最低のDクラスから這い上がり、3年生の始業式を悲願のAクラスで迎えた堀北達。ところが、担任の茶柱から逆転劇の影の立役者である綾小路が他のクラスに移籍したと告げられる。一方、リーダー不在となったCクラスに移籍した綾小路は、三学年初の特別試験を舞台にリーダーとしての器を試されることとなり……。
各クラスの新たなスタンスが透けて見える前哨戦が楽しかった
綾小路と新たなクラスメイト達の駆け引き、そして綾小路を失った堀北が周囲の人の激励や叱咤を受けて再び立ち上がるまで……綾小路と堀北、両者の視点から描かれる新しい物語が本当に面白かった!今回、綾小路の一人称と同じくらいの分量で堀北の一人称が適宜挟み込まれる形になってましたが、これって3年生編は綾小路清隆/堀北鈴音のW主人公体制だと思って良いのかな?堀北クラスのその後をどう描くのか気になっていたので今後も続く流れなのか気になる所。そんなわけで綾小路が移籍したのは坂柳を失ってCに転落した旧Aクラス。移籍後初めての特別試験は「龍園クラスとの学力勝負」というAクラスにとっては負けるのが逆に難しいくらいの内容で……勝って当然の試験の「結果」よりも大半のクラスメイト達から値踏みされている綾小路がいかにして自らの能力の高さ・異質性を見せていくのかという「過程」が問われるお話だったんですけど、例によってこれ以上になく完璧に全員を手のひらの上で転がして自分の望み通りの展開を引き寄せていく展開が流石だった。
そして今回の特別試験、Cクラス側の事情を把握してこれまでの勝負に拘る姿から一転して「いかに綾小路に恥をかかせるか」という形で場外乱闘に徹する龍園、綾小路の「協力者」としてこれまでとは違った絡め手で堀北クラスを苦しめる一之瀬……と、各クラスの3年生編における新たな勢力図・スタンスが透けて見える展開なの超良かった。いやしかし一之瀬、一転してワルい女になったな……。
坂柳の退学で不安定になっていたCクラスを特別試験1回であっさり掌握してクラスリーダーの座を掴んだ綾小路。でも正直、今回一度も彼らを「Aクラスで卒業させる」とはいってない気がするんですよね。堀北クラスと拮抗するところまで持ち上げてやるとは言ってるが。2年生編ラストでも軽く言及されてたけど、綾小路って多分どちらかというと4クラスを拮抗させてヒリつく勝負をするのが目的みたいな……いやほんとうになんというか、人の心が中途半端に芽生えた結果これまで以上に人の心がないみたいななにかが……。
移籍をキッカケに一気に変わってしまった人間関係の中、これまでと変わらぬスタンスで「友人」として接してくれる石崎や明人の存在が唯一の癒やしでした。啓誠や須藤はもともとの評価が高かっただろうから厳しい気がする……あとガチで誤字じゃなかった平田の「綾小路くん」呼び……。
綾小路を失った堀北&周囲の面々の動きが今後とも楽しみ
一方、綾小路の不在を受け入れられない堀北は失意のまま一之瀬率いるDクラスと対決する特別試験に臨むことに。1年生編最初のツンツンぶりはどこへやら、一気に重い女化する堀北が印象的でした。いやまあ堀北って最初から重かったけど……堀北兄への依存が本人も無自覚なまま綾小路への依存にすり替わってたみたいな……。素直じゃない櫛田や伊吹からの叱咤というか応援というか激励というかなんというか、そして軽井沢との対話によって綾小路への気持ちを自覚して……なんというか、1年生編の序盤で周囲の人間を見下して距離を置いていた堀北がこれだけ沢山の人から心配されて、その気持を受けて再起する展開はメチャクチャ熱かったし、少なくても今巻においては文句なしに「もうひとりの主人公」と言える立ち位置だったのかなと。個人的には素直になれない伊吹のどつき愛・挿絵が最高でした。いやなんなんだよあの可愛い生物は。
堀北のことなんだかんだでほっとけなさそうに見える反面で綾小路からの誘いに揺れる櫛田、いまだホワイトルームからの密偵として機能し続けていることを伺わせる七瀬……と不穏の種も多くて、今後どうなっていくのか楽しみしかない新シリーズ第一巻でありました。七瀬や天沢だけじゃなくて宝泉や椿・宇都宮など影が薄くなりかけていた下級生組も改めて絡んできそうなのは結構嬉しい。
ホワイトルーム関係では2年生編では大きな動きを見せなかった石上、綾小路の父親繋がりだと高円寺や鬼頭も絡んできそうだし、まだ見ぬ一年生がどのくらい絡んでくるのかも含めて今後が気になる。こっちの繋がりだと今回完全に空気化していた神埼とかもどう動くのか気になりますよね。シリーズ完結を踏まえると、ホワイトルーム関係は結構本格的に動きがありそうだよな。
というか椿の正体ひょっとしてあの子なんです……?0巻再読したくなってきた。