に好きなコンテンツの炎上に接したことのあるオタクならば、良くも悪くも刺さる作品ではないでしょうか。いや拒否反応出る可能性もありそうなので責任は持ちませんけど。

「夢叶乃亜推しオタク達の物語」としては1冊で完璧にまとまっていてとても満足感の高い一冊だったのですが、表題の「〜買い取ります」の部分を踏まえると物語としてはおそらくスタート地点に立ったところでしかないハズなんですよね。次巻にどう繋いでいくのかとても楽しみです。

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魔術師クノンは見えている 3

 
Laruha

水魔術で空を飛び、水中で呼吸する――天才の魔術探究に常識は通じない!
魔術学園での商売を早くも軌道に乗せ、実力で三派閥同時在籍を勝ち取ったクノンは、各派閥の先輩と共同研究を開始! 特に水中での呼吸法の研究は、いつしか難破船の財宝探しへと話が広がり、ついには実地調査で海に飛び出すことに。特級の生徒なら海底だって散歩道! 巨大魚に襲われてもーー「大丈夫。水辺は僕の領域ですから」 使える魔術のレパートリーも倍に増え、ますます実力をつけた盲目の天才による、常識破りの魔術探求・第三弾

自分どころかクラスメイト達の金策まで軌道に乗せ、いよいよ本格的に魔術の研究を開始したクノン。3つの派閥に所属する先輩たちを巻き込んで共同研究を行ったり、海に眠る財宝を探しに行く羽目になったり、三級クラスの授業を受けて2つしかない魔術のレパートリーを増やそうとしたり、二級クラスの生徒達と模擬戦することになったり。そんな中で、教師のサーフからの依頼で二級クラスに赴いたクノンは魔術よりも派閥争いに興じる生徒たちを目の当たりにして……。

「オタクが好きなことしてるだけの話」が面白くないわけない

2巻は特級クラスの同級生達の話が中心となっていましたが、3巻は生活基盤を確保したクノンがいよいよ本格的に魔術研究に打ち出すお話で、下級クラスの生徒達から派閥の先輩・教師まであらゆる学園関係者を巻き込んで繰り広げられる物語が楽しかった!良くも悪くも今回は魔術研究のお話が中心で物語的には動きの少ない一冊とも言えるのですが、行動力の化身のようなオタク(クノン)が他のオタク(魔術師達)を片っ端から巻き込んでやりたいことが出来る環境で好きたい放題しているわけで、それが楽しくないわけないんだよなあ。

魔術師達が人によって様々な魔術特性・属性を持つのと同じように、クノンが出会った彼らが魔術に対していろいろなスタンスを持っているのも見えてくる。特級クラス内で話が収まっていた頃はなんだかんだいいつつ皆が同じ方向を見ていた感じがあったのですが、魔術にそこまでの興味を持たない三級クラス、貴族たちの派閥争いの縮図となっているニ級クラスの生徒達との邂逅・すれ違いがまた印象的で。大きな才能を内に秘めているのに魔術よりも将来の生活のほうが大事という彼ら彼女らに対して、家庭環境から根本的に違うクノンが説得することは難しく……という描写にはこちらまでもだもだしてしあうのですが、その裏ではクノンとの出会いを通してその生き様に影響されていく生徒たちも存在する。三級クラスの子達の話とか、なにげに今後の展開への種まきだったような気がしているので今後が楽しみだなあ。そして珍しい魔術があれば生徒たちを導く責務なんか投げ捨ててひとりの魔術師に戻って興奮してしまう教師陣達が大人気なくて好き。

その一方、学園の外では早くも学園でのクノンの活躍が話題になっており……いろいろな意味で次巻は話が動きそうで、楽しみですね。というかその話題の的になってる話、クノンが学園で一番最初にやったやつじゃないですか……ここからの活躍を知ったらどうなってしまうんだ。しかし守ろうと思ってた婚約者が予定を前倒ししまくって前に出てきてしまって慌てるミリカ殿下、まじで強く生きて欲しい。

ジオエリオンとの関係、美味しい!!!!!

これまで基本的に誤った紳士観の弊害で、女子しか眼中になかったクノンくんに男の影が…ヤッター!!ニ級クラスの派閥争いの中心にいる人物、「帝国の狂炎王子」ことジオエリオンとの出会いにめちゃくちゃテンション上がってしまった。水と炎、対称的でありながら似た者同士、出会った途端に最高の親友として、そして最高のライバルとしてお互いを認識している彼らのやりとりにニヤニヤが止まらない。出会ったばかりなのに妙にお互いへの解像度高いのも美味しいし、そしてやたらと距離が近いとか同性でよかったとか周囲からちょっとズレた心配されてるのに別の方向でもニヤニヤが止まらない。いやこれ次の巻ではバトルしてくれるんですかね?「焦がれて待とう」はズルいですって!!

いや〜これほんと絶妙に至近距離でありながら自分には関わり合いのないところでふたりのやりとりを観察してニヨニヨできるイルヒ、腐女子のベストポジションすぎてずるいな……「学園の壁になりたい」みたいな感覚で私もイルヒになりたい人生だった……。

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「好きラノ 2022年下期」投票します。

今回もまたギリギリになってしまった……投票します!

ブログやtwitterによるラノベ人気投票サイト。2022年下期の人気ライトノベルはこれだ!!

毎回できるだけ新規と既存のタイトルが一緒になるように調整してるんですけど今回はもういいかと諦めて7:3です。既存は上手く盛り上がりがこのタイミングで来ないと投票しにくいから……。下半期は新作をたくさん読んだぞ!!とおもってましたが半数が2022年上半期の新作だったのでだめだった。今更感ありますが近いうちに2022年読んだ本のまとめも作りたいです。

新規

とくめい「アラサーがVTuberになった話。」→感想
【22下ラノベ投票/9784047371972】
男だからという理由でVtuberデビュー早々炎上してしまった元社畜の主人公が、ブラック労働よりは全然イケると炎上をものともせずに配信を続ける展開が面白い。業界に興味のない主人公が「お仕事」として活動を始めるという展開が印象的で、シスコン気味の兄と口では何を言っても兄のことが大好きな妹という関係性も良かったです。
二丸 修一「君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?」→感想
【22下ラノベ投票/9784049142266】
優等生の仮面を被りその内に殺人衝動を秘めた誠司と、行き過ぎた正義感を持つ拓真。普通の枠からは少し外れた天才二人が異世界に召喚され、一国の未来を背負って殺し合いをする。親友でありながら殺すべき相手として互いに執着していく二人の関係性がたまらなかったですが、そんな彼らの周囲を彩る現代・異世界のキャラクターたちも魅力的な物語でした。
夏海 公司「はじまりの町がはじまらない」→感想
【22下ラノベ投票/9784150315306】
意志を持ったNPC達が自分たちが生きている世界の終わり(サービス終了)に抗うため、自力でゲームにテコ入れを行う……というお話。短命爆死のクソソシャゲな世界を舞台に例えて解釈し、強引にテコ入れしていくのが面白かった!そして主人公であるオトマルと彼の秘書であるパブリナの軽快なやりとりがめちゃくちゃ楽しい。
新 八角「チルドレン・オブ・リヴァイアサン 怪物が生まれた日」→感想
【22下ラノベ投票/9784049141412】
海獣の脅威にさらされた日本を舞台に、それぞれの理由から彼らの死骸から作られた人形兵器に乗る少年少女たちの物語。バトルものというよりは大災害を経験して欠落を抱えた彼らがそれとどう向き合っていくか…というお話なのですが、その一方でソレに魅入られたかのように人間から逸脱していく主人公の姿が印象的で、とても良かったです。
黒鍵 繭「Vのガワの裏ガワ」→感想
【22下ラノベ投票/9784046819420】
クリエイター視点からのVtuberモノというのが一味違った感じで面白い。明るい学園モノといった雰囲気のVTuber「雫凪ミオ」の成功まで、そこからヒロイン・海ヶ瀬果澪の本心に迫っていく後半の変転が凄まじく、彼女の心の闇・主人公の過去を掘り下げていく展開がとても良かったです。
吉野 憂「最強にウザい彼女の、明日から使えるマウント教室」→感想
【22下ラノベ投票/9784094530872】
全てがマウントで決まる学園を舞台に、マウント強者のヒロインらしき女と主人公が偽装彼氏契約を結び、クラス決めトーナメントで最上級のSクラスを目指す!!というお話。会話劇主体のコメディでマウントバトルはネタ要素…と思わせておいて頭脳バトルとして割と全うに面白……とみせかけておいてやっぱり最後にネタで落としてくるのめちゃくちゃ良かった。
佐遊樹「TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA 嫌われ追放エンドを目指してるのに最強無双ロードから降りられない」→感想
【22下ラノベ投票/9784047368101】
最高のサードライフを送るためにセカンドライフで(タイトル略)をやる羽目になったがよくわかんないからとりあえず全員ぶっ飛ばせばいいよね!?というお話。主人公の真っ直ぐすぎる脳筋私TUEEっぷりがひたすら気持ちよく、爽快になれるお話でした。というか1巻の時点ではRTAどころか間違いなく逆走していたので続きがとても気になる。

既存

コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!3」→感想
【22下ラノベ投票/9784049145755】
完結。これまで興味がなかった事でもお互いに一緒にやったら楽しいよね!で、次々と新しいことに挑戦していく主人公夫婦の生活がタイトル通り本当に「メッチャ楽しい」だったので最高でした。仕事も趣味も子育ても両立させて、自分の距離感で続けていく姿がとても良かった。
南野 海風「魔術師クノンは見えている 2」→感想
【22下ラノベ投票/9784040745831】
前回の好きラノの結果を見て手を出したのですが、2巻3巻は学園に入ったクノンが周囲を巻き込んで実験を繰り返していくお話で楽しかった。アグレッシブなオタクがオタクと一緒に好きなことする話がつまらないわけないんですよね。あと3巻はマジでジオエリオンが出てからが最高だったのでよろしくお願いします。焦がれて待てはずるいって。
衣笠 彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編8」→感想
【22下ラノベ投票/9784046818331】
試験のない息抜き的な巻でしたが、それ故のクラスの垣根を超えたはっちゃけぷりが楽しくてこれまでとは違う意味でニヤニヤしながら読んでしまった。その裏で、今後の展開へのターニングポイントになりそうなお話もしっかり盛り込まれていて、次巻がますます楽しみになってしまう1冊でした。

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我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.1 魔王城、燃やしてみた

 

12年ぶり「大賞」受賞作。最強爆焔娘の異世界コメディ!
(あわよくば何か燃やしたい……)という欲求を抱いていたホムラは異世界へと招かれる。そこには同じようにヘンな女子高生達が集められており、何でも特別な才能を持つ彼女達に「この世界を救って欲しい」という話のようで? 100年振りの魔王復活、混乱に乗じて蔓延る悪党共。天下動乱の世を正す為、世界の命運は少女たちに託された――。 「あなた悪人さんですか?それなら私、心置きなく燃やせます!」  燃やすことこそ大正義! 焼却処分はエクスタシー!! 圧倒的火力で世界を制圧していく残念系美少女ホムラの行く末は!?  スニーカー大賞12年ぶり「大賞」受賞作。 最強爆焔娘の異世界コメディ!!

現代で異端とされた少女達が異世界に召喚され、創世神から魔王を倒して欲しいと頼まれる。破天荒な仲間たちに囲まれて困惑する発火能力者のホムラだが、彼女の内にはとある強い欲求が渦巻いていて……!?

自分に正直に生きるために

発火能力者、マッドサイエンティスト、暗殺者、生体兵器、機械生命体……現代日本で「異端」とされた少女達が異世界で繰り広げる冒険譚。表紙のドヤ顔ガイナ立ちなヒロインと景気の良さそうなあらすじをみて破天荒な少女達が前世チートで大暴れする物語を想像していたのですが、どちらかというと彼女達がそこ(プロローグで語られた魔王との最終決戦)に辿り着くまでの物語で、今巻はむしろ物凄く地に足が付いているというか、前世で抑圧されてきた少女達が異世界で少しずつ成長しながら自分に正直に生きていく……という方向性のお話でした。

異世界に行っても彼女達が「異端」であることに変わりはなく、彼女達の持つ力も現時点では世の不条理をなぎ倒せるような圧倒的なモノではないのですけど、だからこそプロローグでのご無体ぶりが気になるというか、ここからこのクライマックスに向かって成長していくための物語なんだろうなあと感じてワクワクしました。

また、主人公達5人の絶妙な距離感が良かったな〜。どこか異常で異端な彼女達が適度な距離感を保ちつつお互いの異常な部分を理解はできないけど拒絶もしない、運命共同体としてまあ仲良くやろうじゃないかくらいの感じなのが良かった。個人的なお気に入り場面は仲間のひとりが不注意で毒だして、あぶなーーーい!っていいながら残り四人が足を引っ張り合って全員の逃げ道ふさぐ展開ですね。いやもうホント、こういう仲良し仲悪しな関係性大好き。

今回はホムラとサイコ以外の3人はやや存在感が薄めに感じてしまったんですが、他の少女達の事情や葛藤も面白そうなので、ここからどう物語が動いていくのかがとても楽しみです。

しかし、やっぱりこれ表紙とあらすじを読むと破天荒な少女達の私TUEEの方向を期待してしまう気がするな……宣伝がもう少し上手くやってくれれば、と思う反面、少女達の関係性や成長物語要素の方を押し出すとなんていうか地味になっちゃいそうなんだよなあ……。タイトルもかっこいいんですが(富士見全盛期世代並の感想)、原題の「異端少女」という表現が彼女達を表す言葉として凄くしっくり来たので何らかの形で残してほしかったな。

あと1巻のラスボスの人、与えられた情報からなんとなくラスボス化した理由は想像できるんですが物凄く雑にラスボス化してしまったのでもうちょっとこう、丁寧に料理してあげてほしかった気がしますね……いやだってこれ絶対に出世した同期へのクソデカ感情をこじらせた末にああなったやつでは……私が地味に読みたい方向のやつ…………。

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君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?

 
champi

親友の誠司に妹を殺された拓真。異世界に転生し、再会した二人は──。
 幼い頃から殺人衝動を持ち、勉強も運動も何でも一番の完璧な高校生、高城誠司。誰とも相容れない彼の前に、初めてライバルとして認められる存在の菅沼拓真が現れる。友情を深める二人だったが、ある日、誠司は拓真に、自殺した妹を殺したのはお前だと問い詰められる。  その瞬間、気がつくと誠司は魔方陣に吸い込まれ異世界に転生していた。魔法で召喚された先のインストリアル王国で、第一王子デュレルの右腕として誠司は成り上がっていく。一方、誠司と同様に転生した拓真も、軍人として第二王子アシュレイの信頼を得て出世していた。  異世界で再会した二人は、国を左右する王子たちの皇位争いに巻き込まれながら、拓真の妹の死の真相に近づいてゆくのだが――。

完璧な優等生である主人公・高城誠司は高校で自分と対等に付き合える存在・菅沼拓真と出会い、親友となる。ある日、拓真の妹・香奈が患っていた病気を苦にして自殺してしまうが彼女の自殺の裏には誠司の存在があり……拓真が彼女の死について誠司を問い詰めようとしたその時、ふたりは異世界に召喚されてしまい……。

かつて親友であった天才ふたりの、執着と対決の物語

拓真の妹の死を巡って撒き起こる親友ふたりの対立に異世界のとある国家の行く末が巻き込まれ……というお話。あらすじや評判を見て好みの予感しかしてなかったのですが、最初から最後まで親友ふたりの濃厚な執着・俗に言うクソデカ感情のお話で、楽しかった〜〜!!というかまず作者が自費で作ったというPVがめちゃくちゃ最高なのでとりあえず何も言わずに見てください。
CV.石田彰×羽多野渉 ライトノベル『君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?』本PV

ありあまる才能を持つがゆえにほんとうの意味での「友人」を持たなかった二人がはじめて対等な立場で付き合える相手と出会って親友となる。しかしその裏で、誠司は魂の輝きが消える瞬間が見たいという殺人衝動を強く刺激され、それを感じ取った拓真も親友が間違いを犯したら殺してでも止めようという義憤を芽生えさせることになる。相反する感情、人間を殺してはいけないという倫理観に支えられてそれでも絶妙なバランスで成り立っていた彼らの関係──それは、妹の死と異世界転生という切っ掛けで致命的に形を変えてしまう。

合間合間で語られる転生前の「親友」としての気のおけない関係性、そして転移後に見せる互いへの執着が大変によかった。異世界で強い人間を殺しても良い名目と立場を手に入れた誠司が行方もわからない拓真と対決するときのために力を蓄えていくのに(こういう言い方もアレなのですが)ワクワクするし、一方で別の場所に転移した拓真の方も妹の死の真相を知るため、そして自分の正義を貫くために誠司への執着を募らせていく。導かれるように敵対する関係となり再会する二人の姿に、興奮してしまいました。

彼らを取り巻くキャラクターたちも魅力的

とにかく最初から最後まで一貫して男同士のどでかい感情の対決を描く物語で最高なのですが、その反面で彼らを取り巻く現代・異世界のキャラクターたちも魅力的でした。誠司と拓真の対立の起点となった妹・香奈、誠司の汚いやり口に嫌悪感を持ちながらも拒絶することはできず理想と現実に折り合いをつけられずに迷い続ける王女シンシア、誠司に手駒として見出されてその殺人衝動を知った上で彼に心酔する従者オデット。おおよそ主人公らしからぬ「悪」である誠司の心の動きを引き立てるような彼女達の存在・葛藤がとても良い。

そして誠司と拓真の対立の起点となった妹・香奈。もういろいろな意味で彼女の行動には驚かされましたし、誠司のような「悪」を主人公とした物語の起点として、この上なくしっくりくるキャラクターだなと。彼女の出番自体は本当に少ししか無いのですけど、強烈な印象を残していくキャラクターだなと思いました。オデットにしろ香奈にしろ、こういうキャラクター達こそが誠司の弱みというか予想を越えてくる展開、良いなあ。

もういろいろな意味で衝撃的なラストだったけど最低4巻以上のボリュームを想定した戦記モノとのことで、ここからどう続いていくのかめちゃくちゃ気になる。色んな意味で異世界側に拓真以外で主人公の敵になれそうな相手がいないし、彼らの物語としてはこの上なくきれいに1巻でまとまっている感じがするんだけど。2巻でどういう方向に行くのか、とても楽しみです。

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Vのガワの裏ガワ

 

「私のママになってくれませんか?」
プロの高校生イラストレーターとして活躍する千景。そんな彼はある日、誰もが近づきがたいほどに完成された美しさを持つ孤高の少女・果澪から「ママになってくれないかな?」とお願いされる。 この場合の「ママ」と言えばVTuberのキャラクターデザイン――悩む千景に、果澪は突如脱ぎ出し、きわどい水着姿で迫り……!? 果澪の熱意を受け止めた千景は、同じく高校生イラストレーターの桐紗、自堕落な隣人にして大人気個人VTuberの仁愛を仲間にし、VTuber「雫凪ミオ」プロジェクトを発足。全員で果澪を人気VTuberにするべく、動き出す。 VTuberになりたい女子高生と、クリエイター&ストリーマーたちで送る青春ラブコメディ開幕!

高校生にして「神絵師」──商業イラストレーター・アトリエとして一定の地位を得ている主人公の亜鳥千景。ある日突然、隣の席の美少女・海ヶ瀬果澪に自分の正体を見抜かれた上、Vtuberの「ガワ」をデザインして欲しいと依頼される。「アトリエ先生のファン」という彼女に悪い気はせず、依頼を請け負うことにするが……?

Vのウラ(制作サイド)を描く青春物語

隣の席の美少女からVtuberのキャラクターデザインの依頼を受けた主人公が、同級生で同業者でもあるイラストレーターの少女・桐紗(モデリング担当)と隣の部屋に住む自堕落な後輩の少女・仁愛(人気Vtuber)の2人を巻き込んで、4人でプロジェクトチームを立ち上げるというお話。

ただVtuberのキャラクターデザインを担当するというだけでなく、キャラクターを動かすためにモデリングを依頼したり、Vtuberとしての売り出し方を考えたり、Vtuberをやっている友人達に宣伝を頼んだり……と、多角的な視点からひとりの「キャラクター」を完成させるために動いていくという展開がめちゃくちゃ面白かった!こういった立ち上げからの話を1から全部やれるのは個人勢Vtuberの面白いところだなあ。また、それを複数人のチームで行っていくのが一昔前の青春系部活モノみたいな味わいで楽しい。最初は打算的な目的一致で集まった急造のチームだったのが、Vtuberのプロジェクトを通して少しずつ距離を縮めていく展開にほっこりしました。

前半とは打って変わった後半のシリアス展開が熱い

人気イラストレーター2人と人気Vtuber、3人のバックアップを受けてデビューしたVtuber「雫凪ミオ」。前評判の高さとそれを裏切らない魅力的なキャラクターが功を奏して、果澪の当初の目標を大きく越えて人気を博し、一気にスター街道を邁進していく。ところが、ある日を堺に果澪は学校を休みがちになり、並行して「雫凪ミオ」のプライベートを洗うような不穏な噂が広がり始めて……。

青春部活モノのような味わいの前半、華やかなVtuber界のスター街道を駆け上がる中盤を経て、果澪の内面と本心に迫る後半の変調が凄まじい。果澪がVtuber「雫凪ミオ」になろうとした本当の理由、そしてこれから何をするつもりなのかを知って愕然としましたし、これまでとは打って変わってシリアスで重苦しい展開に背筋が寒くなりました。しかも、そんな彼女の行動の背中を押したのは元はと言えば千景が黒歴史としてしまいこんでいた配信時代の軽率な発言だったものだから、なおさら事態が混迷を極めていって。

果澪の歩んできた道の重さを知って、しかもその背中を押したのが自分だと知って、自分が彼女の行動を否定してしまって良いのかと散々悩み……そんな中、仲間たちからの叱責を受けて、仲間として友人として「雫凪ミオ」ではない「海ヶ瀬果澪」を取り戻そうと必死に手を伸ばす主人公の姿がとても良かったです。

文字通りVtuberのガワ(制作サイド)の裏側(内面)を描くお話で、発信者としてのVtuberではなく「創作者」としての視点で描かれていく物語が印象的でした。また、華やかなVtuber活動の裏側で繰り広げられる少年少女たちの青春物語がとても楽しかったです。1巻目にして「1」とナンバリングされている珍しいパターンだけど割りと1巻が綺麗にまとまっているので、ここから1巻から引き続き「創作者」達の物語にも、「配信者」達の物語にも(創作・配信活動をテーマにした)「高校生男女」の恋愛モノにでもどんな方向にも舵を切れそう。次巻で方向性が定まるんだろうなと思うので、どっちの方向に進んでいくのか楽しみにしていようと思います。

あと、ストーリーも面白かったけど表紙絵の本編内での使われ方がめちゃくちゃよかったな。思わずニヤリとしてしまった。

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残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.2

 

バエティカ王国の男爵令嬢、アンヘラ。男爵の庶子である彼女は成りあがるため、自らの通う学院で王太子をはじめとした貴い身分の男性たちに取り入り、多くの令嬢たちにいじめられつつも強かに過ごしていた。しかし、卒業パーティ前夜に突然、アンヘラは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームのヒロインだということを理解する。しかもこのままでは明日、逆ハーレムエンドを迎え、今の自分では望まぬ人生を送ることになってしまうかもしれない……。そこで彼女は信頼する従者エドガーの手を借り、エンディングが確定する卒業パーティまでの残る二十四時間で、逆ハーレムエンド阻止のため奔走することに――

ある日突然前世の記憶を取り戻した男爵令嬢アンヘラ。自分は乙女ゲームのヒロインで、明日には逆ハーレムエンドがほぼ確定してしまうのだが、どう考えてもその生活が幸せなまま維持出来るとは思えない。ならば確定する前にみんなに辞退してもらおう!と従者エドガーを巻き込み、フラグを折るため動き出すが…!?

乙女ゲーヒロイン本人による、逆ハーレムエンドフラグ破壊RTA

前巻は権力も資金力もある悪役令嬢な主人公がフラグをぶち壊していく様が痛快なお話でしたが、今回は権力も資金力もなく実家の後ろ盾も薄い男爵令嬢の主人公がゲームの攻略知識を使って事態をひっくり返していく展開で、前巻とは違った縛りの多い展開を楽しめました。エンディング到達後の自身の進退もあるので、権力者である攻略対象達に恨まれないようにフラグを折らないといけない(出来れば向こうからラブコールを取り下げて貰いたい)のが難易度を上げている。

できる限り穏便に事態を処理しようとしているところに、同じくアンヘラの逆ハーレムエンドを阻止しようとする悪役令嬢コンスタンサが介入してくる。更に前作ヒロイン・悪役令嬢の影まで見え隠れしはじめて……!?徐々にこんがらがっていく人物相関図が楽しかったです。

面白かった!けど説明が足りてない……

穏便な解決を望むアンヘラ、攻略対象たちを排除できればそれで良いスタンスのコンスタンサ、そして彼らの裏で蠢く前作キャラクターたち。別々の思惑を持った複数の人間がフラグ破壊を巡って絡み合う展開はとても楽しかった……のですが、重要な設定がいくつも触れられないまま終わってしまい、終盤は完全な消化不良になってしまった。特に、意味ありげに絡んでくる前作キャラたちの思惑が一切語られず、わけもわからないまま彼女達の手のひらの上で踊らされただけという印象が強くなってしまったのが本当に残念でした。


あまりにも消化不良で原作のWEB小説を探しに行ったのですが、この辺の説明が足りてない部分ってほぼぜんぶ書籍化されていない「Interlude1 アレクサンドラのその後」で語られている部分なんですよね。結構文字数が多いのと、外伝として別話立てされているので収録しづらかったんだとはおもうんですが、流石に説明が足りてなさすぎるというか、2巻を書籍化するならば誰の視点かをぼやかしてでも必要な回だけでも章間に無理やり入れるとか出来なかったのかな……いやこれは流石に編集仕事しようよ案件でしょ……。

特に前作ヒロイン・ルシアの挫折から再起、真実の愛を得て舞台に舞い戻るまでの物語はストーリー単体でもめちゃくちゃ面白かったんですが、同時にこれを読んでないと2巻に登場するルシアにつながらないので流石にここを省いて書籍化するのは駄目だとおもうんでうが……アレクサンドラが事態に介入してくる流れも最低限説明がほしい(こっちはコンスタンサが誰の娘なのか説明するだけでも大分違ったと思う)。というか「Interlude1」を読むと2巻の話ってアンヘラ視点で進むもののアレクサンドラとルシアの物語の延長戦として存在しているのでやっぱりアレクサンドラとルシアの視点を省くのはないよなあ。

他にも戦争に行った前作攻略対象達の末路とか、セナイダの結婚話とか、最後の最後の最後でアレクサンドラがルシアに一杯食わされる展開とか、ちょっと長いんですけどすごく面白かったです。2巻のメインヒーローであるエドガーの正体バレが出てくるので2巻を読む前にこちらを読めともいいづらいんですが、その辺含めて上手く書籍に盛り込んでくれたらめちゃくちゃ面白かったと思うので、本当に編集が……メディアの違いを理解してくれればこんなことには……。

個人的に、全ヒロインが揃い踏みで乙女ゲーと自分の前世のネタバレトークするInterludeの最終話めちゃくちゃ面白かった。ルシアとコンスタンサの前世が予想外に大物すぎるし、アンヘラもなかなか波乱万丈な人生贈ってるし、そこに張り合えるアレクサンドラの前世(一般庶民・同人作家)がまさしくオタクならではの序列という感じで笑ってしまった。

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