ページ 10 | 今日もだらだら、読書日記。

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はたらけ!おじさんの森4

 

最高のおつまみが決定!? 大人気ゲームの世界にトリップしたおじさん達の無人島ライフはますますハッピーに!
ライオン族のあにまる、ライオネスが島リーダーを務める完全武闘派の異色島、ぶどう島と友好関係を築いた、サラリーマン森進率いるおじさん島。今まさに、島ランキング一位と二位の島との同盟締結式が行われようとしていた。そこに集まったのはふどう島の傘下島のおじさん達。(中略) 進司会の下、開催される第一回おじさん超会議!「最高のおつまみはなんだ?」という永遠の命題に、おじさん達が大激論を繰り広げる!!!そんなテンションにあにまるの子供達は、ついていけるのかッッッ!!??そして、ネコミ達はフラワー島に子供達だけでお泊まり。ワクワク気分の子供達を見送るおじさん達は寂しさと心配に満ちた表情で、まるでお通夜のよう。子供達のいなくなった島の夜を、おじさん達は耐えられるのかッッッ!!??更には借金システム導入に木林のプログラミング授業の他、不思議な島の謎に名探偵ネコミちゃんが挑む!?おじさんとあにまるが織り成す、のんびり無人島ライフ第4巻、ここに開幕!

前巻で対決した「ぶどう島」及びその傘下の島々との同盟締結からはじまる新展開の4巻。(公式のあらすじが中略しても長すぎるのでここでのあらすじ紹介は極力削りました)

同盟島の面々を加えて「おじさん島」はますます賑やかに!

基本的にはこれまで通りのスローライフを送りつつ、これまで以上に同盟島の面々が絡んでくる展開が楽しかった!すっかりお馴染みとなった初めての同盟島・フラワー島に子どもたちがお泊まりに出かける回で総親バカ化するおじさん島の面々が微笑ましすぎる。これは見守られるあにまるたちもドン引きするし、フラワー島のおじさんたちにもしっかりムーブが見抜かれているのに笑ってしまった。色々な意味でこれ、最終的に子離れ出来るのか気になりすぎるな……。

今回同盟島となった新たな面々の掘り下げも少しずつ。ぶどう島のポイント獲得全振りQOL全無視スタイルには笑ってしまったし、公務員島だと思われていたGANMA島の業の深さもヤバい。何のこととは申しませんが4人目のおじさんに対するリスペクトと気遣いを欠かさないが内心で全力で続きマダーしたい他のおじさん達という微妙すぎる関係の間に外部からやってきた秋良が欲望のまま全力でカチ込んでいくの笑ってしまった。他の同盟島の面々はまだ顔見せレベルという感じだったけど、どこの島もなかなかに濃厚な雰囲気を漂わせていて今後絡んでくるのが楽しみだなあ。

そんな楽しいお話の合間にも、少しずつ世界観そのものへの考察・掘り下げが進んでいく気配。1巻から結構な世界観のどんでん返しがあった本作だけど、これまで以上にただの「ゲーム世界への転移」じゃなさそうな気配が匂わせされてきて、どう進んでいくのか気になる。果たして、「あにまるわーるど」と現実世界の関係はいかに?そろそろ大きく話が動きそうで、楽しみです。

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アラサーがVTuberになった話。3

 

祝、新衣装お披露目!
私が神坂怜としてVTuberデビューして早4ヶ月。最近はmikuriママからもらった新衣装をお披露目したり、先輩たちとFPSの大会に出たりと楽しいVライフを送っていた。そんなある日『あんだーらいぶ』から二人の新人がデビューすることに。男女ユニットということもあり二人が炎上しないよう陰ながら支えるつもりだったのだが、なぜか生配信中に新人女子の東雲愛梨嬢と突発通話をすることになってしまった!? さらに彼女が相方の前世をポロリしてしまってもう大変! 案の定燃え始めた後輩たちを守るため、私は慌てて鎮火作戦を練るのだが――!?

Vtuber企業「あんだーらいぶ」所属の男性Vtuberとしてデビューし、以来炎上を繰り返してきた元アラサー社畜の神坂怜は、同じ箱の朝比奈あさひ先輩に誘われて男性V3人でFPSの公式大会に出ることに。アウェー感もなんのその、訓練場で数百時間、独り訓練し続けた成果が今試される──!?そして同じ頃、「あんだーらいぶ」に新人が入る事になったのだが……!?

箱内でのわちゃわちゃが本当にてぇてぇ……

男性組のFPS大会・新人V加入を軸に一万人突破配信や新衣装お披露目などイベントごと盛りだくさんのシリーズ3巻。そして我らが神坂はFPSでバグを発見したり、訓練所で数百時間独り練習してたせいでチートを疑われたり、ソシャゲの案件配信で企業攻略サイトよりも詳しい攻略パワポ作ってきたり……と相変わらず変な方に才能を活かしていて笑ってしまった。裏でもマイクラのサーバーでインフラを整備したり、「あんだーらいぶ」の新人V用に配信機材のマニュアル作ってたり……本当にこの人、「面白い配信以外ならなんでも出来る」がマジで笑い事じゃない。なんでこんな有能な人がブラック企業で燻ってたんだ世の中ままならないなあ……。

余談ですが神坂製マイナーソシャゲの攻略パワポが欲しすぎる。本当に作るだけ作って数週間で更新止まったみたいなクソみたいな企業攻略サイトが多すぎてつらいので私がやってるマイナーソシャゲのところにも神坂が案件で来て欲しい。

そして今回の目玉の一つであるサバゲー大会にまつわる一連のお話が最高に楽しかった。Vtuberという時点で侮られるアウェーすぎるな舞台でいつもの通り何かとヘイトを自分に集めようとする神坂とそれをなんとなく制して「泥をかぶるなら3人で」といってくれる先輩2人、最初から勝ち目のない戦いの中で「楽しんだ者が勝ち」と言ってのびのびと無茶やれる、その無茶に自然と神坂を引きずり込んでいく二人の頼もしさに胸がアツくなってしまった。いいとこなしの所から一念発起してリスナーから伝授された秘策を手にジャイアントキリング狙いにいく神坂の姿がめちゃくちゃカッコいいし、今回の男子3人カラー口絵がめちゃくちゃいいんですよね!!!そこからの戦勝会兼柊先輩の家でオフコラボの回は完全に神坂が畳の世話女房になってるの笑ってしまった。薄い本が厚くなるな!!!!!!……それで酢昆布ネキの書いた三人本の通販はまだですか!!!!??

今回はいい加減に炎上ネタも(表面的には)ネタに昇華されてしまった感でもはや周囲がそれ逆手に取って弄っていくスタイルが定着してきて、あんだーらいぶの箱内でわちゃわちゃしてる話が多く大変に良かったです。これがてぇてぇという感情か……。あと一万人突破記念凸待ち配信で念願のスパチャ解禁されて推しに課金しまくる常連リスナーにニヤニヤしちゃう。しかし神坂、トップユーザーの高額課金だけで採算取ってるマイナーソシャゲみたいなことになってるな……。

ガチ恋ネキの閑話が卑怯!!!

そんな仲良し「あんだーらいぶ」に配信者経験がある男女ペア売りの新人が投入されるが、デビュー前からその正体を巡って憶測が飛び交い、更に事故配信が重なってきな臭い雰囲気になっていく。配信を盛り上げよう、箱推しに認めてもらおう……と必死な後輩ふたりを影に日向にフォローしつつ隙あらば自らヘイトを集めようとする神坂にそうはさせまいと更にフォローする先輩達……という流れにまたニヤニヤしてしまった。いや、今回本当に畳がいい先輩すぎて……あとミカァ!が期待の新人(神坂先輩になついてるわんこ系後輩男子)すぎてまた薄い本が厚くなってしまう。

炎上が表面上ネタとして昇華されつつある中で、神坂が抱える歪み・異常性に焦点が当たることが多かった気がする。そして後輩コンビの件といい、実家のご近所さんであり案件エロゲに出演していた新人声優さんの件といい、閑話のガチ恋ネキの件といい……多かれ少なかれ心に似たような傷・歪みを持つ人達が彼の存在に惹かれ、集まってくるという展開が印象的でした。

でも、硬かった表情が少しずつ柔らかくなって、少しずつでも周囲を頼れるようになって……ただ心の傷を抱えているだけではなくて本当に少しずつだけど前に進もうとする姿が見て取れて、胸熱な巻でもあるんですよね。過去のトラウマの話も徐々に明らかになってきていて気になるし、今後本編で対峙するような展開があるのかな。続きが気になる。次の転職までの腰掛け・替えの利く「仕事」だと思って始めたはずのVtuberの配信ができなくて、義務感とかそういうのを抜きにして「やりたかったんだ」と独りごちる体調不良回が本当に良かったです。

そしてラストのガチ恋ネキの閑話があまりにも卑怯。1巻を読み返したくなりました。
ところでガチ恋ネキの正体もなかなか衝撃的でしたが駄馬の正体ってひょっとしてそういうコト……?(※といいながらWEB版で該当のネタバレ見ましたそうだったのか〜〜……)

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バズれアリス 1 【追放聖女】応援(いいね)や祈り(スパチャ)が力になるので動画配信やってみます!【異世界⇒日本】

 

『聖女アリスの生配信』、異世界より配信中!
人々からの想いを力に変える権能で戦い続け、魔王を打ち倒した聖女アリス。しかし彼女は無実の罪を着せられ、強大な魔物が溢れる難攻不落の迷宮へと追放されてしまう。絶体絶命のアリスだったが、迷宮の中で「異世界と繋がる鏡」を発見。生き物以外は行き来可能な鏡を通して、異世界――現代日本でレストランを営む青年・誠に美味しいご飯をもらったり現代の娯楽を教えてもらったりと交流を深めていく。そして助けてもらったお礼のため動画配信で収益化を目指すことになるが、動画がバズった途端に莫大な力がアリスに流れ込んできて……!? 「聖女」兼「配信者」のアリスがバズって戦う異文化交流コメディ、配信開始!

魔王を倒したが仲間に裏切られ、難攻不落の迷宮に追放された聖女アリス。迷宮の中で不思議な鏡をみつけるが、なんとその鏡が見知らぬ風景を映し出して……!?一方、死んだ両親から受け継いだレストランがコロナ禍の煽りを受けて経営難に陥っていた誠は配信している料理動画が伸びないことに悩んでいた。新作動画の撮影中にレストランの中にある鏡を見ると、半裸の美少女が映し出されていて……!?

異世界聖女(パワー系)のアリスさんがとても可愛い

面白かった〜!!配信閲覧数やいいねやチャンネル登録者数が強さになる設定や人間を除くほぼ全ての物品をやりとりすることができる鏡の設定も面白いけど、それ以上に仲間に裏切られて故郷を追放されたせいでちょっぴりやさぐれ気味な物理で殴る系庶民派聖女・アリスのキャラが大変よかった。普通に考えたらめちゃくちゃに重たい彼女のバックグラウンドが、最終的に居酒屋で友人の会社の愚痴を聞かされてるような軽いノリにまで昇華されてるのが色々な意味で凄いし、変に「ざまあ」的な展開には発展しないのも良かった。戦闘中に繰り出される彼女の悪態が「ファッ◯ンエヴァーンしぐさ」とかいわれてるの、実際にありそうで笑ってしまったし、視聴者達からパワー系の扱いを受けてることに不満そうなアリスがまたかわいい。

アリスの出自が重いからこそ、他の登場人物たちの暖かさが身にしみるというのも多分あった気がする。動画としての撮れ高重視でアリスに無茶ぶりをしつつカメラの回っていないところではアフターケアやフォローを欠かさない主人公の誠のキャラが大変良いし、大人の財力と高いテンションでふたりを支援してくれる誠の姉貴分・翔子さんの影からのサポートも忘れてはならないし、さらには迷宮で出会った守護精霊たちが普通に彼女の境遇に共感してくれるのに笑ってしまった。異世界の住民である誠や翔子はともかく、フ◯ッキンエヴァーンの偉い人たちよりも敵であるはずの魔物達のほうが暖かいの、昨今のなろう小説だとよくある事例だけど冷静に考えるとだいぶおかしいんだよな。

そんな彼らが力を併せてアリスを「人気動画配信者」として押し上げていき、その動画配信によって得られた応援(いいね)や祈り(スパチャ)が現実世界での資金とアリスの潜在能力両方の糧になる。一挙両得の設定にニッコリしてしまうし、すっかり現代のネット文化に染まって迷宮の一室を拠点としてそこに現実世界から送られてきた家具を運び込み、自分の色に染め上げていくアリスのふてぶてしさに笑うし、迷宮に(鏡経由ではあるけど)Wi-Fiまで通ってるの準備が良すぎてもう一回笑ってしまう。

とにかく物語の全体を通して、気軽なノリで楽しく読める物語になっているのがとても良かったです!なろうの原作を見ると次巻くらいで完結しそうなボリュームだし、次巻は彼女を追放したエヴァーン周りの話も入ってきそうなのでどうなっていくのか気になる。

コロナ禍の使い方が印象的で面白かった

物語に早くも「コロナ禍」という概念がでてきて、おぉ…となったんけど、レストラン経営者でもある主人公がアリスの動画配信の対応に一日中かかりきりになれる(飲食業なので仕事があるが仕事がない)という設定に上手く利用されていてそういう意味でも興味深かった。料理が上手い設定なのに配信にかかりきりになれるくらい一日中暇なの、普通に考えたら違和感あるもんな。後半の生放送後の打ち上げシーンで、会食の人数や飛沫感染を気にする描写もコロナ禍ならではで面白い。

コロナ禍の緊急事態制限下での生活描写については良い意味でも悪い意味でも2023年の今を生きる我々だからこそ実感出来る描写かもしれなくて、でもこの「ライブ感」こそがなろう原作小説の強みだなあとおもいました。プロローグを読むともうアリスのスパチャだけで全然生活できそうな雰囲気だけど、最終的には主人公の料理配信やレストランの売上の方にも繋がっていくといいよね……。旦那(違)の存在はバレてるわけだし、もう全面的にバックアップしてますの顔でついでにレストランの宣伝してもらえば……それもちょっとアレか……オタクはそういう宣伝に対して厳しいからな……。

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どうぞ愛をお叫びください

 

ユーチューバーやろうぜ! 幼馴染の織田にそう誘われた高校一年生の松尾。バスケ部の坂上と、一年先輩で軽音部のイケメン、夏目も仲間に加えてゲーム実況動画を配信することになった。再生数が伸びず試行錯誤をつづける四人だったが、ある動画がバズったことをきっかけに一躍大人気に。だが有名実況者としての様々な試練が彼らの友情にヒビを入れる!? 今を切り取る最旬青春小説。

映像編集が趣味の高校生・松尾は高校に入って以来疎遠になっていた幼馴染の織田から「ユーチューバーやろうぜ」と誘われる。一攫千金を夢見る織田に対して松尾は「男子高校生4人のゲーム実況ユニット」を提案し、織田と同じバスケ部の坂上、軽音部に所属する先輩・夏目を仲間に加えて実況ユニット『どうぞ愛をお叫びください(愛ダサ)』を結成する。再生数が伸びないことに頭を悩ませながらも松尾の家に集まり4人でゲームをやる日常は予想外に楽しかったのだが、投稿した動画がバズってしまったことをきっかけに4人の関係に亀裂が生じはじめて……!?

「仲良し男子高校生ゲーム実況ユニット」のウラオモテ

有名実況者となってしまった男子高校生4人のお話。実況者という今どきの題材を扱っているから当たり前なんですけど、テレビやニュースに対する感覚が本当にイマドキでジェネレーションギャップを感じざるを得なかった。える知ってるか、今をリアルタイムに生きる男子高校生はみんな21世紀生まれなんだぜ……。

元々別に4人で仲良しという関係性ではなかった彼らが実況ユニットを組むために「仲良し4人組」という関係性を恣意的に構築していくというのが印象的な物語でした。幼馴染の織田と松尾、同じ部活で付き合いのあった織田と坂上、松尾に興味を持ってメンバーに加わった夏目。一部が微妙に知り合いという元々が難しい関係性の上に松尾に執着する織田、同じく松尾に興味を抱く夏目、人気と華のある織田・夏目の人気に嫉妬する坂上……という要素が加わって仲良くしていてもどこかから聞こえてくる関係性が軋む音にビクビクしてしまう。

そんな中でとある動画がバズって彼らは有名実況者となってしまう。「収益化」によって発生したお金の分配を巡ってひと悶着あり、彼らに惹かれて集まったはずのリスナー達からの無邪気な評価が突き刺ささり……それによって彼ら4人の間でもこれまで可視化されていなかった様々な歪みが剥き出しになっていって……全体的に男子高校生の無邪気なイチャイチャを楽しむというより、「仲良し男子高校生4人組」として「消費」されていく彼らのそれぞれの心情が胸に刺さりました。ナマモノジャンル、難しいね……(最悪コメント)

金銭問題・女性問題・ステマ・炎上・彼女バレ・リアルバレ……と、実況者関係で思いつく地雷全部踏みました!!な展開から業火の中でのクライマックス。色々あったけどやっぱり「この4人」だからいいんだと今にも置いていかれそうなメンバーに残り3人で手を伸ばしていく姿が印象的でした。最後までどこかシリアスになりきれない彼らのわちゃわちゃが大変可愛くてこれは人気も出ますよねと。Youtubeで配信者になるために作り上げられたハリボテのような関係だったとしても、様々な紆余曲折があったとしてもちゃんと後から「中身」が入っていってたんだなあとじんわりしました。

4人だけでは完結しない関係性がとても良かった

メインは「愛ダサ」の4人なんだけど、4人の周囲に様々な人々が居て、彼ら彼女らが物語に少しずつ影響を与えていくのもとてもよかった。個人的にはヒロイン・彼女アリな男同士の巨大感情が性癖なので、織田と夏目にそれぞれ彼女がいて松尾にも恋愛ではないかもしれないけど「想い人」が居て……という構図には大変興奮する。生放送の真ん中で「モテたい!!!」と叫んでいた坂上は強く生きて欲しい。

「愛ダサ」の活動とともに語られていく、松尾が中学時代に経験した甘酸っぱい物語。それがただの過去話・きっかけ作りとして語られるのではなくて現在の物語にも変化と影響を与えていくのがとてもよかったです。彼女が実はコメント欄にいることには思わずニヤニヤしてしまうし、行き詰まったときに彼女と交わした言葉が実感を伴って蘇ってくるのも、愛ダサでの活動が最終的に彼女と再び巡り合うための道標となっていくのも好き。(愛ダサの活動によって遠回りしてしまったようにも見えるけど、あの活動がなかったらあのPVいつまでも完成しなかった気がするんですよね……)

それはそれとしてここまでの関係性を前提にして、織田が松尾に向けるクソデカ執着が大変美味いという話をついしたくなってしまう……個人的に本編での彼らの関係性には安易にそういう言葉で消費してはいけないような触れたら壊れそうなセンシティブな雰囲気があってそっとしておきたい気持ちなんですけど、エピローグでイチャイチャしすぎて桜田さんに「イチャイチャするな」って言われる織田・松尾と松尾の反撃で不意打ち喰らって頬染める織田はあまりにも可愛かったのでダメだとおもいます。あれはダメだよ!!!!(好き)

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囚人諸君、反撃の時間だ

 

ファンタジア大賞〈金賞〉監獄から始まる下克上学園ファンタジー!
「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」羊太郎、 「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」細音啓 絶賛!!! 魔術犯罪者を幽閉し、才能ある者を矯正する『アインズバーグ監獄学院』。 皇帝候補の少年・ライアンは冤罪によりこの地に送られ、 さらには魔力ゼロとして蔑まれる『絶唱者』と暴露されてしまう。 「出てやるっ! こんな場所、すぐに! 一瞬でッ!」 失意の中、同室になったのは魔族姫・ルナーラ。 魔族を憎むライアンだが、彼女の心を知り、ともに「反撃」を企てる協力関係に。 そのための秘策、ライアンだけが使える魔術の発動条件は―― 「……わ、私をもっと貴方に惚れさせなさい」 ――2人の仲が親密になることだった……!? 2人の絆が深まるにつれ、ライアンの魔力は強大になり、 学院内でその強さを轟かせ始める。 堕ちた英雄と、人類の敵・魔族姫。 監獄の最下層から、世界への反撃が始まる!

魔術の強さが全ての世界で魔術が使えない「絶唱者」であることを隠して生きてきた英雄の息子にして皇帝候補の少年ライアン。ところがある日、自分の正体を晒された挙げ句に貴族殺しの罪を着せられ、処刑は免れたものの『アインズバーグ監獄学院』に送られてしまう。絶望の淵に沈んだ彼が牢獄で出会ったのは、憎んでいたはずの魔族の姫・ルナーラで……!?

絶望の淵ではじまる英雄の倅×魔族の姫の王道ボーイミーツガール

魔力を持たない「絶唱者」と蔑まれる存在だった主人公のライアンだけが監獄学園でも魔力の制御を必要とせず、それゆえに制限なしで「魔術を使える」……という逆転の発想が面白かった!魔族と英雄──相容れぬはずの二人の絆の深さこそが難局を突破する魔術発動の鍵となる設定も面白いし、魔術の完成のため絆を深めるうちにルナーラに惹かれていって、内心で家族を殺した「魔族」という存在に好意的な印象を抱いている自分の姿に葛藤するライアンの姿が印象的だし、その横で魔術のためと嘯きつつも自分の好意ばかりが一方的に強まっていくことにもどかしい気持ちを抑えられないルナーラちゃんとの温度差がまた良かった。割とシリアス重視な展開の中でルナーラがひとりでラブコメやってるの、なんともいえず可愛いな。

監獄学園を舞台に繰り広げられる様々なトラブル、監獄を支配するライバルとの対峙、不本意で投獄されてしまったけど辛いことばかりではなく……監獄での出会いを力に変えて、憎んでいたはずの魔族の少女に背中を預けて……自らを陥れた本当の敵と戦うクライマックスがまた良かった。正統派なボーイミーツガール+下剋上+王道バトル展開が読めて大変気持ち良い物語でした。

ただ、個人的にはエピローグちょっと色んな伏線回収するために強引に流してしまった感じあって、ちょっと残念だったかも。タイトルの伏線を回収するためとはいえ、正統派ボーイミーツガールでほぼ主人公とヒロインの二人の世界で物語が進んできて、突然最後で「全体」の話をしはじめるの違和感あったんだよな……だって主人公、ほぼほぼ監獄学園内でヒロインとサブヒロインと宿敵以外と交流深めてないし……ライアンとルナーラ、ふたりとも冤罪だったのにヒロインだけが出獄できない理由もよくわからなかったし、ヒロインを監獄学園から助け出すために残ります、でもよかったような気がしたので。

個人的に主人公にボコボコにされてそれまでのダーティーな監獄の王様の皮を脱ぎ捨ててサシでの決着を望むアーサーくんがメチャクチャ好きだったので、もうちょっと絡んできても良かったと思うんですよと思うんですが絶妙にこう、蚊帳の外だったので残念だよね……クライマックスでなんだかんだいいながら背中を預けて戦うみたいな展開あっても良かったと思うんですが!!!

最後の最後で綺麗に落ちてないなあ……という感じなので、続刊が出たらぜひともそのへんのフォローはそれとなくしてほしい。今回のクライマックスって魔術が使えないと思わせているからこそ魔術の制御をされていない、バレたら一発で終わる隠し玉みたいなものだったので、色々バレた上で監獄に戻るならそのへんがどうなるのかも気になります。いや自分から戻るとはいえその状況だと主人公も魔術の制御を受けることになるんじゃないの?という。主人公ヒロインの関係性すごく良かったしその他のキャラクター達も魅力的だったので、続きが出るといいなあ。

ところで、あとがきで原題が跡形もないです!!みたいなこといっててどんなだったんだ……とおもいながら確認したら『魔王様は末代まで呪いたい! 元魔王と英雄の倅の人魔再統一物語』というのが出てきて思わず笑った本当に跡形もないな!!!今のタイトルのほうが全然かっこいいとおもうので改題して正解だとおもう反面前のタイトルも直球で嫌いじゃないけど、末代まで呪〜のあたり結構展開違いそうで、元がどうだったのかはちょっと気になりますね。

◆6/19追記
第35回ファンタジア大賞のサイトに原題とあらすじが載っていた。

英雄の息子にもかかわらず魔力ゼロの“絶唱者”である少年・ライアン。ある日、彼は父に倒された淫靡な魔王・ルナーラの封印を解き、深く交わった他者から魔力を借りる“共有魔術”を授けられる。「 ──乗ってやるよ、魔王」魔力と子孫繁栄のため、学園の少女たちと絆を深めるべく奔走することに。「魔族に伝わる昔ながらのナンパ術だ」「……それ、本当に使えるのか?」ルナーラの的外れな恋愛指南に振り回される内に、ライアンは劣等生から這い上がっていく。そして、一目惚れしたとある少女の因縁に巻き込まれ、彼は危機に陥る学園の命運を担うことになる……。英雄の息子&元魔王のヒロイン攻略バトルファンタジー!


あとがきで相当別物になったみたいな話があったけど、このあらすじ読むとルナーラが協力者ポジションで他のヒロインを落としまくる学園ハーレムファンタジーっぽい雰囲気?……別モノでは!?(講評を読む限りルナーラがメインヒロインである部分が変わるわけではないようだけど)

そっちの設定それはそれで面白そうで読みたかったなって少し残念に思うのと、エピローグを読んで感じた謎の違和感は内容を大幅に変更した故に生まれた歪みだったのか……となんだか納得。これだとモブレベルなことに変わりがないとしても学園内の色んなキャラクターと絡むことになっただろうし、その上で「囚人諸君〜」なら違和感薄かったかもしれない。

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ネットの『推し』とリアルの『推し』が隣に引っ越してきた 1

 

VTuber・声優・幼馴染――『推し』たちが家にいる夢のような生活
大人気VTuberアンリエッタとアイドル声優の八住ひよりが『推し』の大学生・天童蒼馬。ある日彼が住むマンションに、なんと『推し』たちが引っ越してきた! アンリエッタに扮する林城静、八住ひより改め支倉ひより。ある日、上京したての静に、寂しいから夕飯を一緒に食べてほしいとお願いされる。それをきっかけに静、ひよりと食卓を囲むことになった! 夢みたいだと思っていた蒼馬だったが、過ごしていくなかで見えた彼女たちとの「素」に、理性が崩壊寸前!?  「いい……よ? ぎゅーって……して、あげても」「いっしょにいて……お願い」 どうしてこうなった!? 隣の『推し』たちと始まる、半同棲ラブコメディ!!

ひとり暮らしの大学生・天童蒼馬は、ひょんなことから隣に引っ越してきた美少女・林城静の正体が自分の推しのVtuber「アンリエッタ」であることを知ってしまう。Vtuberとしてのキャラクターとは裏腹にポンコツ気味な彼女の世話を色々と焼いている内に、なぜか推し声優の八住ひよりや同じ大学のマドンナ・水無瀬真冬(実は幼馴染)までが隣に引っ越してきて…!?

Vtuberと声優と幼馴染がヒロインの四角関係ラブコメ

どちらかというとVtuberもの、推し活要素強めのラブコメを想像して手に取ったのですが、思った以上にそっち系の要素は薄くて、普通に「そういう職業の女性」がヒロインをしている四角関係ラブコメでした。個人的には前者を求めていたので思ってたんと違うだったんですけど、Vtuberやアイドル声優が「オタクもの」という括りではなくて普通にラブコメのヒロインとして出てくるのは凄く時代の変化を感じて感慨深いものがありますね。なんというか、「オタク」や「推し活」をメインにしなくても物語が成立する程度にその要素が特異なものではなくなったということなんだよな、多分。それはそれとして、ひよりさんの出世作がどうよんでも○ャニマスでフフ……となってしまった。

個人的にVtuberの中の人なヒロイン・静と主人公・蒼馬のお互いに気を使わないけどしっかりお互いのことを異性として意識しているという関係性がとても好きで、そんなふたりを見守っているのかそれともヒロインとして名乗りを上げたいのか微妙に真意がわかりづらいアイドル声優なお姉さんヒロイン・ひよりさんの距離感も凄く好み。最初はミーハーな一目惚れからはじまった静が少しずつ蒼馬の人となりを知って改めて惚れていくまでの流れがとても甘酸っぱいし、「推し」としての彼女達のプライベートな姿を知ってちょっとがっかりしつつも推しではない彼女達自身に好意を感じていく蒼馬の心の動きも良い。ただ鈍感なだけではなく、男としてしっかり感じるところは感じつつも彼女達との温かい時間を大切に思っているというバランス感覚も良いなあ。ラブコメはあまり得意じゃないのですがこういう赤の他人からはじまって紆余曲折ありつつステップアップしていく三角関係モノが大好きなので、そのへんは凄く楽しく読みました。

ただ、途中からヒロインが増えて四角関係になるんですが、その最後に生えてくる幼馴染ヒロイン・真冬まわりの展開にちょっとノれなくて。理由もわからず久しぶりに再会した顔もろくに覚えてない幼馴染から一方的にヤンデレに近いくらいのレベルで執着されるの普通に怖い。無許可で合鍵作られて主人公のベッドに潜り込んでくるのも怖いし、学校でわざと蒼馬とイチャイチャして他の男子生徒達のヘイトを向けさせて悦に浸ってるのは可愛いというより性格悪……って思ってしまった。彼女がそこまで蒼馬に執着する理由、蒼馬と再会する前のクールビューティーな彼女がもう少ししっかり描かれていればそのギャップで可愛いな〜〜!!と思えたのかもしれないけど、プライベートでの描写が最低限しか無くてこちらには久しぶりに再会した幼馴染の男に異常な愛情を向ける所しか伝わってこなくて可愛さの説得力が薄いまま作者のお気に入りらしくてどんどん出番が増えてくるの怖い。普段は気遣いの人である蒼馬がこんなとこだけ古の鈍感主人公みたいな察しの悪さを発揮してあからさますぎる真冬の好意に全く気づいてないのがまた怖い。読み手の視点だと蒼馬って凄いかっこいい主人公だと思ったしヒロイン達からの共通認識もそうだと思うんですが学校だと冴えないオタクのフツメンみたいな扱いをされていて、真冬ちゃんに似合わない!!って言われまくるのもこちらにはホラーしか感じませんでした。みんなだまされてる。

真冬の件もだけど、全体的に脇が甘めな登場人物たちの動きを見てそんなことしたら炎上しちゃう!!とかリアル住所特定されても知らんぞ!!とかばっかり考えてしまって、オフコラボの展開やクライマックスのホラゲ配信でのラッキースケベを楽しみきれなかったのもめちゃくちゃに感性の老化を感じた。合わなかった、という以上に年取ってこういうラブコメを楽しいと思える感性が死んでしまったんだなあ……という悲しみ。それはそれとしてリアルとプライベートでそれぞれに二面性のあるヒロイン3人の「両面」が伝わりづらく感じたので、もう少し丁寧に描いてほしかったなとも思いました。真冬の可愛さが伝わってこないは前述しましたが、静のVtuberとしての清楚な姿・ひよりのアイドル声優としての姿もちょっと本文で言われてるほど違いがあるように思えなくて。

静はメインヒロインだからか時々一人称視点が入ってそこが凄く人格の掘り下げとしてよかったので、特に真冬視点の描写とかはもう少し増やしてほしかった気がしました。(ひよりさんは真意が解らないところが良かったのでこのままでいいけど……)

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魔術師クノンは見えている 4

 
Laruha

校舎が一晩で森林化!? 事件の渦中には当然、まだ一年生の天才魔術師が!
狂炎王子との魔術戦がついに実現! 教師や特級クラスの面々、果ては世界一の魔女までもが見守る死闘の行方は……? さらに、クノンは休むことなく次なる研究テーマ――「魔術を入れる箱」の開発に取り組む。その前代未聞の魔道具開発は、派閥のリーダーを含む特級の生徒五人が、半年がかりで取り組む一大プロジェクトに! しかしなぜか、校舎が一晩で森林化する異常事態が発生し、大騒ぎに……? 魔術学校一年目の集大成、魔術の深淵を垣間見る第四弾!!

魔術学校の二学期が終了したある日、待ちきれなくなったジオエリオンとクノンが魔術で対決することに。内々にやるつもりが、気がつけば同級生に先輩に教師に世界一の魔女グレイ・ルーヴァまでが観戦する一大エンターテインメントに!?そして、予定通り半年で単位の見込みを立てたクノンは研究チームを発足させて大本命である「魔術を入れる箱」の開発に取り組むが、それが思わぬ結果を呼ぶ羽目に……!?

「待て」が出来ない男たち

前巻のジオエリオン「焦がれて待とう」から今巻第一話『焦がれた逢瀬』までのこのスピード感。1年生ではトップクラスの魔術使いである二人の魔術対決は周囲の期待に応えてめちゃくちゃアツくて面白いものだったんですが、それはそれとして自分で逸るクノンを留めておきながらも全くクノンとの逢瀬を我慢できないジオエリオンに笑ったし、待ってましたとばかりに即受けるクノンにも笑ってしまった。というかもう魔術対決のはずなのにいちいち描写が恋人同士の逢瀬みたいなんですがそこんとこどうなんですか!?クノンの性別が違ったらまじでミリカ様に超強力なライバル出現!!になるところだったので危ない。(ミリカ様は仲の良い男男を外から見守りたいタイプ)

こんなの作中の同学年女子だったら腐ったオタクになっちゃうじゃん!!とおもったら普通に作品内世界でクノンとジオエリオンのカップリングが流行ってて指さして笑った。ですよね〜!!!クノンとジオエリオンの二次創作があったらご一報くださいどっちが上でもいいです。

これまでの集大成という名に相応しい1年生編クライマックス

色々な意味で初っ端のクノンとジオエリオンの魔術対決にインパクトを持っていかれがち(※個人の感想です)な今巻でしたけど、魔術学校1年目の集大成という説明に相応しいこれまでの総決算のような内容でした。同じ特級クラスや“派閥”で知り合った面々はもちろん、クノンが波乱の種を巻いた二級クラスの顛末まで含めて、色々な意味でクノンが入ったことで様々な化学反応がおきたのを感じられて楽しい。

特に感情が欠落していたはずの聖女レイエスの成長がめちゃくちゃ面白かった。感情を持たなかった人間が感情を獲得するという物語がこんなに笑えちゃっていいのか。里帰り回で、昔の彼女を知る人々がすっかり金と作物の虜になって帰ってきた聖女をみて困惑するのめちゃくちゃ笑うし、トドメとばかりに彼女が学園に戻った途端に発生した例の騒動とそれに対する反応には本当に笑うしかなかった。特に作物について、言ってることが完全に「面倒くさいオタク」なレイエス、もう感情が無いというよりは単に「感情が表に出にくい」レベルなんですよね……むしろ生まれた感情に振り回されてる感すらある。

そんなふうに周囲に大きな影響を与えながらも本人はあくまで自分の欲望に正直に、マイペースに生きてるクノンでしたけどそんな彼だからこそジオエリオンへの執着と魔女グレイ・ルーヴァと会話した際の反応が印象的でした。特に後者の取り乱しっぷりはなかなかすごい。女性に対してはつねに紳士なクノンがあのハプニングをやらかすのはなかなかいい感じに取り乱してたよなあ。

婚約者のミリカも動きはじめて、今後がどうなっていくのか更に楽しみになったシリーズ第四巻でした。それにしても学校の面々はまだしもリンコやミリカまで男同士はやぶさかでもない!!とか言ってるの笑うんですよ。男男間クソデカ感情が嫌いな女子なんていません!!(クソデカ主語)

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100日後に死ぬ悪役令嬢は毎日がとても楽しい。2

 

ルル―シェ、最後の一日を遂に迎える!?
「小説家になろう」発の話題作を大幅に加筆修正!! ルルーシェ最後の100日、その最終日を遂に迎えます。 GAコミックにて、コミカライズも進行中!! 「わたくしとの婚約を破棄してください」 ルルーシェは第一王子サザンジールに婚約解消を申し出る。 死を避けられない自分を忘れ、新たな王妃との人生を歩んでもらうために――。 「ルルーシェ! 俺と結婚してくれっ?」 しかし、サザンジールは婚約解消に応じることはなく、むしろ積極的に迫るように!? 「ルルーシェを独り占めできるなんて、最高だね」 さらに第二王子ザフィルドまで露骨に誘惑をするようになり、ルルーシェを取り巻く環境は大きく変わっていく。 『ねぇ神様。例のお約束の件、覚えていてくれてますか?』 『何でも欲しいモノってやつ? もちろん覚えているよ』 神様との勝負【美しい死に様】を遂げるため、ルルーシェは全力で100日間を駆け抜ける。 「最期までちゃんと見ていてくださいね」 そして迎えた人生最後となるダンスパーティの夜、ルルーシェに奇跡が起きる……。

百日後に死ぬ事を「神」から告げられた令嬢ルルーシェは最も美しい最期を迎えるために奔走していた。自分の死後に禍根を残さないため、婚約者である王太子サザンジールに婚約解消を申し出るのだが……なぜか彼はその日以来熱烈なラブコールを送ってくるようになってしまい!?

最高に美しい死に様、しかと見届けました

面白かった!!特に2巻での展開はタイトルから想像する「楽しい」なんて状況とはかけ離れていて、実際はむしろあらゆる方面において逆境だらけの百日間だったとおもうんですけど、最後まで弱みも見せず胸を張って心から「楽しい」と言って生き抜いたルルーシェの生き様が美しかった…!

彼女が決して何事にも動じない鉄の女だったわけでも他者のために自分を犠牲に出来るような出来た人間だったわけでもない。むしろ普通の少女のように死に怯えたり婚約者との関係性に胸を傷める様子はちゃんと描きつつも他の人にはそんな美しくないところは見せない、それが一貫して最期まで貫かれているの本当に凄かった。あらすじで「奇跡が起きる」だったからひょっとして最後の最後でご都合主義復活エンドある!?って密かに期待してしまったんですが、逆にこんな完璧に100日間を駆け抜けた彼女に対してご都合主義復活エンドとか失礼でしかなかったなと。

残りの日数を自分が楽しむことに使っても問題ないのに、最後まで自分が愛した人々と彼らが生きる国を守るために奔走し続ける姿が、覚悟を持って迎えた最期の一日が、とても美しかったです。

後日談がまた凄く良い

そして、どこまでも鮮やかなままに舞台から退場したルルーシェの存在を心に刻み付けられながら、彼女の居ない日々を生きていく周囲の人々の後日談を描くエピローグ「白貝を外さない花嫁の独白」がまためちゃくちゃに良かった。ルルーシェからの教えを受けて強く美しく成長したレミーエ嬢の成長した姿が、100日かけてルルーシェが繋ごうとしたバトンを受け取った彼女が様々な障害・身分の違いを乗り越えて「自分の亡き後サザンジール殿下を支えて欲しい」という彼女の想いに応えるために奮闘する姿が良すぎるし、その豪胆さと淑女ぶりが、完全に「彼女」の生き様を受け継いでるんだわ……。

サザンジール殿下は本当にルルーシェのことが好きだったんだなというか、前巻でレミーエとの出会いのエピソードからはじまり、婚約解消を申し出られてからはもうなりふり構わずルルーシェに追いすがっていく姿が微笑ましい(それが回り回ってルルーシェの立場を悪くする一因になっていたりするので手放しで称賛はできないのだけど)。最期まで破天荒な婚約者に振り回され、それでもひたすらに一途な愛を捧げ続けた彼が、ルルーシェの死後に今度は彼女の遺志を受け継いだレミーエに振り回されているのを見ると思わずニヤニヤしてしまう。

サザンジールとレミーエのカップル、良くも悪くもルルーシェが存在しなければはじまってすらいないだろうというか、夫婦になってもルルーシェ好き同盟というか共犯者的な関係になってそうなところ最高に好きです。夫婦になっても二人きりになるとルルーシェの思い出話で盛り上がってしまう二人というか、心の一番大事な所にルルーシェを住まわせている者同士というか、ここにはいない誰かを中心に繋がってる本来出会うことのなかった二人という関係性が本当に好きで……。

タイトルの通り定められたエンディングに向かって一直線にひた走る、儚くて美しくて力強い物語でした。本当に面白かった…!!

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勇者症候群

 

世界に仇なす《勇者》を殲滅せよ。
 勇者、それは世界を救う特別な力。夢の中で「勇者」と称えられた少年少女は、ただ美しき女神の言うがまま魔物を倒していた。  ――――その魔物が“人間”だとも知らず。  《勇者》、それは世界を滅ぼす特別な力。謎の生物「女神」に寄生された夢見る少年少女は、無意識の怪物と化し破壊と殺戮を尽くす。  そこに悪意はなく、敵意もない。ただ一方的な正義のみが押し寄せる終わりなき戦い。その均衡は少年・アズマが率いる勇者殲滅の精鋭部隊『カローン』によって保たれていた――。  《勇者》を人に還す研究をしていた少女・カグヤは、ある日『カローン』への所属を命じられる。だが過去の災厄で全てを失ったアズマたちにとって、カグヤの存在は受け入れ難いもので……。    少年は《勇者》を倒すため。少女は《勇者》を救うため。二人は衝突しながら、ともに戦場へと赴く――!  第29回電撃小説大賞《金賞》受賞、電撃文庫が贈る出会いと再生の物語。

少年少女が異形の怪物──《勇者》となり、意識を夢の世界に落としながら現実で破壊と殺戮を尽くす。「それ」を目視することができるのも、立ち向かうことができるのも同じ少年少女だけである。それに立ち向かう力を持った子供たちは「殲滅軍」という組織を作り《勇者》の肉体から作られた武器を手に取り、社会の裏側で孤独な戦いを続けている。ある日、《勇者》を元の人間に戻す研究をしていた研究者の少女・カグヤは最前線の精鋭部隊『カローン』に転属させられることになり……!?

歪んだ戦場の最前線で始まる暗黒系ボーイミーツガール

異形の怪物《勇者》と、それを殲滅する少年少女たちの物語。人間の身でありながらかつて人間だった異形を殺していくジレンマ、大人のいない組織特有の歪み・閉塞感、明日をも知れぬ身でありながらいつかを夢見る少年少女達。絶望の中で救いを求めるように手を伸ばす少年少女が戦場で出会うボーイミーツガールという、懐かしくも新しい感じが大変に好みでした!そう私は電撃文庫が細々と受け継ぐ絶望の近未来で大人の居ない戦場に駆り出され世界を背負わされて戦う少年少女達が絶望の中に一筋の救いを見出したりしなかったりする青春ボーイミーツガールに魂をひかれた女!

異形は大人には「見えない」。だから事件として認識すらされない──という設定が個人的にめちゃくちゃ好きなんですよね。成人後のメンバーもいないわけではないけど基本的には子供達が中心の組織で、しかも殲滅「軍」というの、めちゃくちゃいい感じに組織としてのアンバランスさ・歪みを感じる……しかも、勇者を研究しているはずのカグヤが「女神」の存在を知らなかったこととか、そもそも最初の異動の件からしてどこかにただ勇者を殲滅するだけではない思惑が潜んでいそうで。いやこのへんは続巻が決まっているようなので次巻で少しでも燐片を見ることが出来るでしょうか。楽しみだなあ。

勇者を人間に戻す研究をしていて出来れば戦わずに事件を収めたいカグヤと勇者を殲滅することこそ救いだと考えるアズマ。正反対の考えを持つ2人が最初は衝突ばかりしているのも大変好み。気が合わない理由がはっきりしているからこそ相容れない彼らが「少しでも犠牲者を減らしたい」という願いを共有することで少しずつ解り合っていくのがとても美味しい。ふたりの間だけでなく、アズマ率いる最前線部隊『カローン』の面々とカグヤが最初は険悪だったところから少しずつ解り合っていき、最後には掛け替えのない戦友になっていく展開もアツかったです。

大切な仲間を喪い、しかしその中で掴んだ一筋の希望。「戦わないで《勇者》を止める」というカグヤの言葉が現実味を帯びてきて、チームとしてもまとまってきて……というところから唐突な別離、再び絶望に突き落とされる中盤。カローンの面々は死地に挑み……自分が本当は何をしたいのかを思い出したカグヤが仲間のもとに走る終盤。様々な困難を乗り越え、何もかもを吹き飛ばすような気持ちの良いクライマックスがまた大変に良かった…!!楽しかったです!!

気になる部分がないわけではなかった

クリーチャーデザインがあの「まどか☆マギカ」シリーズでお馴染みの劇団イヌカレーさんで、特にライトノベルらしいぱっきりとしたりいちゅさんのイラストとイヌカレーさんの独特な雰囲気のクリーチャーが融合している口絵とか本当に素晴らしく、「夢」との戦いをキーワードにした本作とも方向性が合致していて凄く良かった……のですが、読み終わってから振り返るとイヌカレーさんのインパクトが強すぎて結構一部某作品の設定を脳内で勝手に補完してしまって読んでいる部分があって、このへん良くも悪くも有名税だなあと思いました。それで設定はぜんぜん違うんですが、この設定ってなんでいまさら説明出てくるんだっけ?あれ思ってた設定と違うな?みたいなのが若干あった。

あとこれは他の人の感想を見て自分も疑問に思ってしまった部分なんですが、《勇者》の名付けってどこから来てるんでしょうね。カグヤが解き明かすまで人間が異形に堕ちる明確なメカニズムは不明だったのではないかと思うので、プロローグを読んでると自然に入ってしまうネーミングなんだけど謎といえば謎なんだよな……このへん、今後の展開で明かされるのかなあ。

ただ、結構細かい部分で気になるところはあったんですけど、そういう部分がどうなっていくのかも含め続巻が楽しみな作品でした。2巻決まっているので安心して待とう。

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VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた6

 

憧れのVから衝撃の依頼届く!? VTuberコメディ第6巻!
VTuberの黎明期を支えた伝説的V・星乃マナ。その卒業が発表されたことにより淡雪に激震走る! 憧れの存在の卒業、そして一時代の終わりのような出来事にしんみりする淡雪の許に、驚愕の依頼が届き!?

配信切り忘れ事故をきっかけにして着実に人気を伸ばし、今やライブオン3期生の中でも中心的な存在となった心音淡雪のもとに、ライブオン外のVtuberからコラボ依頼が届く。それはなんと、伝説的Vtuber・星乃マナの卒業配信にゲストとして参加して欲しいという依頼で……!?

とにかく安定して面白い

淡雪単体の配信回でのコメント欄とのテンポの良い掛け合いも安定して楽しいし、ワルクラ配信・一般常識テストの回などのライブオンの他Vと絡む回はどんどんカオス度が上がっていて、読んでいて安定して面白いなあ。エーライさんの動物園で自ら率先して隷属プレイしてるネコマ先輩が面白怖い。序盤から存在が濃ゆかった聖様や有素ちゃんは置いておくとしても他のライバー達も巻を経るごとに個性が強くなっていって、今となっては……。もう変な性癖付けされてないキャラってましろんくらいでは?ましろんがボケに回るともうライブオンのストッパーが誰もいなくなってしまうので彼女だけはこのままで頑張ってほしい。とはいえ、ただのボケかとおもっていると不意打ちで淡雪への強い執着を覗かせて反撃してきたりするんですけどこの人も。

あと個人的には、お悩み相談回の晴先輩と淡雪の掛け合いがめちゃくちゃ好きです。どっちもボケもツッコミもやれて周囲に遠慮なく無茶振りしていくスタイルなのでひたすら会話のテンポが良いんだよな。巻き込まれた還ちゃんあらため赤さん……改めバブリエル……は災難でしたが!!

そしてなにげに今回、組長もといエーライさんの中の人が……!!ライブオンの面々割と皆中の人がそのままライバーやってる感じの人が多かったので、このギャップがある感じはとても美味しい。ライバーとしてのエーライさんからすると結構予想外のキャラなんだけど、普段の「組長」の方を見ていると納得できる人物像でもあるんだよな。

良い最終回だった(※終わってません)

晴先輩を同じところに引きずりおろし、聖先輩とシオンママのカップル成立にも尽力し、その後も先輩・後輩・同期全ての性癖を暴きまくってきた心音淡雪の物語。第一部完というか物語の一区切りともいえる今回の巻の最後の最後で淡雪自身の出自と自身の心の中を掘り下げていく展開がとても良かった!

家族の温もりを知らないまま天涯孤独の身となり、自分の知らない「家族」という概念にトラウマを抱え、内心で「家族」からの愛情に飢えていた雪がVtuber活動を通して真実の家族を手に入れる。これまでの与太話の全てがなくては成立しなかったであろう星乃マナ卒業配信回「狂おしい最愛の家族」がこれまでの集大成として完璧すぎる。淡雪のサプライズ登場で色んな意味で沸き上がるライブオン以外のファンたちの反応に笑ってしまったし、淡雪の晴れ舞台に先輩後輩同期揃ってコメント欄に駆けつけてくる展開には思わずニヤニヤしちゃう。

物語はこれからも続くんだけど敢えて「良い最終回だった」と言いたくなる展開で、物語は次のステージへ。いやでも現時点でも結構キャラクターがいっぱいいっぱいな感じはあるんだけど、更に変態が増えてしまうのか!?5期生登場の新展開が楽しみです。

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