ある時から推しVtuber・加々宮エリンのマイクに意識が移ってしまうようになってしまった、普通のVtuber好きの高校生・三樹春人。マイクとして知った彼女の「素」の姿を面白いと感じた彼は、故意的に配信事故を起こして彼女の正体を晒してしまう。はたしてエリンは、清楚でかわいいメイドさんアバターと多額の借金を抱えたギャンブルクズというギャップのあるキャラクターでVtuber戦国時代を下剋上していく──!?
Vtuber・加々宮エリンのキャラが最高におもろい
人間としてはあくまで善良だが、ギャンブルが大好きでヒリつくスリルが大好きで金銭感覚イカれてるだけで自然にギャンブルクズ発言しながらリスナーに金をせびり「スパチャで借金返済」と言い切る、存在自体がギャンブルみたいなエリンのキャラ(ほぼ素)がめちゃくちゃ良かった!!キャラクターコンセプトがメイドなのに、素の姿がバレてからは慇懃無礼にリスナーに金払わせようとしてくるところとかクセになる。連帯保証人多すぎません!?(※リスナーの愛称です)個人的にお気に入りなのは競馬配信の回。オタク特有の早口で生き生きと予想をしているエリンの楽しそうな姿と隙あらばギャンブル性の高い賭け方をしようとするギャンブラーの生き様、そして笑いの神様に愛されてるとしか思えない顛末が面白すぎて、リスナーと一緒に一喜一憂してしまった。競馬のことは何もわからないけど、オタクが自分の好きなものについて語ってる話は健康に良いよね。エリン、笑いの神様には愛されているけどギャンブルの神様には全然愛されてないのが悲しい。
そして、キャラクターが面白いというだけではなくて、どんな逆境でも逆手にとって自分の魅力に変えてしまえるトーク力が凄すぎるんですよね。普段のリスナー達とのコメントの掛け合いももちろん楽しいんですけど、配信事故を起こしてしまってもただの事故で終わらせずに切り替えて自分の本性を混ぜ込んだ無茶苦茶なキャラクターを演じていくその対応力、アンチコメや意地悪な先輩からの心無い言葉すら自分のフィールドに持ち込んで笑いに変えてしまう所、本当に読んでいて安定感しかない。最終的に借金取りの担当者まで自分のファンに引き込んでしまう手腕には笑った。
主人公のプロデューサーとしての腕がじわりと光る
色々な意味でこの物語は「加々宮エリン」の個性の強さ・キャラクターとしての魅力で成り立っているんだけども、それを見守っているだけのようで巧みに彼女の方向性を舵取りしていく主人公の関わりかたがまた面白かった。配信事故をわざと起こすのはどんなに葛藤してても結果オーライだとしても普通に邪悪だとは思うし、やった相手が喋り強者のエリンじゃなかったら死んでたと思うが!!自分の作った設定を意識しすぎて無難なキャラクターを演じていて鳴かず飛ばず状態だったエリンに配信事故を起こさせて本性を引き出し、それ以後は彼女の正体を知らないバイト先のエリンリスナーの同僚として彼女にそれとなく「アドバイス」をしていく。どんなに才能があっても売り方次第で埋もれてしまうVtuber戦国時代、良くも悪くも主人公の裏からのサポートがなければこの人材発掘できてないんですよね。それにしてもマイクがオンになると意識が強制的にそちらに移動してしまう設定、めちゃくちゃ面白いんですけど学校の授業中とかテストの最中にエリンがゲリラ配信とかはじめたら死んでしまうな……。
「マイク設定を弄るくらいしか出来ないマイク」の自分と「何も知らないバイト先の同僚」でしかない自分。出来ることが限られる中で巧みに加々宮エリンをプロデュースしていく主人公が面白かったです。そしてその活動の集大成ともいうべきクライマックス。憧れのVtuberとコラボすることになりガチガチに緊張していた彼女を最初の事故を彷彿させる展開で正気に返す展開、そこからの借金完済という展開がとにかくアツかった。その後の(リアルでの)オチまで含めて完全に笑いの神様が憑いてたけどな!!!
コメント欄との掛け合いも含め、気楽に読めるとても楽しいお話でした。綺麗にオチはついてたけどこれは続編作ろうとすればどうとでもなる終わり方ですよね!?続編待ってます!!