ページ 5 | 今日もだらだら、読書日記。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編10

 

3学期最初の試験は4クラスの攻防戦『生存と脱落の特別試験』!
冬休みが終わり高度育成高校の3学期が始まった。直後に告知された『生存と脱落の特別試験』は4クラスがジャンル別課題を対戦クラスにぶつける攻防戦。だが1位以外はクラスポイントが減少する過酷な試験で――!?

3学期が始まった途端に告知された次の特別試験『生存と脱落の特別試験』はAからDまでのクラスがそれぞれの対戦先クラスの生徒を5人指名し、順番にテストの問題を解かせていくという攻防戦。1位のクラスには大量のポイントが加算されるが、それ以外のクラスは大幅な減点。更に最下位のクラスからは退学者が出るという過酷な試験だった。攻撃より防御が、学力よりも他クラス含めて生徒達の得意不得意の把握やクラスリーダーの考え方などの高度な情報戦が要求される特別試験を前に早速各クラスリーダー達は策略を巡らしはじめて……。

クラスのリーダー達を中心に繰り広げられる高度な情報戦が楽しかった

各クラス・キャラクターの関係性の変化が如実になった2年生同士の情報戦、ガチの蹴落とし合いがめちゃくちゃ面白かった〜!!やっぱりよう実、同学年のクラス対抗でバチバチしてる回の面白さは段違いですな。

個人的にはなにより前巻で覚醒していた一之瀬がクラスメイトたちを切り捨てるような戦略取ってくるのではと戦々恐々していたのですが、他クラスへの攻撃性を獲得した事でクラス全員で生き残る基本戦略はそのままに狡猾な戦略も使いはじめて、一気に侮れない強敵へと進化してきたの強すぎました。どこまでその路線を貫けるのかも含めて今後が楽しみすぎる。それにしても執拗に軽井沢を標的にしてたの、退学に出来るとは思ってなくても「こいつなら退学になってもいい」くらいは思ってそうだな一之瀬……。

そして高度な情報戦や水面下での策略といったらある意味龍園クラスの十八番というか、もう今回は本当に悪い顔の龍園さんの挿絵がいっぱい見れて大興奮ですよ!!ただ、これまで以上に諸刃の剣感が強かったというか真っ当に学力で戦わせたらどうにもならないという弱点も露呈していることには危機感を覚える展開で、どうなっていくのかが不安なクラスではあるんだよなあ。そして全リーダーの中で一番綾小路の教えを受けてきた堀北が、露骨に戦略に綾小路の影響受けちゃってるのメチャクチャ良い。その反面で誰よりも慈悲深いリーダーになりつつあるのが更に良い。元々尖った才能を持っていた坂柳・一之瀬・龍園と違い良くも悪くも何も持っていなかった掘北と「作られた天才」である綾小路、何かと共通する部分も多いんだろうなあ。

そんななか、今回メインで光が当たっていたように思うのは坂柳とAクラスの面々。反対派筆頭だった葛城を排除して一丸となったと思いきや、そのAクラスの中で少しずつ育っていた裏切り者の気配。良くも悪くも天才肌の自信家でなんでもひとりでどうにかしてきた坂柳が高度育成高校で初めて受けた挫折と敗北。最後の最後にむき出しになった本人も自覚していなかった本当の気持ちが印象的でした。

どこかのクラスが勝ち抜け・脱落するのはありえないような状況なのでもう今回のポイント設定から見ても勝敗にかんしては順当な結末といえなくもないのか。そして坂柳にダメージを与えたいならたしかにそこしかないけどそう来るの……。遂に捕捉可能な点差に堕ちた坂柳クラス、立ち直るには時間がかかりそうな雰囲気だし落ち目だった一之瀬クラスの復権・どう出るかわからない龍園クラスの動向も含めて色々な意味で今後のAクラス争奪戦がどう変化していくのか楽しみすぎます。

クラスメイト達の変化、綾小路自身の変化にも目が離せない

今回に関してはもう色々な意味でカラー口絵の堀北とのシーンこれさあ!!!!!! !!!!!!!!! !!!!!!!!!!!!しか言いようがないんですけど、2年生も終盤に差し掛かり本当にわずかながら綾小路が幼い頃に極限まで擦り減らした自身の感情を取り戻しつつある雰囲気なの凄い気になるんですよね。いやそれが良い方に転ぶのか悪い方に転ぶのかは本当にわからないんですが。かつて1年生の頃に「最後に勝ってさえいればいい」といっていた綾小路が漏らした最後の言葉、良くも悪くも彼自身も変化してきているのではないかという感じがあって今後が楽しみ。いやまた地文すらも欺いてる展開かもしれないけど。余談ですがちょっと前から匂わされてる綾小路のクラス移動の話、今回の話でもう移動先が一之瀬クラスしかないだろうなって感じになってきたけどどうなるんだろう。綾小路も割りと強者と戦いたい系の欲求を持ち始めてる気配なので、自分が育てた堀北クラスと戦いたいみたいなアレありそうな気はする。

あと個人的には掘北・櫛田・伊吹の仲悪トリオが最高に良くて、掘北に餌付けされている伊吹とふたりを見守るポジションの櫛田のキャットファイトで初っ端からニコニコになってしまった。綾小路から伊吹の退学を匂わされて動揺する掘北さんにニヤニヤするし、コミュ力低め孤高の女である堀北の弱点部分を補う左腕として機能しはじめた櫛田桔梗が有能すぎて滾る。いやほんとこの3人がメインの短編がもう1本ほしいもっと読みたい……コミックアライブ付録の9.75巻も最高だったのでみんなよもう……電子版にも付いてくるらしいので買おうな……。

月刊コミックアライブ編集部(編集) 「【電子版】月刊コミックアライブ 2023年9月号 [雑誌]」
月刊コミックアライブ編集部(編集) (著)
KADOKAWA
発行:2023-07-27T00:00:00.000Z

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VTuberのエンディング、買い取ります。2

 
Tiv

第35回ファンタジア大賞〈大賞〉受賞の『推し』の救済と再生の物語――
高校に復学した苅部業は、クラスメイトで演劇部の美少女、影山花から『女性との同棲疑惑で炎上した男性VTuberを引退させてほしい』という依頼を持ち込まれる。 元VTuberの姉、影山蛍をVTuber界隈から遠ざけたい妹。 VTuberの良さを妹、花に知ってもらいたい姉。 すれ違う想いを抱える姉妹を前にして、業は過去と向き合うことになり……。  ――人生を懸けた推し・夢叶乃亜がいない世界で、俺はVTuberを今も好きなのか? 「みんなの希望の光ですからっ」乃亜の意思を継いだ小鴉海那と、理想と現実の狭間で揺れる業は『推し』が救われる最期を目指す!

一年ぶりに高校に復学した苅部業。学校では目立たないように過ごしたかったが、復学当日に隣の席の美少女・影山花に正体を見抜かれて「炎上中のとあるVtuberを引退に追い込んで欲しい」と依頼される。気乗りしない依頼であったが、彼女の姉がかつての推し・夢叶乃亜の無二の親友であったVtuberの「白虎燐香」であると知り……。

これまでの要素は残したまま始まる新展開が楽しかった!

1巻は業を中心に据えて様々なVtuberとそのファンの姿を描くオムニバス形式でしたが今回は1つの炎上事件をじっくりと掘り下げつつ白虎燐香を通して「夢叶乃亜」というVtuberにも迫っていく……というお話でした。かなり綺麗に終わってたし、色々な続け方のありそうな作品だったのでどういう方向に続けるのかというか「どの要素」に寄せて来るのか……と考えていたのですが、「Vtuber」「推し活」「闇堕ち」という1巻で印象的だった大きな要素はそのままに舞台を学園に移して新たなヒロインも登場させてラブコメ的な部分も強化してきて前巻以上に属性盛り盛りにしてきた感じがとても楽しかったです!新キャラ(新ヒロイン?)の花さん、この人チョロすぎない?というかなんで登場直後から業への好感度高いの??みたいな違和感もちょびっとありましたがミーナと業の取り合いしつつ基本的に「推し」のことしか見えてない彼の姿に二人で頭を抱える……ミーナとは良きライバルでありつつ嫌いにはなれない、みたいなキャットファイト感が大変微笑ましく良かった。

そして、とあるVtuber炎上事件の真相を探っていく傍ら、少しずつ物語全体を貫く大きな謎である「夢叶乃亜の人となり・その失踪」という謎に迫っていくという展開が印象的。1巻では1話完結の短編形式だった分割りと業の行動が神の視点的だった気がするのですが、今回は1巻じっくりかけて1つの事件を追っていくスタイルなので先の見えない展開が楽しかったです。

クラスメイトの花から持ち込まれた「Vtuberを燃やしてくれ」という依頼から始まって、Vtuberというよりは花とその姉であるVtuber白虎燐香の絆の物語に辿り着きその内面に踏み込んでいきつつ、見失いかけた業のVtuberへの情熱も拾い上げつつ、最終的にはちゃんと依頼通りにVtuberを「終わらせて」終わる展開も軸がブレない展開でとても良かった。

次巻ではミーナの再デビューを巡って色々ありそうな雰囲気だし、1巻の時点では手がかりなさそうだった乃亜の失踪にも切り込んでいきそうな終わり方で続きがとても楽しみです。

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誰が勇者を殺したか

駄犬
 
toi8

勇者は魔王を倒した。同時に――帰らぬ人となった。
 魔王が倒されてから四年。平穏を手にした王国は亡き勇者を称えるべく、数々の偉業を文献に編纂する事業を立ち上げる。  かつて仲間だった騎士・レオン、僧侶・マリア、賢者ソロンから勇者の過去と冒険話を聞き進めていく中で、全員が勇者の死の真相について言葉を濁す。 「何故、勇者は死んだのか?」  勇者を殺したのは魔王か、それとも仲間なのか。  王国、冒険者たちの業と情が入り混じる群像劇から目が離せないファンタジーミステリ。

魔王を倒し、その帰り道に命を落とした勇者アレス。それから4年後、落ち着きを取り戻した王国は勇者の偉業を遺すために文書の編纂事業を立ち上げる。かつての仲間たちが言葉を濁す中、少しずつ本当の真実が見えてきて……。

勇者の足跡と世界の真実を巡るファンタジー&ミステリー

かつての仲間や家族・隣人達からインタビューという形で聞き出した言葉と、アレス自身の体験を交互に語りながら勇者アレスの生き様とその深層に迫っていく物語。同じエピソードを何度も行きつ戻りつして語っていくというともすればテンポ悪くなりそうな形式でありながら、語り手の視点が変わることで全く別の物語となっていくのが印象的でした。

まず真っ先に彼と共に魔王を倒したパーティーメンバー3人(剣聖・聖女・賢者)の話を聞くわけですが、この3人がまず完全にアレス大好きでニヤニヤしてしまう。それぞれの分野での「天才」であり自分以外の人間を見下していて能力は高いが他人と協力することを是としない3人が、能力としては凡人で身分も低くそれでいて「勇者になる」という信念だけは人一倍あるアレスのひたむきな(といえば聞こえが良いが、実際に見てみれば“異常”な)努力を目の当たりにしてそれぞれの驕りを打ち砕かれてしまうという展開がたまらない。そして、言葉ではどんなに冷たいこと言っていてもそれぞれがアレスに対してクソデカ感情持ってるのがまるわかりなんだよなあ……色々な意味でハードな展開の物語でしたが、彼ら3人の存在は良い意味で物語を読んでいく上でたいへんな癒やしでしたし、心強い道標であったなと思います。(個人的には物語が終わった後のおまけ短編での彼らが微笑ましすぎて好きすぎる)

“勇者”という存在に異常なまでに固執する努力型の凡人・アレスの行動に天才達の意識が変えられていく姿が印象的な前半、そして勇者アレスにまつわる物語の真実と「世界」に纏わる様々な謎が紐解かれていく後半。4年後という時期で特に身近に居たわけではない隣人達の視点からではアレスというかつてそこにいた誰かに対する印象が「魔王を討伐した勇者」という強烈なイメージの上書きによって少しずつ歪に変化していて……しかしそんななかに埋没しかけていたひとつの違和感が形を取ったとき、ほんとうの物語が明らかになっていく。この辺はネタバレになってしまうのであまり詳しくは語れないのですが……あらゆる意味で「誰」も期待していなかった一人の少年が異常な努力と執念で全ての状況をひっくり返していった真実の物語は物悲しくもあり、その反面どこか痛快なものでもありました。

謎が謎を呼ぶ展開、魔王ですら太刀打ちできなかった勇者を「誰が殺したのか」──物語を追うにつれてこの言葉に二重・三重に意味を持たされていく展開がとても面白かったです。世界はどこまでもままならなくて、でも最後にはどこか暖かい気持ちになるエピローグがとても良かった。しかし続刊が決定したとのことですけどこの巻できれいにまとまりすぎてる感じだけど何やるの……??

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ステマ規制法強化を受けて、サイト内の表記を見直しました

10月1日に施行されたステルスマーケティングに関する法制強化を受け、取り急ぎサイトのヘッダー(サイトタイトルの下)にアフィリエイトリンクに関する文言を追加しました。取り急ぎの対応なので表記はあとで移動させたり文言を変更したりするかもしれません。

■プロフィールページにも「サイト内の商品リンクについて」という項目を追加しています。
このブログと管理人について

■また、幾つかの本の感想に献本頂いた旨を記載しました。
文言を追加した作品一覧
該当するのは上記のこのラノ協力者をしていた頃に宝島社様から頂いた献本くらいなんですけど、いただいた本ちゃんと読みきれてないので表記していなかったことも含め大変不義理をしていたなと……すみません……。なお個人宛てでお声掛け頂いた献本は読み切れる自信がないので一律でお断りしています(昔は有り難いことにちょくちょく声を掛けていただいておりました)

■このブログで利用している「Simplicity2」でも対策アップデートが実施されています。
2023年から10月1日から施行される通称ステマ規制に対応させるため、Simplicityをバージョンアップしました。機能追加 ステマ規制で対応機能の追加ステマ規制に手軽に対応できるカスタマイズ機能を追加しました。詳細はこちら。変更 ウ
不具合修正も含まれるため近いうちにアップデートを行う予定ですが、うちのブログでこちらのPR表示機能を使うかは悩み中です。使うとしても文言を書き換えて使う感じになるかな……。

消費者庁のサイトを見ても「景品表示法の対象となるのは事業者だけです。企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはなりません。」とあるのでこちらが規制される対象に入ることはないと思いますが、公式・企業側が処罰対象になってしまうことも鑑みると最終的にこちらもサイト内の表記等を改めて確認していく必要があるなと思いました。あと、うちのサイトは全く関係ないですが副業と呼べる程度にアフィリエイト収入がある人が「事業者」なのか「第三者」なのかは割と悩ましい所なのではないかと……(商品単価の安いラノベ感想ブログでそのレベルのアフィリエイト収入を得ているのは本当に限られた人だけになるとは思います)

A8.netなどのようにアフィリエイトサイト側から対応を依頼されるパターンもあるようです。当サイトは現在A8.netのアフィリエイトは利用していないのですが、かつてbk1のアフィリエイトリンクを入れていて、かつてのリンクが残っている記事が幾つか存在するので過去記事のアフィリエイトリンクも含めて少しずつ修正していけたらなと考えています(※現在は旧bk1・後続のhonto共にアフィリエイトプログラムを終了しているのでデッドリンクになっているのではないかと思います)

個人的にはTwitter(X)で感想ツイートをした際に一緒に入れているBookWalkerのアフィリエイトリンクがどういう扱いになるのかは気になるところです。感想ツイートのみある程度の反応を見る目的でアフィリエイトIDを入れています。取り急ぎ他の人の対応を見ながら自分のスタンスを決めていこうと思っているのですが、SNSでの言及に関してはあまり参考になりそうな記事がなくて……ブログと同じくbio欄に注意書きを入れておくのが確実だと思うんだけど、あの枠そんなに文字数ないんだよなあ。

というかTwitter(X)での感想ツイート自体が今どんどん難しくなっていて(書影引用で使っていた版元ドットコムさんのルールが変更になって殆どの新刊の書影が引用できなくなったり、ツイッター(X)のTLが間引かれるようになってフォロワーさんのTLに表示されづらくなったり、私はラノベ感想をツリーにぶら下げる形でやっていたのですが、過去のツリーに3ツイート連続でぶら下げると一番大事な1ツイート目の表示率が激減したり……)本当に悩ましいです。独自タグでやってる人が多いみたいだけどそれもちょっと謎の気恥ずかしさが……。

現状取った対応はこのくらいですが、今後も各サイトの動向をチェックしながら随時対応してまいります。
「続きを読む」から参考にしたリンクなど。

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飯楽園‐メシトピア‐ 崩食ソサイエティ

 

不健康⇒射殺!? やり過ぎ健康社会・日本に立ち向かえ!
《メシトピア》――突如施行されたヘルスケア政策は、食料自給率や健康寿命を改善し脚光を浴びた。 だが、その実態は基準に満たない「不健康な食事」、そしてそれらを摂取する「不健康な人間(アディクター)」を社会から隔離・抹消する危険な命の選別だった!料理人を志すアディクターの少年・新島は、厚労省が率いる《食防隊》の魔の手から逃れるなか、生真面目な食防隊員の少女・矢坂弥登と出会い、ワケあって二人は禁制品であるカップ麺を口にしてしまう。 「お願い! 私もう一度、カップラーメンを食べてみたいの――!」 「おまえ食防隊だよな!?」 それ以来、ジャンクフードの味を知った矢坂弥登が捜査と称して通い詰めてくるように!? 果たしてメシは銃よりも強いのか……? 食と自由を巡るメシ×ディストピア! 命がけの逢瀬が幕を開ける!

第三次世界大戦後、行き過ぎた健康政策によって食品添加物やジャンクフードなどの健康を害する食品はすべて禁止となった未来の日本。横須賀で「違法な食品」を取り扱うアディクター(反健康主義者)の青年・イッシンは敵対する食防隊員の少女・矢坂弥登にひょんなことからカップ麺を食べさせるが、カップ麺の虜となった彼女に押しかけられ、なりゆき同居生活を送る羽目に!?

「食の自由」を巡って繰り広げられるボーイ・ミーツ・ガール

近未来のディストピア日本で「食の自由」を巡って繰り広げられる身分違いのボーイ・ミーツ・ガール。全体的にコメディ色が強い物語でありながら、色々と現代社会と重なってしまう部分もあってなかなかに考えさせられるお話でした。贅沢が極まってて庶民の気持ちがわからなくてわけのわからないこと言ってる上流階級と日々の食事にも苦心する庶民・底辺層の感覚の断絶、ここまで酷くはないけど割と笑い事じゃないんだよな……タイトルにも使われている「メシトピア」という言葉がニッシンの語るそれと為政者側で出してきたそれで真逆の意味を持ってしまっているのがなんとも味わい深い。

一杯のカップ麺によって自分の信念を破壊された弥登がこれまで目を向けてこれなかった「現実」と向き合い、ニッシンとの同居生活によって少しずつ彼の語る「食の理想郷(メシトピア)」に惹かれていくという展開がとても良かったです。弥登の「エリート家系のお嬢さん」としての描かれ方が、時に突拍子もない行動に走ることもあるけれど基本的に一本筋が通っていて凄く好き。自分が何をしてきたか理解した上でそれでも自分が傷つけてきた横須賀の人々と真摯に対話を重ねていく(でも必要ならば冷たく切り捨てたり反撃したりもする)姿が好感度高かったし、全てを救うことは出来ないと理解しながらもその手をより多くの人間に差し伸べられるように妥協点を探っていく……上流階級=為政者としての視点を持った上で理想を語るその姿が印象的でした。

受け取り方によってはかなり難しい内容をやりつつ、説明が足りなくて周囲を誤解させがちな弥登・ニッシンの仕事上の相方で彼に好意を抱き弥登を警戒しつつも世間知らずな彼女をフォローしてくれる明香音・弥登への好感度が高すぎる弥登の愉快な部下たち……などと個性豊かな面々が繰り広げるやり取りはめちゃくちゃに楽しかったですし、なにより「はたらく魔王さま!」でも発揮されていた庶民的食事描写のクオリティが非常に高く、とても楽しい物語でした。カレーの残り汁で作ったすいとん汁とか、どう考えても普通に美味しくないけど美味しそうに思えてしまうのはなんでなんでしょうね……ラ◯ュタの目玉焼き載せパン現象……。

しかし、ナンバリングついてないしとりあえず続刊があるとしてもいったん1巻で綺麗にまとまる感じかとおもったら完全に「次巻に続く」で終わったな……いや、一応綺麗に終わってはいるんですけど弥登のキャラクターがとても良かったからこそこの終わり方はちょっと納得出来ないというか、続編があってこそのこの切り上げ方でしょうというか、こういう終わり方するならナンバリング入れるとか続刊決定してます!的なフリが欲しかったというか、さすがにこれは続刊前提で書いてると思うんですけど!!!よろしくお願いしますね!!!

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私と陛下の後宮生存戦略 ‐不幸な妃は巻き戻れない‐

 

すぐ死ぬ少女と不憫な最強陛下の、【死に戻り禁止】の後宮攻略ストーリー!
若き賢帝の唯一の妃『最愛』を決めるため、後宮に集められた妃達。 その中で最も格下の、五十番目の妃ソーニャには秘密があった。 それは【死に繋がる不幸を招く呪い】と【死ぬと時間が戻る祝福】を持つこと。 玉の輿を狙う妃達により魔境と化した後宮で、彼女は毎日『死に戻り』続けていたのだ。 (早く『最愛』を決めてくれないかな。そして家に帰りたい) そう願うソーニャだったが―― 「貴様を私の『最愛』にする!」 皇帝エルクウェッドが指名したのはソーニャ。 その上『最愛』のはずなのに陛下は大層お怒りのご様子で……!?

リィーリム皇国の人々はそれぞれが相関する『祝福』『呪い』という2つの力を持っている。「自然死以外の理由で死亡した場合1日前に時間が巻き戻る」という祝福と「死につながる不幸を招き寄せる」という呪いを持つソーニャは幼い頃からこの力のせいで死んでは巻き戻る日々を送っていたが、皇帝陛下の50番目の妃として選ばれて後宮に入れられて以降は他の49人の妃から命を狙われまくり、これまで以上に命を落としまくる日々を送っていた。この日も皇帝陛下の前で死んで1日前に戻って来る羽目になったが、何故か直後に自分の部屋を皇帝陛下が訪れて……!?

絶対にシリアスになれないデスループ365日

死ぬと1日前に時間を巻き戻す「祝福」を持つソーニャと彼女が引き起こすループを感知できる皇帝エルクウェッドが次々と襲いくる「死を呼ぶ苦難」を乗り越えて暗殺者だらけの後宮からの脱出を図る、というお話。

世界観設定の根幹・キャラクターたちの境遇を知るともう本当にシリアスで重いお話を想像してしまうんですが、これが意外なことにめちゃくちゃ「笑える」お話でした!!ループに巻き込まれてはキレ散らかし、キレ散らかすついでに自分に降りかかる苦難を全て吸収して自分のものにしていった結果望まずして「なんでもこなせる超人」になってしまった皇帝陛下が死ぬとループを引き起こすのに自ら死を呼ぶ不運を招き寄せる体質のヒロインと運命の出会い(※10年以上探してた)をし、なにがなんでもこれ以上ループさせてなるものかと彼女に降りかかる苦難を全部ループ中に得た妙技の数々で物理的に突破していくの強過ぎて腹が痛い。

剣の腕や知力でも超人的な能力を発揮する賢帝エルクウェッドですが、基本的に状況突破のカギとなるのは「女装姿で妃教育を受けた経験」だったり「自国を訪れた有名サーカス団に入門して曲芸を極めた経験」だったりするのでどこまでもシリアスになりきれない。ヒロイン・ソーニャが自分を守ってくれるエルクウェッドにときめきながらも内心めちゃくちゃ辛辣にツッコミ入れまくってるのも面白すぎる。国一番の権力を持っているはずの彼が自国民であるソーニャをみつけられない原因が彼自身の持つ『呪い』のせいというのがまた上手かった。

いつ起きるかわからないループで精神が摩耗していくのを防ぐため必死にキレ散らかしながら遭遇する苦難の数々を「趣味・特技」として吸収していくしかなかったエルクウェッドって冷静に考えると大分普通にキツい設定だし、なにより死に戻りしすぎて能力発現してから3日以上生きられたことのない・死を「日常」として受け入れて自死すらも淡々とこなしていく主人公の精神性があまりにも人間の枠を逸脱していてヤバい(というかこれはもう完全にニンゲンとは別のイキモノなんだよなあ……)んだけど、そういう物語の根幹に眠る本質的なヤバさを皇帝陛下のオモシロ妙技で吹き飛ばしていくの最高すぎて続きが読みたい。今季一番笑った。その他にも「仕事中はお肌がシワシワ将軍」「女性におもしれえ女と言わないとハゲる宰相」など個性豊かな能力を持つキャラクターが多すぎてとにかくどこまでも楽しかった。選ばれなかったお妃組にもなかなかのオモシロ人材が揃っていて、再登場してほしいキャラが多すぎる。

良い笑いをありがとうございました!!!綺麗に1冊でまとまってはいるけど続きが読みたい……!!!

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VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた7

 

待望の五期生が登場するVTuberコメディ第7巻!
星乃マナちゃんの卒業配信を無事終えた淡雪。しんみりする間もなく遂に待望の五期生がデビューすることに!ワクワクしていた彼女の前に現れたのは相変わらずどころか"今まで以上にライブオン"なライバーたちで!?

奇人変人が集うVtuber事務所「ライブオン」に新人の季節がやってきた!配信切り忘れをきっかけに覚醒して今では事務所のエースとも呼べる存在になった淡雪はライブオンの既存ライバー達と共にデビュー配信を見守ることに。今回は3人の新人を1ヶ月置きに順次デビューさせていく──とのことなのだが……!?

5期生デビューに的を絞ったシリーズ最新刊

4期生まででも十分限界まで砂糖を溶かした飽和水溶液みたいな箱なのに新人デビューしたらどうなるの!?と思っていましたが、初っ端から「アンチ・ライブオン」を標榜する宮内匡が登場して下品なシモネタばかりのライブオンを浄化する!と自らを殴りに行くパンチの高い展開で凄かった。これは色々な意味で大丈夫か!?とおもったのですが割と普通に「いつものライブオン」で安心した。そんな気はした。やはりこの作品の掛け合いは安定して楽しいなあ。

エッ◯なのはいけないと思いますといいながら豊かな想像力で妄想を育んでしまう宮内、自称厨ニだが自分の設定がよく行方不明になる可愛い担当(本人不本意)ダガーちゃん、そして人間不信とディープな物カプ語りが売りのチュリリ先生。それぞれ単体で見ると色々な意味で危なっかしい部分があるのですが、そんな三人が合わさったときの相乗効果・安定感ときたら。事務所側、完全にセット売りするつもりでデビューさせてるとおもうんですけど、最初から三人一緒でお出ししてくるのではなくまずはバラバラにデビューさせることで彼女ら自身の強烈な個性を見せつけておいて、先は他の先輩達と絡ませて、そこから最後の最後で5期生でコラボさせる……という流れにしていてめちゃくちゃに売り出し方が上手い。これ最初に三人セットでお出ししてたら同じ物を見たとしても内輪ノリすぎてキツかったのでは……とも思うし、最初の印象→配信を実際にやってみたときの印象→三人で組ませたときで何度もどんでん返ししてくるの本当に面白かった。

ただ、この作品だからこそ荒れてないのであって現実でこのキャラお出しされたら誰かひとりは炎上するんじゃまいかとは……個人的にはチュリリ先生の物カプ語りとか割とギリギリ感が凄いな……と思ったのですが、そこからよく考えるとシュワちゃんのスト◯◯も大概でしたねとお返ししてくる流れには笑ってしまった。そもそも彼女がライブオンを志すことになったきっかけの配信(ちなみに検索したら3巻でした)も読み直すと結構ギリギリだな……チュリリ先生の受け止め方と影響力によっては炎上しかねなかった(シュワちゃんが)やつ。ところで教育用の映像が一番理解できないのちょっと笑う。

今回は本当に5期生デビューに的を絞った展開でコラボとかも最小限だったので、これからコラボとかで既存のライバー達と絡んでいくの楽しみですね。

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ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編9.5

 

「メリークリスマス。サンタの登場ですよ」
高度育成高校での二度目の冬休みがやってきた。軽井沢とクリスマスのプレゼントを買いに行くという約束は、軽井沢のインフルエンザにより崩れ、綾小路はイブからの数日を1人で過ごすことになった。 そんな中『えっと、今日、綾小路くんの昼間の予定ってどうなってるかな』、『それは会ってからのお楽しみにいたしましょう。お部屋にお伺いしても?』『この後ちょっと顔を貸せ。30分後にケヤキモールの北口だ』、各クラスリーダーからの電話が絶えない状況となっていた。 一方「綾小路くんってただ暗めなクラスメイト……じゃないでしょ。隠し事があるっていうか」クラスメイトの間で綾小路に関する議論が行われ始め――!?

クリスマスに一緒に過ごす約束をしていた軽井沢がインフルエンザで倒れてしまい、デートの予定が流れてしまった綾小路。ひとりで学園内を散策していると様々な人と出会ったり、呼び出されたりする羽目に。一方その頃、堀北クラスの面々は内密に会合を開いており……。

綾小路自身の変化が印象的な冬休み編(情緒の芽生え方が不穏)

綾小路と他キャラ達のやりとりを通して2学期の振り返りと今後の展開匂わせ(例によって不穏)をやっていく冬休み編。今回も小数点を冠した本編。綾小路の存在を勘繰り始める同級生たち、様々な動きを見せるAクラスの面々と板柳に闘志を燃やす龍園。不穏すぎる軽井沢さんまわりのやりとり…と今後の展開を匂わせつつ、2学期に登場した新キャラたちの掘り下げを進めつつすかさず新キャラも出していく姿勢面白かったです。山村さん大躍進すぎんか。軽井沢さん完全に捨てるタイミング見測られてる感じで不穏すぎるし、一之瀬との逢瀬がどんどん浮気現場みたいになっていくの危険が危ない。そして他ヒロイン達に混じってしっかり龍園(+葛城)で単独パート取られてて、もうあいつヒロインでいいんじゃないかな??ってなる。(いやでも龍園と葛城の間にある対等な主従関係もメチャクチャに好きなんですわ……)

今回は何よりも綾小路自身の心境の変化が印象的でした。「卒業後にホワイトルームに戻らない自分」を想像してみたり、物や人間に執着を覗かせたり……良くも悪くも無機的で感情がなかった綾小路にしては妙に人間ぽい反応が多かったけど、今のところ一番執着してるのがヨーグルトメーカーってそれでいいのか。歳末大セールを巡る一連の流れが面白すぎるしコミケの朝シャッター前大手の列が外に逃されてるのも知らずにスペースの周りをうろちょろしてるオタクみたいなことになってるしこんなことで生まれて初めての「悔しい」という人間らしい感情を芽生えさせるんじゃない。色々と今後が楽しみなんだけど、そこはかとなく対人周りの情緒の芽生え方が不穏なんだよなあ!!これで愉悦キャラになった日には手に負えないじゃん……どちらかというと強者と戦うためなら手段を選ばない系の情緒にも思えるけどそれはそれで手段を選ばなさすぎて迷惑というか……。

そして次巻から突入する2年生の3学期。待ち受けているのは「ほぼ確実に退学者が出る」といわれる難易度の高い試験。よう実の「退学者」って今まで全員作中で何らかの活躍をした人物だったので今回突然目立ってきたモブレベルキャラとか危ない気がするんだよな……というか一之瀬クラスは流石に次で退学者出すと思うんですよね……逆に切らないことで綾小路の考えるものとは違う「強さ」を見せていく展開だったらアツいけど……。

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私はご都合主義な解決担当の王女である 6

 

政略結婚回避のための“偽の恋人”ついに決定!!(だからキスは振りでお願いします)
兄セリウスの腹心の部下ヒューが起こした事件で弱ったところ、護衛の騎士クリフォードに慰められて元気を取り戻した私、オクタヴィア。 ヒューの問題はひとまず落ち着いたものの……恋人お披露目の日はもう目前!! ことごとく候補が空振りした結果、偽の恋人役をお願いするならやっぱり――貴方しかいないよね!? 政略結婚回避ラブコメ恋人探し編、堂々クライマックス!!

兄の腹心の部下・ヒューが起こした事件を追って、父王の元を訪れたオクタヴィア。そこで自分に政略結婚の話が持ち上がっていると聞かされる。護送されたヒューの行方を知るには──そして政略結婚を回避するには、口から出任せで兄に言った「恋人」の存在を本当に証明するしかない!?空振りしまくってきた偽恋人探し、ついに決着!?

もうクリフォードにしちゃいなよ!!!……とはいったものの

混迷を極めた偽恋人探し、ついに決着。いやこれはネタバレしないほうが楽しい話とおもうのでぼかすんですけど本当に最後の最後まで混迷を極めたし、予想外に予想外を重ねて結局そこに落ち着くとは思ってもいなかったんだよなぁーー!!!!(色んな意味で)という展開でした。いやもうほんとうに最初からずっと「もうクリフォードにしちゃいなよ」状態だったんですけど結局……うん。

兄セリウスの記憶、不穏な動きを見せる弟アレクシス、仲が良いはずだったのになんかギスギスしてる父王イーノックとその王配エドガー、それらの影で蠢く「例の人」。更に突然生えてきた政略結婚の話、他国の影も見え隠れしはじめて……これまでの伏線が詰まった盛り盛りの一冊でした。第一部クライマックスという触れ込みだったしセリウスの記憶の件も明らかになっていたので、ある程度しっかり落ち着くところに落ち着くのかと思ったんですが……そこから今巻のどんでん返しにつぐどんでん返しで先が見えないままとりあえず偽恋人探しが一件落着したところで幕引き、という感じに。

そして偽恋人はなんとか決まったものの、この流れだと逆に今後「両思い」になるまでの障害にもなりそうな展開だったなあ……『命令』に対する認識がお互いにすれ違ってそうな気がするんだよなあ……。とはいえ、色々な意味でこのくらいの土壇場じゃないと「彼」には決まらなかった気もするというのもあり。ふたりの前後を含めて物語がどう続いていくのか、とても楽しみです。

それにしても、推しカプを眺めるオタクのような顔のシル様笑ってしまった。この人地味に癒やし枠だなあ〜!!

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陰陽師と天狗眼 ─巴市役所もののけトラブル係─

 

訳ありイケメン陰陽師&山伏が怪異を解決。 ただし、お役所仕事として。 広島を舞台に、異色バディがお届けする「もののけ」ファンタジー!
古より怪異と隣り合わせの町・広島県巴市。 巴市役所の「危機管理課特自災害係(通称もののけトラブル係)」に採用された、 出雲の高名な陰陽師一族出身ながら、少し訳ありの黒髪美青年・宮澤美郷と、 幼い頃に在野の天狗を名乗る男に拾われ、フリーの山伏となった 金髪・緑銀眼の熱血系イケメン・狩野怜路。 いきなり同居することになった異色のふたりが、 現代に起こる怪異を華麗に、そしてお役所仕事に追われながら解決していくことに――。

広島県巴市の市役所の通称「もののけトラブル係」に配属されたフリーの陰陽師・宮澤美郷は、不動産屋の手違いで着任早々宿無しになってしまった。そんなところに自称・拝み屋の金髪ピアスのヤンキー・狩野怜路から声を掛けられ、彼の家に居候させてもらうことに……。

黒髪イケメン&金髪ヤンキーが怪異を祓う、お仕事系バディ物

片やエリート陰陽師一族の生まれだが身の内に「異形」を飼う男、片や「天狗」を名乗る存在に拾われて呪術師として育てられそれ以前の幼い頃の記憶が無い男。生まれも育ちも違えどそれぞれ人には言えない秘密を抱えた2人が広島の古い屋敷で共に暮らしながら少しずつお互いに心の距離を縮めていく、お仕事&あやかし退治系のバディ物。

儚げ美青年に見えてなんだかんだで生きることに執着するし笑顔の仮面を剥ぎ取ればなかなかどうして図太い性格している美郷と義理人情に厚く頼れる兄貴のように見えて自分の命を軽率に「対価」として差し出せてしまう見た目はヤンキーなのになんか桜に攫われそうな男・怜路…という二人の対比が印象的でした。見た目はどうみても桜に攫われそうなの美郷さんなんだけど、本編読んでみたら桜に攫われるのどう考えても怜路なんだよな……。

そして主役2人の関係性とその変化も楽しいのだけど、個人的に美郷が自分の身の内に巣食う白蛇精と折り合いを付けていく展開も大変良い。自分を脅かす存在であり現在も完全に支配下に置いているわけではなく「それ」に対して複雑な思いを抱えていた美郷が相棒の危機を救うためにその力を借りる決意をする展開がアツいし、喋らないのに謎の愛嬌……というか個性がある白蛇精さんだんだん可愛く思えてくるし、というか怜路も作中で言ってるけど「白太さん」はズルかった。名前の時点で可愛い。名付けの妙を感じる。

今回は主役2人がそれぞれの身の内に抱える問題に折り合いをつけるまでという感じでバディ物として協力して妖怪退治する展開はあまりなかったんだけど、同時収録の短編で出会う前の二人がそれぞれもののけトラブルに対処するお話が描かれていて、このふたりが今後色々と協力する間柄になっていくのが楽しみになりました。

それにしても終盤に色々余裕なくなってきて体面かなぐり捨てて職場の嫌味な上役にクソ塩対応する美郷さんめっちゃ好きだな。そして市役所の同僚にして元同級生の広瀬くんがどうかんがえても美郷さん拗らせてるのも良き。

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