ページ 5 | 今日もだらだら、読書日記。

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空戦魔導士候補生の教官14

 

空士たちのその後を描くアフターストーリー!
風邪を引き超絶頭脳派なミソラ。売れっ子作家になったユーリ。ペットコンテストに挑むレクティなどE601小隊の送る破天荒な日常! そして、カナタと、記憶を失ったミソラたちとの再会を描くアフターストーリー!

中間試験のウィングシューターにてチームワーク不足による全員脱落という前代未聞の成績を叩き出したE601小隊。なぜか最速記録にこだわるミソラ達に対し、カナタはとある「特訓」を提案する。それは、ミソラ・レクティ・リコの3人が女子寮で共同生活を送るというもので……!?

ミストガンでの愉快な日常短編を中心にした短編集第二弾

ミストガンでの愉快な日常を描いたドラマガ短編5編に描き下ろしの本編後日談を収録した短編集。7巻で短編集が出たときは本編も盛り上がっているタイミングで短編の出来も若干テンプレ感が強いというか……いまいち乗り切れないものがあったんですが、今回は本編完結後ということもあるし、短編そのものも面白くて楽しく読めました。あと描き下ろしの後日談が凄く良かった……。

カナタの特訓でミソラ達が同居生活を送る「本当のニューレコード」、本編でもちょくちょくやっていたカナタの突拍子もない特訓シリーズの1つではあるんですが、完結してから読むとあまりにもカナタ達が平穏な学園生活を送っていた時期が短すぎて「こういうちょっとした特訓話がもっと読みたかったんだよなあ〜〜」みたいな気持ちになる。あと、とにかく仲間を深く理解することが高度な小隊戦のチームワークに不可欠というカナタの教官としての理念がしっかり現れてるお話で良い。

今回の短編で特に好きだったのがカナタへの思いを綴ったユーリの日記が何故か商業出版されベストセラーになってしまう(犯人はロイド先輩)「赤裸々なアノニマス」。返送したユーリがサイン会の会場に向かったら恋愛小説など興味ないといっていたはずのE601小隊の面々が次々とサインを求めてきて……という展開がベタといえばベタなんだけどめちゃくちゃ面白かった。あとレクティのペット・ピヨちゃん(※怪鳥のヒナ)とコンテストに参加する「仲良し揃いのペットコンテスト」、怪鳥ピヨちゃんのトンチキムーブをレクティのピュアっぷりでゴリ押ししていくスタイルが以前の短編よりも更に洗練されていてひたすらズルい。リコの母親がミストガンを訪れてリコが借りてきた猫状態になる「恐怖のヴィズィティングデイ」もいつもと違い余裕のないリコの姿が見れて面白かった。ただ、風邪引いたミソラがめちゃくちゃ有能な別人格になってしまう短編はちょっとオチのミソラが可哀想すぎて……オチにもう一捻りというか本来のミソラへのフォローが欲しかったな……。

5編とも《ベベル》に渡る前の時間軸のお話で、本編終盤でめちゃくちゃ匂わされてた空戦舞踏祭〜最終決戦までの「空白の2ヶ月」のエピソードがまったく入って無いのが少し不思議だったんですが、最終巻(※ドラマガ短編連載の未収録分をまとめた電子書籍)が相当ボリュームありそうなのでこちらかな?楽しみです。

「教官」からの卒業、「教え子」からの卒業

そして本編完結後、ミストガンで再会したカナタとミソラたちのエピソードを描いた描き下ろしの終章「始まりのミートアゲイン」。カナタが改めて教官としてミソラ達と歩んでいく物語──だと思っていたんですが、むしろそれぞれが「E601小隊の教官」「カナタの教え子」というかつての立場から「卒業」して、今度は同じ空士として隣に並んで新たな未来を歩んでいくためのケジメの物語であると感じました。

カナタにとってはあまりにもコレまで通り、ミソラ達に取っては妙に馴れ馴れしい編入生(カナタ)の言動に困惑しながらも何故かそれが当たり前のようにも覚えて……そんなちぐはぐなやりとりに一抹の寂しさを感じながらも、記憶が無くても改めて関係を築いていけることにホッとしました。そして、クライマックスである601小隊(現在はCランク)とカナタが集めたドリームチームのバトルがめちゃくちゃ良かった!!本来の魔力を取り戻したカナタと大きく成長したミソラ達が何の禍根も制約もなくこれまでの鬱憤を晴らすように手加減なしでぶつかり合う姿が見ていて気持ち良いし、なによりめちゃくちゃ楽しそうに全力で戦うカナタに胸が熱くなる。そういわれてみるとカナタ、本編前半はずっと呪力を得たことによるパワーダウンを受けていて、それを克服して冥力を手に入れた後は力が大きすぎてうかつに全力出せなかったり、終盤は絶力の代償もあったからますます全力を出すわけには行かず……作中最初から最後までずっとデバフかかってるようなもんだったんだよな。そりゃあ教え子たちの前で最後に一回ちゃんとした「全力」出しておかなきゃってなる。本当に言葉にするのが難しいんですが、13巻を読んで感じた寂しさとか消化不良感・カナタやミソラ達の感じていた心残りが全て昇華されるような展開で……えぇ読者の私も成仏しましたとも……。

ミソラたちの中からかつてのカナタと過ごした記憶は永久に失われてしまったけど、カナタがミソラ達の中に残せた物も沢山あった。忘却という事実を変えるのではなくただ受け入れて、改めて出会い直したミソラ達とカナタがこれまで築き上げた物語の「先」を歩んでいくという結末が、どうしようもなくこの作品らしくて最高に良かったです。

真ヒロインが誰か問題については改めて本編の歩んだ道のりを思い返すと本当に平和に学園バトルラブコメしてた時期が短すぎて、これはまあ延長戦になるのも納得だなあと思ったんですが、後書きを読むと結構ギリギリまでユーリ先輩ルートで確定してたっぽくて本当に最後の最後で両手に花エンドに変わってよかったねミソラ……。それはそれとして敢えてクロエルートにいくのも悪くはないと思いますがどうですか。

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空戦魔導士候補生の教官13

 

人類の希望カナタVS魔甲蟲の王ゼス。世界を賭けた最終決戦……!
ついに最終決戦を迎えるカナタと魔甲蟲の王ゼス。開放すれば、皆の記憶から存在を抹消されてしまう《絶力》。人類の未来を護るため、カナタは全てを捨てる決断を下し、いま禁断のチカラを開放する――!!

仲間達の犠牲と協力を受けながら、ゼスが護る原初の魔甲蟲《ゲート》のもとにたどり着いたカナタ。ゼスを倒すにはカナタが持つ《絶力》を全開に使って戦う必要があるが、その力は開放するとカナタの記憶が周囲の人間たちの中から消えていってしまう諸刃の剣。何度も使える物ではないためできるだけ力を温存しながら戦っていくが、戦況は混迷を極めて……。

悲しかったけど最高にアツい、最高のラストバトルだった

シリーズ本編完結巻。いや、面白かった……最高に面白かったけど最高にしんどかった……。少しでもカナタの負担を減らそうと人工空島落としを決行するクロエ達、叶わない強敵を前にしてボロボロになりながらカナタのもとに駆けつけようとするユーリ。その思いも虚しく戦況は膠着し、少しずつカナタの存在が遠くなっていく。戦況が少しでもよくなるとすぐにそれ以上の悪い状況に陥ってしまうのは本当になぜなのか。ゼスの側近・キルスティのしつこさがヤバい。というかしょっぱなからプロローグで戦いの結末はうっすらと示唆されていて、その通りに傾いていく戦況がとにかくもどかしかった。

そんな中、耐えきれなくなったユーリがミソラ達に事情を話してしまって。前巻からずっと「ミソラたちにもちゃんと教えてあげて!!」と思っていたのは事実なのですが最終決戦の一番ひどい状況で伝えるのは逆効果になるのでは…!?と心配したのですが、ミソラ達はむしろ逆にそれまでよりも力強く、カナタのもとに向かうために前を向いて立ち上がって。結局5人の力だけでなんとかなったわけではないのですが、格上の相手を翻弄して最後まで諦めないその姿は文句なしに「カナタの教え子」の名にふさわしい活躍だったと思うし、カナタやユーリが思うより、読者の私達が思うよりもずっと強く成長していたんだなと思うと胸が熱くなりました。そしてなにより、ミストガンではただひとりカナタに本当の思いを伝えられないまま別れてしまったミソラがカナタに自分の想いを伝える機会を得ることが出来たことが、本当に良かった!

激しい戦闘の連続で今にも力尽きそうになっていたカナタが駆けつけてきた教え子達の姿を見て、最後の勇気を貰って……その強い思いと戦う姿はラスボスであるゼスの心すらも動かしていく。最後の鍵になるのが《絶力》なんかではなくて、E601小隊の面々を本気で指導し続けたからこそ手にしていた技の数々……というの本当に熱いし、カナタが使う戦技の意味をもう理解することができないE601小隊の面々の戸惑う姿がどうしようもなく悲しかった。沢山の人が犠牲になって、そして更に2つの大きな中身の分からない喪失を得て、完璧な勝利などとは言いたくないような少し物悲しい結末だったけれど、それはそれとしてほぼ最良の結果を掴み取ることが出来たんじゃないかなと思いました。本当にアツくて、涙なしには見られない最終決戦で良かったです。

そこからの、たとえ様々なものが失われても生きてさえいれば何度でもやり直せる……といわんばかりの、そして決して全てゼロからやり直すわけではないと希望の持てるエピローグがまたとてもよかった。いやしかしあの記憶忘却現象って実際、最終決戦中に相手の名前が聞き取れなかったり名前書いたのにその部分だけなぜか読めなくなったりみたいな超常現象的なアレがあったとおもうんですけどその辺って全部落ち着いた後に再会した場合どういう扱いになるんですかね?いつまでも何故か名前覚えられないとかそういう弊害あったりしない!?

次巻で後日談が入るみたいだからそっちを読めばわかるかな。楽しみです。

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空戦魔導士候補生の教官12

 

カナタの隣を飛べるのは――? ミソラとユーリ、本気の勝負!!
人類の切り札となったカナタと離れ、最終決戦に臨むことになったミソラたち。しかしミソラの脳裏にはユーリとカナタの抱き合う姿が焼き付いていて――。「ユーリさん、あたしと本気の真剣勝負してもらえませんか?」

人類と魔甲蟲の最終決戦がはじまった。カナタと離れて後方の補給部隊に配属されたE601小隊の面々だが来るべき《崩力》の持ち主との戦いに備えて準備を進めていく。どころが、ユーリの調子が少しおかしくて……ミストガンを立つ前、カナタとユーリが抱き合う場面を目撃したミソラは複雑な思いを抱えながら小隊長としてユーリと対峙することに。一方、最前線で特務部隊と共に人類の切り札として行動するカナタは特務部隊の面々から不評を買っており……。

仲間たちがそれぞれの場所で奮闘する、最終決戦の前哨戦!

いよいよはじまった最終決戦。それぞれの場所で行われる戦いがアツく、合間合間に挿入される別離の気配がとにかくしんどかった……んですが、いやコレ本当にカナタの事情、ミソラ達にも話してやってくださいよぉ〜!!ことある毎に未来の別離を匂わせてくるのがやるせない。2ヶ月もあったわけだし今のミソラ達ならそれを受け止めた上で立ち上がるだけの心の強さを得ていたと思うんだけどな。最終決戦に連れて行きたくないならそこで心を折ってしまっても良かったと思うんですが、やっぱなんだかんだでその辺はカナタの未練なんだろうなあ。カナタの事情をひとりで抱えてるユーリがしんどすぎるし、何も知らずに「この戦いが終わったら」の話をするミソラ達の姿に更にしんどくなってしまった。

空戦舞踏祭が終わるまでずっと空戦魔導士候補生達に焦点が当たってきていてこの世界の大人はどうなっているんだ?というのが若干の疑問だったのですが、今回はそんな大人達の活躍が印象的でした。特にカナタと一緒に行動することになった特務隊の面々、そしてカナタの一番近くで絡んでくる《コウライ》の生き残り・マオがとてもいいキャラしてた。(コウライは候補生のフリをした教皇直属の舞台だったと思うので、多分大人の空士だよね……?)

ゼオに仲間を全員殺されてただひとり生き残ったマオが最初は非協力的なカナタの姿に憤り、カナタの抱える事情の一端を垣間見てからは少しずつ親身になってくれて……最後には人類の世界を護るため、カナタをゲートに到達させるために自分の身を犠牲にしてでも道を作ってくれる。ずっと「教官」として教え導く立場であったカナタが大人の空士たちに導かれて最終決戦後に辿り着く姿がアツかった。本当に出番は少なかったんですが、とても印象的なキャラクターでした。

そして艱難辛苦を乗り越えてたどり着いた、この世界に「魔甲蟲」を生み出し続ける原初の存在《ゲート》。カナタとアンネローゼの持つ《絶力》でしか対抗出来ないはずのそれに対してカナタが打ち出した奇策は通用するのか。いよいよ物語も次巻完結でどうなってしまうのか……本当に楽しみです!!(少しでも、少しでも救いがありますように!!)

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空戦魔導士候補生の教官11

 

空戦武踏祭、ついに決着! 優勝は――
≪ベベル≫対≪ミストガン≫の決勝戦。序盤から圧倒的劣勢のE601小隊に対し、ただ見つめるだけのカナタを訝しむエリス達。カナタが狙っているものとは――すべてに決着が着いたその時、魔砲杖の咆吼が鳴り響く!

空戦武踏祭の決勝戦。新技を引っ提げてベベル代表と激突するミソラ達だったが、《崩力》を使う彼らの実力は予想以上で、まったく歯が立たない。生命の危機すら感じられる激闘に、エリス達はカナタに教官権限で棄権するように伝えるが、カナタはただ戦いの行方をみまもるだけで……

最終決戦目前、最後の休息の時!(でも特訓はする)

空戦舞踏祭の決着からひとときの休息の時、残された謎の開示、そして決戦前夜のやりとり…とまたしても情報量の多い巻だった。ミソラ達に掛かる信頼と責任がいくらなんでも重すぎる……と思ってたらそうきたかぁ……。誰よりも勝てないことを知りながら、でも彼女達の奮戦が空士達の心を動かすことを信じて。公式あらすじの最後の一文、あえて主語抜きにしてるのがめちゃくちゃニクい演出ですね。

今回は最初から最後まで、ポーカーフェイスの裏に隠されたカナタの葛藤が、握りしめた掌が、とても印象的でした。カナタ、教え子達が傷つくの全然本意ではないんだもんな。だからこそ最終決戦に彼女達が参加しないように全力で心を折ろうとするし、付いてこないように説得しようとする。でも、どんな敗北にも折れない心を持つようにと彼女達を育て上げたのもカナタ自身な訳で……なんともやるせない。それはそれとしてカナタを中心にしてクロエ・ロイド・ミーナ・ノエルのドリームチームとの決戦はめちゃくちゃテンション上がる物があったしよかった。ロイド以外の全員、何らかの形で戦ったことのあるメンバーだったけど本当はこんなに強かったんだなと。

ミストガンに戻る前、アンネローゼの口から明かされた《絶力》を使うことの代償。そして魔甲蟲がこの世界に現れた一番はじめの、悲しい「呪い」の物語。二ヶ月間の猶予期間の後に待ち受けるのは、勝っても負けてもカナタにとって何も残らない、自身の犠牲が前提の最終決戦。厳しい訓練の毎日と言えども平和で楽しい二ヶ月間ではあるのですが……その合間にカナタが感じていたであろう葛藤や道半ばにして教え子達の前から去らねばならない悔しさを思うと、どんなに楽しいエピソード挟まれてもしんみりしちゃうやつなんだよなあ……えっこの期間の話、普通にドラマガで連載してたんです!?富士見はまたそんな読者の心に酷い事をする!!!(いやまぁ、刊行順なら完結した後に読むことになるので、楽しみですけど……)

悲しくも楽しい、最後の思い出とも言うべき決戦前夜。それぞれがカナタへの思いを伝えて、心残りがないようにして……とおもったら、最後の最後でユーリが爆弾落としてきたぞ!?そしてミソラは本当にその終わり方で本当にいいの!?

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空戦魔導士候補生の教官10

 

≪ファルシオン≫VS≪ミストガン≫! 最終戦の切符を手に入れるのは!?
≪ファルシオン≫に勝つため、ミソラはエリスとリーゼリットに訓練を願い出る。人型魔甲蟲である彼女たちは、戸惑いながらもE601小隊と過ごすことに……。一方、カナタを賭けた会談も始まろうとしていて――?

空戦武踏祭の初戦、大波乱だったバトルロイヤルを息抜き決勝トーナメントに駒を進めたE601小隊。決勝戦でぶつかるであろうベベル代表が使う《崩力》に対抗するため、同じミストガン代表のミーナだけでなく、人型魔甲蟲であるエリス&リーゼリットにも特訓の協力を依頼する。一方カナタは、教皇アンネローゼと人型魔甲蟲のリーダー・ゼスを対面させて話し合いの場を持とうとし……!?

かくして世界の行方は「空戦武踏祭」に託された!!(責任が重い!)

一応メインは《ファルシオン》との準決勝なんだけど、E601小隊の特訓&パワーアップ回という感じでした。ノエル率いるファルシオンだってミソラたちの身に大きく余るような強敵なんですが、ノエルが本調子でないことに加えて前巻の戦いで彼女達の戦う理由の一端に触れてしまったノエルが本気で相手をしながらも彼女達が強くなるために肩を貸してくれた感じ。そして準決勝から間髪入れずに教皇派とゼスの会談、そして決勝戦へ。とにかく情報量の多い巻だった!

ゼスの言いなりだったエリスがミソラ達の特訓や教皇机下にいる人型魔甲蟲の子どもたちとの交流を通して自分の意志で兄の意見に背き人類との共存を目指す……という展開は凄く希望の未来が垣間見えてよかったんですが、それはそれとしてカナタ達の方では空戦武踏祭の優勝チームが世界の実権を握る……みたいな話に。ベベルが勝てばゼスが、コウライが勝てばアンネローゼが、そしてミストガンが勝利した場合は双方に代表者を立てて共存の道を探る。いや、軽率にE601小隊の肩に世界の命運乗せてくるカナタ教官からの信頼重すぎないですか!?それに応えようとするミソラ達の姿が目を見張る物があるのは確かなのですが。純粋に空戦武踏祭を楽しんでほしい…って話はどこへいってしまったんだ。

前巻でカナタと一度離れたことで、自分たちで戦略を立案して自発的に動けるようになったE601小隊。それぞれに新技も身に着けて、人型魔甲蟲との共存の道も垣間見えて……とほんの少しだけ希望の光が差し込むお話だったのですが、あまりにも決勝の相手は遥か高みにいて。ミソラ達の成長は確かに目を見張る物があるんですけど、これまでのバトルは相手を隅々まで観察した上でその弱点を突く形式だったり、予想外のアクシデントが起きたり……という感じで真っ向からぶつかって勝ったのではない印象も拭えないんですよね。空戦武踏祭最弱の小隊……とまでは流石に思わないけどまだまだ未熟な彼女達が文句なしに最強の小隊であるベベルにどう立ち向かっていくのか。続きがとても気になります。

絶力の代償の話も引っ張られてるんだよなあ……いやあらすじバレでなんとなく知っちゃいるんですが……。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編11

 

「私は裏切……いえ、橋本正義のことがちょっぴり気になるお年頃でして。恋?」
3年生がリーダーを務め、1,2年生クラス混合のグループで挑む合宿『交流会』が発表された。ただ今年の合宿は退学ペナルティもクラスポイントの増減も一切ない、他学年との交流がメインの緩いイベント。綾小路は鬼龍院リーダーの下、橋本、森下、山村、椎名等と同じグループとなり、押し花作り、トランプ、アーチェリーなど体験学習ゲームに参加する。 一方、勝利が求められない交流会の緩さを利用して、堀北は天沢とのリベンチマッチを計画。綾小路に対しアドバイスを求める。 「あ? 俺は真面目に相談してるぜ? 必死に助かる方法を探ってるんだよ」 綾小路に急接近する橋本の他、学年末に向け各クラスも動き出して――!

学年末試験を控えたこの時期に、1〜2年生と3年生の選抜メンバーで挑む交流会を兼ねた合宿が開かれた。クラスポイントの増減もなく、ショッピングモールでしか使えないちょっとしたポイントを賭けたリクリエーションゲームが行われるだけという特別試験未満のゆるい企画。そんな中で南雲は綾小路に勝負を持ちかけ、掘北は天沢とのリベンジマッチを計画する。更に、Aクラスの中で裏切り者として立場が危なくなった橋本が綾小路に相談を持ちかけてきて……。

南雲元生徒会長の引き際に(噛ませ犬の)美学を感じる

めちゃくちゃ先延ばしにされていた南雲元生徒会長と綾小路の勝負回。正直このまま忘れ去られるのかと思ってましたけど忘れられてなかったわ。良かったね南雲元会長……!!

学力や体力勝負ではない「お遊び」的な勝負になってしまったことをやや不満に思っている南雲ですが、正直これ対綾小路への勝ち筋としてはメチャクチャイイ線付いてたのでは??明確な回答があるわけじゃない、運や芸術点に左右される勝負に持ち込んだ上に南雲自身が得点を上げなくて良いの上手いんですよね。実際にお遊びの勝負とはいえ綾小路をかなりイイところまで追い詰めてたわけだし。かつての混合合宿で掘北兄相手にやった勝負もそうだったけど、南雲のこの「試合には勝てないけど勝負には勝つ」みたいな嗅覚って相当なものだと思う。二人のファーストコンタクトであったトランプ勝負にふたりとも足を掬われてるのもまたなんだか微笑ましい。

一年半以上学園を実質支配したものの掘北兄や綾小路のような突き抜けた才能を持つ相手にはどうしても叶わなかった永遠の二番手・南雲が彼らに勝利することへの執着を失わないまま、でもどこか吹っ切れたような穏やかな顔で舞台を降りていく姿がとても良かったですし、噛ませ犬の美学みたいなものを感じました。それはそれとしてこの後の展開が衝撃すぎて南雲の良かった話が全部吹き飛んでいくの、本当に南雲先輩は「こう」でなくっちゃね!!!!!としか言いようがなくて最高だったな!!!(酷い)

おそらくこれが2年生編「最後の」コミカル話なんだよなあ……

交流会が中心である今回の合宿はどちらかというとコミカルな展開が多くて久しぶりに肩の力を抜いて楽しく読めました。押し花や彫刻・パッチワークといった自分のやったことのないクリエイティブな体験に異常に熱中する綾小路がめちゃくちゃ面白いですし、何よりこの合宿で同じチームになり今回の表紙も飾っているAクラスの森下藍がおもしれえ女すぎる。綾小路の「実力が伴わない女版高円寺」の評は流石に人の心がなさすぎて笑ってしまったけどでもたしかに、一番近いのはなんか……高円寺なんですよね……わかるわ……。そして明言はされてないものの綾小路の巨チンネタ今回もしっかりネタにしてくるの笑ってしまう。一緒に風呂入った後輩達からの手のひらクルーに困惑する綾小路で腹抱えて笑ってしまった。本人は既に例の一件(黒歴史として)忘れ去ってるんだなあwww

あとほんと、前巻でも感じたんですが堀北と綾小路が二人でいるときの空気感が変わってきてて凄く好きだ……。堀北相手のときだけこころなしか柔らかい感じというか素っぽい綾小路も良いのですが、今回は天沢にリベンジマッチを挑む関係で掘北伊吹櫛田のわちゃわちゃが見れたのとても良かったです。綾小路の前で表情は変えずにめちゃくちゃ毒づいてくる櫛田、「誰が負けても飯がうまい」で天沢と堀北のリベンジマッチを見に来る櫛田、綾小路のことなんだかんだ結構気になってきている態度を隠しきれない櫛田、マジでいい性格になったな。伊吹は癒やし。

でも、そんな中で今後の展開への種まきが着々と行われている模様。前回の試験で明確に「Aクラスの裏切り者」として認識されてしまった橋本の暗躍、心を許せる側近だった神室を失って本調子になれない坂柳、綾小路の今後やろうとしてることを見抜いてそうな高円寺、あと椿の意味深発言とかもありましたね、そして「今後」に向けて着々と準備を進める綾小路。そして…………最後の最後の坂柳と龍園の「賭け」の話、そんなことってある!? マジでそれまでの南雲先輩の退場展開良かったわ〜〜って気分が吹き飛んだんですけど!せっかく綺麗に退場した南雲先輩に謝れ!!

正直これ、どっちが勝つかはまだ予想できないな?と思ってるしなんなら橋本から流れを聞いた綾小路がしれっと介入に入るパターンな気がしなくもないんですが(個人的な希望的観測も相当あります)もう最悪の覚悟を決めて置いたほうが良いのか。悲しいことにCクラスのほうがその結末を前にリカバリ効きそうな感じではあるんだよな……。ていうかここまで酷い切りかたで次巻遅れるんです!?生殺しが酷いです先生!!(衣笠先生お体に気をつけてどうぞ無理しないでゆっくり病気治してください……新刊発売多少遅れてもぜんぜんいいので(相反する感情))

というか今後二年生編で消化されてないイベントって「どうかんがえても大惨事になりそうな学年末試験」「どう考えても別れ話が待ってそうな軽井沢との春休み映画デート」「どう考えてもタダではすまなさそうな綾小路家三者面談」の三本なんですけどもう不穏なイベントしかないんですけど!?どうなる次回!!!

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夏目漱石ファンタジア

 

帝都に舞う夏目漱石、暗躍する野口英世、そして――衝撃の問題作
戦いの中で散った夏目漱石は、森鴎外の禁断の医術により樋口一葉の身体で蘇った。身を隠すべく女学校の教師になった漱石は、協力者・野口英世と共に己の復活の裏に見え隠れする大いなる陰謀に挑むことになり――

日露戦争の講和をきっかけに、政府と国民の間に分断が生まれた明治時代の日本。彼らの対立によって脅かされはじめた作家の「表現の自由」を護るために武装組織『木曜会』を立ち上げた夏目漱石。政府から生命を狙われ、瀕死の重傷を追った彼は親友であり文豪であり軍医でもあるドクトル・ニルヴァーナこと森鴎外の差し金で15年前に死んだはずの許嫁・樋口一葉の身体に脳を移植され、女性として蘇る。その正体を隠し、女学校の教師・「樋口夏子」として生きていくことを求められるが……!?

架空の明治時代を舞台にしたSF文豪バトル!!!

漱石を中心にした明治時代の文豪・文化人蘊蓄を大量に埋め込みつつ、カリスマ持ちでイケメンTSヒロインな夏目漱石(樋口夏子)と金の亡者な天才医師野口英世のバディが繰り広げるSF要素ありのバトルもの。近現代史・性転換して女子校に潜入・バディ・殺人鬼・クソデカ兵器……と、とにかくいろんな要素をモリモリにした特濃バトル展開が楽しい一方で、歴史蘊蓄がめちゃくちゃ多いけど歴史蘊蓄に興味がなくても楽しめる……というライトな感触も兼ね備えた読み口が大変良かった。当時の知識があればあるほど楽しいけど、無くても別に大丈夫というバランス感とても良いですね。

何より、夏目漱石(樋口夏子)と野口英世の凸凹バディ関係最高〜〜〜!!!(大声) もうまず「夏子」となった漱石が自身の行動に違和感が出たときの誤魔化しとして「月が綺麗ですね」を口癖にすることを英世からアドバイスされ、その口癖を自分のものにするためにイヤイヤ英世と練習を始めるが、いろんなシチュエーションをお出しされている内に次第にノリノリになってきて……というところの流れとか好きすぎて、もうこの辺の文章で白米3杯は行けます!!この辺、公式の試し読みに入っている部分なので気になった人がいたら是非読んでほしい。(まぁ、この口癖の設定自体はやや作者が使いあぐねてる印象はあったんですが……。)

作家の自由を護るため戦う信念の男・漱石と金払いが良ければどんな違法行為にも手を染める英世。時にはぶつかり合い、時には協力して「ブレイン・イーター」と呼ばれる殺人鬼と対峙していく展開がたまらなく楽しかったですし、なにより対象的なふたりがたったひとりの女のために共闘──という関係性が最高に良かった。また、夏子を影に日向に支える女中・禰子がまた良い味を出していて。

夏子が隠れ蓑として就任した神田女学校の教師として好き勝手していく展開、迷える女学生に道を示してうっかり彼女らのマドンナになってしまったり、また彼が「夏目漱石」だった頃に作り上げた武装組織『木曜会』の面々とのやりとりも楽しそうで、その辺の描写が少し薄めだったのは残念でしたがドラマガ掲載短編とかで日常番外編的な位置づけでやってくれるのを期待したい。なによりお話としては綺麗に終わっているものの続きいつでもいけます!!!と言わんばかりの終わり方で、続編が出るのを期待していたいと思います。

それにしても著者が他レーベルにも夏目漱石ネタで原稿送ってた話が受賞前後から話題になっていて、普通に作者は漱石ガチ勢なんだな……という感じで強いオタクとしての好感度がめちゃ高だったんですが、更に監修の人の解説がどう見ても「話を聞いて集まってきた漱石オタク上級者です!!!」という感じで最高だった。監修になった経緯がなんか概ね、めちゃくちゃ好きなマイナージャンルでめちゃくちゃ好きな同人二次創作作家をみつけてツイッターをフォローしたところからはじまりいつのまにか本の下読み校正装丁デザインまでやってたオタクの顔なんだよな……。

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空戦魔導士候補生の教官9

 

カナタ不在――E601小隊はバトルロワイアルを生き抜けるのか!?
空戦武踏祭が始まった。まずは三日に渡るオーブの奪い合いという過酷なバトルロワイアル。しかしミソラは、カナタを傷つけた失敗から立ち直っていなかった。その裏でゼスは、人型覇権への新たな一駒を投入する――!

重傷を負ったカナタと別れ、空戦武踏祭の最初の競技・第九人工空島を舞台にしたサバイバルに参加するE601小隊。ところが、自分を庇って負傷したカナタの姿にショックを受けたミソラが戦いに集中出来ず、思うように戦えない。更には大量の《アスモデウス》を引き連れたリーゼリットが島に襲撃を仕掛けてきて参加者の多くが脱落してしまう。同じ《ミストガン》の正規代表チームであるA177小隊の隊長ミーナ、《ファルシオン》の隊長ノエルと共に、逆転の糸口を探っていくが……!?

「カナタの教え子代表」として戦うミソラ達の姿がアツかった!

カナタが第一人工空島地下都市で自らの呪力と対峙していたのと時を同じくしてリーゼリットと彼女が操る《アスモデウス》に襲われ、四面楚歌状態で孤軍奮闘するE601小隊の奮闘を描くお話。

ミソラ達の戦いも凄く良かったけど、彼女達に付き添うミーナ先輩からの視点が凄く良かった……かつてのカナタのライバルとして、そして現在はもうひとつのミストガン代表チームのリーダーとしてミソラ達とカナタの関係を見守ることになった彼女が様々な思いを抱えながらもカナタの代わりにミソラたちを導いていく姿が熱い。また、カナタに近しい者以外の視点からかつてのカナタの『裏切り』が描写されるのも印象深かった。ミストガンの周囲の人々からカナタへの当たりが妙に強いなというのはずっと思っていたんですが……カナタが意図的に煽ってたのね……。

他の生徒たちと同じように一度はカナタに憧れて裏切られたミーナがE601小隊とカナタのやりとりを通してその真意に触れ、彼の意志を受け継いだミソラたちを護り、思いを託そうとする姿がとても良かった。いや本当に、ミーナのミストガンの代表ではなく、カナタ・エイジの教え子代表でいろという言葉がまさに今回の全体を表す言葉だったんじゃないかなと。そしてその通りにカナタの教えを背負ったミソラ達があぶなっかしいながらも手探りで事態の収拾に当たる展開が多かったのも印象的でした。それにしても隊長副隊長のWトップ体制となった新生E601小隊、思った以上にリコがミソラに振り回されていて微笑ましくなってしまう。普段はマイペースな問題児という印象が強いけど、実際のところめちゃくちゃ面倒見が良くて苦労人な一面もあるんですよね彼女。

ミーナやノエル、そして新たな力に目覚めたカナタの助力も受けつつ、《崩力》を使うリーゼリットと彼女により強化された大量の「敵」を抑えることに成功したE601小隊。大番狂わせによって大幅に候補が絞り込まれてしまったとはいえ参加チームのなかでは文句なしに「最弱」だった彼女達が自らの力で脅威を跳ね除け、空戦武踏祭の次の戦いへの切符を掴み取る展開がとても良かったです。というか生き残ったチームの内で《ベベル》と《コウライ》は普通に襲撃の被害を受けてないし、《ファルシオン》はノエル以外のメンツが早々に離脱してしまっているのでリーゼリットに対抗出来たのって実質E601小隊だけなんですよね。大きな成長を遂げたミソラ達の次の戦いがとても気になるところなのですが、一方でカナタは教皇派と人形魔甲蟲派に自分を巡っての話し合いをさせるように持ちかけていて……!?色々な意味で先が読めなさすぎる展開で、続きがどうなるのかとても楽しみです。

それにしても要旨かいつまんで説明するといい感じに言及する隙のない、パシリバーくんの絶妙な存在感よ……いや、普通に良いキャラなんですが……。

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空戦魔導士候補生の教官8

 

カナタの呪力が姿を現す! そして行われるのは……殺し合い!?
《ベベル》第一人工空島地下都市へ運ばれたカナタは、呪力の本来の持ち主エミリー・ウィットベルンと出逢う。そして――「エミリー・ウィットベルンを殺さなければ、貴方は死ぬことになります」と告げられて――!?

ミソラを庇って重症を負い、更に呪力を暴走させ《狂乱》状態になってしまったカナタ。治療のため《ベベル》第一人工空島地下都市に運ばれ……そこでベベルの教皇アンネローゼと自身の身に宿る呪力が形を取った女性・エミリーに出会う。呪力の暴走を抑えるために3日以内にエミリーを殺さなければいけないと言われるが、カナタはエミリー自身に興味を持ち……!?

色々な問題が解決するパワーアップ回!(ただし展開はますます不穏)

教え子達と別行動となったカナタが一時「教官」をお休みして持て余し気味だった自身の《呪力》と向き合うお話。6巻に引き続きメチャクチャ面白かった……!!1巻からずっと持ち続けてきた自身の問題を克服するパワーアップ回でした。

教官としてのカナタは一旦お休み……と言いながらも、やっていたことは瀕死だったカナタの命を繋ぎ止めて呪力を託した女性・エミリーと向き合い、生きるのを諦めかけていたその本当の望みを気づかせ/暴くという展開で、序盤はほぼほぼいつもミソラ達に課してる「特訓」と同じ流れなんだよなあ。そもそも幼馴染のクロエや特務小隊の後輩・ユーリも彼がきっかけで大きな成長を果たすことが出来たみたいな話がありましたし、もう根本的に生き様がこうなんだろうなと。その割に言葉が足りないのは毎度どうしたものかなんですが!

どう足掻いても3日の生命しか保証されていないエミリーに自身が本当はもっと生きたいと思っているという望みを自覚させるのは残酷とも言えるのでは……と思ったけれど、そこからお互いに全力でぶつかりあうことで両方が存続できる未来を模索していく展開はアツかったです。ただ、今回は結果的に最高の形でことが運んだけれども、生命を救われた相手だからといって彼女の望みのためであれば生命をいともたやすく投げ出してしまえるカナタの精神性にはこれまでとは違った形で危うさを感じてしまいました。これから戦いの規模もますます大きくなっていきそうだし、どうなっていくのか楽しみな一方でめちゃくちゃ不安になる顛末でもあった。

呪力を宿したことで発生していた魔力枯渇の問題を遂に解決し、人間の魔力でも魔甲蟲の呪力でもない《冥力》、そして魔力と冥力の先にある《絶力》──他の誰も持ち得ない絶大な力を獲得したカナタ。覚醒したカナタが前巻で苦しめられたエリスを相手に無双する展開は大変に胸躍る展開だったのですが、敵側もそのカナタの戦闘力を遥かに凌駕する強敵を用意してお待ちしてるの一筋縄ではいかなさすぎる。都市を大きく巻き込みながらの戦いもカナタとしては本意ではないでしょうし、色々な意味でただパワーアップして大勝利では終わらない展開が印象的でした。というか今回力を課してくれたアンネローゼ教皇の一派も味方とは言いづらいし、人類最高の能力を獲得してしまったということはカナタを巡る争いも今後は更に激化していくだろうと考えるとむしろ不穏しかないんだよな。絶力を使う代償の話も……というか先の巻のあらすじがしれっとネタバレしていくのは如何なものか!!!(今巻読んでて感じた不安的中してるじゃん!なんでだよォ!!)

人の身として最高と呼ばれる絶大な力を手に入れ、それでも世界を救う勇者ではなく落ちこぼれ小隊の教官として元の居場所に戻っていくカナタの姿が大変に良かったです。色々横道に逸れた感じはあったけど次巻こそは舞台を「空戦武踏祭」に戻していくようで、こちらの展開もどうなっているのか。もう色々不穏しかないけど続きが楽しみ!

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空戦魔導士候補生の教官7

 

≪ミストガン≫に巨怪鳥(ガルダ)、現る!?
≪ミストガン≫空域に巨怪鳥(ガルダ)が接近。いまだ謎に包まれた生態のため、急遽捜索を開始するS128特務小隊。一方、生き物係に任命されたレクティは、鶏小屋でやけに身体の大きなヒヨコを保護していて――?

ユーリは悩んでいた。交流学校への参加を通してE601小隊の面々と仲良くなった……と思っていたのに交流学校から帰って来てからミソラ達がなんだかよそよそしいのだ。不安のあまり、放課後の彼女達に密着して原因を探ろうとするが……!?

ミストガンでの日常を描く短編集(このタイミングで!?)

E601小隊とカナタのミストガンでの日常を描いた、ドラマガに掲載されていた短編をまとめて描き下ろしを追加した形の短編集。ファンタジア文庫なので短編あるよな……というのは思ってたんですがこのタイミングで!?いや、まあ刊行順は大人の事情とかもあるとおもうので仕方ないんですけど前巻がミストガンを離れて新展開、めちゃくちゃ気になる所で次巻に続く!!してたもんだから正直出鼻を挫かれるというかタイミング悪!!!というか、7巻と6巻の順番逆にしろ!!!みたいな気持ちは凄いあります。大人の事情だから仕方ないけど……あと別シリーズ建ても小数点表記にもなってない本編ナンバリングに堂々と挿入されるタイプの短編集メチャクチャ久しぶりに当たってびっくりした。

内容としてはユーリの歓迎会をサプライズで開こうとしてミソラ達がこっそり準備していたらユーリが自分が嫌われているのでは!?と誤解してしまう「疑惑のコンプレックスチェーン」、レクティがヒヨコだとおもって怪鳥のヒナを育ててしまう「愛情のペットキーパー」、ミソラの実家の喫茶店の閉店の危機を救うためE601小隊が奮闘する「協創のホスティリティ」、ブレアがカナタにお菓子を作ろうとするが失敗してしまう「愛情のパティシエール」、反省文を書きたくないリコがサバゲーで後方支援科の女王様になる「女王へのロイヤリティー」、そしてとある事情で金欠状態なクロエとE601小隊の面々が学内全体合コンイベントでカナタとのパートナー権を賭けて争う「大迷惑のサードパーティ」という各ヒロインに焦点を宛てた6編。どのお話もメインとなるヒロインが可愛くて、良かった。

少しこの手の日常短編のテンプレにはまりすぎている感じというか、やや展開が透けてみえすぎる感じもあったんですが、この実家のような安定感のある展開と的確に各ヒロインの可愛さを見せてくる展開は本編の怒涛の展開の中で良い息抜き巻になっていて良かったと思います。いやでもやっぱこれ「5.5」とかで読みたい話だったんだよな内容的には。あとリコの話は同じレーベル人気作で恐らく同じ作品オマージュで有名な話があるので、どうしてもあちらと出来を比較してしまう……(ここぞとばかりにクソデカ文字と勢いで押し切る展開は結構好きだけど)。

描き下ろしの学内合コンイベントの話の、クロエとカナタの気のおけない距離感がめちゃくちゃ好きでした。カナタガチ勢のユーリ&ミソラや押しかけ妻のブレアが恋心の空回りする中で横から優勝をさらっていくクロエさんの本妻感、お互いの距離が近すぎて恋愛とも家族とも言い難い複雑でもどかしい言葉にできない関係性が垣間見えてとても良かった。あと、ユーリのサプライズパーティの話でユーリが「ひょっとしてユーリ菌伝染ると思われてる!?」の方向に行き着いてしまうのが微笑ましすぎ頭小学生すぎて好き。年上ばかりの特務小隊でずっと最年少してて同学年・後輩達の交流が薄めだった弊害なんだろうけど水着回といいユールパイセンの精神の幼さが凄い。

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