自分には不釣り合いと思うほどの美男美女の友人二人に囲まれつつも、平凡な学園生活を送っていた祐樹。ところがある日、異能を持つ者達が殺し合うデスゲームに招待されてしまった。異能など持つはずもない彼の前に現れた『対戦相手』は、意外な人物で……ひとつの街を舞台に繰り広げられる異能系デスゲーム。
先が見えそうで先の読めない展開が面白い!
週に一度、くじ引きで選ばれた異能者ふたりが殺し合いをする。最後に残った一人にはなんでも願いの叶う「賢者の石」が与えられる──という、異能を使ったデスゲーム。そして同じように週1回ペースで発見される、奇妙な死体。誰が「異能者」か、誰が殺人者なのか……謎に明確な答えが与えられないまま、様々な人物の視点から物語は進行する。割と序盤から先の展開に対する様々な『匂わせ』が行われていて、読んでいくと「このキャラが異能者なのでは?」「このキャラの能力って○○では…」「あっこいつ黒幕っぽいな!」とかわかるようになっている。うっすら思い描いていた展開を裏切らずしかしそれ以上の展開で裏切っていく物語が楽しかった。なんというかこの物語、情報の出し方がめちゃくちゃ上手いんですよね。先の展開がわかるけど同時に読めなくて、先の展開に惹きつけられてしまう。
続々と消えていく異能者達の、多種多様な関係性
章毎に移り変わる「視点」と、そのたびに別の角度から照らされて立体感を帯びていく物語。恋愛、友情、執着…と、ゲームの内外で現在進行系で形作られていく因縁が少しずつ彼らを結んでいく姿が印象的。そして、それは複数視点での群像劇のようでありながらどこまでも「大迫祐樹の物語」であるんですよね。全ての登場人物の“想い”が、これまでの関係性が集約されてラスボスに立ち向かうための“力”となる。そんなクライマックスが最高にアツかった。物語とはあまり関係がないのですが主人公・祐樹と彼を○○した親友・凜空の関係はもう少し掘り下げが見たかったというか物語開始時点での絶妙に気持ちが双方に向いてるけど噛み合ってない二人の関係、もう少し読みたかった気がします。いやあでも×んでから両想い(違)になる関係性、イイヨネ!!
微妙にスッキリしない終わり方にもだもだ(それが良い)
ゲームを主催していた超越的な存在“和抄造”を倒して、一件落着──と思ったのですが、エピローグでまた謎をぶちこんでくる!!例によって予想はできるけど確信は持てない、すっきりしない終わり方がまた実にこの物語らしいなあと。このまま終わっても全然気にならない(それが良い)感じはありますけど、売れ行きが良かった時に続巻出すのための伏線…だったりするのでしょうか。そういえば、最後に匂わせされた“彼女”だけは、メインキャラの中で唯一物語の語り部になっていないんですよねぇ。電子書籍版の特典短編がまたその疑惑を補強するような内容で気になる。1巻で綺麗に纏まってるような、次巻を出してこの謎に答えを与えてほしいような。いや、本当に楽しかったです!