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土属性はダテじゃない!

 

ときは21世紀。精霊魔法が日常に存在する現代日本において、埴本麒一郎(はにもと・きいちろう)は精霊魔法界のエリートだった……ただし、土属性の。
●一位:風属性 気楽に付きあえるモテモテクン! 飄々とした態度に翻弄されちゃう!
●二位:火属性 恋も生き様も情熱的なカレ! 火傷するぐらいアツアツのメイクラブしちゃおう!
●三位:水属性 クールな横顔にメロメロ! 奥手すぎるのがタマにキズ?
●四位:土属性 デカい、ダサい、ヂミの3D揃った非モテクン!土いじりでもしてれば?
とからかわれることNO.1の土属性の家系に生まれた麒一郎は実家の援助を打ち切られバイト生活に励む日々。そんなある日、火属性の美少女と赤井雪乃と出会い、良きライバル関係になるのだが……。ドタバタ青春精霊コメディ!(一迅社文庫公式サイトより)

精霊魔法を学ぶ学園でも地味で目立たないと人気のない「土属性」の少年が、ひょんなことから学年でも有名な火属性の美少女と知り合いになり、「異種精霊障害乱走」なる競技での優勝を目指す、というお話。

数あるファンタジーでもめったに主役属性として採用されない地味属性・「土属性」を逆手に取った自虐系コメディ……かとおもっていたら意外に王道な異能スポ根ラブコメでした。全体的にちょっと展開が駆け足かなあと思う部分もあったけど、各属性の特色を生かした戦い方と弱点を補うための「大乱走符」のシステムがなかなか面白かったです。火属性(=熱血娘)なヒロインとのやりとりも微笑ましくて素敵。

ただ、個人的に主人公が乱走で活躍できたのって、のづぢが偶然土属性にしては動きの機敏な能力を持つ朋霊だったから…みたいな気がして、そこが微妙にひっかかってしまいました。鈍重な朋霊と組む羽目になって、底辺から知恵と根性で他属性を出しぬいて行く、みたいなのをタイトルから想像して勝手に期待していたからかもしれない。

しかし、何よりも素敵だったのはクライマックスのやりとり。
彼に対する間違った憧れで凝り固まろうとしていた雪乃に対して、麒一郎が放った言葉には思わず噴き出してしまいつつも、ニヤリとする。「土属性」らしい彼の口下手さが愛おしくなる一幕でした。