インディホラーゲームメーカー「チラズアート」さんの人気ゲーム5作品ををノベライズした短編集。
ゲーム要素の落とし込み方が上手いし展開知ってても怖い
ゲーム実況動画でめちゃくちゃ見ているメーカーさんの作品で、絶対にプレイ出来ない(ホラー苦手&アクション苦手&確実に3D酔いする)ジャンルだし面白かったです課金で……くらいの気持ちで購入しました。すべて展開を知っている作品のノベライズなので大丈夫……と思っていたのだけど、展開知ってても普通に全然怖かった。状況に追い詰められて正気を擦り減らしていく主人公達の心象描写が描かれているのは小説媒体ならではの楽しみだな。全体的にひとこわ7割+ちょっとオカルトっぽい不可思議現象くらいの配分のホラーが多い印象の作品群なんですけど、ゲームをちゃんとプレイしていれば分かる範囲の部分はしっかり文章に入れ込みつつ、オカルト要素などの不可思議な部分は不可思議なままストーリーに落とし込まれていてゲームの持ち味である消化不良感は残りつつ展開としてはスマートに解りやすくなっていて良かったなと思います。
この辺は自分のプレイスタイル(視聴スタイル)の話になっちゃうんですけど、作業用BGVにしたり3D酔いの問題もあったりであまり画面を凝視しないんですよね。理不尽・不可思議に見えていた部分にちゃんと伏線があったり、繋がっていたり……というのが理解出来たのでそういう意味でも良かったです。特に表題作でもある『夜勤事件』のバッドエンド、割と理不尽エンドだと思ってたんだけどちゃんとそこに至る伏線貼ってあったんだなぁ……一本道の小説媒体で、グッドエンドとバッドエンドの要素両方拾ってホラーらしいオチに繋げてる手腕に惚れる。あと、突然フロアの雰囲気がガラリと変わったり脱出失敗バッドエンドがあったりする『夜間警備』、子どもの視点からで序盤ががややわかりづらい『誘拐事件』なんかも色々と新しい発見があって楽しかったです。『パラソーシャル』は誰も彼もが怪しくて、主人公が人間不信に陥っていくのが本当にわかる。
個人的に一番面白かったのは冒頭の『閉店事件』で、ストーカーの犯人によって消耗していく主人公の描写もホラーらしい展開も面白かったんですが、各作品の中でも異彩を放つ妙に難易度の高いカフェ店員業務パートの本作への落とし込み方が上手すぎて笑ってしまった。やたら長くて複雑なレシピをキッチン内に掲示しろっていう愚痴も出来上がったコーヒーをおもむろにゴミ箱に捨てに行くシーンも何度もゲーム実況で見たわ〜……更に忘れた頃に『パラソーシャル』で同じコーヒーショップ出して後日談出してしんみりさせつつ、お客さんの眼前で出来上がったコーヒーを捨てる描写でもう一度笑ってしまった。あの主人公確かにバイトを辞めた描写なかった気がするけど……!!ところで紙本の店舗特典が迷脇役・船橋先輩の話らしくて読みたすぎる……。
チラズさんの作品、他にも色々作品があるのでもう1〜2冊くらい出してもらって色んな話読みたいなと思いました。『地獄銭湯』とかどうかな。