主人公性人形兵器「スターゲイザー」を狩り、宇宙怪獣と戦い続けた少女・小日向茜は自らの命と引き換えに宇宙怪獣オフィケウスを封印し、死んだ。彼女の幼馴染・高橋嗣道は彼女の死を受け入れられず引きこもり生活を続けていたが、スターゲイザーの設計者である少女・山田麒麟から三ヶ月後にオフィケウスが復活すること、茜が「スターゲイザー」の次期操縦者として自分を選んでいたと聞かされて……?
“主人公性人形兵器”という設定が美味しすぎる
一人の少女が世界を救い消えた後……彼女の意志を受け継いだ「登場人物達」がその喪失に心を囚われ、嘆き、不器用に足掻きながらも再び世界を守る「主人公」になるため自らの足で立ち上がっていく物語。主人公らしい行動を取れば取るほど強くなる「主人公性人型兵器」という設定がまず大勝利すぎる。乗機の機能を開放するために必要な主人公らしい行動というのが「教室の後ろの窓際の席で転校生を見初める」「屋上で昼食を食べる」みたいなベタな学園青春ラブコメシチュエーションから「他人のために生命を賭ける」みたいなシリアスなものまでなんでもござれで、とにかく楽しかった。機能拡充のために無理やり学園青春ラブコメやなんちゃってデスゲームやらされてる展開が面白すぎるし、勿論終盤のアツい展開にも関わってくるし……主人公性開放をタテにしてあらすじとおりの「なんでもあり」、色んなジャンルの展開を拾っていけるのうまい設定だなあ。
そして主人公らしい行動には恩恵を与えるけど主人公らしからぬ行動には重いペナルティを与える主人公性人形兵器のスターゲイザーさん、普通に面倒くさい主人公属性ゴリ推しオタクの人じゃないですかーーー!!!気弱で普通の主人公が目の前に脅威を前に立ち向かえずに一度逃げ出そうとするとか最高に主人公性高い行動だと思うんですけど(いや本当に逃げ出してしまったら主人公性皆無だけど)、それを敵前逃亡とみなして解釈違い起こすスターゲイザーさんとは解釈が合わない。スターゲイザーさん、主人公の解釈が昭和で止まってるんだよなぁ……。あと私なら非常時に学校の制服で否応なしにロボに乗るシチュエーションには百万点あげます(聞いてない)
少年少女達がそれぞれ前に踏み出していく展開がアツい
永遠に皆の中で輝き続ける最強の主人公・小日向茜、押しかけヒロインなのに嗣道が茜しか見てないせいで色々不遇なヒロイン・山田麒麟、黒幕系悪友枠の土門孝之介、茜に救われ彼女の一番近くにいた嗣道に対して風当たりが強めな御子柴蛍と貴山蓮。そして気弱流され系のように思えて誰よりも「主人公」としてのスピリットを持っている最弱の主人公・高橋嗣道……誰も彼もが魅力的なキャラクターばかりで、そんな登場人物たちが自らの存在全てを掛けてぶつかり合う展開が本当に面白かった!登場人物たちが小日向茜の喪失をどうやって受け入れていくのか……最強の主人公であった彼女ですら倒せなかった最悪の宇宙怪獣にどうやって立ち向かっていくか……誰よりも強かった小日向茜の本当の想いはどこにあったのか……「主人公」とは一体何なのか。宇宙怪獣vs人形兵器とのアツい戦い含め、あらすじから期待していたやってくれそうな展開全てに百点満点で応えてくれるの、とにかく気持ちよさしかない。個人的にはもうひとつの主人公性人形兵器を狩りダークヒーロー的な立ち位置になっていく貴山蓮とのライバル関係もめちゃくちゃよかったんですが、なにより嗣道への激重感情が隠しきれてない悪友・土門孝之介の暗躍にめちゃくちゃ滾りましたね!!嗣道ならこのくらい乗り越えるから大丈夫と信頼というには歪んだ執着で一歩間違えたら死ぬ試練を課してくるの人の心がなくて最高なんだよなあ!!一応彼の行動原理も「茜から託された」という大義名分があるわけですけど、やっぱどっちかって言うと嗣道への激重感情で暴走してる感じがするのたまらん。
1巻で綺麗にまとまっている物語ではあったけど、逆に続けようとすればいくらでも続けられそうな物語でもあり……続巻があるなら読んでみたい。楽しみにしてます!