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「このラノ2023」感想と自分の投票の話

『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) このライトノベルがすごい! 2023
『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) (著)
宝島社
発行:2021-11-25T00:00:01Z

今年も「このラノ」のアンケートに参加したのでざっくり自分の投票とざっくり本読んだ感想の話をします。協力者は降りて久しいんですが最近の協力者枠は自分の投票と総合コメントが載せてもらえていいなあ。しかし向こうの協力者枠の募集要項で指定されてるほど今読めるか微妙なところだしなあ……ギリギリその数字になってても最近の新刊を読んでるわけじゃないしなあ……という顔。

殿堂入りが……殿堂入りが多い

今回で3回目の新文芸部門1位だった「本好き」に加えて、殿堂入り条件緩和で例年ずっとWEB投票1位だった「よう実」、上位常連の「チラムネ」がランクイン。よう実はともかくチラムネはアニメ化もまだだしこれからも投票したくなること多いのではー!?よう実も作者インタビュー見る限り3年生編ありそうな雰囲気だし、と思ってしまったけどたしかにずっとランキング上位にいたもんなあ……。

よう実にハマってこのラノ投票復帰したという経緯があったので投票できなくなる前にコメント一度採用されてみたかったですが多分凄く競争率が高い。

作品紹介とインタビューに重点を置いた紙面楽しい

去年の感想でも言った。協力者の投票内容が全部載るようになったのも性別年齢別のランキングが載るようになったのもブックガイドの方にも投票コメント掲載が入るようになったのもあって、以前の紙面よりも作品との出会いに重点を置いている感じが楽しいです(毎年言ってるけど名台詞コーナーが消えたのだけが寂しい)。ランキング入った作品殆ど読んでいない状態だったので(このブログの中の人は特に最近のラブコメの波動に全然ついていけていません)これからしっかり中身を精読して気になる本に手を出してみたいとおもいます。

あと表紙が特集記事の載っていて殿堂入りのSAO、表紙に載ってる目次がインタビュー主体になったのも表紙からのランキングバレを上手く避けてる感じで上手いなあと。つまり来年再来年あたりで俺ガイルとかよう実表紙の可能性あるな。ないか。

よう実の衣笠先生インタビューはここ数ヶ月アニメ雑誌「ニュータイプ」に掲載されたインタビューよりも書き手側の話が多くて、今までと視点が違う感じが面白かった。綾小路のキャラクターが出来るまでとか、トモセ先生との出会いの話なんかも面白かったなあ。あとちょくちょくエロゲー時代からのファンが指摘している「完結させられない問題」にも言及していて、小説のほうが性に合っているので大丈夫ですみたいな話をされてたので良かったなあと思います。3年生編の話もちょっとしていたので2年生編で終わるってこともないみたい。楽しみ!!

これに投票しました

コメント採用どころか「よう実」以外全部ピックアップもなくて寂しい。去年と今年は投票時のコメントをそのまま残していたのですが、毎年のまとめと比べてちょっとよそ行き気分で文章書いてるので自分で読み返すとちょっとおもしろいですね。キャラクター投票のコメントはもう少しテンション高めでも良いのかも(ていうか堀北さんが!堀北さんが初ランクインしてておめでとうだった!!よう実の女性キャラだと堀北伊吹櫛田の凸凹トリオが好きなんですけど見事にランクインしない3人なので悲しいw)

作品部門

1:七斗七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」→感想
配信事故を切っ掛けに成り上がっていくVtuberの話…という目新しさに惹かれて手に取った作品ですが、毎巻コミカルな会話劇をやりながら各キャラクターに焦点を当てて掘り下げていく構成になっているのが、読みやすいし安定感がある。リスナーとの会話劇にも「毒」が殆どなく、安心して読める作品なのが嬉しいです。
2:小路燦「VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった」→感想
借金を抱えたギャンブルクズのVtuberエリンが、圧倒的な個性と超絶トークスキルでシンデレラロードを駆け上がっていく姿が痛快。同時に、彼女のバイト先の同僚でありマイクに転身した主人公がそれとなくファンの意向を伝えたり、萎縮してしまいそうな時に発破を掛けていくことで影に日向に彼女を支えていく展開が良かった。
3:コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!」→感想
主人公二人のお互いを束縛しない・否定しない・一緒に居て心地の良い関係性が物語を通して伝わってきて、読者も読んでいて元気がもらえる作品。偽装夫婦からスタートして少しずつ絆を深めあった二人が自然に距離を縮めていってお互いを本当の伴侶として認めていく展開がとても良かった。
4:夏目純白「純白と黄金」→感想
かっこいい男の子たちが鎬を削る、スタイリッシュなヤンキーバトルだと思って読み始めたら「ヤンキー」という概念の限界に挑戦するかのような、現実離れしたど派手な展開の連続がとても楽しかった。荒削りに感じる部分も多い作品でしたが、とにかくノリと勢いで読ませていく感じが良かったです。
5:衣笠彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」→感想
高校生活全体の折り返しに差し掛かり、顕著に変化していく人間関係が印象的でした。クラス崩壊の危機を乗り越えて結束を高める級友達を尻目に、主人公・綾小路は不穏な動きを見せていて。これから物語がどう動いていくのか、まだまだ目が離せそうにありません。

女性キャラクター部門

◆櫛田桔梗(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
クラスの中で一度は完全に居場所を失った櫛田が、再び居場所を得るために自分にしか出来ない形でその存在価値を示そうとしていく姿がアツかった。以前の腹に一物隠し持った姿よりも本性を出した後のふてぶてしい姿のほうが魅力的に感じたし、犬猿の仲である堀北との関係性の変化も楽しみ。

◆加々宮エリン(「VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった」)
借金持ち・ギャンブル狂いのクズという強烈なキャラクターでありながら、アンチのコメント・同業者からの嫌がらせすらも逆手に取って自分の起爆剤に変えていくトークスキルが最高でした。

◆柚日咲めくる(「声優ラジオのウラオモテ」)
「声優」であり「声優オタク」でもある彼女がその2つの間で葛藤し続ける姿が好きです。後輩声優からファンサを貰って内心悲鳴をあげたりする姿が微笑ましい一方で、自分の「推し」である彼女たちと一つの椅子を奪い合わねばならないという二律背反に悩み、葛藤する姿が印象的でした。

男性キャラクター部門

◆綾小路清隆(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
強い。かしこい。ひとのこころがない。他の生徒達とは全く別の場所を見ていそうな綾小路が同級生たちをどこに導いていくのか。とても楽しみです。

◆クノン・グリオン(「魔術師クノンは見えている」)
生まれつき目が見えないというハンデを背負いながらそれを乗り越えさせた結果、女性と見ればナンパしてしまう・底抜けに明るい・ちょっとマッドな見習い魔術師とかいうとんでもない逸材が爆誕してしまった。いろいろな意味で今後どんなふうに成長していくのか楽しみすぎる人材です。

◆グレン=レーダス(「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」)
殆ど出番のなかった最新刊でも最後に美味しいところを持っていくところはさすがの主人公!!宿敵・ジャティスとの対決も間近に迫っているようで、どんな活躍を見せてくれるのかとても楽しみです。


王様のプロポーズ2 鴇羽の悪魔

 

無色の彼女の座を懸け、彩禍の絶対に負けられない戦いが始まる!
世界最強の魔女・久遠崎彩禍の生活にも何とか慣れ始めた玖珂無色だったが、〈庭園〉とは別の魔術師養成機関〈影の楼閣〉との交流戦代表メンバーに選ばれてしまう。 さらに魔術師専門動画サイト『MagiTube』の超人気配信者・鴇嶋喰良には彼ピとして、全世界に紹介され!?  事態の収拾を図るべく彩禍の姿で交流戦に参加しようとするも……。 「魔女様! むしピのカノジョの座を賭けて、アタシ様と勝負っす!」 〈楼閣〉側の代表メンバーだった喰良から宣戦布告を受けることに――。 自分(彩禍)で自分(無色)を争奪するという絶対に負けられない恋と魔術の戦いが始まる!

ひょんなことから世界最強の魔女・久遠崎彩禍と身体を共有する関係になってしまった玖珂無色。ドキドキが止まらない二重存在生活にも少しずつ慣れてきた頃、彩禍が学長を務める〈庭園〉と、魔術師養成機関である〈影の楼閣〉の交流戦が行われることになったのだが、なぜか魔術初心者の無色が彩禍と共に代表選手として選ばれてしまう。さらに〈影の楼閣〉の代表として来校した魔術師専門動画サイト『Magitube』の人気配信者・鴇嶋喰良から彼ピ認定されてしまって…!?

ドキッ☆美少女だらけの無色争奪戦勃発!!(※出来レース)

喰良と彩禍による無色争奪戦、というとまるで一昔前のドタバタラブコメラノベみたいな展開に聞こえるんですけど、彩禍の中の人は今は無色なわけで、つまり喰良と無色による無色争奪戦なんですよね。無茶のありすぎる交代劇や二人羽織状態のごまかし方が既におかしいし、出来レースとしかいいようのない展開の数々で腹抱えて笑ってしまった。そこに最強の魔女である彩禍が交流戦に選ばれたと知って対抗して交流戦に参加しようと乱入してくる〈影の楼閣〉の教師ども(学生コスプレ)が加わってくるもんだから本当に笑いが止まらなかった。

そしてハイテンションな無色争奪戦から、かつて彩禍が封印した「滅亡因子ウロボロス」を巡るハードな戦いの温度差が凄い。ていうか風邪引く。ていうかあのジジイ無茶すんなのコスプレが後の伏線だなんて思わないじゃないですか……どんなにかっこ良くてもその爺直前まで学生のコスプレしてたんですよって思うともうホント笑っちゃうんですよ……。

無色と融合する前の彩禍ですら倒しきれなかったウロボロスをなんとか撃退したものの、その存在の完全復活を巡って各地に封印されているウロボロスの残滓を巡る戦いが勃発することに。無色自身の魔術師としての力が少しずつ明らかになったり、彼らの正体を知っている存在がちょっとだけ増えたり瑠璃が少しだけ勘ぐったりし始めたりして、バトル的にも人間関係的にも今後がどうなっていくか楽しみな終わり方でした。次巻は渦中の瑠璃の掘り下げ巻みたいだし、喰良が今後どう動いていくのかも気になるし、続きが楽しみだな。

それにしても今回、正体バレした黒衣さんが時折見せる〇〇さんモードめちゃくちゃ良かったですね。無色が気を抜いた途端に不意打ちしてくるのズルい。イチャイチャしやがって!


オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!3

 
雪子

同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まった楽しすぎる結婚生活、その幸せな結末。
趣味で同人作家をしている咲月と、会社ではできるサラリーマン、実はドルオタ男子の滝本さん。二人の甘やかな新婚生活は推しのアイドルのTV初出演、冬コミ参戦、親友ワラビちゃんの結婚式など、楽しいイベントが目白押し。さらに、二人の間に新しい生命が宿り……。 超打算で偽装結婚した咲月と、打算の顔して実は彼女のことが好きだった滝本さんの新婚生活――からの妊娠、出産、子育て。趣味を楽しむオタク夫婦の話、最終3巻。

偽装結婚からはじまり、少しつづ夫婦としてのアレコレを積み重ねてきた咲月と隆太。隆太が推している地下アイドル「デザート・ローズ」がテレビデビューしたり、ひょんなことから彼女たちの衣装を咲月がデザインすることになったり、咲月が冬コミに参加したり、同人仲間のワラビちゃんが結婚したり、忙しくも楽しい毎日を送っている中で二人は子供が欲しいと考えるようになって……。

どんなことでも楽しめるふたりの姿が最後まで楽しいお話だった

偽装彼氏彼女の気楽な同居生活、両想いになった2人のイチャイチャ生活……ときて、いよいよ新しい家族を迎えたふたりの家族生活が描かれていくシリーズ最終巻。子供が出来たらまた色々と生活の形が変わってしまうのは明白なので一体どうなる!?と思っていたけれど、ごく自然に「この生活に私達の子供が加わったらきっと楽しい」という出発地点から始まって、どんなことでも楽しんでしまう咲月さん、営業で鍛えたフォロー力を公私共に使って全力で彼女の妊娠・子育てをサポートする隆太さんという形で全てを楽しく乗り越えて行くところが本当に凄かった。ていうかこんなに笑える出産シーンある!?

子供が生まれてからも同じで、無理しすぎずにキツいときはお互いを頼って、育児から保育園の送り迎えから園の役員まで楽しんでやってしまう2人の行動力がひたすら楽しい。悪阻が軽かったり片方だけとはいえ理解のある親がいたり、実家暮らしだったりちょっと面倒でも送り迎えが出来る場所に保育所があったり……と(咲月の毒親の件を踏まえても)運が良かった部分も多少はあると思うのですが、どんな逆境もお互いにフォローし合って「ふたりならば楽しい!」で乗り越えてしまう関係性がとても良かった。他人事なのに、ふたりの家族計画聞いてるとワクワクしてきちゃうんだよね。

一方、やはり子供が出来るとなるとやはり自由に使える生活時間は減っていくし、2人のオタク活動にも変化が訪れていく。特に趣味のために諦めていた昇進を受け入れた隆太さんが、仕事に育児に奔走しているうちに少しずつアイドルの現場から足遠のいてしまう……という展開には納得なんだけど複雑な思いがありました。配信でライブを見ることが可能な世の中になって、隆太さんも妻と娘がメチャクチャに可愛くて、それで好きなものを優先したいあまりに自然とドルオタ活動に使える時間が減っていくというのは納得の展開ではあるんですが……。

ドルオタから足を洗うことすら考えていた隆太が咲月の図らいで、アニメ主題歌を歌うことになったデザロズのライブの現場に久しぶりに向かう。そこで、彼女たちを愛した自分の気持を取り戻していく……という展開が本当にアツかった。年とともに関わり方が変わっていくとしても、他にもっと好きなものが出来たとしても一度抱いた自分の「好き」を捨てなくてもいい。「あれもこれも全部好きでいていい」という咲月さんの言葉が胸に刺さりました。

咲月さんは隆太さんみたいな嫌なところは踏み込んでこない適度な距離感で自分をフォローしてくれて全力で愛してくれる旦那を持てて凄く幸せだなとおもうんだけど、同じくらいに隆太さんも精神的な部分でどうしようもなく咲月さんの懐の広さや一緒に楽しんでくれる前向きさに救われているんだなあ。これからもこの2人はこんな感じで、新しい家族の心海ちゃんと共に「楽しく」やっていくんだろうなあと感じさせる、素敵なラストでした。

咲月と隆太のオタクカップルの話だけでもういっぱいいっぱいになりそうなんですけど、2人の妊娠と前後して結婚した同人友達のワサビちゃんがオタクじゃないけど理解のある旦那さんに出会ってしまって、実家の言う通りに愛の無い結婚をするつもりが咲月もびっくりのラブラブ夫婦になってしまうのもとても良かったですし、なにより3巻かけて少しずつ描写されてきたデザート・ローズのアイドルたちの物語が本当に良かった。1巻で描かれた彼女たちの挫折と再生の物語が凄く印象的だったんですけど、3巻であんなに綺麗な伏線回収が行われるとは正直思ってなかったですし、何より彼女たちの「物語」がひとりのオタク(隆太さん)の生き様を救ってしまうのがねもう本当に良かったんですよ……。


残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.

 

タラコネンシス王国の公爵令嬢のアレクサンドラ。彼女が、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと気がついたのは、なんと断罪イベントの前日だった! すでにアレクサンドラは、ゲームヒロインにさんざん悪意をぶつけたあと。というのも、ゲームヒロインが、アレクサンドラの婚約者である王太子に手を出したからだ。王太子も、どうやらあの芋女に惚れてしまった様子。このままでは明日、糾弾&婚約破棄されることは明白だ。だけど、素直に断罪されるなんて、まっぴらごめん! むしろ、自分を蔑ろにした人達へ目に物見せてやる! アレクサンドラは残り二十四時間で絶体絶命の状況を打開しようと動き始めた――

ふとした拍子に前世の記憶を取り戻したアレクサンドラ。自分は乙女ゲームの悪役令嬢で……王子からの婚約破棄・断罪イベントはもう目前まで迫っている!?ゲームのエンディングまであと24時間、アレクサンドラはフラグをひっくり返すために奔走することに……!!!

痛快な逆転劇と並行して描かれる細やかな感情の動きがとても良かった

面白かった〜!!!なりふり構わず自分の手足になりそうな面々を買収し、婚約者の浮気の場面をデバガメさせ、婚約破棄を切り出される前に自分から婚約を破棄し、自分を断罪するはずの攻略対象達を次々と断罪の場に登場できないようにしていく……とにかく爆速でぶち壊されていくフラグと、終盤の容赦のない「ざまあ」展開が痛快。「RTA」のサブタイに恥じることなく中だるみ一切なしで1冊で綺麗にまとまってるのもポイント高かったです。

爆速でフラグを覆していく容赦の無さとは裏腹に、主人公が元来の「アレクサンドラ」としての矜持や年齢相応の恋心も見失ってはいない姿が印象的でした。人格は元のアレクサンドラのままで「転生者」として知識と柔軟性が兼ね備えられていくので、王子の婚約者として磨き続けた深い見識・前世から得たこの世界の現在未来に関する知識・公爵令嬢としての地位が合わさって実質最強なんですよね。ゲームで待ち受ける多彩な死亡・破滅エンドを回避してギリギリ貴族として生き残るルートを進んでいるのにも関わらず、「芋女(ゲームヒロイン)に膝を折るくらいなら処刑・追放エンドの方がずっとマシ!!」と言い切るアレクサンドラの高潔さがとても良い。元々コミカライズが面白くて手を出したんですが、小説以上にテンポ良くフラグ破壊が進む愉快痛快なコミカライズ、スピーディーな展開の間にもアレクサンドラの内心での繊細な感情が濃厚に描かれる原作小説という感じで、どちらもそれぞれの強みが生かされていて良かったです。

多少嫉妬深い部分はあったとしても、王族・貴族としての思惑を完全に無視してアレクサンドラを婚約破棄して庶民の女を正妻に取り立てようとする王子アルフォンソのやろうとしていることは普通に(この世界の王侯貴族のやりかたとしては)おかしいわけで、恋に盲目なあまりそんなことにも気づけない王子が自らゲームのバッドエンド=無惨な破滅へと向かって突き進んでしまうのはとにかく滑稽なんですが、そんな彼に三行半を突きつけながらも自らの抱いた恋心にどこか後ろ髪を引かれてしまうアレクサンドラの姿が、ただ敗北者をあざ笑うだけではない展開が、最後の最後で漏らしたただひとつの本音が、すごく良かったです。この手の「ざまあ」もの、相手側が破滅したほうが面白いけどあまりにも容赦なさすぎると逆にしんどくなってしまうときがあるんだけど、ただ愚者をあざ笑うだけではないバランス感覚が凄く好き。

主人公と何もかもが正反対の「ゲームヒロイン」の凋落が印象的

一方、もうひとりの転生者であるゲームヒロイン・ルシア。アレクサンドラと対称的に幼少の頃に前世を思い出して人格ごと前世のそれに塗り替えられてしまっていた彼女はあくまでゲーム感覚で最高難易度の逆ハーレムエンドを目指す。あくまでゲームのとおりに物事を勧めていたルシアは、ゲームと現実の知識をフル動員してフラグをひっくり返していくアレクサンドラの逆転劇に途中で半ば気づきながらも何も対応することができずにあっさりと敗北してしまう。そんな彼女の傍らには、常に一緒にいた「親友」の姿があった──。

ヒロインサイドで描かれるゲームヒロイン・ルシアの凋落と、それに付き従いヒロインサイドの語り手として登場する「親友」が時折見せる彼女への執着がまた良かったです。ゲームの全てを知りつくしているからこそ王子と自分が今どこに突き進もうとしているのか解ってしまうクライマックスでのルシアの恐怖は察して余りあるものがある(そしてアレクサンドラの口から語られる逆ハー失敗エンドの展開がキツすぎる)し、最後まで眼の前の相手を人間ではなく「ゲームの攻略対象」としてしか見られなかった少女が滑稽で、哀れでもある。少しでもゲームではなく自分が転生した世界の「現実」をちゃんと見れていたら少しは変わっていたのかもしれないけど、語り手である「親友」が彼女の目を覆い隠していたのもおそらくあるんだろうなあ。

物語を読んでいる際に感じていた物語への違和感が次第に形となっていく展開は印象的でしたし、何より「語り手」の正体が明かされるエピローグがめちゃくちゃ良かったです。いや、コレは良いヤンデレ百合ですわ……。


最強にウザい彼女の、明日から使えるマウント教室

 

笑える頭脳バトル爆誕!!!!!
「マウンティング!」それは、古代より伝わる最強の格付け方法である。 上流階級の子息が集まる私立鷺ノ宮学園には、絶対のルールが存在する。 それは、マウントを取って勝ち上がること! ザ・一般人の佐藤零は、このままでは最下位クラス確定。お金持ちに虐げられる3年間を送ることに。生き残るにはSクラスに上がるしかない。 愕然とする彼の前に、突然現れた見知らぬ美少女。月並千里は、いきなりキスして言う。 「幸せマウントを取るため、私と恋人になって!」「なんで!?」 最強にウザい彼女と手を組んで、学園の頂点を目指せ!  小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞作。ドタバタ展開てんこ盛り、新時代エンタメをとくと見よ!

上流階級が集まる私立鷺ノ宮学園にスカウトされた佐藤零。学費免除を始めとした待遇の良さと成績優秀者に贈られる多額の賞金に釣られて入学すると、そこはテストの成績──でも実力──でもなく「マウント」の上手さですべてが決まる学園だった。しかも入学初日、見知らぬ美少女から「ライバルに幸せマウントを取りたいから偽装彼氏になって」と迫られて……!?

バカバカしくも奥深い「マウントバトル」が面白い

そうとは知らずにマウントで全てが決まる学園に入学した主人公が、マウント上級者のヒロイン(?)と偽装彼氏契約を結び、彼女や仲間達とともにクラス決めトーナメントで最上級のSクラスを目指す!!というお話。コメディをお求めなら是非──とこちらの作品をおすすめされたのですが、とても良かったです!会話劇主体の学園バトルモノのコメディ、最近割りと上手く探せてなかったのでオススメありがたいです……。

「マウントバトル」という概念によって日常のどこにでもあるマウント発言が様々な見地からラベリングされて、マウント強者のヒロインによってさもかし一種の学問のように披露されてしまうのが既にだいぶバカバカしくて笑えてしまうんですが、トーナメントが進むに連れて中身の伴わない自慢や対戦相手との相性・ある種の精神力の強さや煽り耐性なんかも重要になってきて、そこに独自のスキル概念が加わって普通に高度な心理戦が展開されはじめるのが面白い。だけどやはり最後はシンプルな言葉の暴力が強いみたいなバランス感覚がすごく良かった。

笑えて、頭脳バトルものとして奥深くて、でも決して重くなりすぎないバランス感が凄く好みでした。それにしてもマウントバトルの開始の合図で毎回観客がいっせ〜ので色んなマウント発言してくるの、無駄にバリエーションが豊富で笑ってしまうな。

主人公コンビの掛け合いが好み

何より主人公の佐藤零と、彼に偽装彼氏契約を持ちかけてくるヒロイン(?)月並千里のテンポの良い掛け合いがめちゃくちゃ楽しい!ラブコメラノベだったらなんか雰囲気に流されて本当の愛が芽生えてしまいそうな良い雰囲気がちょくちょくあるのですが、どんな状況でも主人公が「いややっぱこの女と恋愛関係になるのはないわ〜」って冷静にぶった斬っていくのに笑ってしまう。特にクライマックスの一番良いところで、電子書籍の挿絵システムまで全力活用して笑わせにくるの、本当にズルい。

良い意味で恋愛色が殆どない、男子高校生2人+女子高生2人の4人組が楽しくバカをやるお話だったので続編が出るならぜひともこの雰囲気のまま最後まで走りきって欲しい。チームの4人が次第に打ち解けていくところとか、零がただウザいだけだった千里の努力家な一面を知ってチームメイトとして信頼していく描写とか凄く良いんですよ。ただこの女を恋愛対象にしたくないというのは本当に解る。二次元読んでるオタクの「このキャラのこと推してるけど別に付き合いたいわけではない」みたいなやつだ。

しかし、令和のラノベでしかも言葉で戦うヒロインである千里に「暴力ヒロイン」の属性付けたのはちょっと違和感と古臭さを感じてしまったな……。あれがヒロインの「ウザさ」に一役買っているといえばそうだし、言葉で戦うヒロインだからこそ零にだけは肉体言語を使うという解釈が出来なくはないけど、別にその属性なくても良かった気はしたな……。


ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編8

 

「敵を知り己を知れば百戦危うからず。今回の修学旅行のテーマだ」
期末試験も終わる11月下旬、修学旅行の詳細が発表された。 行先は北海道。特別試験は存在せずスキーや観光など通常の修学旅行と変わらない。だが各クラス男女で2名ずつ合計8名がグループとなり4泊5日の旅行中行動するという特殊なものだった。綾小路は櫛田の他、まさかの龍園など他クラスの面々とグループを組むことになる。だが事はそう簡単に進むわけもなく「おまえ何か勘違いしてんじゃねえだろうな、綾小路」「勘違い?」「既に俺と坂柳の前哨戦は始まってんだよ」波乱を感じさせるもので――!? 一方、生徒同士の関係を大きく変えるイベントも進んでいた。「俺は―――鈴音に正式に告白する。付き合ってくれって」

修学旅行は特別試験もなく他校のそれと比較して自由時間も多めに設定されているが、その代わりに学園側から決定された各クラス男女2名ずつ総勢8名のグループで行動しなければいけないという決まりがある。綾小路は同じクラスの櫛田、Cクラスの龍園、Aクラスの鬼頭を始めとしたメンバーと同じグループになるが、Aクラス転覆を狙う龍園と坂柳シンパの鬼頭がひとつの部屋、何も起きないはずがなく……。

校外学習授業回、いつもはっちゃけてんな!!

いやぁ〜〜1年生編8巻の合宿のときもチ○比べとかあってなかなかはっちゃけてましたけど、今回はこれといった特別試験もなく純粋な観光メインの旅行ということでめちゃくちゃテンション高かったですね!よう実でこんなに笑わされるとは思わなかったです。何かと衝突し合う龍園と鬼頭が面白すぎた(特に枕投げの挿絵最高かよ)し、ふたりが一触即発すぎて何かと龍園とくまされる綾小路にニヤニヤしてしまうし、なによりホワイトルームと高度育成高校以外の俗世間を全く知らない綾小路の世間知らずが本領発揮しすぎてて面白い。旅行先の選定で京都が選ばれなかったり、朝のワイドショーのネコチャンコーナー見逃してちょっとションボリしてるところとか、普通の高校生なら知ってる事が物珍しくて興味津々で龍園に聞いちゃう綾小路清隆とか一周回って可愛い。櫛田に慣れないボケかまして真顔でツッコまれる所とかテンポ良すぎてメッチャ好きなんですが、さてはこれ綾小路本人も結構浮かれているな……?

時折一人称視点に入ってくる旧綾小路グループの描写に若干の未練みたいなものもちょっと感じてしまったんですけど、他クラスのメンバーと強制的に共同生活を送ることになる修学旅行を舞台に様々なキャラクターの掘り下げが行われていくのが印象的でした。西野と山村が予想外に可愛いし、ファンタジーのオーガ村からやってきたような見た目の鬼頭が意外にまっすぐで話せる奴だとわかる展開も楽しい。乱暴なキャラクターの中にも人の良さが見え隠れする龍園の行動も良かった。また、今回は何よりも本性を暴かれて立ち位置を少し変えた櫛田と綾小路のやりとりが楽しかったです。私はあとほんと堀北・櫛田・伊吹の仲悪凸凹トリオが大好きなんですけど、伊吹はどんどん堀北の事が一周回って大好きすぎるアホの子になっていくな……。

あと、あらすじでも言及されている須藤から堀北への告白が本当に良かった。須藤・堀北両者の精神的な成長がなかったらここにはたどり着けなかったと思うし、ある意味納得の結末で、告白を受けた堀北の挿絵がまた素晴らしくて、なんか物凄く美しい所に落としたなと……。

今回は色々な意味で龍園翔・完全復活宣言回だった

作中を通して全体的に浮かれろテンションな息抜き回だったんですが、その水面下では板柳クラス・龍園クラスが学年末試験での直接対決に向けて情報戦を展開していたり、綾小路に介入してきた謎の電話の人物の正体が明らかになったり、綾小路のバックグラウンドを気にする同級生が増えてきたり、ホワイトルーム側の状況に変化が起きたりして2年生編クライマックスに向けた種蒔きが着々と進んでいる感じ。ホワイトルームはますます目的が見えなくなってきたけどどうするんだこれ……あとめちゃくちゃ意外な人物が浮上してきたな……。

クラス内で本性を暴露した櫛田が1年生編中盤で龍園に作っていた「貸し」を綾小路の手助けを受けつつも精算して、綾小路は龍園の語る理想に手を貸さない選択をし、龍園は坂柳を倒した後の綾小路との対決を見据える。1年生編7巻で綾小路に敗北して以来、細々とした活躍はあったけど長い雌伏の時を続けてきた龍園が色んな禍根を精算して再度咆哮を上げる、復活宣言回だったんだなあと。なんだかんだで仲の良さそうな龍園・綾小路を見るのは正直楽しかったんですけど1年生編7巻が好きすぎるのでまたあの頃みたいなバチバチの対決が見れるなら本当に楽しみすぎる。

しかしその一方で綾小路はめちゃくちゃ地文で「自分がいなくなったあと」を匂わせてくるんですが……本当にどうなるんだこれ。せめて龍園さんと直接対決してからやってあげて!!!あとラストの展開軽井沢さんはそろそろ怒って良い。



顔さえよければいい教室 2.竜姫ブレイクビーツ

 
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妹の才能を轟かせよ! 次なる課題はヒップホップ!?
学園内で一大勢力を結成した楽斗と詩歌。次なる課題は踊ってみた配信の人気争奪戦!? 詩歌の致命的なダンスセンスを克服すべく、楽斗はダンス学科首席である竜姫のもとを訪れる――最先端の音楽エンタメ第二弾!!

ミュージシャン学科同学年トップの渋谷エリオや狛江乃輝亜、情報屋の秋葉原麻奈と共に《渋谷軍団》というチームを結成した池江袋兄妹。向かう所敵なし……と思ったのもつかの間、期末考査の課題として義務付けられらのは詩歌が苦手とする「ダンス動画の投稿」だった。ダンス学科主席で仲の良い大塚竜姫に協力を仰ぐが、ひょんなことから優勝候補の千石ライアンとダンス動画対決をする羽目になり……!?

タイトル要素の回収の仕方がめちゃくちゃ好きだなあ

顔出し限定の動画投稿サイトでの再生数がパワーになる芸能系の学園を舞台に、天才的な歌の才能を持つ妹と彼女を支える平凡な兄が天才たちと鎬を削る物語、シリーズ第二巻。今回はどうかんがえてもインドア系の詩歌にとっては鬼門なダンス勝負……ということでどうなるのかと思いきや、色々なイレギュラー要素があったとはいえそのへんは割りと無難に切り抜けてしまった感じでした。いや、突然ダンスの天才として覚醒するわけではないんだけど、そこを補っていくのがこのシリーズが幾度も主張していく「顔さえよければいい」部分なわけで。

主題はダンスでの対決であるけれど、ここでも重要視されるのは才能そのものじゃなくて再生数であり、ひいては「動画の見た目」。見栄えを上げるためにはファッション学科の生徒の協力が不可欠──というわけで、ファッション学科主席の原宿亜寿沙の新作衣装争奪戦が勃発!!という展開になってしまうのがこの物語ならではで、面白い。前巻を読んだときにも感じましたが、圧倒的な才能を持つ天才達のぶつかり合いみたいな物語であると同時にしっかりと「顔さえよければいい」の要素を回収しに来るんですよね。一見正反対のようにみえる2つの要素がしっかりと噛み合ってるのが凄く面白かったです。

初めて描かれる詩歌の「作曲」シーンが凄絶

前巻では以前に詩歌が作った彼女自身の曲が題材として使われていましたが、今回は自分のダンスの方向性に迷いを覚えた大塚竜姫に詩歌が曲を作り、提供するという場面があります。詩歌が作った曲が道に迷っていた竜姫の背中を後押しして、道を踏み外しかけていた彼女の親友をも救う。圧倒的な才能と芸術が迷える少女たちを救ってしまう展開がとてもアツかったのですが、その作曲シーンがなかなか凄絶で。

他人の感情を「色」として見てしまう詩歌が竜姫に真正面から向き合い、内に秘めている情熱と強い想いを感じて、彼女自身を知って、その過去や信念を掘り下げて、自分ではない彼女のそれに共感・肯定して、その人生・信念そのものを一つの「作品」へと仕立て上げていく。魂を削るかのような作曲への道程が印象的でした。作曲までの流れも凄かったけど、曲を作った後のどこかのネジが外れてしまったような詩歌の姿が衝撃的で。こんなん確かに頻繁にやってたら大変なことだし、兄も禁じ手にするよね。

彼女が竜姫のための作曲に打ち込む裏で、他の仲間達によって《渋谷軍団》の方のダンス動画もフォローアップされている展開が急造チームの中で確かに育ちつつある信頼・絆を感じさせて良かった。今回の乃輝亜くんの頑張りにはいつかどこかでスポットがあたってほしい感じがあるんですけど、強敵とのライバル対決を征する決め手となるのがダンスの質というよりも麻奈と楽斗が仕掛けた情報戦、いわば「話題性」であるところが重ねてこの物語の面白いところだなと。その一方で、そういったことには翻弄されずに後追いで登場した詩歌作曲による竜姫のダンス動画が正当な評価を受けて上がっていく展開がまた美味しい。

そんな風に天才たちが鎬を削る裏で、また兄は彼らを煩わせる元凶を排除するためにアングラ的に動くのであった──とかいってたらそこに颯爽と現れる女優先輩なんなんですか!?強盗カップルもとい神田依桜さんおもしれえ女すぎてメチャクチャ笑った。ノリが良すぎる。


TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA 嫌われ追放エンドを目指してるのに最強無双ロードから降りられない

 

最強orポンコツ?逆RTA(リアル・タイム・アタック)ファンタジー!!
神々の創ったゲーム世界で美少女(マリアンヌ)へと転生した主人公。 神々のお遊び『配信』で、ハチャメチャな条件付きで追放RTA(リアル・タイム・アタック)をすることになったマリアンヌ。 いっそ最速で追放エンドになることを目指し 「暴力」「暴言」「喧嘩」「無双」「禁呪」etc. ありとあらゆることを試した結果、なぜか学園での人気者に!? そんなとき『竜殺し』と邂逅したマリアンヌはーー ルールブレイカー必至?逆RTA(リアル・タイム・アタック)ファンタジー!!

神様が起こした不慮の事故で死んでしまった主人公は、何故か神様の粋な計らい(???)で悪役令嬢にTS転生して実は善人なのに追放される様子を配信でRTA(原文ママ)することを提案される。目標を達成したら快適なサードライフを約束してくれる(早期達成でボーナス付き)と聞いて神からの提案に乗ることにしたのはいいが、舞台となるのは原作も配役もわからない神の世界の乙女ゲー。とりあえず全員ボコったら好感度下げられるんじゃね?と思って魔法学園の入学式でその通りにしてみたが……!?

流行りの属性盛り盛りなカオス感が楽しかった

「異世界転生」「悪役令嬢」「俺TUEE」「ゲーム実況」「性転換」などなど、とにかく最近流行りの要素を全部ぶちこんで足したけど割らなかったみたいな盛り感が最高にカオスで、そこにWeb原作作品の書籍化らしい遠慮のないメタ発言の嵐がぶちこまれていて最高に楽しかったです。

神の提示した条件が相当無茶振りな所に「とりあえず全員ボコればなんとかなる」みたいなバーサーカーが投入されて大変なことになった。やはり暴力は全てを解決し……なかった。なんでも暴力(禁呪)で解決しようとするけど基本的には正義の人であり、悪役令嬢として常に高潔にそして強い女であろうとするマリアンヌ。なんだかんだで情に厚くて身内には甘くて誰かを守るためにその拳(禁呪)を奮える彼女、もうどうがんばっても(おもしれえ女だけど)普通にかっこいいのだった……主要人物達はなぜか彼女にメロメロ(死語)になってしまうのだった。

なお転生時にTSするパターンなので性転換要素はあまり強くなかったのですが、主人公のマリアンヌの全員真正面から暴力でぶちのめせば嫌われるだろうって発想の雑さ自体が絶妙に男子っぽくていいよね。根本が女子になれてない感じで。あと地文が男子の一人称・台詞はお嬢様言葉なんですけど時々現実世界でボロが出てくる感じとか良かったです。

この「快適サードライフ」の達成条件が厳しすぎる

そもそもリアルタイムアタックってゲームをやり込んだ奴がいかにゲームを効率化出来るかって競技だと思ってたんですけど未経験のジャンルで完全初見のゲームをRTAするの難しすぎない!?多重レイヤー構造的な世界観で上位世界にいる神々に人生の様子を「配信」しているという設定で、リスナーである神々のコメントからゲームの内容をある程度伺うことは出来るんですが、彼らもとくにゲームの攻略アドバイスをくれるわけではないので(まっとうなツッコミはする)本当に手探りでやるしかない。オンラインスイカ割りRTAだよこんなの。それはそれとしてマリアンヌの攻略方法が斜め上であることは間違いなく事実ですが!!(こいつぜったい前世でもギャルゲー系が苦手な人だ!)

いやでももうここまで破天荒な展開になってくると逆にタイトル詐欺配信としてめちゃくちゃ面白いし、「配信が盛り上がって神のうっかりを有耶無耶にする」という目標自体は達成できているのではないんですかね……「実は善人なのに誤解されて追放される悪役令嬢」よりよほど奇を衒ってて良いと思うんですが。ひょっとして神々としてはあらぬエンディングに辿り着いたプレイヤーが快適サードライフ送れなくて絶望する愉悦までがセットなのか?詫びセカンドライフにしては条件がハードモードすぎるとおもう。

「悪役令嬢転生善人追放RTA」というお題に対して正反対のルートに着地してしまった感が凄いエンディングだったけど、ここから軌道修正が出来るのか!?今のところ全く「嫌われ」が達成できる流れがないけど大丈夫か!?色々な意味で続きが楽しみです。


このラノベの男男間の巨大/複雑感情が好きだ2022決定盤

タイトル通りの記事です。

このラノベの男同士のクソデカ感情いいよね!!というタイトルを独断と偏見で25タイトル紹介します。長年まとめ記事作るよ作るよって言い続けて気がついたら10年経ってたよ……関連記事の方に昔の同系統のまとめをリンクしておりますので良かったら併せてどうぞ。一応関係性で「親友・相棒」「ライバル・共闘」「因縁・敵対」の3つに分けてます。

関係性のみに焦点を絞っているので内容があまり女子読者向けじゃないものや未完のまま数年止まっているものも含まれます。予めご注意ください。

親友・相棒

楽山 「俺の召喚獣、死んでる」→感想
「友人を馬鹿にされて、僕が笑って許すようにみえるのか?」
苦学生でありとある事情から自分の召喚獣の正体を隠して戦わざるをえない主人公フェイルとそのチームメイトであり名家の子息でもあり一番の理解者でもあるシリル。フェイルが巻き起こす常識外の行動にダメ出しやお説教をしたりする反面その実力を誰よりも信頼していて、他人がフェイルを理不尽な理由でバカにするのは許せないシリルの姿にニヤニヤしてしまいました。
有象 利路「サキュバスとニート」→感想
「和友とオレの間に割り込むのは姐さんといえどもマジでキレますよ」
引きこもりの主人公・和友と彼の高校時代の親友でありコンビニ店長の琥太朗。高校時代の女房役(野球的な意味で)でもあった彼がとある事件によって夢を失って絶望した和友のことを影に日向に心配しつつ、本人の居ない所で彼に対して強い執着を見せる姿が大変良かったです。
大樹 連司「ボンクラーズ、ドントクライ」→感想
そんな彼を裏切る算段を僕は立てている。たかが、桐香なんて存在のために。
男二人だけの映画研究会にやってきた新入部員。友達同士の気軽なだけの部活動はその日から姿を変えていく。新入部員・桐香に恋心を抱いてしまった主人公の肇が彼女に振り向いてもらえないことに絶望し、その一方で親友・藤岡との楽しいだけだった関係性を「恋心」なんてものによって壊されてしまうことを恐れる、という葛藤が印象的でした。
壱月龍一「ラ・のべつまくなし」→感想
「……あいつが書いて、オレが編集やって……なんて。まあ、俺らの夢っつーかなんつーか、はは、超青臭いっすけど」
純文学からライトノベル作家に転向した主人公の矢文学と、彼の学生時代からの親友で編集者志望の北見圭介。ふたりの夢は、コンビを組んで最高の作品を送り出すこと。腐女子のヒロインがうっかり誤解しちゃうくらい仲の良い男二人の、熱い友情が美味しかったです!(あとブンガクくんの作風絶対わたしの好みだから現実に降臨してほしい〜〜)
井上 堅二「Lady!? Steady,GO!!」→感想
「お前にできないことは俺がやる。俺に出来ないことはお前がやる」「そうしたら、俺たちにできないことは何もないだろう?」
名家の分家に生まれて下男のような扱いを受ける圭と、本家の長男でありながら「出来損ない」と見捨てられた燐之介。完璧な人間でありながら大きな欠落を抱える燐之介と平凡だがその欠落を補って支えることが出来る圭という2人の関係性がとても良かったです。最大の問題は2巻が出なかったことだけど2人の関係性としては1巻で綺麗にまとまってるので……。
瘤久保 慎司「錆喰いビスコ」→感想
「俺が矢で、お前が弓だ。俺たちは弓矢だ!そういう、二人だった!」
お尋ね者の賞金首・赤星ビスコと心優しき町医者・猫柳ミロ。一見正反対のふたりが同じ目的のためにコンビを組んで旅を始め、やがてかけがえのない相棒となっていく。相棒ならではのお互いに気を使わない関係と、深い「愛」によって結ばれた関係性が良かった。アニメは原作1巻分だけなので、2巻以降も読んでほしい。
羊 太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」→感想
「……行こうか。頼りにしてるぜ、相棒」「抜かせ、誰が相棒だ。寝言は寝て言え」
かつて特務分室で汚れ仕事や裏仕事を行っていたグレンと、特務分室時代の相棒であったアルベルト。現在は別々の組織に身を置く彼らですが、それでも手を組めば最強という構図が最高。グレンの甘い理想とは相容れないと思う反面、かつての自分が切り捨てた理想を背負い続けるグレンに期待せずにいられない姿がよかったです。
鏡 貴也「伝説の勇者の伝説」→感想
「……引き戻すぞ。おまえがどこにいても、引き戻す」
『複写眼』という異能を持ち子供の頃から過酷な環境で生きてきたライナと、後ろ盾のない母から生まれて兄王達に命を狙われ続けてきたシオン。生まれも育ちも違うふたりは、やがて「悪魔」と「勇者」という世界の行く末を握る運命に翻弄されていく。仲の良い親友であるふたりが運命に引き裂かれながらも手を伸ばさずにはいられない姿が印象的でした。本編のシリアスな彼らも、短編でのコミカルな掛け合いも良。
井上 堅二「バカとテストと召喚獣」→感想
「確かに点数は低いが、秀吉やムッツリーニのように、お前にも秀でている部分がある。だから俺はお前を信頼している」
学園でも有名なバカの主人公・明久と、問題児ばかりのFクラスをあの手この手でまとめ上げる雄二。考え方も得意分野も正反対で普段は喧嘩してばかりの悪友ふたりが共通の目的のためとなれば最高のコンビネーションを発揮するのがたまりません。相手が落ち込んでいれば何も言わずに背中をぶん殴るような言葉で言わなくても通じ合う関係性が最高。

ライバル・共闘

紫 大悟「魔王2099」→感想
「君は……まだ僕を勇者と呼んでくれるんだな……」
魔術と科学が融合した近未来都市新宿で500年ぶりに目覚めた不老不死の魔王ベルトールと、望まぬ形で人としての枠を超えた不老の勇者グラム。すでに時代から忘れら去られたグラムの「勇者」としての役割を、宿敵であったはずの「魔王」ベルトールこそが求めるという関係性が良かった。あくまで不倶戴天の敵同士である彼らの一時共闘が美味しい!
九岡 望「地獄に祈れ。天に堕ちろ。」→感想
「……共同戦線だ。あーあ」「手ぇ組むぞ、畜生が!」
生き残った妹のために死者を狩る聖職者嫌いの死者ミソギと、死んだ姉に心を囚われたまま死んだように死者を狩る死者嫌いの聖職者アッシュ。絶対に相容れないふたりが亡者の街・東凶を舞台に共同戦線を張るというお話。何もかも相容れないふたりが自分の想いを貫くためにある時はぶつかり合い、ある時は共闘する展開が良かった!
望公太「最強喰いのダークヒーロー」→感想
ルイ=ミシェル・ヴィレット。(中略)いかなる者にも最悪の蔑称を授ける阿木双士郎をして、『王子』と呼ぶ他なかった男である。
ソードウォウ最弱の選手でありながら、強敵も味方も手のひらの上で転がす奇策な作戦で勝ち続ける双士郎と、そんな双士郎に救われて以来、その奇策を全部良い方に解釈して持ち上げていくルイ(強くて善人)という関係性がコミカルで良かった。双士郎が、ルイだけ微妙に転がしきれてない感じが楽しいんですよねえこれ…。
渡航(Speakeasy)「クオリディア・コード」→感想
昔も今もこの先も、きっと違う方向を向いて、違う道を選ぶのだろう。それでも、今は確かに、並び立っていた。
異形によって脅かされている世界を守るため、そして大切な少女達を守るために戦うふたり。性格も考えも正反対で本来ならば手を取り合うこともなかったであろう壱弥と霞が、自分にない部分に憧れ、誰よりも強く信頼し合っているという関係性が良かった。ノベライズ版はアニメと内容ほぼ同じなのですが、特に3巻の壱弥・霞の心象描写がとても濃厚で良いので副読本としても是非!(過去話も良いです)
師走 トオル「ファイフステル・サーガ」→感想
今でこそカレルは王家の味方だが、数十年後に余計な野心を抱かないという保証はどこにもないのだ。
来るべき魔王の襲来に立ち向かおうとする英雄達が時に手を組み、時には対立しながら人間たちをまとめようとしていく物語。アレンヘムの傭兵団の若き団長・カレルとフーデルス王国の摂政・ヴェッセルの関係が良かった!序盤から手を組んでいる彼らなのですが、それぞれお互いの国の思惑の下で動いていて、完全な味方ではないんですよね。稀に覗かせる剣呑な雰囲気がとても良かったです。
柳実 冬貴「Re:バカは世界を救えるか?」→感想
その闇の中で、心路は──(略)現実世界で唯一負の感情を抱くことのできる、好敵手の声をはっきりと聞いた。
他者の異能の「劣化コピー」を作る異能を持つ主人公・佐藤光一と、他人の異能を完全にコピーできる秋雨心路。最初は相容れない敵同士だった彼らが、少しずつ「好敵手」へと変化していく課程がたまらない。能力の代償として感情が薄れていく心路の心を唯一揺さぶることが出来るのが光一というのがまた。
賀東 招二「甘城ブリリアントパーク」→感想
(『汚いことをしなければならない』か。ならば、それをするのはぼくだよ)
ポンコツ遊園地の支配人代行となった主人公・可児江西也と遊園地のキャスト代表を務めるマスコット・モッフル。犬猿の仲だが遊園地の未来を誰よりも真剣に考えている彼らの目的が一致するがゆえの共闘が大変美味しいのですが、特に原作1巻終盤に起こったとある事件をきっかけにしたある種の「共犯関係」が、とても良かった。アニメ版とは全く違う展開ですが、どちらも良いので両方見てほしい。
渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」→感想
俺はもうとっくに気づいている。葉山隼人が、けしてただの善人ではないことを。
渡航が描く「お互いに相容れないからこそ誰よりも深く理解し合う」男男間複雑感情が大好きなので、例によって葉山隼人と比企谷八幡の関係性も大好きです。普段は優等生の仮面を被っている葉山隼人がそんな表の顔が通用しない比企谷八幡にだけは時折素顔で接しているのがたまらない。
田尾 典丈「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」→感想
「これから何があっても、みんなを愛し続けてほしい。それが、俺の望みだ。任せたぜ、初めての、親友」
とあるギャルゲーのヒロインたちが現実世界に投影され、彼女達が抱える問題をゲームの1ファンである都築武紀が解決する物語。クリア後のハーレム展開を謳歌していた武紀が明確に「全員を幸せにする現実のハーレムエンド」を目指して行動し始めるのが4巻のゲーム主人公・正樹との対決でした。同じヒロインを愛する主人公同士として・親友として次元を超えた友情を築いていく展開が熱い。

因縁・敵対

落葉 沙夢「─異能─」→感想
あいつは俺を赤根凛空ではなく、友人のアカとして扱ってくれていた。その存在は俺にとって小さくなかった。
複数の人物の視点から事件が描かれる群像劇形式のサバイバル異能バトル。過酷な展開の中でうっすら語られる「主人公」の祐樹とその友人・赤根凛空の関係性が印象的でした。物語で起こった惨劇を考えるとお互いにさっぱりしすぎと感じる部分もあるんですが、描写が短くてもお互いにリスペクトしあっていたことが伝わるふたりの独白が良かったなあ。
水瀬葉月「ぼくと魔女式アポカリプス」
「宵本澪っていうクソッタレな友達は──どうやら、俺が思ってたよりも少しだけお人好しらしい。」
絶滅寸前の魔術種達が生き残りを掛けて行う生存競争に巻き込まれた「死者」達が繰り広げる異能系サバイバルバトル。『普通』に埋没したくなくて学園生活からはみ出していた主人公・澪と可愛いショタの皮をかぶった女に見境ないクズ・草太の友人関係が独特で面白かった。二人の出会い話がどっかに合ったと思うんだけど収録されてないんだよな……。
衣笠 彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ」→感想
ああ、それだ龍園。おまえにも見えたんだろう?恐怖という感情は、己の中に確かに存在する、ということを。
Dクラスの黒幕として暗躍する綾小路と黒幕の存在を追うCクラスのリーダー・龍園。1年生2学期をたっぷり使って水面下で行われる長いかくれんぼ、その末に待つ直接対決がとても良かった。この直接対決の後の微妙に共闘的な関係になっていく綾小路と龍園の関係性も美味しいけど、やっぱりとりあえずは原作4〜7巻をよろしくお願いします!!ってなりますね!
賀東 招二「フルメタル・パニック!」
「カシム、カシムと……。馴れ馴れしいんだ、クソ野郎」
主人公である相良宗介に強く執着する、序盤にして最悪の強敵ガウルン。自分が恋い焦がれてやまない「殺人聖者・カシム」に宗介を引き戻すために自身の命すらも厭わない様はめちゃくちゃなインパクトがありました。フルメタ、なんだかんだで彼以上にヤバい敵出てこなかった気がするの凄いよね……。
ツカサ「銃皇無尽のファフニール」→感想
切れ長の目が画面の向こうから俺を射る。それだけで感覚が引き戻される。彼の部下だった長く暗い日々へと。
男性で唯一ドラゴンの力を持った“D”の少年・物部悠。同じ異能を持つ少女達が集まる学園・ミッドガルに入学するが……ミッドガル入学する前、軍事組織ニブルでの元上司であるロキ少佐がミッドガルに入学した後も悠に対して強い執着を覗かせていく展開が大変美味しかったです。いやこれ、俗に言う「元彼」概念なんですよね……美味い……。
羊 太郎「ロクでなし魔術講師と追想日誌」→感想
「今は、曲がりなりにも母屋を同じくする同志だけど……いつか、必ず僕らは決別する。……互いの信じる正義ゆえに」
相棒概念の所でも取り上げたロクアカですが、どうしてもジャティスの話したかったなどと供述しており……アルベルトと同じく元特務分室での同僚であったジャティスが特務分室を離れて犯罪者となり、事ある毎にグレンと衝突していく本編での展開も大変美味しいのですが、そんなジャティスがグレンを初めて宿敵として認めた追想日誌5巻がとてもよかったです。あとほんと本編は次巻が楽しみ…!!
月夜涙「回復術士のやり直し 〜即死魔法とスキルコピーの超越ヒール〜」
変だな。一周目では、あいつに怯えて、逃げたい、怖いとばかり思っていたのに、二周目の今はあいつに会いたくて仕方ない。
人生をやり直しながら1周目の人生で自分を虐待した勇者達に復讐を行ってきた【癒】の勇者ケヤル。その復讐も残るは【砲】の勇者で少年性愛者ブレットを残すのみとなるが、その復讐は国を巻き込み人類の存亡を掛けた戦争へと発展していく。メインは凌辱メインのエッチな復讐劇なのですが、その合間でケヤルとブレッドが見せる互いへの執着と、裏の裏までを読み合う心理戦が大変良かったです。ブレットの行方を追う回が「想い人を探す」なのとか最高。


Vtuberってめんどくせえ!

 

初手、大炎上から始まるVtuber生活
【第6回カクヨムWeb小説コンテスト キャラクター文芸部門特別賞受賞作!】  高校を卒業したばかりの男子、阿久津 零。  家族から家を追い出され、大学進学も勝手に辞退されてしまい路頭に迷っていた彼は、叔母である星野 薫子にスカウトされ、彼女が経営するVtuber事務所【CRE8】所属の男子Vtuberタレント『蛇道 枢』としてデビューすることとなった。  が、しかし……【CRE8】に所属するVtuberは彼を除いてすべて女性ということもあり、箱推しファンからの反感を買った蛇道枢(零)は、初配信から大炎上という事態に見舞われてしまう。  アンチコメや罵詈雑言に耐えながらも、生きるためにVtuberとしての活動を続ける零。  でも、やっぱり、本当のことを言わせてもらえるのなら――  Vtuberって、めんどくせえ!!

家庭の事情で路頭に迷いかけた阿久津零は叔母・薫子からの誘いを受け、彼女が経営するVtuber事務所【CRE8】から「蛇道枢」としてデビュー。ところが、女性Vtuberばかりが所属する【CRE8】の箱推しファンに取って初の男性Vである蛇道は邪魔者でしかなかった!?毎日のように炎上やアンチコメに晒される彼のもとに何故か同期の女性Vtuber・羊坂芽衣からコラボ依頼が舞い込んで……。

「炎上」と「ネットの闇」に切り込む男性Vtuberもの

女性だらけのVtuber事務所からデビューして百合の間に挟まる男として炎上する主人公と、そんな彼をコラボに誘った同期女性Vtuberの二人を中心とした炎上騒動とその顛末のお話。割りとコメディっぽい作品がおおい(気がする)従来のVtuber系の作品とはうってかわって真っ向から炎上というインターネットの闇に切り込んでいく展開がとにかくしんどいのですが、とても面白かったです。男性Vtuberまじでなんでそんなすぐ燃えてしまうの?どちらもVtuber黎明期をモチーフにしていると聞くので現在はそんなことないとは思うのですが……逆に言うと黎明期はそんなに燃えてたってことなのか……?

蛇道と芽衣のコラボが炎上→開催中止になって、それに関する根拠のない憶測がファン達の間で語られていくうちにすっかり既成事実として誤認されていくのが本当に誰の得にもならなくてキツすぎるし、しかもその勘違いを煽るような人物まで現れて、炎上がふたりを擁する【CRE8】にまで飛び火。ますます騒ぎが大きくなっていく。ふたりを攻撃する人々の多くがあくまで芽衣を守りたいという「善意」から行動していることに背筋が寒くなる思いでしたし、自分の事を心から応援してくれているはずのファンの言葉だからこそ傷ついて、精神的に追い詰められていく芽衣の姿に胸が痛くなった。そして彼女が炎上に巻き込まれて憔悴していく姿は、自身の炎上ではびくともしなかった蛇道の気持ちをも蝕んでいく。色々と考えさせられる展開だったし、どんどん悪い方に向かっていく炎上騒動の行方がしんどかったです。

気持ちを通わせた二人が理不尽な炎上に立ち向かう展開がアツい

肉親の悪意によって理不尽に将来を奪われた零と、肉親の心無い発言によって心に大きな傷を追った有栖。対象的な性格でありながら同じような過去を持つ二人が「蛇道枢」「羊坂芽衣」としてめぐり逢い、様々な紆余曲折を経てお互いに影響を与え合っていく。芽衣がVtuberデビューした理由とその強い意志に触れて、自らも「自分のやりたいこと」を見出していく蛇道の姿が印象的でした。そして、覚悟を決めたふたりがアウェーの地で理不尽な炎上に立ち向かっていく後半の展開がとても熱い。特に序盤からずっと陰鬱な展開が続いてきただけに、過激派と化した芽衣の厄介ファン達に蛇道が物申していく展開が気持ち良いのなんの。

そんな騒動の結果、ふたりのカップリング厨+主人公のガチ恋ファン(性別問わず)が大量に出来てしまったのはもう仕方ないですよね。ていうか女性Vに絡むだけで即炎上するような初手の状態、もう公式カップリングみたいなお相手が出来ないと動きづらいみたいなのもあるよなぁ。エピローグの念願のコラボ配信で初々しく絡むふたりの姿が本当に微笑ましくて……これがてぇてぇという感情か……。

1冊で綺麗に終わってる物語ではあるのですが、同じ事務所のVtuberとか芽衣しか出てきてないから他のメンバーも見たいし、巻末の設定資料で炎上を煽った個人勢Vtuberまで変な性癖に開眼してるのには笑ってしまったし、なによりカップリングとして成立してしまった二人のその後がもっと読みたいしので続きも書籍化してくれるといいなあと思いました。カクヨムの方でちょっとだけ続きを読んだんですが、芽衣がネットストーカーと戦う短編「インターネットセクハラってめんどくせえ!」が超面白かったです。自分の厄介ガチ恋勢と水面下でバトルしてる蛇道、笑えないけど微笑ましすぎ。