ページ 6 | 今日もだらだら、読書日記。

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空戦魔導士候補生の教官5

 

≪ベベル≫への切符を賭け、ベテラン小隊陣に挑む!
『≪ベベル≫にて空戦舞踏祭開催』――その通達で、急遽≪ミストガン≫代表小隊を決める学内選抜戦が行われることになった。格下Fランク小隊も選抜戦に参加を表明。するとクロエが教官補佐を名乗り出て――?

浮遊都市において絶大な権力を誇る教皇浮遊都市《ベベル》にて、数年ぶりに学園浮遊都市の最強を決める「空戦舞踏祭」が開催されることとなり、ミストガンでも代表選手を決めるための学内選抜戦が開かれることに。ミソラ達も選抜に参加するが、格上の小隊相手に負け続き。カナタは格上の小隊に勝つための秘策を授けようと新たなる特訓を開始するが、カナタの幼馴染で特務小隊のリーダーでもあるクロエがなぜか期間限定の教官補佐に名乗り出て!?一方、《ベベル》の研究者・エリスは前回の任務の際に現れた魔甲虫の変異種を撃破した人物に興味を示して……。

きな臭いを通り越して不穏になってきたぞコレ!?

久しぶりの特訓回でワヤワヤするE601小隊が微笑ましかったんですが、キナ臭いとか通り越してもうめちゃくちゃ不穏なフラグ立てまくって来たんですけど!?空戦魔導士科長であるフロンや特務小隊の前で崩力を使ってしまったカナタ、その存在を巡って繰り広げられる学園上層部や《ベベル》をも巻き込んだ駆け引きが不穏すぎるし、もうこんな平和な学園生活は戻ってこないよと言わんばかりの「時間がない」アピールが不吉すぎる。正気のまま崩力を操るカナタがイレギュラーみたいな話はたしかに2巻くらいで軽く匂わされていましたが、予想以上に大事っぽいぞコレ……。

エリスが魔甲蟲側の存在であるというフリは前巻であったけど、学園統括長・クリスもカナタに同情的であるとはいえ彼女側の人間のようで……クリスが学園統括になっているのが《ベベル》の意向であること、前巻での危険すぎる捜索指令なども踏まえて普通に本国?である《ベベル》が怪しすぎるんだだよな。世界創生の真実を求めて《ベベル》を目指すという流れ、完全に敵の懐に飛び込むと同義な気がして不安しかない。でも、今回明らかになった事実や(思った以上に魔力を使った戦いができなくなっている)カナタの様子を見ていると、このままミストガンに居ても何も解決しないというのも事実なわけで。

ひたすら不穏な空気が流れる中、呪力を得たせいで本来の魔力を失いつつあるカナタを助けるために空戦舞踏祭の学園代表を目指すミソラ達。しかし、格上だらけの学内選抜戦にまったく歯が立たず……例によってカナタ考案の一見トンデモ特訓を受けることに。例によってリコ&ユーリが早抜けして、次にレクティ&ブレアが共に特訓の意図を掴んで、ミソラだけが残される……という流れなんだけど、これまでと少しだけ違う流れになっているのが印象的でした。これまでの戦いを経て小隊内での実力不足を感じたミソラがわざと特訓をクリアせず、学園最強の少女でありカナタの幼馴染でもある少女・クロエをも巻き込んで必死に努力を重ねていく姿がとても良かった。それにしてもカナタ教官やっぱり美少女をコスプレさせるのお好きですよねえ!!

遥か上をいく……ともすればそのまま手の届かぬところに行ってしまいそうなカナタの背中を追いかけるのではなくその横に並び立とうと懸命に努力するミソラの姿がなんとも頼もしく、その一方で自覚しはじめたカナタへの恋心に七転八倒する姿が大変微笑ましかったです。これまでよりも一層強い想いによって結束したE601小隊とAランク最強・A177小隊との対決、そしてそこから立て続けに描かれる魔甲蟲の変異型の襲撃……そしてクロエとミソラの直接対決……どの戦いもメチャクチャにアツかった!

カナタを巡る学園上層部での不穏な動き、カナタとクロエの幼馴染関係、そしてミソラの空士としての成長……と様々な動きのあった巻でしたが、ミソラやクロエだけでなく小隊メンバーそれぞれから形の違うカナタへの強い想いを感じることが出来て、次巻から始まるだろう《ベベル》を舞台にした新展開が楽しみになる一冊でした。いやほんとにこの明日をも知れない不穏っぷりはめちゃくちゃ続きが楽しみになっちゃうタイプの不穏なんだよなあ……楽しみです!!

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空戦魔導士候補生の教官4

 

E601小隊、分裂の危機!?
ブレア加入で戦力の増したE601小隊。ランキング戦初勝利に燃えるミソラ達だが、珍しくリコがミスを連発。気まずい空気が……。一方、クロエら特務小隊には教皇浮遊都市《ベベル》から特A級の指令がくだり――?

特務小隊のユーリに続いてレクティの姉弟子であるブレアを新たに加えたE601小隊。今度こそランキング戦で初勝利を掴むため努力を続けていくが、正確な射撃が得意のはずのリコが何故かミスを連発して、気まずい空気に。しかも、そのタイミングでリコにCランク小隊から引き抜きの話が持ち上がって……。一方カナタやユーリの所属している特務小隊には、異常な回復能力をもつ変異種の支配下にある空域で行方不明になった飛行艇を創作してほしいという以来が舞い込む。その任務に《千里眼》をもつリコが同行することになり……。

普段と打って変わって余裕のないリコの姿が印象的だった

前巻のレクティに引き続き、今回はリコに焦点を宛てたお話。リコが自身を「女神」と呼ぶ理由、姉であり空戦魔導士科長であるフロンとの姉妹関係……偏屈なキャラクターの内に隠された年頃の少女らしい一面が凄く良かった!

色々な意味で謎だったリコが自分のことを「女神」と呼ぶ理由。完璧と称された姉に少しでも近づくための精一杯の背伸び行為であったことが明かされてその時点でもう可愛いなあとなってしまったんですが、優秀な姉と比較されすぎて偏屈になってしまった上、概ね天才肌なので親身になって寄り添ってくれる友達も出来ず……という流れで最終的に深層心理の部分で根本的に仲間を信頼できなくなってしまったという経緯にはなんとも複雑な思いを感じてしまいました。ミソラやレクティに心を開きかけていた矢先に自分自身も無自覚だった深層心理を自覚してしまって、更にその「無様」な姿を姉に見られてしまって……普段の余裕のあるマイペースな姿からは想像も出来ないような、年相応の少女のように余裕のないリコの姿が印象的。

更にそんなリコの姿を見て、彼女を今の小隊に引き止めておくことが本当に彼女のためなのかと思い悩んでしまうミソラ。直情的な彼女だからこその空回りとすれ違いが胸に痛かったですし、そんな彼女がレクティやブレアの言葉も踏まえて改めてリコと本音をぶつけ合う姿がとても良かった。ミソラとはまた別の角度でまったく腹芸が出来ず空気も読めないブレアの加入が素直になれないミソラやリコに対してめちゃくちゃ良い方向に作用してるよな。なんだかんだで元の鞘に収まって……というかこれまで以上に強い絆で結ばれ直したE601小隊の姿にニヤリとしました。

なんだかんだで妹に素直になれないフロンの本音も聞けたし、色々な意味で目の敵にされていたE601小隊に対する様々な誤解も解けた感じで、前巻の交流戦をきっかけに小隊自身の評価も上がり始めて、もうあとはランキング戦で初勝利を収めるだけですねというかまだ全敗中だったんだなあこの子達は!!!(ユーリ率いるBランク小隊との対決だけでもランク戦に加えてあげてほしい……)という感じなんですが、その一方で連携を取り成長する魔甲蟲の変異種の登場やその裏に潜む黒幕の気配、そしてミストガンに救助された謎の少女の正体は……という展開で、世界観的な意味でも次巻どうなってしまうのか気になりすぎる。小隊メンバーの掘り下げも終わった感じだし、いよいよ次巻は物語が本格的に動き出すのか?とても楽しみです。

それにしても1巻2巻くらいは誤字脱字の件があったのもそうだけど全体的に文意がとりづらいというか文章読みにくいと感じることが多くて苦戦しながら読んでいたんですけど、3巻4巻でストーリーも面白くなってきたし、文章的にも俄然読みやすくなった感じがする。右肩上がりに面白くなってる……。

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空戦魔導士候補生の教官3

 

アイゼナッハ本家登場――明かされるレクティの過去!
学園浮遊都市≪ミストガン≫と≪メルキア≫の交流学校が始まった。年に一度のお祭りイベントに浮かれるミソラたち。しかし、≪ミソトガン≫の空戦魔導士候補生・ブレアと会ってからレクティの様子がおかしくて――?

年に一度開かれる、学園浮遊都市《ミストガン》と《メルキア》の交流学校。特務小隊のメンバーでも有るユーリを小隊メンバーに迎えてお祭り気分で浮かれていたミソラたちだったが、メルキアの生徒であり、アイゼナッハ流本家の血を引く少女・ブレアがレクティに因縁をつけてくる。カナタの意向もあり、交流学校のメインイベントである交流戦でブレアの小隊と戦うことになってしまって……!?

小隊メンバーそれぞれの成長が見える展開がアツかった!

小隊メンバーのひとり、レクティに焦点を宛てたシリーズ第3巻。アイゼナッハ流を破門された彼女が姉弟子・ブレアとの対決を通して過去のトラウマと向き合い、剣士として成長するというお話なんですけど、彼女自身の話だけじゃなくて小隊全体の成長が伺えるお話になっていて面白かった!特訓はしないと嘯きながらしっかり新たに仲間に加わったユーリも含めて小隊メンバー達の精神的な成長を目論んでくるカナタ教官のやり口にニヤリとしてしまう。一方、レクティの問題解決してる裏でさりげなく小隊の中でも相性のよくなさそうなユーリとリコの仲良し大作戦(違)が展開されていたりするの面白すぎる。しかしカナタ教官、コスプレさせるの好きですよねえ!!

何より、1巻2巻では全体的に他のメンバーよりも未熟な部分が目立っていて足を引っ張り気味だったミソラの小隊長としての成長がとても良かったです。今までなんだかんだで周囲の見えていなかったミソラが、ブレアとの対決を前に自分の我を通して良いのか不安になったレクティの背中を押して不安を和らげてくれる場面、めちゃくちゃ好き。

ブレア率いるメルキア小隊との戦いも、個人個人が強い……2巻で戦ったBランク小隊よりも更に格上であると思われるメルキアの小隊に対してE601小隊がこれまで培ったチームワークで翻弄する展開、そこからブレアとレクティの一対一の対決に持ち込んでいく流れがめちゃくちゃアツかった!小隊としても個人としても大きな成長を感じられる1冊で、胸が熱くなりました。

それにしても綺麗に落ちたところで最後の最後で小隊の新たなメンバー加入でめちゃくちゃ笑ってしまった。そ、そう来るかー!!!確かに小隊のメンバー、5人が正規の人数ってどこかに書いてあった気がしたけど!!

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空戦魔導士候補生の教官2

 

落ちこぼれE601小隊、初勝利なるか!?
変異種との戦闘で自信をつけたミソラたちだったが、ランキング戦ではいまだ勝ち星ゼロ。教官であるカナタの更迭を賭け、ユーリ率いる小隊との模擬戦が行われることに。一方学内ではある実験が進められていて……。

カナタからの特訓と初めての実戦を通して小隊として一歩成長したE601小隊の面々。ところが学園内でのランク戦ではいまだ勝ち星なし、実戦で変異体を倒したという実績も目撃者がいなかったため認めてもらえない。しかも、カナタのことをよく思っていない空戦魔導士科長フロンが次のランク戦でE601小隊が勝利することが出来なければ小隊を解散、カナタを更迭すると言い出す。対戦相手はカナタが所属していた特務小隊の後輩の少女・ユーリ率いるBランクの小隊で……!?

格上相手に「大物喰らい」を繰り広げる展開が心地よかった!

地上を追われて浮遊都市に生きる少年少女達が魔甲蟲と呼ばれる魔物の脅威と戦う物語、シリーズ第2巻。前巻では主にバトル面の問題を解決して一歩前に踏み出したE601小隊の面々でしたが、実戦で目覚ましい活躍したところは誰にも見てもらえてなかったし、しかも普段はチームワーク面が壊滅的ということで学園内では落ちこぼれ小隊扱いのまま。前巻のラストでチームワークがめちゃくちゃであっさりランク戦に負ける彼女達を見て腹を抱えて笑ってましたが今回はそのチームワークを解決して大物喰らいを目指す!というお話でした。それにしても目撃者がいないからミソラ達の挙げた戦果が認定されないの地味に酷くないですか……そのガバガバシステムだと撃墜数水増し報告してる小隊とか出そうだけどどうなんだ。

ポジションの入れ替えを繰り返してお互いの役割を理解させるという特訓が今回も面白かった!確かに実際にその立場になってみないと理解できないということってあるよね。カナタ教官の教え、徹底的に「仲間を深く理解させてお互いの弱みは補いつつ強みを活かす」方向性なの一貫していていいな。そして1巻の感想でも書いたけど、その方向性が潜在能力はあって別の理由で実力を発揮できていなかったE601小隊の面々と噛み合ってる。自分たちのやったことを認めてもらえない序盤から、チームワークを発揮できるようになって格上のBランクの面々を圧倒する三人の姿、格下だと思っていたミソラ達の本当の実力を見て驚愕される展開がとても気持ちよかったです。

しかしリコがサクっと趣旨を理解して一抜け、それからレクティが努力して自力理解、最後まで手こずってるミソラという展開1巻でもあったな……みたいな、特訓部分の展開自体はやや1巻の焼き直し感があり。リコとレクティは元々実力者として描かれているのでそうでないミソラだけ理解が遅いのは仕方ない部分もあるんですが、ミソラは実際にこの小隊のリーダーなわけで……個人戦に一日の長がある2人では気づけないなにかに気づくとかあると美味しかったんですけどね……。

カナタ教官を思う気持ちは人一倍強そうなミソラがひとりで空回りしがちなの、読んでて結構もだもだするポイントだったので次巻では彼女の良いところも見れると良いな。それはそれとしてなんだかんだでカナタへの好意が隠しきれないミソラ可愛い。

小隊の面々が少しずつチームとしてまとまっていく中、学園都市では不穏な動きが。カナタ達が倒した変異種をきっかけに学園内で始まった不気味な実験と前衛ばかりを狙った襲撃事件。その不穏な事件に、今回の対戦相手でもありカナタの特務小隊での後輩でもあるユーリも巻き込まれて行って……。魔甲蟲、1巻を読んだ時点だとただの意思のない化け物みたいな印象だったんですが、今回の件やカナタの言ってた内なる囁き的な発言も踏まえて「ただのバケモノ」という感じじゃなくなってきたなあ。もっと危険な存在というか……裏というか上にもっとヤバいのが控えてそうというか。

今回の件をきっかけにしてカナタのもつ謎の力の件が小隊のみんなやユーリにも知られてしまい、更にユーリが小隊の新メンバーとして加わって……今回でE601小隊が抱えていたわかりやすい問題も解決した感があるので次巻から物語が本格的に動いていきそうな気配。どうなっていくのか楽しみにしたいです。

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空戦魔導士候補生の教官1

 

連戦連敗E601小隊の快進撃は、ここから始まる――
人類が大地から離れ、魔甲蟲という畏怖と戦う世界。「特務小隊の裏切り者」と蔑まれる学園の嫌われ者・カナタは、連戦連敗のE601小隊の教官に任命される。そこには一癖も二癖もありそうな3名の少女がいて……?

地上を追われた人類が空に生き、魔甲蟲と呼ばれる魔物の脅威に晒されている世界。魔甲蟲に対抗する空戦魔導士を育てるべく設立された教育機関・浮遊学園都市《ミストガン》で負け続き・落ちこぼれのE601小隊にテコ入れとして派遣されてきたのは、「裏切り者」と呼ばれるカナタ・エイジで……。

空の世界を舞台に繰り広げられる、少年少女たちの闘い

すごい今更なんですがファンリビ参戦したときからちゃんと読みたかったので手を出しました。「ロクアカ」グレン先生とのコンビCMでずっと気になってたのもある。空の世界を舞台に、人類を脅かす魔物たちと戦う少年少女達の物語です。

まず世界観がとても印象的な物語でした!地上を追われた人類が棲まうのは空中を浮遊する都市。魔甲蟲に殺された人間はその存在だけでなくその記憶すらも奪われてしまい、彼らの喪失を覚えている事ができるのは「ウィザード」と呼ばれる人間たちだけ。そしてその記憶を持った人間たちが「空戦魔導士」として魔甲蟲に対抗することが出来る……という設定が大変に良かった。能力を持たない「ナチュラル」達との記憶の誤差、大切な人の埋められない喪失を抱えながらそれでも世界を護るために立ち上がる少年少女たちの姿が胸に刺さる。

そんな中でもう崖っぷちなE601小隊の教官として着任したカナタが一見トンチキな特訓を提案して、それを受けたE601小隊に所属する三人の少女達がマイペースな教官に振り回されながらもその特訓をこなしていく。実力はあるのにとんでもない気分屋のリコ、強力な剣技を習得しながらも引っ込み思案で本番に弱いレクティ、そして高い魔力を持つが死んだ母の記憶に囚われ自分と相性の悪い戦い方に固執しすぎているミソラ。教官としては若葉マークで圧倒的に言葉での説明が足りてないけど教え子に対する理解がとにかく高いカナタと潜在能力自体は高いが戦闘面以外の部分が原因でそれを活かせてない教え子たちという組み合わせが上手いこと噛み合って、特訓をしたり個々の事情に向き合ったり問題を克服したり覚悟を決めたりしているうちにお互いの事情が少しずつ透けて見えてくるのが面白かったです。最初はバラバラだったE601小隊の三人が凸凹ながらも少しずつチームらしくなっていく……という展開が良かったし、魔甲蟲との実戦を経て強くなったと思ったけどまだまだ成長途中を思わせるドタバタなエピローグにもニヤニヤした!

その一方、教官であるカナタの方も様々な「問題」を抱えていて……都市を守りたいという気持ちは人並み以上に持っているのに、とある事故をきっかけに「裏切り者」にならざるをえなくなったカナタと彼の秘密の一端を偶然知ってしまったミソラ。ふたりが今後どのような形で物語を引っ張っていくのか、楽しみです。

とても楽しかった反面で新人賞受賞作ということもあるのか良くも悪くも矛盾ないよう小綺麗にまとまってる感が強く、全体的に物足りなさもあったかも。次巻以降で各キャラクター達のさらなる掘り下げとか来たら一気に面白くなりそうではあるので、続きを楽しみにしたいと思います。

あと2巻のあとがきで言及されていたのであんまり指摘するのもアレなんですが、誤字脱字がひどすぎるのは重版や電子書籍化の際でもなんとかできなかったんですかね……この辺は作者さんを責めたいわけじゃなくて編集部・校正がお仕事してない案件だと思ったんですけど。誤字も酷かったけどふたりで会話してるはずのシーンに何の脈絡もなく三人目のキャラクターが生えてくるとかあったし、文章面の粗が目立ったのでもうちょっと(編集部が)(ダブルチェックを)頑張ってほしかったな。お話は面白かったのに、誤字脱字と文章面で引っかかりを覚えてしまったのはとてもとても勿体ない。

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小説 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(上)

   
原作
矢立肇・富野由悠季

劇場アニメの脚本に参加する後藤リウによる完全小説化!
C.E.75。ラクスを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスが創設され、キラ達はその一員として各地の戦闘に介入する。そんな折、新興国ファウンデーションからブルーコスモス本拠地への合同作戦の提案が――




二度の戦いから2年後……世界はまだ混迷の戦いの中にあった。プラント、オーブ、大西洋連邦は世界平和監視機構・「コンパス」を創設し、ラクス・クラインを初代総裁とする。コンパスに志願したシン・ルナマリアとともに、キラは様々な戦いに介入していくことになるが……

当時の種のオタクはみんな劇場版を見てこっちも読め(クソデカ主語)

18年越しに劇場公開された「劇場版ガンダムSEED FREEDOM」の公式ノベライズ。劇場版の感想は二次創作サイトの日記の方にしたためましたが本当に18年間待った甲斐のあるメチャクチャ楽しい映画だったので当時のSEEDのオタクはなんでもいいから劇場に足を運んでほしい。ところでブログ内検索するとTV放送時のノベライズの感想が掘り出せてしまい震えたんですが文章が流石に稚拙でもう許してくださいという気持ちになりました。なぜちょっぴり上から目線なんですかねあの頃の私。世界よ、これがブログを20年続けるということだ。

TVアニメ版ノベライズに引き続き基本は本編に忠実に……そして映像ではわかりづらい細かい各勢力の事情やキャラクターの心象描写を中心に丁寧に補足していくようなノベライズで、ストーリーは知った状態でもとても楽しく読めました。小説版で明かされた新事実らしき情報もいくつかあり、劇場版のおさらい目的で/本編の理解を更に深める物語としても良かった!

個人的にはやはりシン・アスカの描写が可愛すぎて出てくるたびに劇場版での映像を思い出しながらニコニコしちゃうんですけど(贔屓)(劇場版終盤でもネタのように出てくるけど、序盤からジャスティスに乗ってる自分に違和感を覚えてるシンがとても良い)(まさかのキラさんだいすき狂犬わんこ化可愛い)(バイキングの場面とか男児すぎて可愛すぎ最高)、その一方で2つの大戦で矢面に立ってきた責任と身の丈に合わない立場に置かれた重圧に今にも押しつぶされそうなキラ&キラを心配するラクスの描写・すれちがいが良かったなあ。「DESTINY」の頃は見えづらかったふたりの葛藤、特にキラが持つ優しすぎるが故の精神面での脆さとそれに比例しない強力無比な戦闘能力。間違いなくお互いに愛し合っている一方でふたりでいるとどうしても戦争の事を思い出してしまうのがしんどくて、「自分では相手に心からの笑顔をあげられない」と無力さに苛まれる描写が胸に痛かったです。特にお花見デート中のラクスがキラと穏やかな時間を過ごしたいあまりに必死に戦いとは関係ない話題を探してしまう(=探してしまうほどにそれ以外の話題が少ない)けど見つけられなくて結局戦争の話しちゃうシーンとか、気まずい感じがリアルに伝わってくる。そんな危ういバランスで保たれていた2人の関係は、ラクスの母の形見の指輪と同じ物を持つオルフェの登場とともにバランスを崩していく。

そして同じくらいに印象強かったのは新キャラ・アグネスの追い詰められっぷり。初週の劇場版来場特典小説が彼女の視点から描かれるアカデミー時代〜DESTINY時代以前の話だったんですが、それと今回のノベライズで明かされた事実も踏まえて、彼女ってコンパスに入ってきた時点で結構立場的に危うい状態だったのではないでしょうか。強い男を恋人にすることで自分の自尊心を守ってきたアグネスがキラを誘惑しようとして塩対応され(そりゃそうだ)、かつて見下していた同期のシンを認めることが出来ずにファウンデーション側にその心の寄る辺を求めていってしまう描写が色々な意味で痛々しかった。あと映画では言葉しか出てこない「フリーダム強奪事件」も彼女が関わってきそうな気配で、ノベライズと来場特典小説を踏まえるとなんとなくの概要は見えてきたけど、詳細が気になる。

それにしてもシンのこと下げられた途端にアグネスへの対応が塩通り越してセメントになるキラさんいいですね……本編前半の余裕がないキラがシンのことをどう思ってるのかってすこし見えにくい部分ある気がするのですが、このアグネスとのシーンを見れば決して邪険になんかしていない……というか周囲が思っている以上にシンのこと評価してることが伺えてニヤニヤする。というか、これだけのセメント対応しておいてアグネスの裏切りに本気でショックを受けるキラ、頼って欲しいと思っているシンの手を頑なに取れない(後の展開を考えると気づいてないというより敢えて取らなかったんじゃないかなあ)キラ、改めて前線で勝手に戦わせておくには強いけど小隊長となるとコミュニケーション能力に難のあるのが露呈してしまっていて運命の頃の人間性が見えづらい彼を思い出すと本当に人間らしくて最高だなあ。

上下巻構成ということで、今回はファウンデーションとコンパスの合同作戦のあたりまで。合同作戦の話はファウンデーションとコンパスに加えてユーラシアやブルーコスモスの思惑も絡んで来てしかも敵味方が入り組んでいて、更にはオルフェ&ブラックナイツの謎の精神攻撃も絡んできて現場が混乱しているので映画を見ていてもなかなか理解が追いつかない部分だったのですが、その辺がかなりわかりやすく整理されていてよかった。っていうかあれはミケール大佐がモブ顔すぎるのがいけないとおもうんですよね。映画で見た時もモブ顔とおもったけど公式のキャラクター紹介で見ると本当にモブ顔で映像で見てると本人がちゃんと出てても普通に見失うんですわ……。あとキラを助けに来たアスランさん、乗機の挿絵がないからか映像面での面白さが消えて普通にかっこいい男に見えるのがずるい。いやたしかに乗機について「ずんぐりした外見の〜」みたいな描写自体はあるんですけど、挿絵がないことと「正体不明のアンノウン機」って言葉のミステリアスな雰囲気で相殺されちゃってるんですよねぇ!!!

映画でみて今後の展開は知ってるんですが、色々どん底なところで後編に続くなので早く続きが読みたい。あと映画に対する情報量が増えた所で近いうちにまた映画もリピートしたい!

劇場版の感想はこちらから読めます。

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魔術師クノンは見えている 5

 
Laruha

走って光る謎の植物を追え――進級した盲目の天才が、捜索隊の中核を担う!
魔帯箱を形にし二年生へと進級したクノンは、憧れのサトリ先生のフィールドワークに同行、早速波乱を巻き起こす。 さらに、森林化が進んだ学園地下の迷宮で、神話上の植物と思しきものの目撃情報が! 教師陣を中心にした捜索隊が急遽結成される中、クノンもそこに抜擢され――? 特級クラスの後輩に新たに加わったジオエリオンの従妹もすぐさま魔術沼に引きずり込んで、さらに賑やかに加速する盲目の天才の魔術探求・二年生編スタート!

無事に単位を取得し、魔術学校の二年生に進級したクノン。新学期を控えたある日、ジオエリオンから彼の従妹が特級クラスに入学したと聞かされる。魔術にイマイチ興味を持てない彼女を魔術の深淵に引きずり込んでほしいと頼まれるが……?

新入生を加えてますます賑やかな新学年編!

進級したクノンがいつも通りに波乱を巻き起こしまくる二年生編開幕。色々な意味でこれから起きる新展開に向けての種まきの巻という感じではあったのですが、魔術に興味の薄かったジオエリオンの従姉妹が早速魔術(と美しいお姉様方)の世界に引き摺り込まれて沼ってるのにニヤニヤしてしまうし、サトリ先生主導のフィールドワークで相変わらずの「紳士」ぶりを発揮して何も知らない地元女性住民達のハートを鷲掴みにしたり、男だらけの現地調査でやる気を見失ったり……今回も面白かったなあ。クノンの塩対応の餌食になったサーフ先生は強く生きろ。

とにかく一貫して魔術を探求する者達が夢中で自分のやりたいことやってる話になってるのが、ひたすら楽しいんですよね。ジオエリオンの従妹・セララフィラは色々な意味で魔術探求以外の邪念(お姉様)もあったように思えるのですが、そんな彼女だからこそ従者含めた周囲の人間に現在の自分の姿を絶対に見せないようにして、なりふり構わず魔術の鍛錬に打ち込もうとする姿が印象的だったり。

謎多き教師・クラヴィスからの挑戦状、「鏡眼」の見せる不思議な視界に関しても少しずつ新たな事実が明らかになったりして……色々な意味で今後の展開が楽しみになる1冊でした。あと意味ありげに巻末で始まったゼオンリーの過去編気になる。

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フルメタル・パニック! Family

 

新たな任務は……家族との平和な日常!?
「フルメタ」が帰ってくる! 衝撃の新シリーズ、開幕!! 「やはり武器が必要だ。クローゼットにあるから取ってこい」 世界の存亡を懸けた最終決戦から約20年後――相良宗介は千鳥かなめと結婚し、平穏な日々を送っている……ハズだった。 「お父さん、いつものカービンとグレネードでいいのね?」 「また隠し持ってたのね!? 毎回毎回、『武器などいらない』って言っといて!」 「母さん、敵が来るから。文句はあとあと」 女子高生ながら父親譲りの戦闘力を誇る愛娘・夏美、小学生ながら凄腕ハッカーの顔を持つ息子・安斗――規格外な子どもたちまで加わった相良家の辞書に“平和”の文字は無く……!? 宗介ファミリーの刺激的な日常を描く、衝撃の新シリーズ!

あの戦いから20年。千鳥かなめと結婚した相良宗介は2人の子供をもうけて、家族4人で平穏な毎日を送って……いるわけではなかった。妻・かなめを狙う刺客から隠れるように各地を転々とし、トラブルを起こしては次の街へ……を繰り返す相良一家。愛する家族と過ごす刺激的な毎日は、かつて望んだ「武器を持たない日常」からはほど遠く!?

四十代になった彼と彼女の、妥協と折り合いの物語

「フルメタ」の本編完結から20年、アラフォーとなった宗介・かなめと2人の子どもたちが繰り広げる連作短編。

しょっぱなから設定を見て、本編エピローグで「君さえいれば、武器などいらない」って言ったじゃないですかぁ〜〜!!と思ったものの、一度「ウィスパード」として名前が売れてしまった千鳥かなめが平穏な生活を送れるわけがない、たしかにそうなんだよなあ。2人の子どもたちを家族に加えて「フルメタ」らしく騒がしくも楽しい毎日を送りながらも、かつて思い描いた理想とは程遠い生活に時折ため息をつく相良夫妻の悲哀と葛藤が印象的でした。

あとがきでも少し触れられていましたけど、良くも悪くもフルメタをリアルタイムで読んでいて今アラフォーくらいになった当時の読者にむけられた物語というか。いやこれ私はめちゃくちゃ面白かったんですけど、同時にこれ自分が二十代の時に読んでたら二人の変化にガチギレしてた気もするんだよなあ。同作者の「甘城ブリリアントパーク」にも似たようなブラックジョークや中年の悲哀・葛藤の描写がありますけど、かつて十代だった彼らがこういう話をしてるのはなんともいえないエグみがあって。

二十代三十代を忙しい中であっという間に過ごして、気がつけば様々な衰えに直面している相良宗介と相良(千鳥)かなめ。武器を手放したいと必死に足掻きながらも社会に順応しきれない宗介の葛藤はかつて陣代高校でドタバタしていた頃よりもずっとしんどく映りますし、かつての宗介を知っていればいるほど胸に痛い。そんな彼がかつて尊敬した林水先輩と再会してその現在を知り、諦めよりも少しは前向きな形で自分の手持ちでやっていくしかないのだと妥協していく姿はなんというか妙にリアルで、良かったと思う反面かつての読者としては複雑な想いを感じました。いやでも、2話の林水とのやりとりは本編の「もう無理だと思うよ」で卒倒して倒れたオタクとしては感無量のものがありましてだね……。

そしてかなめの方は、女子会でのぎこちない様子が妙に生々しい。高校時代には気にならなかったお互いの「生きる世界」の違いがどこか引っかかってしまって。結婚はしたものの海外を飛び回る企業家となったかなめが家庭に入って平穏に生きる恭子よりもバリキャリでフットワークが軽い瑞樹のほうと深い付き合いしてるのめちゃくちゃわかる。子供を産んで、大病を患って……毎日に忙殺されているうちに中年になってしまった彼女の、「17年前は無敵だった」という独白が胸に刺さる。というか、かなめに関しては最後の最後でめちゃくちゃデカいネタバレかまされませんでした!?確かに本編最後そんな感じだった気がするし「そう」なっていても不思議ではないけど……もうそれは人知れず抱えていきていくしかないのか……。

かつての戦いでの記憶に魘される宗介、守れなかった人たちの名前を縋るように子供に付けて、その名前を呼ぶことで立ち直ろうとしていくということも含めかつて無敵だったふたりがそうではなくなってしまったというお話で(でもあれが宗介からの発案じゃなかったことには少しホッとした)、ままならない現実と闘いながら妥協と折り合いを繰り返していく姿がとても良かったと思います。いやでも本当に、こういう形で彼らの「弱さ」を見せつけられるのは結構キツイっちゃキツくて、その痛みを噛み締めながら読んだ物語でもありました。物語の中でだけでも、年老いても最期まで無敵のふたりで居てほしかったという気持ちはどこかに確かにあった。

相良夫妻イチャつきすぎなんだよなぁ!!!!!!!

それはそれとして、結婚して20年経つのに未だに新婚夫婦みたいにイチャイチャイチャイチャイチャイチャしてるのはどうなんですかねぇ!!!でも人妻になった相良かなめさんマジでエッチすぎるし結婚して自分の女になったからって独占欲と性欲をむき出しにしてる宗介さんのはしゃぎっぷりが凄くてもう大変だ!!!この情報化社会であれほどネットへの個人情報流出を気にする相良一家が年甲斐もない女子高生コスプレエッチで羽目を外して大失敗するのには思わず爆笑してしまった。

冷静に考えると加齢による衰えの話とか、病気の話とか、現実のままならなさとか色々な意味で重たい話をやってるんだけど、要所要所でそういう重さをカラッと吹き飛ばしていく展開はまさしくフルメタで、とても楽しかったです。

作中で腐れ縁として名前が上がりながらも登場のなかったクルツ・マオ夫妻やテッサをはじめとした旧ミスリルの面々、今回は最後にちょっと出番があっただけのアルなど、今後も色んな話が読めそうでとても楽しみなシリーズです。ドラマガの対談とか見てても先生が楽しくお話書かれてる様子が伝わってきたので刊行ペースとかはあんまり気にせず、気が向いたら続けていってほしい。

「甘城ブリリアントパーク」の続きも、是非よろしくおねがいします…………………………………………。
早くて来年かな?とは思ってるけども……。

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悪役令嬢レベル99 その6 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜

 
Tea

裏ボス令嬢、半分(左側)だけ死す……ってどういうこと!?
王都の騒動を経て、領地に戻り落ち着いていた私、ユミエラ。だが「ユミエラさんと張り合えるのはユミエラさんしかいませんわね」というエレノーラの発言がきっかけで、脳内私VS私バトルが始まってしまう。そして気がついたら――私の左半分が死後の国に迷い込んでいたってどういうこと!?ともあれ生き返るため、この謎の国の探索を始めることに。 一方現世のもう半分の私も、未決着の左右対決に勝利するため――もとい、この状況を解決するため動き始めて……!?

エレノーラの不容易な発言をきっかけにして、朝起きたらユミエラが左半分と右半分に別れてしまった!!しかも左半分は死後の世界──「薄明の国」に迷い込んでしまったらしい。ユミエラ(右)は左半分を救い出すため手がかりを求めて王宮に。一方、ユミエラ(左)は薄明の国で王を自称する人物と遭遇して……。

絶望的に煽り耐性とツッコミ要員が足りない!!

ユミエラの左半分と右半分どっちが戦ったら強いのかな?とか妄想していたらなぜかユミエラが分裂していた。何を言っているか分からねえと思うが俺も(略)。アニメの放送合わせででた巻なのに、最新刊の内容がアニメ化できなさそうすぎてすごい(出来なくはないだろうけど大変そう!)

とにかく今回は色々な意味で最後の牙城であったパトリックすらツッコミを放棄してしまったのでいつもにもましてツッコミが居なくて大変だった。巨大ユミエラ(ただし半分)を見た瞬間、自信満々に「ユミエラ最強」コールはじめるパトリック&エレノーラで無限に草生えるし、応援上映作戦が破れて早々に絶望してるのに更に笑わされた。ユミエラが分裂してるせいで片方をヨイショするともれなくもう片方を煽ってしまう……って確かにそうなんだけどさ!?何よりもユミエラの煽り耐性低すぎるのが問題な気がしてきた。クライマックスでアツいバトルやってるはずなのに腹筋が攣るほど笑った。

強い未練を持ったまま死んだ人間たちがその未練を晴らすまで逗まる場所・薄明の国で明かされる「魔王」と「勇者」の悲しきすれ違いとその真実、かつての勇者が「王」に固執する理由。数百年かけて少しずつ歪まされ、醸成されていったおぞましい妄執……バルシャイン王国の建国を巡る物語がめちゃくちゃ良かったし、互いに憎み合う素振りを見せながらも最後にはかつての関係性に戻っていった魔王と勇者の姿が大変に美味しかった……のですが、とにかくメインであるはずのユミエラ達がひたすらツッコミ足りない状態だったのでどんないい話されても「さっきまでとの温度差ァ!!!」って反応になってしまうのどうしようもなかった。いやでも勇者と魔王本当に良い関係でしたね……あと、なにげにその前に出てきた猫耳おじさんの話がめちゃくちゃいい話だったな……猫耳おじさんだけどさ……。

ツッコミ不在でひたすら迷走していくユミエラたち、その横で勝手に友情と愛憎と男男間クソデカ感情物語やってくる勇者と魔王の温度差に困惑してたら描き下ろしでめちゃくちゃ微笑ましいユミエラとパトリックのおデート話で散々イチャイチャされて横から殴られた。だから温度差がさァ!!!!!

でもそのデート短編がまた、めちゃくちゃに良かった。いつものユミエラとパトリックの微妙に噛み合わないやりとりも健在で微笑ま可愛いし、珍しくパトリック視点のパートがあるのが心ニクい演出ですね。いや、パトリックって改めてめちゃくちゃユミエラ好きじゃん……デートしてる時とかめっちゃときめいてるじゃんね……ふぅん……(本編の応援上映展開から目をそらしながら)

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声優ラジオのウラオモテ #09 夕陽とやすみは楽しみたい?

 

学校生活を満喫するやすみ! でもその隣に夕陽はいなくて――。
「……このままでは、非常にまずいです」  『ティアラ☆スターズ』のライブ第2弾は大成功だったものの、オーディションでは連敗中。焦りから仕事へ打ち込む由美子に担任教師が突きつけたのは、模試の結果。今のままだと受験も声優業も共倒れ!?  加賀崎の勧めで学生生活へ専念する由美子。友人との勉強会や文化祭準備―?久々の"青春"はとても楽しくて。 「こんな風に、演技のことを一切考えない期間って初めてでさ」  素直に楽しむ女子高生・佐藤由美子と、不安を抱く声優・歌種やすみ。悩める彼女が目にしたのは、アニメもラジオも大活躍な千佳の姿で――。  進路に、千佳との関係に。心揺れる青春声優ストーリー第9弾!

『ティアラ☆スターズ』のライブも一段落し、再びオーディションに落ち続ける日々に戻ったことに焦りを感じる由美子。模試の結果が散々だったこともあり、加賀崎の勧めで暫く学業に専念することに。友達との勉強会に文化祭、「声優」としての仕事のない学園生活はとても楽しくて……。

先に進むために必要だった「立ち止まり」のお話

仕事がないことを気に病み学業が疎かになりかけた由美子が半休業状態になり、二ヶ月の学園生活を謳歌しながら改めて声優としての自分を見つめ直すお話。前巻のあのすごい声優ライブからのこの落差、本編だと歌種やすみこんなにすごい声優なのにまだ崖っぷちなんですか!!???感が半端ないんですけどそれでトントン拍子に売れるようなら世の中今頃大人気声優だらけだよな……みたいな現実の世知辛さをしみじみ感じてしまったシリーズ最新刊。でもそろそろ1巻・2巻の頃くらいのご都合展開で突然売れっ子になってもいいと思うんだ!!???フィクションの中でくらい夢を見たい!!

休業中の学園生活は普通に楽しくて、声優としての仕事を苦しく感じてしまっていることに気づいてしまって。これまで自分の中には決してなかった「声優にならない」という選択肢が生まれてしまって。そして自分がくすぶっている間にも「相棒」だと思っていた夕暮夕陽はどんどん活躍していって……目をそむけていたのに、偶然自分の落ちた役を夕暮夕陽が演じていることを知ってしまって。とにかく女子高生・佐藤由美子にとっては楽しかった二ヶ月である反面、声優・歌種やすみにとってはとにかく苦しい二ヶ月という感じだった。

でも、そのお陰で夕陽に対してこれまで語ることの出来なかった本音をさらけ出すことができて……声優をやりながら大学に行きたいという気持ちを新たにして、嫉妬や汚い気持ちすらもバネにして再び立ち上がる力を得ることが出来たのは本当に良かった。由美子の本音をきいた千佳の反応には思わず笑っちゃいましたけど。

そしてそこからの、文化祭での急造演劇部のピンチヒッターとして由美子と千佳が掛け合い演劇を行うクライマックスが最高でした!準備期間が足りていないところを流石の経験と演技力で補う千佳、演劇は初挑戦ながらも阿吽の呼吸で彼女をフォローし、持ち前の会話力と本番の強さで繋いでいく由美子。アドリブにアドリブを繋いで……本来のシナリオとはまったく違う劇となっていく展開が最高すぎる。やはり二人は演技しててこそだよ!な!!!いやこれ普通にアニメとかで全部見たい。あと文化祭の裏でさり気なく死んでる藤井杏奈ちゃん(一般オタク女性・職業声優)可愛すぎんか?????

楽しく、そして辛い展開だったけど今後2人が前に進むために絶対に必要な物語で、とても良かったです。あとほんとそろそろご都合主義でもいいから売れてほしいな歌種やすみ……!!

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