アラサーがVTuberになった話。サブチャンネル | 今日もだらだら、読書日記。

アラサーがVTuberになった話。サブチャンネル

 

祝、シリーズ2冊同時刊行! コミックスも出るよ!
その日、年の離れた兄が路上で倒れて緊急搬送されたという一報が届いた。──『こうして兄はVになった』  休日の兄は一体何をしているのか? その謎を探るため神坂雫は兄の尾行を開始する。──『ある日の兄妹』  親バカイラストレーターmikuriが秘める、長女との悲しき思い出とは……。──『mikuriの親心』  掲示板の名物キャラ、駄馬とガチ恋ネキの意外な素顔が判明!? ──『とあるリスナーたちの休日』  1?3巻までの特典小説に書き下ろしを追加した全22編を収録!

年の離れた兄が過労で病院に緊急搬送されたという知らせが妹のもとに届いた。兄はブラックだった会社を辞めて実家に戻ることになったが、家族の居ないところでは抜け殻のようになっている兄の姿を見ると不安にかられてしまう。そんな時、推しのVtuberが所属する「あんだーらいぶ」が新人募集していることに気がついて、オーディションを受けるように薦めてみたが……?

店舗特典、どんどんまとめていってくれ(切実)

店舗特典小説やWebに掲載された発売記念短編、書き下ろしも収録した番外編短編集。アラサーVの店舗特典、割と骨太な内容が多かったし流石に追いきれてないのでこの調子で定期的に書籍にまとめていってほしいですよろしくお願いします。特に4巻の店舗特典小説とか分量がエグかった上に実質本編みたいな内容まで含まれてたので……。

妹・雫ちゃん視点から兄のVtuberデビューを振り返る「こうして兄はVになった」を皮切りに、周囲の人々の視点から3巻までの物語を綴っていくお話が興味深かった。特に月太陽コンビの視点、ほとんどのお話が本編で神坂視点から語られたエピソードを更に月/太陽両者の視点から描き直すので1つのエピソードに対する情報量が増える増える。

mikuriママの視点から神坂兄妹との出会いを振り返る「mikuriの親心」が大変良かったです。約束を果たせないまま突如として姿を消した「娘」、彼女と入れ替わるようにデビューして常に炎上している「息子」とそんな息子が溺愛している妹でありmikuriママにとっては二人目となる「娘」。Vtuberから距離を置こうとしていた彼女が躊躇いながらもかつての「娘」に出来なかったことを今度こそしてあげたい……と少しずつ神坂に入れ込んでいく姿が印象的で、同時に、本編では明かされなかったお誕生日メッセージの音声コメントでのやりとりにほっこりしました。それはそれとして神坂のマンスリーボイスはコミカライズの方でも改めて言及ありましたけどどんだけ破壊力高いんですかね。ギャップ萌えって怖いな!!!

個人的にお気に入りなのがあんだーらいぶスレのコテハン組の日常を描いた「とあるリスナーの休日」「とあるリスナーのその後」。というか3巻から続くガチ恋ネキ&駄馬くんコンビの話がめちゃくちゃに好きなんですけど、駄馬くんのバックグラウンドで予想以上におヤバい旧家の設定お出しされてめちゃくちゃ喜んでる。駄馬くん、本編のガチオタぶりと今回明かされた人物像を合わせると無限の味わいあるよね。そして「クラスメイトの推しが先輩だった件」を読んでたら思わぬ人物がコテハンコンビに合流しそうで今から楽しみにしてます。

いや、最近マイクラを始めたのでマイクラネタ周りのネタが読みたくて2巻を読み返してたんですけど、一連の短編を読んでからこの辺の話に舞い戻ると掲示板周りの話で凄いニヤニヤできちゃうんですよねえ……駄馬くんの自称美少女発言……コミケ会場に現れた謎の車椅子お嬢様&メイドの話……。

脇役視点の短編だからこそ改めて気付かされることが多かった

普通に短編集としても面白かったんだけど、いつもの神坂の一人称でないからこそ見えてくる事実も多くて、面白かったなあ。月太陽コンビと雫ちゃんのつながりとか、案外神坂視点からだと見えないもんですね。あと柊兄妹のご実家が結構良いところではないか疑惑とか。

特に印象深かったのが雫ちゃんの視点から兄の一日に密着する「ある日の兄妹」で、いややっぱりこの兄妹相思相愛ブラコンシスコンすぎるんだよなあ……というのはさておき、どうしても気になってしまったのは兄の不器用すぎる生き方に対しての『そうした方が都合が良いという結論に至ってこういう生き方をしているのかも』というコメント。過去に相当ヤンチャしてたというのは本人の口からも何度か語られていますが、本当に過去に何があったと言うんだ。いや本心からやってるんじゃなくてある程度意図的に「あの」キャラ作りをしちゃってるんだとしたらなんというか思ってたのの何倍も闇が深くないですか……何が彼をそこまで追い詰めてしまったというのか。

神坂の女性関係も含めた過去、mikuriママの最初の「娘」、柊先輩の元同期なんかも場合によっては今後本編に登場してくる可能性もあるのかなあとか考えてしまっていたけどどうなんでしょうね。4巻の店舗特典で出てきた新戸先輩と社長まわりの話とかもなかなか意味ありげな内容多かったんだよなあ……今後出てくるのか、出てくるとしたらどういう形で本編に絡んでいくのか、とても楽しみです。

それにしてもこれはもう普通に聡い読者さんがたなら気づいている部分だと思うんですけど、この作品ってVtuber組はもちろんそうなんですけど登場人物全員が絶妙に本名を避けて描写されているんだなあ。Vtuberとしてのキャラクターネーム、作家としてのペンネーム……雫ちゃん&真ちゃん&月太陽コンビとか実家や学校での描写もあるのに巧妙に本名を呼ばないように書かれてることに気づいて、その自然さに唸ってしまった。すごく今更だけど神坂が妹のことを「マイシスター」呼びするのとかもそういう意図なのか……いや何も違和感持ってなかったわマイシスター呼び……シスコンだし……。

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