今日もだらだら、読書日記。

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歴史に残る悪女になるぞ 7 悪役令嬢になるほど王子の溺愛は加速するようです!

 

2024年10月 TVアニメ放送スタート★ 歴史に残る大悪事【王宮爆破計画】決行──!
恩師ウィルを陥れた王太后ジュリーが、本当にウィルを憎んでいたのか疑念を抱いたアリシアは、オージェス商会を訪れ彼女の情報を探る。 本心を知りたい――その一念でアリシアは兄達を巻き込んだ【王宮爆破計画】を立てジュリーを誘き出すことに!  しかしその代償は、デュークとの決別。 「デューク様、愛しています」 アリシアの覚悟にデュークは!?

ウィルおじいさんの目をえぐってロアナ村に追放したり、祖父達を国外追放した張本人である王太后ジュリー。全ての元凶であると思われていた彼女の存在だが、亡くなったウィルおじいさんの日記を読んだアリシアは彼女の行動にとある疑念を抱く。彼女の真意を知るため、王宮に乗り込もうとするが……。

バトルに恋愛に、とにかく激動の一冊だった

まさかの王宮爆破計画、最大の「敵」になりそうな王太后ジュリーとの対決、デュークとの対話、そして……と、とにかくいろいろな意味で激動すぎる1冊でした。王宮爆破計画、なんだかんだで被害ゼロだったしデュークの溺愛パワーやらなにやらでノーカンになると思ってたんですけど予想以上に後の影響が大きかった。いやまぁ、そのへんの処分に関しては本人ノーダメみたいな顔してるのが実にアリシアらしいんですけど……。

最愛の子供たちを護るために敢えて「巨悪」として振る舞うジュリー様の姿、その不器用な優しさはアリシアの目指す「悪女」と重なる部分も多いように感じて、でも決して同じものではなくて。ずっと謎だった彼女の真意を唯一アリシアだけが感じ取ることが出来たのもさもありなんでした。このふたりの対話、とても良かったなあ。

全てを捨てる覚悟で挑んだジュリーとの対決の直前、アリシアがデュークに対して初めて見せたほのかな恋心が大変に愛しい。前巻の恋愛トーク思った以上に効果あったんだな。今回の処分の件もあって本人達の思いとは裏腹に一前途多難感が出てきた感もあるけれど、実質父親公認みたいな状態ではあるし、この2人ならなんとかしてしまうのでしょうという安心感が凄かった。

あと今回、ことのほかウィリアムズ家の三人の兄達にスポットがあたってたのがとても良かったです。いやなんというかわちゃわちゃしてて可愛いなこの兄妹……。リズの無意識下での影響がなければこんなに仲が良かったんだな……。

吹っ切れたキャザー・リズがやっぱ最高〜!!!

王宮爆破事件の処罰もなんのその、ウィリアムズ家に戻って家族との対話を済ませ、改めてラヴァール国へ向かおうとしていたアリシア。ところが、翌朝唐突に彼女の姿が消えてしまう。ジルやデューク一派やヘンリ達は彼女の痕跡を捜して奔走することに。

突如姿を消したアリシアを追う中で改めてそれぞれのやりたいことを自覚する面々の姿が印象的だったのですが、なにより彼らに助けを請われたキャザー・リズの反応が良かった!色々と吹っ切れてから彼女がただの「良い子ちゃん」じゃない顔を見せるようになったのが凄く好きだし、アリシアの見ていない所でバリバリに彼女をライバルとして意識しまくっているのがとても良き。今回は特に改めて「聖女」としてリズが背負っているものの大きさの一端に触れる展開もあって良かった。いやほんと、ここ何冊かでどんどんキャラクターとして深みが出てくるな彼女……。

そんなわけで次巻は改めてウィルおじいさんのアレコレで中断されたままだったラヴァール国編再開?これまでとは少し勝手の違う状況でアリシアがどう動くのか。別行動で動くであろうジルの動向も気になるし、次巻も楽しみです。

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シリーズ感想一覧:歴史に残る悪女になるぞ

妹の配信に入り込んだらVTuber扱いされた件1

 

第3回一二三書房WEB小説大賞銀賞!
一癖も二癖もあるVtuberたちとの非日常コメディ開幕!
その日、名家の令嬢設定のVtuber・春風桜は配信事故を起こした。 配信中に寝落ちして、そこにやってきた家族の音声が入ってしまうという、よく聞く配信事故だ。 そのVtuberが俺の妹だってことと、その家族ってのが俺であること、そしてその配信がきっかけで春風桜の「兄者」として俺が配信に巻き込まれたことを除けば。 叫ぶオタク女子、聖女で酒乱な雪女、ゲーマーの魔王――これは、そんなヤバい奴らと俺たち兄妹の賑やかな日常だ。

寝落ちしている妹の部屋でゲームをやっていたら、翌朝妹にキレられた。どうやら妹は企業所属のVtuber・春風桜として活動していて、昨夜は配信切り忘れたまま寝落ちしていたらしい。そうと知らずに妹の配信画面に自分のプレイが映り込んでしまっていたというのだ。妹に言われるまま、なしくずしに彼女の配信に「兄者」としてゲスト出演する羽目になるが……!?

ハイテンションで容赦のない兄妹の会話劇が面白かった

妹の配信事故で映り込んでしまったことをきっかけに、半公式のVtuberみたいな形で妹の配信に参加する羽目になってしまった兄を主人公にしたVtuberもの。アホの子でボケ担当でいじられキャラな妹とオタクコンテンツに対して妙にハイスペックで基本ドSなツッコミ担当の兄、そこに個性豊かすぎる同じ企業のVtuber仲間達が加わって……ハイテンションで繰り広げられる会話劇が面白かった!細かく気になる部分はあったんですけど、会話劇の面白さ極振りで押し切るみたいなお話だったな。

兄と妹の容赦なきツッコミの応酬、最近ではなかなか見られなくなってしまったノリで新鮮に楽しめました。妹(や仲間のVtuber達)が兄者にやり込められてるとリスナーが自発的に身代金をスパチャしてくる流れにいちいち笑ってしまう。昨今の判定だとかなりギリギリのところを攻めてるな……とも感じたんですけど、口で何を言おうが兄妹の気のおけない関係性と仲の良さは伝わってきたので個人的にはアリ。まぁ本人になんのメリットもないのに妹者に乞われれば配信に参加してくれる兄って多分いい兄だと思うんですよね(真意が掴みづらい部分の多い主人公ではありましたが)

妹のVtuber仲間達とのわちゃわちゃ感も良かった!先輩であり妹の一番の被害者でもあり兄の被害者でもあり気がつけば兄の嫁扱いされているスミレ先輩、唯一の男性Vであり兄者の通り名と同じ「魔王」を自称してたせいで割を食い気味な夜斗、妹の同期でディープなアニオタでもありすぐ暴走する紅葉。兄者のトークスキルが高いからなのか誰と絡んでいても別の面白さがあって楽しい。いや紅葉とのアニオタ会話はディープすぎて結構ついていけないネタ多かったけど……知ってる作品のネタでも普通に伝わらないネタあって、この手のメタネタやるのって本当に難しいなと思いました。

配信で知り合った夜斗と兄者が配信外ではゲーム友達になってる設定とかめちゃくちゃ良かったな。ゲーム強者の兄者が唯一本気出してぶつかりあえる相手でもあるようだし、良い悪友ポジションになりそうでふたりの今後が密かに楽しみだ。

話は面白かったけど、本編以外の部分で粗が目立った

これ本当に物語とは関係ない部分への感想なんですけど、明らかに「章題」として書かれている行を空行すら入れずに普通の平文レイアウトで出してくるのマジでどういう判断??分かり辛いにもほどがある。章題=動画タイトルになっているのでまあ【】文字とかで見分けはつくんですけど、それでも平文で出てくると場面転換が分かりにくくて混乱する。作品が作品とは一切関係ない所で損をしているのしんどい。作者が改行嫌い系の人なのかとおもったけど、Web版確認したらちゃんとこまめに空行入れて小見出しとして読めるようにしてて、編集部側のやらかしっぽいんだよな……。

あと、これはWeb小説原作の書籍化ではありがちな不満なんですけど、ページ数の都合だけで尻切れトンボに巻が終わってしまうの本当に消化不良なのでやめてほしい……本作の場合、兄者がゲームが上手すぎて友達と遊ぶ時に本気を出せない/自然にセーブしてやってる……でもVtuber/配信者としてなら本気を出してゲームしてもいいんじゃない?それが受け入れられる世界なんじゃない?みたいな展開がそれとなく出て来てて、それを周囲も後押しするみたいな流れがあって凄く個人的にそのへんの話もうちょっと読みたかったんですけど……会話劇としては面白かっただけにスッキリまとまらないのが残念でした。Web小説ってそんなもんだよなとおもう反面、書籍化するなら改稿するなり書き下ろし追加するなりエピソードの順番を変えるなりして1冊である程度纏めてほしいとも(この辺も編集部の手腕の見せ所だと思うんですけどね……)(いやでも原作からして特に問題解決とかはなくてずっとこういう話、という可能性はあるので、好みの問題ではあります……)

ところで妹のチャンネル登録者数が百万人とかになっててガチでヤバかったので兄者は面倒くさがらずに企業所属するなりなんなりしてお金をもらった方が良い。本編内で散々断ってたけどそれにしても慈善事業でやるには金額がヤバいことになってそう。

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アラサーがVTuberになった話。サブチャンネル

 

祝、シリーズ2冊同時刊行! コミックスも出るよ!
その日、年の離れた兄が路上で倒れて緊急搬送されたという一報が届いた。──『こうして兄はVになった』  休日の兄は一体何をしているのか? その謎を探るため神坂雫は兄の尾行を開始する。──『ある日の兄妹』  親バカイラストレーターmikuriが秘める、長女との悲しき思い出とは……。──『mikuriの親心』  掲示板の名物キャラ、駄馬とガチ恋ネキの意外な素顔が判明!? ──『とあるリスナーたちの休日』  1?3巻までの特典小説に書き下ろしを追加した全22編を収録!

年の離れた兄が過労で病院に緊急搬送されたという知らせが妹のもとに届いた。兄はブラックだった会社を辞めて実家に戻ることになったが、家族の居ないところでは抜け殻のようになっている兄の姿を見ると不安にかられてしまう。そんな時、推しのVtuberが所属する「あんだーらいぶ」が新人募集していることに気がついて、オーディションを受けるように薦めてみたが……?

店舗特典、どんどんまとめていってくれ(切実)

店舗特典小説やWebに掲載された発売記念短編、書き下ろしも収録した番外編短編集。アラサーVの店舗特典、割と骨太な内容が多かったし流石に追いきれてないのでこの調子で定期的に書籍にまとめていってほしいですよろしくお願いします。特に4巻の店舗特典小説とか分量がエグかった上に実質本編みたいな内容まで含まれてたので……。

妹・雫ちゃん視点から兄のVtuberデビューを振り返る「こうして兄はVになった」を皮切りに、周囲の人々の視点から3巻までの物語を綴っていくお話が興味深かった。特に月太陽コンビの視点、ほとんどのお話が本編で神坂視点から語られたエピソードを更に月/太陽両者の視点から描き直すので1つのエピソードに対する情報量が増える増える。

mikuriママの視点から神坂兄妹との出会いを振り返る「mikuriの親心」が大変良かったです。約束を果たせないまま突如として姿を消した「娘」、彼女と入れ替わるようにデビューして常に炎上している「息子」とそんな息子が溺愛している妹でありmikuriママにとっては二人目となる「娘」。Vtuberから距離を置こうとしていた彼女が躊躇いながらもかつての「娘」に出来なかったことを今度こそしてあげたい……と少しずつ神坂に入れ込んでいく姿が印象的で、同時に、本編では明かされなかったお誕生日メッセージの音声コメントでのやりとりにほっこりしました。それはそれとして神坂のマンスリーボイスはコミカライズの方でも改めて言及ありましたけどどんだけ破壊力高いんですかね。ギャップ萌えって怖いな!!!

個人的にお気に入りなのがあんだーらいぶスレのコテハン組の日常を描いた「とあるリスナーの休日」「とあるリスナーのその後」。というか3巻から続くガチ恋ネキ&駄馬くんコンビの話がめちゃくちゃに好きなんですけど、駄馬くんのバックグラウンドで予想以上におヤバい旧家の設定お出しされてめちゃくちゃ喜んでる。駄馬くん、本編のガチオタぶりと今回明かされた人物像を合わせると無限の味わいあるよね。そして「クラスメイトの推しが先輩だった件」を読んでたら思わぬ人物がコテハンコンビに合流しそうで今から楽しみにしてます。

いや、最近マイクラを始めたのでマイクラネタ周りのネタが読みたくて2巻を読み返してたんですけど、一連の短編を読んでからこの辺の話に舞い戻ると掲示板周りの話で凄いニヤニヤできちゃうんですよねえ……駄馬くんの自称美少女発言……コミケ会場に現れた謎の車椅子お嬢様&メイドの話……。

脇役視点の短編だからこそ改めて気付かされることが多かった

普通に短編集としても面白かったんだけど、いつもの神坂の一人称でないからこそ見えてくる事実も多くて、面白かったなあ。月太陽コンビと雫ちゃんのつながりとか、案外神坂視点からだと見えないもんですね。あと柊兄妹のご実家が結構良いところではないか疑惑とか。

特に印象深かったのが雫ちゃんの視点から兄の一日に密着する「ある日の兄妹」で、いややっぱりこの兄妹相思相愛ブラコンシスコンすぎるんだよなあ……というのはさておき、どうしても気になってしまったのは兄の不器用すぎる生き方に対しての『そうした方が都合が良いという結論に至ってこういう生き方をしているのかも』というコメント。過去に相当ヤンチャしてたというのは本人の口からも何度か語られていますが、本当に過去に何があったと言うんだ。いや本心からやってるんじゃなくてある程度意図的に「あの」キャラ作りをしちゃってるんだとしたらなんというか思ってたのの何倍も闇が深くないですか……何が彼をそこまで追い詰めてしまったというのか。

神坂の女性関係も含めた過去、mikuriママの最初の「娘」、柊先輩の元同期なんかも場合によっては今後本編に登場してくる可能性もあるのかなあとか考えてしまっていたけどどうなんでしょうね。4巻の店舗特典で出てきた新戸先輩と社長まわりの話とかもなかなか意味ありげな内容多かったんだよなあ……今後出てくるのか、出てくるとしたらどういう形で本編に絡んでいくのか、とても楽しみです。

それにしてもこれはもう普通に聡い読者さんがたなら気づいている部分だと思うんですけど、この作品ってVtuber組はもちろんそうなんですけど登場人物全員が絶妙に本名を避けて描写されているんだなあ。Vtuberとしてのキャラクターネーム、作家としてのペンネーム……雫ちゃん&真ちゃん&月太陽コンビとか実家や学校での描写もあるのに巧妙に本名を呼ばないように書かれてることに気づいて、その自然さに唸ってしまった。すごく今更だけど神坂が妹のことを「マイシスター」呼びするのとかもそういう意図なのか……いや何も違和感持ってなかったわマイシスター呼び……シスコンだし……。

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アラサーがVTuberになった話。5

 

祝、シリーズ累計10万部突破!
私が神坂怜としてデビューして早8ヶ月。SNSに一通のDMが届いた。なんとその送り主は「狂犬」と呼ばれている女性VTuber、犬神狂衣嬢。これはまたもや燃えてしまうか......と思いきや、気づけばものすごく懐かれてしまっていた!? そして彼女が元プロゲーマーの天羽終里氏の友人であると知ったことから、3人でコラボ配信をするなど、ようやく平和で楽しい配信ライフが戻ってくる。だがそんなある日、今度は朝比奈先輩と御影くんが外部の騒動に巻き込まれ炎上してしまった! このままでは直後に控えた柊先輩の無料3D配信イベントに2人が出演できなくなると考えた私は、とある無茶な方法を思いつくのだが……。

雫の友人・十六夜真嬢の炎上騒ぎに端を発して久しぶりにコメント欄に荒らしが湧きまくるキナ臭い状況の中、神坂怜のもとに一通のDMが送られてくる。お相手はいつぞやのパコガワ参戦で話題になった公開オーディションを勝ち抜いてデビューし、ファンからは「狂犬」と呼ばれているVtuberの女性。さらなる炎上の予感しか感じない流れだったが、話を聞いてみたところ思わぬ展開に……!?

周囲の限界っぷりがますます加速していく

どうみてもハニトラ仕掛ける気満々の新キャラ・犬神狂衣が人生相談であっさり即落ち2コマしてるの本当に笑うんだよなぁ〜!!!初手で即落ち2コマで、気がつけばすっかり第二のアレポジションになっているの笑ってしまう。似た者同士ということで一度アレちゃんと狂犬さんにはどこかでサシコラボとかしていただきたい。最初から最後まで神坂の話して終わると思うし絶対におもろい。

というかその狂犬さんを皮切りに、いつものメンツ(mikuriママ&酢昆布ネキ&アレ&月太陽コンビ)からあんらいスレのガチ恋ネキまで、ガチ恋ぶり……というか限界ファンぶりが加速しててもう見てるだけでおもろかったな今回。新マネージャーさん提案の「マシュマロ読み上げ」回の破壊力が女子ファン的にポイント高かったというのもあると思うんですが、女子組はまだしもミカァ!もとい御影くんまでなんで後方彼氏面してるんですかねえ!?FPS友達である天羽くんもVtuber業界参戦してきて神坂の限界勢、いよいよ性別問わずになってきたな。

そんな中で他界隈の騒動に巻き込まれる形で炎上してしまったあさちゃんと御影くん。ふたりの炎上の影響は直近で控えていた柊先輩の無料3D配信イベントにも影を落としていって……炎上を理由に出演辞退しようとするふたりを無事に柊先輩のイベント出演させるため、神坂が裏で奔走!!……といういつもの流れなんだけど、炎上した時点で箱内外・身内どころかリスナーやスレ民にまで突貫の心配されてるの信頼感高すぎて笑ってしまった。実際、何かしようと動いてはいたわけだし、ほんと「そういうとこ」なんだよ。

いつも一人で突っ走って自分にヘイトを向けさせて事件を解決する──スレ民が言うところの「メイン盾」な神坂が躊躇いながらも周囲を巻き込むことを覚えて、自らに火の粉が掛からないような形で事件をうまいこと収めてしまう流れに成長を感じてニッコリ……というか、ふたりを救うために箱外まで巻き込む大型企画を主催したらこれまでの企業案件での好感度が高すぎたせいで今まで関わった企業のみなさんがこぞってスポンサーに名乗りを上げるというこれまでの集大成もいいとこな展開で腹抱えて笑ってしまった。しかもその企業が割と錚々たるメンツなもんだから手に負えない。気がつけばかつての男子コラボで参加した公式大会よりも規模がデカくなってるの、マジで何!?企業陣まで限界化してる気がするんですけど!?

こんなに笑えるASMR配信回、ある!?

メイン盾の役割をいつも以上にうまいこと努めつつ、今回のメインであり相当前からやるやる詐欺状態だったASMR配信(読み直したら2巻からずっと言ってた)がいよいよ開催。

前述の「マシュマロ読み上げ配信」がかな〜り女性向け需要に偏っていたこともあって、マンスリーボイスもそっちの需要っぽいし、そこからのASMR配信回となるとガチガチに夢女子向けのやつでは……?!と恐れおののいていたのですが、蓋を開けてみたら……こんなに笑えるASMR配信回あるぅ!?新種の焦らしプレイなの!?需要は合ってるのになぜか供給が間違ってるんですけど!!?いやマジでどうしてそこまで正確に需要をリサーチ出来てるのにお出しされた回答がこうだったんだ。いやこれはでも色んな意味で前情報なしで読んでほしい、リスナーたちもそうだけど読者の情緒もジェットコースターで大変だった。いやでも、mikuriママも言ってたけど配信中の神坂の立ち絵がニッコニコなの、これまでの経緯を踏まえると最高の高だったな!!

そんなこんなでコラボ企画主催に念願のASMR配信、そして初めての自力バズ……マジで最終回か!?って疑うレベルで盛り盛りだった1冊でした。最後のチャンネル登録者の増え方がエグい。いよいよ俺達の神坂が世間にみつけられてしまうのか。いやでも、100〜200ですっかり固定化してる低評価層やなにかにつけて炎上させようとする流れが確かにどこかにあって、これ流石にどこかに原因ありそうな気がするのでそのへんが片付かないと結局燃やされて元の木阿弥……になりそうな気配もあるんだよなあ。次巻がとても楽しみです。

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脇役に転生した俺でも、義妹を『攻略』していいですか?

 

主人公登場までまてない! サブキャラ兄による妹ヒロイン救済!
気が付くと俺はゲーム『恋色に染まる空』のサブキャラ神崎栄司に転生していた。栄司は攻略ヒロインの兄である。つまり別に主人公がいるはずだ。ならば変に引っかき回さないよう、第二の人生を謳歌すべきかと思っていたが――攻略ヒロインである義理の妹・鈴那がとても辛そうなのだ。ゲームだと主人公に鈴那が救われるのは今から三年後。それまで鈴那は放っておくべきなのか……? ……いや、そんなの無理だ! たとえ主人公でなくても、兄である俺がどうにか鈴那を助けてみせる! サブキャラ兄によるヒロイン救済の奮闘がはじまる!

生前プレイしていたギャルゲーのヒロインの義兄、つまりゲームの脇役・神崎栄司に転生した主人公。本編の展開を変えるような行動は極力避けようと思っていたのだが……幼馴染から言われた言葉をきっかけに一念発起、心に大きな傷を抱える義妹・鈴那をゲーム開始前に救ってしまおうと決意する。

繊細で暖かな、兄と妹が家族になるまでの物語

「義妹を攻略〜」という強めのワードからは想像できないような、繊細で暖かな血の繋がらない家族の物語でした。タイトルからして不謹慎系のラブコメかなぁ……と思ってたんですよね。Twitterで流れてきた感想に「家族愛の物語」と書かれてなかったら手に取らなかったと思うんですが、手に取れてよかった。そして感想を流してくれた人に感謝。

前世の記憶を取り戻したものの「数年後に主人公によってヒロインたちが救われる未来」を自ら壊してしまうことを恐れていた主人公が、幼馴染である天宮和奏との和解をきっかけに自分が持つ全てを使ってできる限りのことをしようという方向に変わっていく姿が印象的でした。前世の記憶を取り戻したことによって生まれてしまった年齢を重ねた故の一種の諦観、死んだときの記憶を取り戻したせいで自身の中に生じた深刻なトラウマ……人生経験やゲームの知識が武器になる一方でそれらに足を取られることも多くあり……それでも、その一度死んだ経験こそが義妹が囚われているジレンマに答えを与えることが出来るというクライマックスがめちゃくちゃ良かった。転生によって得た物が決してチートにはならず、でも物語全体の鍵を握っていく……このあたりのバランス感覚がすごく上手かったんじゃないかなと思います。

少しでも会話の機会を増やしたり、一緒に遊んだり……不器用だけど懸命な栄司の行動によって少しずつ心を解きほぐしていく鈴那がとても可愛かったし、こんな可愛い子が妹になったら栄司(原作・現実含めて)が超絶シスコンになるのもわかる。「攻略(しあわせ)」というタイトルの通りに本来の主人公の代わりにゲームシナリオ内で解き明かされるはずだった義妹の心の傷を癒やす物語となっていたし、同時に前世の記憶を取り戻してトラウマを得た栄司こそが彼女や和奏と心通わせることによって少しずつ立ち直っていくお話でもありました。

ところで、元になったギャルゲーのシステムがめちゃくちゃ「ときメモ」を彷彿させるというか……ただのノベルゲームではなく育成・シミュレーション要素含んでるあたり一昔前のギャルゲー・エロゲー感あって懐かしかったです。いや私ときメモエアプで友人がGSやってるのを横で眺めてただけなんですけども!

幼馴染ラブコメとしても良かった〜!!!

鈴那の件で何かと相談に乗ってくれる、幼馴染にしてゲームヒロインのひとりである和奏。栄司がはじめの一歩を踏み出すきっかけとなったやりとりによってわだかまりを解消した彼女の存在は栄司にとっては自身の行動次第で未来を良い方に変えられるというなによりの証拠となっていたと思うし、なにより色々と鈍感で空気が読めない栄司にヤキモキしつつも親身になって相談に乗ってくれる和奏は流石に人気ヒロインの貫禄で、可愛かった。まったく幼馴染ラブコメは最高だな!!!!!

しかし、冷静に考えると人生二周目なのにあそこまでバレバレな幼馴染からの好意に気付けない栄司さんはマジで鈍感ってレベルじゃねーぞ!!!……じゃないですか……いや、3年後にはゲーム主人公と両思いになる女が自分のことを好きなはずないと思っているのかもしれないし、自分=前世でゲームをプレイした際の「完璧だが残念すぎるイケメン」というイメージが強すぎるのかも知れないし、自己評価が低すぎるのかも知れない(というかそういう描写は実際に多少ある)し、鈴那のことで手一杯で自分が周囲からどう見えているかとか和奏のことにまで気が回っていないというのはあるのかもしれないのですが……。1冊で綺麗にまとまっている物語で単巻完結と言われても違和感のないお話だったのですが、もし続編があるなら次はぜひ和奏との関係性をじっくり掘り下げてほしい。というか私が幼馴染ヒロイン大好きなので和奏編が読みたすぎる。

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少女星間漂流記

 

ふたりぼっち、安住の星を探し求めて宇宙旅行。
 馬車が銀河を駆けている。馬車を模した宇宙船が。  乗っているのは、この風変わりな宇宙船を造った科学者・リドリーと、相棒の内気な少女・ワタリ。  環境汚染で住めなくなった地球を後にして、二人は馬車を走らせる。目指すは、地球に代わる安住の星。  けれど、二人が訪れるのはどれも風変わりな星ばかり! 万物を生き返らせることができる神のいる星、運が良い人間ほど偉いとされる星、無数の図書館ばかりがある星……変わった星々に、二人の少女は翻弄されてしまうことも……。  「次こそ住める星だといいな」二人は今日も、広い宇宙を旅している。

環境汚染により住めなくなった地球を追われ、馬車を模した宇宙船に乗って旅をするふたりの少女・リドリーとワタリ。ふたりが訪れるのは少し変わった星ばかりで……果たしてふたりは、地球に代わる安住の地を見つけることが出来るのか?

安寧の地を捜して宇宙を旅する少女たちのSF短編ロードノベル

科学者であり高い知力を持つリドリーと人見知りだが戦闘能力は高いワタリ。ふたりの少女が互いのできないところを補い合いながら宇宙を放浪するお話。同レーベルの「キノの旅」を彷彿させる形式の、1話完結タイプの短編ロードノベルでした。

ふたり合わせれば知力も戦闘力も大人顔負けのふたりですが、それでもその旅路は安寧のものであるとは言えず……訪れた星の物語を淡々と描写するように見えて、そこに生きる人々(生物)の生き様に心揺さぶられていく姿が印象的でした。そこで起きた出来事に対し「なにもしない」というより自分たちの身を守る以上のことは「なにもできない」なんだよなあ。

個人的に特に印象に残っているのが『闇の星』で、言葉の端々からして明らかに罠っぽいのに相手が同じ地球人だったせいであっさりと騙されかけてしまうふたりがとても危なっかしい。頭脳担当であるはずのリドリーの最後の独白が胸に刺さりました。

ワタリとリドリーの関係性が良き

お互いに出来ないところを補い合う関係というだけでなく、主人公コンビであるワタリとリドリーが時折お互いに対して見せる巨大感情が大変良かったです。女女のクソデカ感情ラノベ、先日まとめを作ったばっかりなのに!!

描き下ろしの『焔の星』のクライマックスで見せたバディ関係の姿がもうめちゃくちゃ好きなんだけど、その一方でラストの『夏の星』でかつての故郷で失われた魂に惹かれるワタリとそれを気遣い敢えて真実を打ち明けた上で彼女に選択させようとするリドリーの姿がめちゃくちゃ刺さって……「私の秘密兵器」なんて所有物のように言う割に時々リドリーがワタリに対して負い目を感じているようにも思えるし、過去のふたりに何があったのかめちゃくちゃ気になりました。

いやでもそういうのはずっと匂わせるだけで続いていきそうな物語ではある。シリアスでミステリアスなふたりの関係性も良いけど、『甘の星』のような、ワタリの誕生日プレゼントを買うためにリドリーがひとりで奮闘するドタバタ劇もめちゃくちゃ可愛かったのでもうずっとこのままの関係性で居ろまである。

あとがきで作者さんが読者が買い支えてくれたら私は物語と共に永遠に生き続ける概念になるので地球が滅んでも続きが出ます(意訳)という話をしてるのがあまりにも強くて笑ってしまったんですが、実際に年1〜2くらいのペースで定期的に摂取したい物語だなと思ったので次巻も買います買いました(今)。

本好きに的確にぶっささりそうな『本の星』がTwitterで丸々公開されているので、気になった人はまずはここから!昨今の電子書籍と紙の本の違いの話とかも盛り込みつつ、本に興味がなかったワタリが本に興味を持つという短編です。オタクは自分の好きなものに興味を持つニンゲンの姿を見るのがめちゃくちゃ好きなんだよなわかる。

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VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた9

 

様子がおかしくなってしまった5期生・匡のために淡雪、動く!?
本当に多様なVTuberが所属する大手運営会社ライブオン。先輩とのコラボも終え、5期生もライブオンに馴染んできたと思いきや、アンチライブオンな生徒会長・匡がとある理由から病んでしまって!?

ダガーちゃんの件も落ち着いて5期生も少しずつ馴染んできて……平穏を取り戻してきたと思われたライブオン。ところが今度は、「アンチライブオン」を標榜する5期生・宮内匡が病んでしまった!?彼女のことをを心配したチュリリ先生は淡雪に相談を持ちかけるが、彼女はチュリリにも意外な提案をしてきて……?

相当センシティブな話してるんだけどその裏ではさぁ……

前巻に引き続き5期生の掘り下げ回。「アンチライブオン」の宮内匡が逃げ続けてきた自らの本質と向き合う話と、5期生に救われたチュリリ先生が改めて自分の居場所をライブオンにみつけるお話でした。

アンチを自称しながらも実はライブオンが大好きな宮内匡のアイデンティティの危機とそれにまつわる葛藤も面白かったけど、それ以上にチュリリ先生のお話が面白かったです。というか改めて思い出すと匡&チュリリ先生の話もなかなか難しいセクシャリティの話してるよな……聖様の件もそうだったけど、結構センシティブな所攻めるよなこのシリーズ。晴と淡雪からの提案で、匡とチュリリが他のライバー達の話を聞く……というコンセプトだったので、シリーズを通して変化してきたライブオンライバー達の変化、現在の素直な気持ちが知れるのも良かった。

お互いに依存して、支え合って生きているような状態だった5期生が三人とも別々の方向を向きながらもしっかりと自らの足で踏み出し、その反面これまで以上に一つにまとまるお話であり、いろいろな意味で綺麗にまとまってくれて安心しました。個人的には彼女達のありかたとは対象的な4期生の話が印象的で、仲は良いけれど一緒にまとまって何かをやるというのは少ない4期生……確かにな……。この直前に仲良しすぎる3期生組の体力勝負配信回と4期生のカステラ返信回入ってるの意図的だとおもうんですけど、割とイチャイチャ感の高い3期生ともまた違う感じなんだよな5期生組。3期生組は大人の女子会感が高いけど、5期生は若さがそうさせるのか女子校ノリなんだよな……。5期生、全員が開眼したところでどんな関係性になっていくのかがとても気になります。

そして裏でこんなに真面目な話をやりながら表(?)では突然淡雪個人の独断によるライブオンライバーの格付け始まったり(ギリギリを攻めたネタするなと思ったけど正直この格付けでSもらってもうれしくないんだよな……)、終盤はひたすらスイ◯ゲームやってたりと改めて自由が過ぎるぞこのシリーズ。個人的には淡雪がス◯ゼロじゃなくてビールを飲むドッキリを仕掛ける回で死ぬほど笑った。いや冷静に考えてエーライちゃんの反応が普通だと思うんですけどその反応が異質に思えるほど他の面子にはドッキリ成功しちゃってる(?)の面白さしかないんですよ。ダガーちゃんに仕掛けたときの試合に勝って勝負に負けてる感、どこにもツッコミがいない感じで腹筋がツラいしダガーちゃん可愛い。

次巻で完……結……?

それにしても、匡とチュリリ先生で2冊使うかと思っていたのを一気に掘り下げるなと思ったら次巻完結とのこと。短編の寄せ集めのようで結構しっかりとしたストーリーが存在するこのシリーズ、いろいろな意味で終わりのないライバー達の物語にどういう決着をつけるのかとても気になるし、最終巻ではいよいよなんか凄いことがあったらしいことしか明かされてこなかった淡雪のライブオン入社面接の様子が明かされるようでそちらも楽しみだし、ようやくライブオンの中に居場所を見つけた5期生3人の配信も改めて拝みたい。というか前巻で問題を解決したダガーちゃんのカステラ返信回がめちゃくちゃ良かった(とても可愛かった)から残り2人分も見たい。

……いや冷静に考えてストーリーを終わらせるだけなら5期生掘り下げが一段落した今いつでも終われる感あるけど、配信でみたいエピソードを考え始めるとやっぱり残り1冊じゃ全然尺足りないでしょライバーの配信回だけ集めた短編集とかシリーズで出しません?文庫書き下ろしシリーズだったら絶対ドラマガに描き下ろし短編連載してシリーズ化してたとおもうんですけど、Web小説はその辺で結構縛りあったりするらしいので難しいのかな。

問題解決後の5期生でもうちょっと尺取ってほしいし出番が減りがちな4期生以上の話ももっと見たいんだよなぁ〜〜〜。

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悪の令嬢と十二の瞳 〜最強従者たちと伝説の悪女、人生二度目の華麗なる無双録〜

駄犬
 
saino

やり直しの裏に隠された秘密とは――
公爵令嬢セリーナは王太子から婚約破棄され、服毒刑にて人生を終えた――はずだったが、何故か巻き戻り二度目の人生がスタート。 ちなみにあれは冤罪だ、とんだ冤罪である。 だって「ちょっと聖女の頭めがけて植木鉢を落としただけ」で「殺してはいない」のだから。 前回の敗因は有能な部下がいなかったこと。 であれば今度は拠り所のない孤児を引き取り暗殺者に育て上げ、自分をコケにしたやつら全員をぶちのめすのだ! こうしてセリーナの従者育成計画が始まるが、過酷な訓練を経て仕上がったのはある意味(・・・・)最強の従者たちと番犬で!? 「我々はセリーナ様を愛しているか?」 「生涯忠誠! 命を懸けて! 忠誠! 忠誠! 忠誠!」 「セリーナ……、“あれ”はなんだね?」 「お父様、彼らは従者としての使命を前に、ああやって気を引き締めているのです」(すまし顔) 人生二度目の倫理観ぶっ飛びヒロインが征く、ちょっぴりおかしな逆行転生×悪党×勘違い英雄譚!

ちょっと聖女に「意地悪」をしただけなのに、「なぜか」王太子から婚約破棄されて処刑されてしまった公爵令嬢セリーナ。なぜか少女時代に戻って人生をやり直す機会を得た彼女は、こんどこそ破滅の道を歩まないよう努力することを決意する。そう、処刑の際に力付くで取り押さえられて助けてくれる部下も居なかったから死の運命を回避できなかった……それならば、自らの肉体を鍛えて対抗できるようにして、更には自分の危機となれば命を差し出しても助けてくれる忠実な部下を育成すればいいのだ!!……と。

死に戻りではなく精神年齢で変化していく価値観の描写がリアル

処刑されて人生をやり直すことになったものの色々と懲りない主人公が今度はもっと狡猾にやりたい放題やろうとするお話。作者さんの作品で読んでいるものが「誰が勇者を殺したか」しかなかったのでこちらも結構シリアスな感じの物語かなと思っていたのですが、どちらかというと懲りないセリーナの無茶苦茶な行動や、悪意を持ってやったことが微妙に斜め上の方……本人の望まぬ方面に解釈されてしまって予定が少しずつずれてしまったり一周回って本人の意図しない形で思惑通りになってしまったり……が楽しいお話でした。最後まで読んで物語の全体像を振り返ると普通にシリアスで重たい話をやっているんですが、それを重くみせない軽妙な展開が楽しかったです!

一度死んだくらいでは揺らがなかったセリーナの価値観が、精神の成熟・老成とともに変化していくのがなんというか生々しくて良かった。いや確かに、死んだくらいで倫理観変わらないよなと思うし(死んだことないからしらんけど)その一方で10代の頃の価値観と40代で持ってる価値観って明確に違うんですよね。良く言えば成熟するし、悪く言えば「枯れる」。転生物でよく言われる、精神は3〜40代を迎えているはずの人間が10代の価値観を持ったまま人生をやり直していく違和感みたいなのが全然なかった。

犬嫌いにとっての犬の描写がリアルすぎて共感しました!(犬苦手)

そんなこんなで彼女の未来の従者(=処刑されそうになったとき肉盾になってくれる心無きマシーン)にするため引き取られた孤児院の鼻つまみ者の子供たち6人が、セリーナが又聞き知識で作り上げたハート◯ン軍曹もビックリの地獄の特訓に晒される。最初は不満たらたらだったけど、実力をつけていくうちにいつのまにか「何者でもなかった自分をひとかどの人間にしてくれたセリーナ」へ恩義を感じ始めて心から忠実な従者になっていく……というちょっとしたすれ違い展開も楽しかったのですが、なによりセリーヌが子供たちに育てさせた犬(※絆が生まれたところで殺して子供たちの心を殺すつもりだったが色々目算違いが起きて殺せなくなった)への反応がリアルすぎて笑ってしまった。セリーナの犬嫌いの描写がリアルすぎる。なぜか犬を苦手としてる人間にジャレつく犬の描写わかる〜〜!!!し、すっかり犬好きになった子供たちがセリーナが本当は犬好きだと誤解してこっそり彼女に犬をけしかける展開が犬好きの傲慢〜〜!!!という感じでめっちゃ好き。そうなんだよ、犬嫌い(苦手)ってみんなこうだし犬好き・猫好きのやつらは全世界の人間が犬猫好きだと思ってるんだよな。そんなことないよ。あとがきで作者さんも犬が好きではないと仰られていてなるほどな……となってしまいました。

……ただ、犬が嫌いというだけの話に留まらず、嫌いだと思っていた犬のことを長く触れ合っているうちに「嫌い」とまでは言い切れない複雑な絆が芽生えていったり、なんだかんだ別にお前らに死んでほしいわけではない、どちらかというと死なないでほしい、くらいに情が芽生えていく描写まで含めて本当にわかるすぎて……。

セリーナの視点だけでなく、6人の子供たちのまなざしを加えることで全体像が見えてくる物語がとてもおもしろかったですし、セリーナが「なぜか」少女時代に巻き戻ってしまった理由をはじめ、物語に散らされた些細な違和感・伏線が最後の最後で一気に明かされていくラストはとても気持ちよかった!……と思わせておいて最後の最後で明かされるアレさあ!!いや本当にそこまで読んで全てに納得がいったという感じだったけど!!!

しかしひとつだけネタバレをすると犬が死ぬ話なのでそういうのがダメな人は読まないほうが良いという注釈は入れておきます。なんかツイッターでそこは教えろって話をよく見るのでな……。

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このラノベの女女間の巨大/複雑感情が好きだ!

同性間のクソデカ感情の話が好きだ。普段は男男間のクソデカ感情をこよなく愛していますが性別は問わない女女もやぶさかではない!という気持ちで前から以前作ったまとめの女性バージョンをやりたいなと思っていたんですが、最近「悪役令嬢の中の人」がバズったりしてちょくちょくその手の話題を見るので今しかない!!と自分の好きな作品を簡単なジャンル分けしつつまとめました。

↓あわせてどうぞ↓

タイトル通りの記事です。 このラノベの男同士のクソデカ感情いいよね!!というタイトルを独断と偏見で25タイトル紹介します。長年まとめ記事作るよ作るよって言い続けて気がついたら...

悪役令嬢・悪女

まきぶろ「悪役令嬢の中の人」→感想
…わたくしはただ、エミならしていただろうことをやっただけよ。
推しだった悪役令嬢レミリアに憑依転生したエミと、彼女の憑依体験によって愛を知ったレミリア。エミの持っていた異世界の知識を得たレミリアが本質・悪のまま、「エミのレミリア」として徹底した善性を演じながら復讐を完遂していく展開が良かった。定期的にレミリアが見せるエミへの執着、彼女以外の登場人物への酷薄なコメントがたまりません!
永瀬 さらさ「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました」→感想
引き抜け。自分はプレイヤーだ。アイリーンを、自分が選んだ主人公を勝たせる、プレイヤーなのだ。
前世の記憶を取り戻し破滅回避を目指す悪役令嬢・アイリーンと、遅れて記憶を取り戻したヒロイン・リリア。記憶を取り戻してからはあくまで「ゲームプレイヤー」としての立場を貫くリリアが同じ転生者であるアイリーンへ向ける執着、悪役令嬢よりもずっと「悪役」らしく振る舞う彼女がアイリーンの生き様に触れ、真実の愛に出会って「ヒロイン」に戻っていく姿が印象的でした。いや悪のヒロイン・リリア様ほんと最高なんだ……。
中村 颯希「ふつつかな悪女ではございますが 〜雛宮蝶鼠とりかえ伝〜」→感想
──あなた様こそが、わたくしの、ほうき星なのです。
病弱なこと以外は完璧な雛女・玲琳と彼女を妬む嫌われ者の鼠姫・慧月。呪術によって入れ替わってしまったふたりが陰謀だらけの雛宮で様々な事件に立ち向かっていく物語。一応ヒーロー的な存在はいるけど、本質は女女のバディ物なんだよなあ。真逆のふたりがお互いの持っていない部分に憧れ合う展開が大変楽しく、徐々に明かされていく玲琳の複雑な内面が印象的でした。

親友・ライバル・相棒

うえお 久光「紫色のクオリア」→感想
ただし、あたしは決して、ゆかりを忘れられない──だから。こんな世界は、必要ない──
自分以外の人間がロボットに見える少女・毬井ゆかりと普通の女子高生・波濤マナブ。過酷な運命に翻弄されるゆかりを救うため、彼女から与えられた異能を駆使してマナブが永劫の時を駆け抜けるすこし不思議な物語。前半のゆるいやりとりからハードな時空SFになる展開がたまらなく面白い、ゼロ年代の大傑作なので未読の人はみんな読んで欲しい。あとコミカライズが最高です。
二月 公「声優ラジオのウラオモテ」→感想
忘れてないでしょうね、歌種やすみ。あなたのライバルは、夕暮夕陽だってことを。
デビュー3年目で声優としては曲がり角の「歌種やすみ」と新人実力派声優・「夕暮夕陽」。実はクラスメイトだったふたりがお互いのない部分に憧れながら最強最大のライバルとして実力を競い合う物語。主役二人のライバル関係がとにかく心地よく、周囲の力を借りながら成長していくやすみとやすみからの憧憬に応えるために独りで抗う夕陽という関係性も良かった!
谷尾 銀「ゆるコワ!〜無敵のJKが心霊スポットに凸しまくる〜」→感想
彼女と一緒ならば、何だって楽しい。退屈ですら楽しいのだ。
元柔道部の女子高生・桜井梨沙と悪魔的頭脳を持つ茅野循の女子高生コンビが怪異やヒトコワ案件に自ら飛び込んでいくホラー小説。循が時折覗かせる梨沙へのわかりにくい好意と執念、その好意を全て理解した上で彼女との関係を楽しんでいる梨沙という関係性が良かった。「黒津神社」の後味の悪さが最高に好き!!
橘 公司(Speakeasy)「いつか世界を救うために -クオリディア・コード-」→感想
そう。ほたるは夢の中でずっと──舞姫に手を伸ばし続けていたのだ。
天河舞姫と凛堂ほたるの過去の「約束」と「再会」の物語。最強のガワの中に年齢相応の脆さを隠し持つ舞姫と彼女のための「剣」としての在り方を貫くほたるという関係性が大変良かったのでアニメも合わせて観てほしい。なお、この物語にネームド男性キャラは登場しないのでそこを頭に入れて読んでください。ほたると舞姫の幼馴染百合も良かったけど、私は利害関係からはじまる真里香と來栖の百合が好きです。

ジャンル越境(文芸より)作品

新井 素子「あなたにここにいて欲しい」
あなたにここにいて欲しかった。欲しかった。すでに過去形。
少し不思議な能力を持つ祥子といつも一緒だった幼馴染の真美。祥子のことなら何でもわかっていると思っていたのに、祥子は自分と同じ異能を持つ女性と出会ってから様子がおかしくなって……共依存だったふたりがお互いから脱却して新たな関係性を築いていく物語で、本音をぶつけ合うクライマックスが最高に好き。
桜庭 一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet」
あたしは藻屑にはまっていた。かわいそうで、苛立たしくて、きれいで、汚くて……。
田舎で理不尽さに抗う少女・山田なぎさと都会から転校してきた不思議な少女海野藻屑。未だ幼い少女ふたりが織りなす現実からの逃避行劇。『砂糖菓子の弾丸』という言葉の通りのふわふわと甘ったる藻屑とのやりとりと、戻ってきたなぎさを迎え入れる少しだけ優しくなった世界の姿が印象的でした。ミステリー文庫時代のイラストの表紙好きだったんだけどなくなっちゃったんだよな……。

百合・恋愛関係

七斗 七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」→感想
「好きになりそうはもう好きなんよ!手遅れなんよ!好きなら私のこと落としに来いよ!」
下ネタ担当の2期生・聖様を中心にした物語がとても良かった。女性だけのVtuber企業という閉じた虚構の世界を舞台にした物語の中で性的マイノリティの話に触れてくるの凄く印象的だったし、コンプレックスを克服し想い人と相思相愛になった聖様がただのバカップルになるの大分面白かった。他にも様々な形の女同士の関係が描かれているのでそういうのが好きな人にもおすすめ!
向坂 氷緒「384,403km あなたを月にさらったら」→感想
四月までの私は、月の海にひとり。理世のいる地球に焦がれて、いつもひとりきりで宇宙を見上げていた。「……地球って、すごい」
最後に、TLレーベルから本番ありの百合作品を。かつて愛した幼馴染の女の子を追いかけて女子高に入学したら、彼女は破廉恥な噂のある「魔女先輩」の「お気に入り」になっていて……というお話。自分をクールだと思っているけど色々と抜けてる主人公が状況に翻弄される姿が楽しく、そんな彼女を小悪魔のように翻弄する幼馴染とのやりとりが大変可愛い、エッチな百合作品でした。

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異世界召喚されたVチューバーですが、皆様コメントで助けてください!

 

百合が会社から帰宅すると、同居の兄のPCにVチューバーのアバター画面が。 「お願い、世界を救ってほしいプカ」 コマンドウインドウにうっかり「はい」と答えたとたん異世界に飛ばされ、Vチューバー「聖乙女・オト」としてモンスターと戦う羽目に! この世界では、コメント数や投げ銭に比例して聖乙女の魔力が増すらしい。 騎士団長のヴァーミリオンの護衛のもと、コメント欄に常駐するネット廃人たちのコメントを煽りながら命がけでモンスター討伐に挑むオト。 チャンネル登録者数一ケタの弱小Vチューバーは果たして世界を救えるのか!?

引きこもりの兄がやっていたVtuber「絶対正義☆聖乙女」のガワで異世界に召喚されてしまった普通のOL・百合。彼女の異世界での行動は全て現実世界に生配信され、配信への反応が「聖乙女」として戦うための力となるらしいのだが……!?

頼れる仲間はみんなクソ。ハードモードだらけの異世界召喚ロマンス!!

人の良さだけが取り柄の主人公・百合=聖乙女オトが異世界に召喚され、クセしかない周囲の人々に翻弄されながら配信で力を集めてなんとかかんとか魔物を倒しつつ現実世界でスパチャを集めて兄のこしらえた多額の借金を返済しようとするお話。

いや〜面白かった!まどマギ以後の魔法少女ものでよくみる「信用できないマスコットキャラ」、異世界召喚ものでちょくちょくみる「主人公を使い潰す気満々で召喚した王族」、更には配信・掲示板モノの「便所の落書きみたいなことしか言わないクソコテ」…………各ジャンルからクソキャラを集めて悪魔融合した結果、頼れる仲間だと思ってた奴らはみんなクソみたいなハードモード異世界召喚になってる。

ただひとり傍流の王子である騎士団長ヴァーミリオンだけは親身になってくれるし、コバルト文庫なので彼との少女漫画のラブロマンス的な展開も当然あるのですが、チャンネルとしてのジャンルはむしろ底辺男性向けなので彼といい雰囲気になるたびに生配信が盛り下がるんですよね。女性向け異世界ファンタジーとしてのヴァーミリオンはめちゃくちゃ頼りになるイケメンだけど、男性向けの異世界召喚系動画配信モノとして見ると最早障害でしかなくて、この辺の女性向けと男性向けの需要の違いで話が噛み合わずにチグハグになってしまうのめちゃくちゃ面白かったしやっぱりこの作品の登場人物誰も信用できねえなってなった。ヴァーミリオンは悪くないんですが……。

そんなハードモードすぎる異世界召喚生活の中でヴァーミリオンと距離を縮めていく傍ら、持ち前の人の良さで少しずつ兄のチャンネルに常駐しているクソコテ達と仲良くなっていく百合。ネット世界でも鼻摘まみにされて同じく底辺だった兄のチャンネルにしか居場所がなかった、社会不適合者の3人が「中の人」の変化に戸惑いつつも最終的にオトの力を集めるために必死に行動してくれる展開には胸が熱くなったし、事故で弱視となった幼馴染のために朗読を磨き続けた百合が「聖乙女オト」になりきることで震える心を押さえつけて凛々しく立ち上がるクライマックスはめちゃくちゃ良かった!!

……とはいえ、今回のアレコレで集まったスパチャ額は微々たるもの。チャンネル登録者数も大して増えてない……みたいな状況なのは相変わらずで、色々な意味でこれどうオチをつけていくのか。もうチャンネルの方向性の不一致をなんとかしないとどうにもならない気がするし、そこにテコ入れしたらテコ入れしたで今回仲良くなったコテハン達には住みづらい世界になってしまうんだろうし、配信タイミングも基本的に制御できないので難しいよなあ。失踪したままの兄の行方も気になるし……ほんとうにどうなる?

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