空戦魔導士候補生の教官 EXTRA MISSION | 今日もだらだら、読書日記。

空戦魔導士候補生の教官 EXTRA MISSION

 

これは全ての始まりに至る物語だ。
空戦魔導士育成機関《ミストガン》。その絶対的エース、カナタ・エイジが《黒の剣聖》だった頃、そして《裏切り者》と呼ばれるに至った前日譚エピソードを始め、空士たちの波乱万丈な活動を描く記録! ※電子限定での発売になります

《ファルシオン》の空戦魔導士本科1年に所属するノエルは、憧れの先輩を撃破した《黒の剣聖》から学びを得るために《ミストガン》への短期留学を決める。ところが、肝心の《黒の剣聖》──カナタ・エイジは思っていたのとは正反対の自由人で……!?

クロエルートもアリだったと思うんですよ(未練)

ドラマガの未収録短編7編にキャンペーン・限定版特典小説2編を加えた電子限定の短編集。本編の内容とは関係ないんですけど読まなくても問題ないけどノエルがミストガンに短期留学したときのエピソードを描いたキャンペーン限定300冊配布の「空戦0」、カナタが「裏切り者」と呼ばれることになったきっかけのエピソードを収録したアニメイト限定版冊子の「空戦0.5」、(入手難易度が)地獄の詰め合わせすぎませんか。これ地味にラノベあるあるな気がするけど、本編匂わせのあったエピソードやみんなが知りたいエピソード・ゼロを限定版特典や円盤小説でやらないでほしい。いや、最終的に収録されたから良いけどさぁ……。

アルコール入りのお菓子を食べて酔っ払ったクロエが大暴れして何故か学園浮遊都市に巣食う悪者を退治してしまう短編『微笑みのドランカー』がメッチャ好き。酔っ払って大胆になったクロエに対していつもは飄々としているカナタが年相応の男の子らしくドギマギしてしまう姿が微笑ましいし、なんだかんだでクロエに頭が上がらないところが可愛すぎる。というか最後でちょっぴり確信犯のクロエさん本当に可愛いじゃありませんか。やっぱ第三のエンディングとしてのクロエさんルートまだありますよ!!そしてクロエとカナタの話に的を絞るとめちゃくちゃ甘酸っぱい短編なのに、それ以外に目を向けると色々と大惨事なのが本当に笑える。

……からの、クロエがE601小隊の臨時教官に就任する『微笑みのデモンインストラクター』の破壊力がヤバい。柔らかな物腰しと穏やかな笑顔で人間の限界を超越した無茶な努力を課してくるの怖すぎるし相手のやり口は解っているのに次々とクロエの口車に乗せられて撃沈していくミソラ達は強く生きて欲しい。

更にもう一個S128小隊関係のネタで恐縮なんですが事務仕事を手伝ってもらえないロイドの不満が爆発してユーリとクロエに際どい衣装を着せたエッチなPV撮影が始まってしまう『悪賢いスマイルアベンジャー』もめちゃくちゃ好き。いや色々な意味で酷いんですけど、暴走したロイドを素の気遣いで収めて去っていくカナタがロイドの王子様すぎて……。

ちなみに密かに戦々恐々と(楽しみに)待ってた「最終決戦前にミストガンに戻ってきた時系列の短編」は、共にミストガンにやってきたブレアの妹・アリアの素行調査をする『姉妹のチェインオブボンズ』のみでした。ほっとしたようなその時系列の話ももう少し読みたかったような……。

最後に語られる、《はじまり》の物語

シリーズのオオトリを務めるのは、カナタが裏切り者と呼ばれるキッカケのエピソードを描く『決意したブラックトレイター』。この辺の話は本編でもミーナ先輩がざっくりと概要をかたっていましたが、実際に読むとなんとも言えない気持ちにさせられる物語でした。

ミストガンに帰還したカナタが目にしたものは、英雄として祭り上げられた自分を盲信して努力することを忘れて堕落する学生たちとカナタの挙げた成果を自分の手柄にしようとする上層部の姿。自分が信じる「空士の絆」が自分が原因で失われようとしていて、その満心が原因でこぼれ落ちる生命を目の当たりにして……自分が「戦えなくなった」ことを誰よりも知っているカナタは、そんな自分を裏切り者に仕立てて憎ませることで学生たちを奮起させようとする。目論見としては大成功だったし、カナタの理念のために自己を犠牲にできてしまう性格や本編の展開も踏まえてこうなるのは必然だったな…という展開ではあるのですが最後に苦いものが残ってしまう。そんなお話でした。

これ元々はアニメイト限定版に掲載された短編だったとのことなんですけど(※Twitter公式アカウント情報)、もしこれを完結前に読んでいたら本編の展開が進むに連れてじわじわと苦味が増す、しんどいお話だっただろうなあ。個人的には前巻で語られたカナタ・エイジの物語の結末を知った上で読めたのはちょうどよかったなという気がしていて、でもそれを踏まえても「かつてのカナタ」に対する誤解を解く機会が永久に失われてしまったことは(本人がそれで良いと思っていたとしても)本当に悔しいな。

電子限定の未収録短編集という形なのでこの形で最後の最後に「一番最初の話」が来るという流れは想定していなかったかもしれないけれど、全てが終わった後にこの短編を読めたのは個人的にはとても良かったなと思います。前巻の「未来」のお話と今回の「はじまり」のお話、繋がっていないようで繋がっている2つのエンデイングがとても良かったです。楽しかった!

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