今日もだらだら、読書日記。

貴サークルは“救世主”に配置されました2

 

GA文庫大賞《金賞》受賞作 同人誌に懸ける青春ファンタジー第2弾!
「実家に帰らせていただきます」 渾身の一冊を描き上げ、魔王復活を阻止することに成功したナイトとヒメ。しかしその反動からか、ナイトはスランプに陥ってしまう。進まないネームにやきもきするヒメ。 そんなとき、ナイトは同じ大学に通うソラフネを愛する“文芸先輩”と出会う。プロの小説家でもある彼女に乞われ、彼女の小説同人誌にイラストを寄稿することに。 ところが“文芸先輩”は、滅びの未来でヒメと対立していた“魔女”であった。彼女の依頼を受けるなど到底認められないヒメ。 果たしてスランプを脱し、再び? 想いを滾らせることはできるのか――同人誌に懸ける青春ファンタジー!

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100部販売を完売してちょっぴり燃え尽き症候群状態になっていたナイトは、ヒメからの原稿をやれという圧力を受けてスランプになってしまう。彼女から急かされていた新刊のネームが全く進まない中、大学内で同じ「ソラフネ」の話が出来る通称“文芸先輩”と知己になり、彼女から小説本の表紙と挿絵を依頼される。だがしかし、その先輩は滅びの未来でヒメが対立し、絶対に許せないと思っていたおんな“魔女”であった……。

ナイトとヒメ、二人のすれ違いと成長

私もイベント終わるとしばらくちゃんとしたものは描けなくなるタイプなので序盤のヒメからの重圧がしんどくて仕方がなかった。いや、壁サークル目指すために遊んでられないのは確かにそうなんだけど、スランプを告白しても変わらずネームを描かせようとする姿、いくら彼女自身に同人経験がないとはいっても人の心がなさすぎる。いやほんとうに頑張ってどうにかなる問題ではないんですよ……ええ……。

一方、魔王の復活を阻止した結果、ヒメがずっと繰り返してきていた破滅の未来とは違う時間軸にたどり着いたという事実はヒメにとって「未来がわからない」という他の人間にとっては当たり前の不安と直面する事を意味していた。不安・焦燥からナイトへの締め付けは厳しいものとなり、ふたりのすれ違いは文芸先輩(魔女)の登場によって決定的なものとなっていく。一度はナイトの元から離れようとしたヒメが、ナイトの言葉をきっかけにして「神託の書」の指し示す未来に依存することをやめ、少しずつ自分の気持ちに折り合いをつけていく姿、精神的に成長していく姿ががとても良かったです。

復活したヒメが生き生きとナイトと文芸先輩が二人で作った小説同人誌に「ダメ出し」をしていく姿に思わずニヤニヤしてしまう。いや、いらんところで重圧かけるのはやめてほしいけどヒメはこうでなくっちゃね!!!ある意味同人活動の大変さを知らないからこその無茶振りではあるんだけど、その指摘が的を得ているし作品への愛があってのことだとわかるから憎めないし、そこを克服できればちゃんと良いものが出来るんですよね。それを理解しているからこそ、みんな彼女の言葉に付いてくるんだよな。

そして、同じ作品への愛を通して仇敵である魔女と和解していくヒメの姿にニヤリとしました。やはり萌えは世界を救う。このまま適度に仲の悪いケンカップルとして頑張っていって欲しい。

小説サークルの描写には違和感が残る

ヒメとナイト、二人の成長物語は今回もとてもよかったのですが肝心の文芸先輩の同人活動にかんする描写は若干の違和感を感じてしまったり。いや、確かに「小説本が売れない」というのは定説ではありますし、実際表紙を見たら中身が小説だったので買うのをやめたなんて話もよく聞きますが……。

ジャンルやカップリングによってある程度受ける受けないの傾向はありますが「小説本だからこそ欲しい」という読み手もちゃんといますし、小説の「中身を」宣伝することが出来ればプロ作家である先輩の本が需要ないわけないと思うんですよね。ここでまずやるべきは文芸先輩にSNSアカウントを作らせ、その原稿の息抜きで書いてるというSSを毎日SNSにアップさせることだったと思うんですよね。それなのに宣伝はナイトのアカウントからしかやってないっぽいし、その宣伝も表紙や挿絵のことばっかりっぽくてう〜〜ん…??前巻で宣伝の重要性をあれだけ説いてきたヒメがどうして文芸先輩には何のダメ出しもしないんだ?ナイトのSNSアカウントからしか宣伝してなかったら、ナイトのイラスト目当ての客しか来ないのはある意味当たり前のことだと思うんですが……。

一度目のサークル参加で本が全然出なかったのは展開上仕方なかったとはいっても、二回目のイベント参加も「小説サークルだから売れない」で終わらせられてしまったのはものすごく消化不良でした。いやまあ、これで先輩の本がナイトの本以上に売れてしまったらそれはそれで微妙な展開かもしれないのですが……1巻の同人サークル描写がリアルだっただけに、そのへんの描写には過剰に期待しすぎちゃってたなあ。

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ティアムーン帝国物語4〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

「姫殿下、その叡智で我が師を説得していただきたい」
孫娘ベルと、未来改変の一歩を踏み出した元わがまま姫のミーア。帰国した彼女を待ち受けていたのは、忠臣の無茶振りーー偏屈頑固な超変人賢者の説得だった! 理由を聞けば、ある公爵令嬢の妨害工作で、開校目前だった聖ミーア学園の学園長候補が全員逃走。唯一の頼みの綱はその師匠らしく......?  目指すは、来たる大飢饉に備えた「未来の天才児たちによる新種小麦の開発」。優秀な長を手に入れ、帝国に学問の門戸を開くべく、叡智・ミーアが動き出す! 「こうなったら、わたくしが教鞭を取って差し上げますわ!……あらアンヌ、なぜ止めますの?」 保身上等! 自己中最強! 小心者の自称敏腕教師が、孫娘と運命に徹底抗戦する、歴史改変ファンタジー第4巻!

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ルードヴィッヒからの呼び出しを受けてティアムーン帝国に戻ったミーア。四大公爵家のひとつ・グリーンムーン公爵家の妨害によって建設中の聖ミーア学園の学園長や講師候補が獲得できなくなっているという。代わりの学園長候補として、ルードヴィッヒの師匠である放浪の賢者ガルヴを説得してほしいと言われるが……。

「自分の幸せ」のためならいつでも全力!!(良い意味で)

賢者ガルウ獲得を巡るお話がとても良かった。「帝国の叡智」の人となりをを計るため「三顧の礼」を求めて扉を閉ざすガルヴと、そんなガルヴの家の前でわざと待ちぼうけを喰らうことによって相手の非を指摘し、断りづらくしてやる!!と意気込むミーア。例によって思惑がすれ違ったままガルヴがミーアの行動を良い方に解釈して先に折れる……といういつものパターンなんだけど、その一方で「ガルヴに反撃の余地を与えないため」にミーアも全力で礼節を尽くして相手を待つ…という展開がとても良かった。

ミーア、とにかく自分が良い思いをするためならなんでもする人間ではあることは一貫しているんだけど、その一方で一貫して「自分の行動のせいで他人が嫌な目をしたら自分も気持ちよくなれない」「他人に悪い思いをさせたらいつかそれは自分に返ってくる」ということを知っている人間なんですよね。だからこそ、自分が気持ちよく生きるために他人を思いやり、全力を尽くすことが出来る。だからこそ、(様々な誤解はあれど)人々が彼女の二度目の生に惹きつけられる。

その一方で、そういうミーアの気質は決して二度目の生だけで育まれたものではなくて……一度目の生でルードヴィッヒが最期までミーアに尽くした本当の理由。そして、師との問答によって「帝国の叡智」ではなく「ただの人間のミーア姫」に仕えることを改めて決意するルードヴィッヒの想いに胸を打たれます。

ティアムーン帝国没落を巡る謎のひとつが、ついに明らかに…!?

学園に戻ったミーアはグリーンムーン家の令嬢・エメラルダから夏の舟あそびに誘われる。護衛としてシオン、キースウッド、アベルの三人を引き連れてグリーンムーン家とつながりの深いガヌドス港湾国に向かうことに。一方、一度目の生での飢饉の際のガヌドス港湾国の動きに違和感を感じていたミーアは、ルードヴィッヒに相手のことを調べさせようとするが……。

一度目の生でミーアを真っ先に裏切ったとされるエメラルダと、その際に食料支援を断ったガヌドス港湾国。楽しいバケーションの裏でルードヴィッヒ達が動き、ティアムーン帝国没落を目論む恐ろしい陰謀の存在が見えてくる!!という展開がアツい。四大公爵家のどこかに潜むといわれている「敵」の影も少しずつ鮮明になってきた。

それはそれとしてアベルとミーアのイチャイチャっぷりがすごくてお前ら早く婚約しろ!!すぎる。そして、良くも悪くもミーアの親戚筋としかいいようがない、人がよくてポンコツで何故か最近距離を置かれがちなミーアにかまってほしくて仕方がないエメラルダの行動にニヤニヤしてしまった。彼女もなんだかんだでお貴族の習わしや家の事情に縛られているだけなんですよね。いやだって自分のメイドのこと、あれだけ下げる発言をしておきつつ名前ちゃんと覚えてるじゃん……毎度名前を呼びかけては言い直すところとか、可愛すぎるじゃん……これこのままだと絶対に近いうちに破裂する爆弾だなとおもうけど!!

実質前後編の前編みたいな終わり方なんだけど物語はここから第三部に突入。波乱の予感しかない終わり方で、続きがどうなるのかとても気になる。楽しかった!!

今回も書き下ろしがよかった

書籍版書き下ろしはミーアがまっさきに手を入れた新月地区の人々を巡る「現在」と、ミーアベルの回想によって描かれる「未来」のお話。ミーアの善行が巡り巡って孫娘のミーアベルが窮地に陥った際に心強い味方として返ってくるの、本当に胸が熱くなるし、それによって救われたミーアベルがおばあさまの教えに従って「現在」の新月地区の人々に少しでも気持ちを返したい、と思う展開がとても良かった。それにしてもルードヴィッヒの晩年、丸くなり過ぎでは?

電子書籍版特典SSはミーアの家の料理人・ムスタの一度目の生でのささやかな後悔と、現在の輝かしい栄光のお話。黄月トマトのシチューに纏わるエピソードは第一巻の一番最初でも印象的に描かれるだけに、彼の中にどんな葛藤があったのか、そしてその彼がどう変わっていったのかを知ることが出来たのはとても良かった。それにしてもこの話のムスタといい今回の本編でのエメラルダやルードヴィッヒといい、一度目の生での記憶を自覚はしていないないものの継承しているっぽい描写がとても気になる。ミーアが幼少期に「時を戻して」やり直していると思っていたけど、ひょっとして世界そのものがどこかの段階でやり直しているのか?

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ティアムーン帝国物語3〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜

 
Gilse

「ボク、お祖母さまにずっとお会いしたかったんです!」
革命鎮圧から半年。優雅に春休み満喫中の元わがまま姫ミーアの前に、未来から、自身の孫娘・ベルが現れた! ようやくギロチンを回避したと思ったのに、今度は未来で帝位の継承権争いが勃発。ミーアは毒殺され、ベルも処刑寸前らしい。発端となった聖女ラフィーナの独裁を止めるため、泣く泣く勝算ゼロの生徒会長選に出馬することに。だが、ミーアの血を受け継ぐベルは、頼りになるどころかへっぽこで……!?己の欲望全開の選挙公約を胸に、Wポンコツ姫が流転する運命に立ち向かう! 保身上等! 自己中最強! スイーツ必須! 歴史改変ファンタジー第3巻!

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アベルの国で起こった革命を阻止し未来を描き出す日記帳も消え、平和な毎日を送っていたミーア。人のいない学園でつかの間の休暇を楽しんでいた彼女は未来からやってきた自分の孫娘・ミーアベルと出会う。自分の軽率な行動をきっかけにして、再び暗黒の未来に変わってしまったらしく…!?

ポンコツ姫とポンコツ孫娘の奮闘劇!

ミーアの未来の孫娘・ミーアベルを迎えての新展開。過去生とは全く違う状況、日記の導きもなくなって未来のバッドエンドを回避するカギは孫娘の記憶のみ…という正しいルートがほとんど見えない状態で手探りで右往左往する姿が新鮮で面白かった。それにしてもミーア+アベル=ミーアベルって安直すぎて微笑ましい。

平和な未来のためには絶対に負けられないけど勝ち目などまったくない生徒会選挙、選挙させてしまったら負けるんだからどう考えてもラフィーナ本人を落とすしか切り抜ける方法はないわけだけど、ミーアが全くそんなこと考えてないまま思考がすれ違ったままラフィーナが勝手に勘違いして自爆していくのがもう清々しいし何もかも面白い。いやまあ、思惑がすれ違っているだけで冷静に考えるとミーアのとった行動は最終的には廻り廻ってラフィーナの求めている「対等な関係」に近いナニカだったのでは……と思えなくもないけど……いややっぱりだいぶ違うかな!?ミーアはそんな理由で彼女に手を差し伸べたわけじゃない(っていうか手を差し伸べてすらいない)んだよなあ。

蜘蛛の糸のような細い足場の上で繰り広げられる綱渡りをたまたま飛んできたヘリコプターで渡り切るみたいな展開、安定感があって大変に面白かったですが、その一方でどこまでも根は善人なミーアがおっかなびっくり起こした行動が、少しずつ彼女の周囲に強固な味方を増やしている…という展開が心強かったです。ティオーネをイジメていてミーアにとっちめられた貴族の子供たちが強い味方となって生徒会選挙を共に戦い抜いてくれる展開にはほっこりしてしまった。そしてミーアの親戚である四大公爵家のサフィアス、悪役にしても小物っぽいなあと思っていたら完全にミーアと同じタイプの根は善人なポンコツだったので今後に期待しかない。

次巻以降は未来のエリスの書いたヨイショ本がミーアの日記の代わりを果たすことになるみたいだけど、色々な意味で未来はどう変わってしまっているのかが気になる。というか日記を持ち歩くのはまだ違和感なかったけど、自分がヨイショされまくってる自伝を持ち歩いてるの色々な意味でハードル高いですよね。ミーア姫は強く生きて欲しい。

書き下ろしと特典SSも良かった

今回は本編も面白かったけど、後ろに入っている書き下ろしの中編と電子特典SSがすごく良かった。書き下ろしの中編は前巻で仲間になったディオン隊長の、ミーアベルの経験した未来での最期の記録。そしてディオンに命がけで逃してもらったミーアベルが過去のディオンと出逢うお話。

戦いばかりだったディオンの生が、ミーアによっていかに変化していったのかがなんとなく見て取れる未来のお話でした。そしてそんな彼の忠義に生命を救われたミーアベルが、その記憶は持っていなくても精一杯その忠義に報いようと奮闘する姿が微笑ましい。そんな彼女の精一杯につきあわされて大の苦手なディオンと必要以上に接触することになったミーアは強く生きてほしいですが。

電子特典SSは昔懐かしのゲームブック形式で綴られる、ミーアの平穏な一日。選択肢を選んでいくと色んなキャラクターとのエピソードが読めるシステムになっているのですが、これのルードヴィッヒルートがすごく良かった。一度目の生の時のルードヴィッヒが夢の中で現在のミーアと会話をするという内容なんですけど、ミーアに軽口を叩きながらも滲み出る彼女への強い親愛の情に胸が熱くなってしまった。他のキャラのルートもどれもたいへん可愛かったです。

特典SSは小さい頃にゲームブックを膝に受けた世代なのでページの作りからしてもう懐かしさしかなかったですが正直紙でページをめくれない電子書籍でこの形やられると読みづらくてしょうがないですね。選択肢で該当のページに直接飛ぶくらいできなかったのか。

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女王の化粧師3

 

「女王として、どんな国を作りたい――?」時代に翻弄された女王候補と化粧師の物語第3弾!
紆余曲折を経て、マリアージュの下で化粧師としての居場所を揺るぎないものとしたダイ。 そんなダイに最有力の女王候補アリシュエルからも化粧の依頼が舞い込む。 一方でダイは、花街時代の友人である医師ロウエンから、アリシュエル宛ての伝言を託される。 貴族と平民。身分差があるはずの二人がなぜ――。 困惑しつつもダイはアリシュエルの元を訪れるが!?

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休暇を取って街に下りたダイは、花街で懇意にしていた医者・ロウエンと再会し、彼からとある人への伝言を頼まれる。数日後、女王候補の筆頭格であるアリシュエルに招かれ、どこかギクシャクとした家庭環境や意外な素顔の一面を目にすることになり……。

夜会(の準備)楽しいなあ!!!

今回はとにかくもうミズウィーリ家で開催された「夜会」(の準備)の話が好きすぎて!!資金力に乏しいミズウィーリ家ではたった1度催すのが限界で女王選に向けて失敗できない夜会、人員も資金も足りない中でマリアージュがダイの化粧の力を駆使したとある催し──「仮面舞踏会」を思いつく、というお話なんだけど、女王候補として支援者が少ないこと、人員整理するのに致命的に人数が足りないこと、更には貴族たちが「化粧」に偏見を持っていること……などといういくつもの問題を画期的に解決していくという展開がとにかく気持ち良いし、その上でゲストたちが偏見を捨てて素直に「化粧の楽しさを味わえる」イベントになっていくのがめちゃくちゃ楽しくて、それに向けて主催するミズウィーリ家の人たちも忙しくなりながらも楽しく準備している姿を見ているのが楽しくて仕方なかった。そしてそれを企画したのがマリアージュ様というのがまた、2巻までの彼女を見ていると感慨深いものがありますね。

あとがきでも言われてたけどイベント本体はオマケすごくわかります。

楽しい夜会からの報われない恋のお話に、感情が追いつかない

楽しい夜会の後は…というかまあ夜会の前から伏線は張られていたのですが、女王候補の最有力者・アリシュエルと花街の医者・ロウエンをめぐるお話。アリシュエルの幸せを願いって国を離れようとするロウエンと、父親からの過剰な監視を受けて疲弊していくアリシュエル。お互いに深く想い合うがゆえにすれ違ってしまう二人の恋の結末に、胸が苦しくなりました。決して万人に祝福される関係ではなかったのですけど、少しでも何かが噛み合っていたらもっと幸せな結末がどこかにあったと思うんですよね。ロウエンがアリシュエルともう少し良く話し合っていたら、ダイがヒースに二人のことを打ち明けられていたら……しかもそれがすべて、二人のことを思っての行動だったことがまたとてもやるせない。

まあそれはそれとしてどうかんがえてもヤバいのはアリシュエルの父親だったので彼の人には相応しい報いを受けて欲しい…と思わずにいられない。しかしなんかこれ、結構本人はのうのうと生きてそうなのがまた本当にやるせないわけですが……。

成長したマリアージュ様のかっこよさがすごい

楽しいお話も悲しいお話もあって感情のジェットコースター的な意味で盛りだくさんだった3巻ですが、今回はとにかくマリアージュ様の成長で胸がいっぱいになってしまう巻でした。夜会の催しに関してこれまでになく積極的に周囲を引っ張っていこうとする姿には館の女主人としての成長を感じましたし、何よりも一番のライバルであり複雑な感情を抱いているアリシュエルを助け、叱咤する姿がかっこよすぎました。まだまだ軽い癇癪を起こしてダイ達を困らせるような部分もないわけじゃないけど、次期女王としての貫禄が身についてきたと言うか……いやこんなのはアリシュエルだって惚れてしまう。

それにしてもあとがきによるとこの3巻でもまだ序章でしかないのか。女王選のシステムが面白くてこれがメインのお話のような気がしていたけど、確かにタイトルは「女王の」化粧師なのでどう考えても女王になってからが本番なんですよね……次はいよいよ序章である女王選の完結編とのことで、続巻が読めるのを楽しみにしています。

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ヴィクトリア・ウィナー・オーストウェン王妃は世界で一番偉そうである

 

ヴィクトリア・ウィナー・グローリア公爵令嬢。 フレデリック・オーストウェン王子の婚約者である彼女は ある日婚約破棄を申し渡される。 だが、それを「我は婚約破棄を許可しない」の一言で 切って捨てたヴィクトリアが取った行動は―― 「フレッド。……そなたはさっき、我に婚約破棄を申し出たな?」 「ひゃ、ひゃい……」 「では我から言おう。――もう一度、婚約をしよう。我と結婚しろ」 「はいぃ……」 かくしてグローリア公爵令嬢からオーストウェン王妃となったヴィクトリアは その輝かんばかりの魅力で人々を魅了し続ける――!

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フレデリック・オーストウェン王子は男爵令嬢であるマリアと恋に落ち、婚約者である公爵令嬢ヴィクトリアに婚約破棄を言い渡した。ところが、当の婚約者・ヴィクトリアはそれを聞き入れない──どころか、どこまでも偉そうに愛を囁いてきて…。

えっこの王妃イケメンすぎ…!?

とにかく偉そうで覇王のような物言いのイケメン王妃様がその偉そうな態度と物言いに相応しい才能を持ってライバル令嬢達を蹴散らし、自分に言い寄る間男も物ともせず、国家を揺るがすトラブルを解決していくお話。

とにかくイケメンすぎる王妃がひたすら偉そうに最初は自分の身の回りから、そのうちに国に関わるような事件までも解決していってしまう姿が爽快。おおむね偉そうな態度とその場の勢いで周囲を圧倒しつつ、その反面しっかりと相手の求めるものをリサーチ・提示して納得させて味方に引き込んでいく手腕がまた見事でとにかく気持ちよかった。常にWin-Winで解決するので誰も損してない。こんなん王子じゃなくても惚れてしまう。

王妃のキャラが強烈で、しかも彼女の行動に誰も彼もが巻き込まれていってしまうため常に本編は慢性的なツッコミ不足ではあるのだけど、そんなツッコミ不在の物語に対してかなり軽めのノリでツッコミを入れてくる地文のテンポがとても良くて、そこもなかなか新鮮でした。いや、その他の登場人物も金のために王にすりよる令嬢やら農家に引力を引かれすぎてる前王の愛人やら猫とふかふかお肉が大好きなライバル令嬢やらなかなかの濃さなんですけど…!!登場人物の中ではヴィクトリアの間男を目指す術士のミカエルだけがツッコミを頑張ってた。

強い王妃×かよわい王、意外なまでにいちゃラブだった

王子フレドリックの婚約破棄騒動から始まる本作ですが、王子が「ざまあ」される展開とかヴィクトリアが王をほっぽってひとりで無双するような展開は一切なく(幾度となく「愛の暴走特急」になってる時はあった)、むしろ最初に婚約破棄を切り出した後はひたすら王と王妃(序盤で結婚した)のいちゃラブになります。ヴィクトリア、世界で一番偉そうだし覇王のような女帝だけど、そんな彼女がなんだかんだと伴侶であるフレドリックの意志を尊重するし、彼の治世をもりたてるために尽力するし、そして夜となれば可愛らしい一面を見せ……見せ…………なんかもう色んな意味で夜の描写も襲い攻めって感じでしたがフレドリック的には可愛い女に映っているのではないかと…はい!!!

そんなヴィクトリア、一見何の弱点もないような「強い女」であると同時に正確に自分の弱点や欠点も把握していて、そこを補うためにフレドリックや周囲の人の力を借りることを厭わない。囚われのフレドリックを取り戻すため、ヴィクトリアがこれまで培ってきた人脈すべてを駆使して奮闘するクライマックスがとても良かったです。

どこまでも破天荒な物語でありながら、その実その破天荒さがきめ細やかなリサーチや正確な自己分析によって補強されているので気持ちよく読めるんですよね。あと誰も不幸にならないので安心して読める。楽しかった!小説家になろうのほうで続編も予定されているようなので、続きをとても楽しみにしています。

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「好きラノ 2021年上期」投票します。

投票〆切:7/24(土)24時、結果発表:7/25(日)21時(予定)。あなたのおススメを投票してみませんか?

今回も参加させていただきます〜!!

七斗七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」→感想
【21上ラノベ投票/9784040741116】
ストゼロクズな「自称」清楚系Vtuberが主役の会話劇。企業系Vtuberの女の子たちの仲の良いやり取りと、コメント欄で繰り広げられるテンポの良いの会話劇がとても楽しかった!2chの面白スレまとめを読んだような読後感が新しいようでどこか懐かしい。
紫大悟「魔王2099 1.電子荒廃都市・新宿」→感想
【21上ラノベ投票/9784040739588】
SFと異世界が融合を果たした近未来の東京で繰り広げられるファンタジー系サイバーパンク。一度は力を失った魔王が配信者として信者を増やすことで力を取り戻していく設定が面白い。あと勇者と魔王の男同士の決して馴れ合わない巨大感情、推せます。(2巻もとても良かった)
小田一文「貴サークルは“救世主”に配置されました」→感想
【21上ラノベ投票/9784815608873】
マイナージャンル弱小サークルの主人公が未来を救うため、未来からやってきた戦士なヒロインと共に「100部完売」を目指す。マイナージャンル同人サークルの描写が絶妙で、提示される目標数値がまた絶妙だった。同人ものの描写のリアルさにこだわりを持っているマイナージャンルのオタクには是非読んで欲しい。
香坂マト「ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います」→感想
【21上ラノベ投票/9784049136883】
無害なはずのギルド受付嬢による理不尽な暴力(残業の夜に天から貰った超絶スキル)がダンジョンボスを襲う!!という展開がとにかく爽快。そんな彼女の胸のうちに秘められた冒険への恐れと、強引な行動の裏に隠された「もう誰も死んでほしくない」という思いが、とてもアツかったです。
コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!」→感想
【21上ラノベ投票/9784049137903】
ジャンルの違う社会人オタクカップルの偽装結婚もの。社会人として、そしてオタクとしてどちらの生活も充実している二人の適度にソーシャルディスタンスの保たれた生活がとても読んでいて心地よく、お互いに気遣いを欠かさない生活で自然に距離が縮まっていく関係性が大変良かった。
栗原ちひろ「死んでも推します!! 〜人生二度目の公爵令嬢、今度は男装騎士になって最推し婚約者をお救いします〜」→感想
【21上ラノベ投票/9784065241172】
死なせてしまった「推し」を守るため、令嬢から騎士へと華麗に転身した主人公による「やりなおし」もの。とにかく随所に挿入される「推し語り」が健康によく、その合間にそれとなく匂わされる不穏な気配にワクワクした。「推し」でありながら恋愛、な主人公カップルの恋路の行方も楽しみ。
羊太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典19」→感想
【21上ラノベ投票/9784040741475】
最終決戦目前、次々と明らかになる真実とグレン達の成長がどこまでもアツく、大切な人との別れに涙が止まりませんでした。本当に面白かった…!!ロクアカは本当に11巻以降どこまでもストップ高で面白くなり続けているので、ちょっと長いけど今からでも読んでみて欲しい…。

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ロクでなし魔術講師と禁忌教典19

 

幾年の時を超えーー伝説の時代に、グレンが駆ける
ついに姿を現した魔王から逃れ、導かれたのは超魔法文明時代。失踪したセリカを取り戻すため、伝説の時代を駆け回るグレンとシスティ。圧倒的な実力差戦いに巻き込まれる2人は、この時代で新たな力を手に入れる!?

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失踪したセリカを追って《星の回廊》からいずこかへと飛んだグレンとシスティーナ。そこは約5800年前の超魔法文明時代で……。

「メルガリウスの魔法使い」の謎が今明かされる

いや〜〜本当に面白かった!!童話「メルガリウスの魔法使い」で描かれる“魔王”と“正義の魔法使い”の最終決戦にセリカを追ってタイムスリップしたグレンとシスティーナが現れる…というお話。

敵は魔王ティトゥス=クルォーとその配下にいる魔将星たち……ということで、現代で全く歯が立たない状態だった魔王との決戦はともかく、魔将星との戦いはグレンたちにとって何人かは「一度戦ったことのある相手」でもあるわけで…古代魔術すら使えない、魔術師にとって虐げる対象である『愚者』のふたりがこれまでの戦いの経験や「メルガリウスの魔法使い」の内容を手がかりに下剋上していくのがアツかったです。雑兵すら古代魔術を使うような時代ではシスティーナの魔術師としての才能も役に立たず……と、一見無茶な戦力差があるようで、下衆な魔術師達を相手になんだかんだと互角以上に渡り合っていく姿が爽快でした。

特にシリーズ前半のクライマックス、『フェジテ最悪の三日間』で戦った《鉄騎剛将》アセロ=イエロとの戦い(グレンたちにとっては再戦)がめちゃくちゃ良かった!!もう完全に攻略法までわかっている相手とはいえそう簡単に隙きを見せては貰えず、必殺の一撃を届けるための最後の一手をグレンの行動・言葉によって奮起させられた民衆達が担うという展開が熱い。というかそもそも、物語の中でずっと描かれてきた『正義の魔法使い』と、めちゃくちゃ不自然な登場の仕方する『魔法使いの弟子』の正体がコレだなんて本当にズルいじゃないですか……。

この他にもグレン達がこの時代で取った行動、彼らが目にしたものが確かに5800年後の「現代」に確かに繋がっているという描写がこれでもかというほどあり、また過去と照らし合わせることでこれまで物語の謎とされてきた様々な部分が紐解かれていくのが最高に気持ち良い。あと個人的に“イグナイトの矜持”の源流がそれなの、本当に泣いてしまうな……。

グレンとシスティーナ、それぞれの成長が熱い

無事にセリカと合流し、魔王との最終決戦の地に向かうグレンたち。セリカの前には魔王ティトゥスが、そしてシスティーナの前には最後の魔将星《風皇翠将》シル=ヴィーサが立ちふさがる。

現代では手も足も出なかった魔王と唯一情報のない、最後の魔将星。現代知識チートが効かない二人に対してグレンとシスティーナの二人がそれぞれの限界を超えて成長し、セリカに対してあまりにも不利な最終決戦の場に介入し、勝利を掴み取っていく展開が熱かった。シル=ヴィーサは色々な意味で、システィーナを本当に殺すつもりはなかったわけではありますが……。

最後の展開は中盤くらいからはっきりと匂わされていたのでなんとなく予想がついていたけど、グレンの最後の呼び方で泣いてしまったと言うかいやそれはもうほんと反則では………前巻であれほどグレンにとってセリカがいかにかけがえのない存在かを描かれた上でのこの展開は本当に泣いてしまう。そして5800年前からグレンに託された最期の親心でもう一回泣いてしまった。本当に今回の話、中盤から泣きっぱなしだったんですが……。

セリカが記憶を失っていた理由とその正体、ナムルスとグレンの関係、そして初期のナムルスがルミアを憎んでいた理由……などなど、とにかく物語の核心部分が次々と明かされる展開で楽しかった!!いよいよ次巻は舞台を現代に戻して、魔王との最終決戦。グレン達が得た新たな力が戦局にどのような力をもたらすのか、というか現代は色々な意味でどうなってしまっているのか。本当に続きが楽しみです。

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ロクでなし魔術講師と追想日誌 8

 

初めて会ったその人は震える程に恐ろしく、本当に優しい人だった
フェジテのみんなが不在のなかで、グレンの家にルミアが住み込み!? まるで新婚夫婦な2人きりの生活に、ドキドキが止まらないルミア。そして思い出す。初めてグレンと出会った、3年前のあの日のことをーー

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特務分室の栄光を描く前巻の短編集の直後にこの「狩られる側から見た特務分室時代の冷酷な魔術師殺し・グレンの話」入れるのマジで温度差がすごい。ラブコメからちょっといい話まで、今回もバラエティに飛んでいて楽しい短編集でした。

グレンとハーレイ先輩をもっとセット売りしろ

どの話もすごく良かったんですけど、グレンが馴染みの店からの依頼で幻のキノコ「ゴルデンピルツ」を探すハーレイの案内人をする『キノコ狩りの黙示録』が最高に良かった。システィーナ達を巻き込んで、醜いキノコ争奪戦と化していくのが最高にカオスだし、一触即発どころか最初から最後まで喧嘩しっぱなしのふたりの様子がめちゃくちゃに面白かった。仲悪すぎ通り越して仲良すぎか!?

そして、そんな犬猿の仲のふたりが共通の目的を理由に手を組んだら最強の相方に……って普通に大好きな奴なんですが!!???いやほんと、このふたりにここまでのポテンシャルが秘められているとは思いもしませんでしたよね……ハーレイ先輩、バトルの時は割と後方で生徒たちを護りつつ戦ってること多いから、最前線で問題の解決に勤しむグレンと手を組むこと、殆どないもんな。もっとこのふたりセット売りして欲しい(グレンにはアルベルトという最強の相方がいるし本編で組ませるのには限界があるかもしれないけど)

システィーナの「趣味・小説」の設定、本編ではこれが初出か〜!

趣味で小説を書いているシスティーナがひょんなことから自作の主人公と同じ名前の女性・ミスティナと出会い、彼女に小説の続きを見せることになってしまう短編『貴方に捧ぐ物語』も良かった。はじめてのファンに舞い上がり、読者の意見を意識しすぎて本来書く予定だった結末を捻じ曲げてしまうシスティーナがミスティナの本当の気持ちと家の事情を知り、彼女に自分のような後悔をさせたくないと奔走する姿が印象的でした。

ここで今回の件とは全く関係ないのにミスティナを救うために手を貸してくれるグレン先生がめちゃくちゃ教師してるし、どこまでもシスティーナの思い描いた「ヒーロー」そのものなんですけど、それだけにシスティーナの書いてる小説の内容がほぼグレン×自分の事実をベースにした妄想恋愛小説だったり、その小説の「取材」と称してグレンに催眠術を掛けてイチャイチャしようとするシスティーナのやらかしぶりが輝いちゃってますよね。いやあ恋する乙女はバカだなぁ〜〜!!(褒めてる)

グレンとルミア、初めての出逢い

書き下ろしの過去編『再び出会うその日まで』は3年前、まだフィーベル家になじめていなかったルミアが特務分室時代のグレンに助けられたときのお話。このエピソード、原作初期から開示されてはいましたが……思った以上に血なまぐさい話だ!!というか前の短編集であれだけ特務分室時代の光のようなエピソードをやっておいて、今回は打って変わって外道魔術師達の視点から特務分室の冷酷無比な魔術師殺し、《愚者》グレン=レーダスが任務で敵を殺しまくるエピソード出してくるの温度差がすごくて風邪引く。それにしてもどう考えても助かる余地のない状況から帰還してくる特務分室時代のグレン、異能生存体系の異能持ってそうだよなあ……。

母アリシアの真意を知らぬまま親子の縁を切られてフィーベル家に居候することになり、なかば自暴自棄になっていたルミア。システィーナと間違えられて誘拐されてしまった彼女が「どういう訳か」子供の誘拐事件なんかに駆り出された特務分室時代のグレンと出会い、冷酷な殺し屋という前情報とは違いすぎるグレンの優しすぎる本心と葛藤に触れて本来の優しさを取り戻し、母子の縁を切られる原因となった自らの異能とも折り合いを付ける…という展開がとても良かったです。ラストシーンで改めて第一巻のいちばん最初、ルミアがグレンと“再会”するエピソードがルミア視点で描かれるという構成がまた実にニクくて、ホロリとしてしまう。

ただ、彼女が本来の自分を取り戻すきっかけはグレンの言葉であったけれど、ルミアが再び人間を信じることが出来るようになったのは自分を本当の「家族」として受け入れてくれたフィーベル親子の存在が物凄く大きいんですよね。ルミア→グレンへの思いの強さを改めて感じるのと同時に、彼女がシスティーナやフィーベル家の人々をどれだけ大切に思っているか、その一端が覗けるエピソードでありました。しかしわがまま放題でシスティーナのことが大嫌いだったルミア、何度言われても全く想像できないな……。

ところで、この話を読んだ上で改めてこの巻の最初に収録されているセリカ&システィーナ&リィエル不在の隙にグレンの家で押しかけ女房するルミアが描かれるエピソード『もしもいつかの結婚生活』を読むと、別の意味でニヤニヤできてしまいますね。女王としての権限を利用して軽率に娘の恋路をゴリ押ししようとするルミア母・アリシアに振り回されるルミアの姿を見ていると本当に和解出来てよかったね、という気持ちに……。

いつもとは違う環境に舞い上がってやたらと大胆になってしまうルミアも微笑ましかったですが、合間に襲来してテンプレすぎる安いツンデレとメシマズを振りまくイヴ=サンも最高でした。システィーナさんマジでグレン×自分の妄想恋愛小説書いてる場合ではない。

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魔王2099 2.電脳魔導都市・秋葉原

 

伝説の魔王――奇怪なる進化を極めた“秋葉原”に君臨する!
秋葉原市。革新的な発展を続ける“電気街”と古き伝統を重んじる“魔法街”が対立構造を呈する未来都市に、魔王・ベルトールは降臨した……超名門学園への留学生として。新たな舞台を駆ける、未来の魔王譚第二幕!

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裏切り者・マルキュスの脅威を排除した魔王ベルトールは、いまだ消息不明の六魔侯を探すため、彼らの居場所を示す財宝『魔侯録』を探すことに。秋葉原市の魔法学園地下にある宝物庫にそれが保管されていると知り、高橋・マキナと共に留学生として学園に潜り込むが、宝物庫の封印を解くためには秋葉原市を統べる御三家が持つ秘宝・王徴(レガリア)が必要で……?

「魔法」と「科学」が対立する街・秋葉原

相変わらず近未来SFとファンタジーが融合したような世界観が面白い。新宿は文字通り魔法と科学が融合した混沌の街であったけど、今回は魔法学園を中心にしてファンタジー世界の古き伝統を重んじる“魔法街”、現代日本の秋葉原の趣きを色濃く残す革新的な“電気街”という正反対の特徴を持つエリアが対立を続ける街。描写としてはあまり多くないですが、昼の魔法学園パートと放課後の電気街での散策パートのギャップがとても楽しかった。

そんな中で焦点が当たるのが秋葉原の「御三家」の一角・レイナード家の当主の少女山田・レイナード=緋月。様々な事情から学園内で孤立し、自分自身も周囲の人間に対して壁を作っていた彼女がいろいろな意味で破天荒で内部の慣習にとらわれないベルトール達に少しずつ心を許していく姿が可愛かったです。また、そんな彼女を受け止める魔王のカリスマ性がまた凄く良いんだよな。緋月の一件もそうですが、生徒たちが人質に取られた一件を収めたときの手口が実に最高。緋月への発言を巡って一度は決闘までした男・アルバートとのやりとりが個人的に好きすぎるんですが、一度は完璧に自分を負かした相手に絶対に失敗できない場面であんな形で声をかけられたらそりゃアルバートだって惚れちゃうよなあ(惚れたとはいってない)

物語の最後に緋月が選んだ道は自らが預かった街からの逃避、両親や大切な人たちを手に掛けた者達への「復讐」という、決して前向きとはいい難いなにかであったけど、そんな彼女の選択をも受け入れ、見守ろうとする魔王の姿が印象的でした。

相変わらず魔王と勇者の関係性が最高

勇者グラムに「不老」を授けた恋多き女神・メルディアとの対決!ということで、そして序盤からめちゃくちゃ勇者さんの存在が匂わされていてこれは終盤でまた絡んでくるな!?と思っていたのですが、いやスルーするんか〜〜〜い!!!あれだけお膳立てされておいて「あっちに行ったらなんか面倒なことに巻き込まれそう」っていって全スルーしていく勇者さん御一行がマグナムドライすぎて最高か!!??テンションめちゃくちゃ上がってきた。

そんな感じで勇者さんとニアミスしてるとはつゆ知らず、勇者のいないところで女神メルディアに対して「勇者グラムのこと一番わかってる余」アピールするベルトールさん、グラムのこと大好き過ぎてヤバイ。割としたり顔で根拠のないグラムの内心とか語っちゃってるけど、なんか最終的にしっかり核心を付いたこと語ってるのが実にズルいんですよね。ていうかひょっとして勇者と魔王、この調子で暫くすれ違い続けるつもりなのか〜〜〜最高では〜〜〜!?

続きが楽しみ(魔王が配信してるだけの短編読みたい)

物語本線としては秋葉原を2つに割る全面戦争を阻止し、緋月という新たな仲間を得て、『魔侯録』をも手にした魔王達。しかしその反面、マルキュスすら下っ端でしかなかったという大きな敵対組織《新生教会》の姿が明らかになり……という、今後への種蒔きとしての一面も強かった巻。果たして残った六魔侯のふたりは仲間となってくれるのか、《新生教会》の目的とは何なのか、魔王のチャンネル登録数はどこまで増えるのか。色々な意味で続きが気になる終わり方で、続きが楽しみです。

ところでこの話、配信のチャンネル登録数が魔王の力の源になってる割に配信関係の描写があまりにもおざなりというか、短編集に定評のある富士見だしそろそろドラマガあたりで魔王ベルトールがただ配信するだけの短編とかやってくれてもいいとおもうんですがその辺どうなんですか??作者さんが配信モノの描写苦手とかそういう感じなら他の作家にスピンオフ書かせてもいいと思うんですが(無茶振り)。

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ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜

 

『雛宮』――それは次代の妃を育成するため、五つの名家から姫君を集めた宮。 次期皇后と呼び声も高く、蝶々のように美しい虚弱な雛女、玲琳は、それを妬んだ雛女、慧月に精神と身体を入れ替えられてしまう! 突如、周囲から忌み嫌われ、鼠姫と呼ばれるそばかすだらけの慧月の姿になってしまった玲琳。 誰も信じてくれず、今まで優しくしてくれていた人達からは蔑まれ、劣悪な環境におかれるのだが……。 「息切れしない、失神もしない……。なんて健康な体でしょう! う、うらやましい……っ」 誰もが羨む玲琳は、隣り合わせの"死"とずっと戦ってきた鋼メンタルの持ち主だったーー!? 大逆転後宮とりかえ伝、堂々開幕! コミカライズも同時発売!

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病弱であること以外全てが完璧な雛女・玲琳が落ち目の雛女・慧月の呪術によって体と精神を入れ替えられてしまう。蝶よ花よと周囲から守られる生活から一転して自分(玲琳)を害した罪で処刑の危機、それを脱しても周囲の誰からも完全に見捨てられた粗末な生活を送ることに──なるのだが、当の玲琳は健康な肉体を得たことに大喜びで…!?

儚げ美少女、メンタルは超合金

楽しかった…!儚い見た目、病弱という言葉から感じるイメージからは正反対に、どこまでもへこたれない主人公が自分に向かってくる逆境の数々を「体力がもったいのうございます」と言ってものともせず、健康な肉体に歓喜しながら畑を耕して自給自足の生活を送り、唯一残された慧月付きの侍女を構い倒しながらも没落生活をエンジョイするのがあまりにも楽しい。

それもそのはず、「病弱」なんて言葉では済まされないほどの虚弱な肉体を持って生まれた彼女は、肉体が入れ替わる前から常に明日をも知れぬ生活を送っていたのだった。常に死と隣り合わせで生きてきた彼女にとって処刑による生命の危機だってただの「日常」と何ら変わりがなかったし、病弱すぎる故に常に周囲の人間たちから体調を気遣われ、自分ひとりで出来ることなど殆どなかった彼女にとってむしろほぼ自分ひとりでなんでもやっていける没落生活は長年夢見た「自由に満ちた生活」ですらあり。異常なまでの前向きさの合間に覗く“玲琳”時代の過酷な生にホロリとしてしまう。

「努力」と「根性」は全てを解決する

一方、そんな玲琳に成り代わるため呪術で肉体を入れ替えて全てを手に入れたはずの慧月の方も当然ただでは済まないのだった。周囲の目を引くための仮病では?と疑っていた玲琳の「病弱」が実は普通の人間ではまともに立っていることもままならないような重いものであると知り、普段の“玲琳”のたおやかな姿はそんなポンコツな身体に限界を超えた無理と努力を重ねさせてなんとか成り立っていたことをも知ってしまう。周囲の女官や医者にちやほやしてもらえる…と思っていたら、女官達が元気よく手習いの道具を持ってきて腰を抜かし、体調を崩せば自分で薬を調合しろといわれて呪術で本物の玲琳に泣きつく羽目になったり……玲琳はなにもしていないのにいい感じに自業自得、ざまあ展開になってしまっている展開がぶっちゃけ面白い。

すべての才能を持って生まれてきた運の良い女、病弱も併せ持ち周囲からチヤホヤされていて羨ましい……と思っていたら文字通り血の滲むような努力でその人となりが形成されていたというのがなんとも皮肉なんだけど、華やかな後宮モノでこんなにも「努力」と「根性」をゴリ押ししてくる話があっただろうか。発想が体育会系すぎる!!

しかし、努力と根性でギリギリ生きてるみたいな玲琳の過酷な生に触れ、涙目になりながらそれでもなお「誰も見てくれない慧月より皆に気にかけてもらえる玲琳が良い」とその座にすがりつこうとする慧月には生き汚さというよりもある種の「努力」と「根性」の文脈を感じてしまう。この入れ替え劇だって前向きなものではないとはいえ慧月の必死な努力の成果なわけだし、よくも悪くも努力の方向性を間違えなければ再起できそうと思ってしまう。そしてそんな彼女を、「努力や根性を愛する」血族の玲琳はまんざら悪くないと感じていそうな気がするんだけどどうだろう。

どうにも事件の黒幕がいそうな雰囲気だし、慧月も玲琳も幸せになれる終わり方になるといいなあ。

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