メルガリウスの天空城を舞台にした死闘は幕を閉じ、世界に平和が戻った。かつてのような平和な日常を送るシスティーナたち。しかし、そこにグレンの姿はなかった。一方、あらゆる並行世界を渡り歩きただ独り《無垢なる闇》との戦いを続けるグレンは、ひとりの少年と出会い───
前半の救いの無さが酷い
シリーズ完結編。いやあの本当に、《無垢なる闇》とグレンの終わらない戦いを描く前半戦がしんどかった。予想はできていたけど本当にしんどかった……。相手がいかに強大で無茶苦茶な存在なのかということ以上に、グレンの旅の結末が前巻の時点でそれとなく語られていて、その通りの悲劇的な結末に向かって突き進んでいくのがわかってしまうの本当に絶望しか無い。ていうか追想日誌1巻からずっと謎だったグレンが幼い頃の記憶を失った理由とその経緯、いくらなんでもえげつなさすぎじゃないですか?????いやあとほんとうに今回、カラー口絵の出し方がえげつないよな……(システィーナの口絵で希望を持たせておいて次のページであの変わり果てたグレンの口絵だすのあまりにも人の心がないんですよ……)。とにかく絶望しかない前半、並行世界で出会った謎の少年・ジャスティンとの奇妙な二人旅が色々な意味で唯一の癒やしなんですが、その癒やしも完全にその後落とすための伏線でしかないので更にしんどいし、システィーナと並ぶグレンの「もう一人の愛弟子」であった彼が前巻でああいう終わり方を迎えたのも、この結末を迎えるために必要だったとしても本当に寂しい話なんだよな……。
完璧を超えた最高のエンディングだった
一方、無限とも言える闘いをグレンが繰り広げている間にシスティーナを中心にしたアルザーノの人々はグレンを救うために奔走する。ジャティスから託された遺産を完成させ、絶望の輪廻に囚われたグレンと全ての元凶である《無垢なる闇》を再び目の前に引きずり出すために。絶望の底から一気にひっくり返される展開が急すぎて一瞬混乱したのですが、よく考えればアルザーノでの最終決戦で活躍していた町の人々(短編集の面々)のエピソードとか、この展開をやるための布石だったんだろうなあと納得。彼らの誰もがグレンと関わることで影響されて、これまで踏み出せなかった一歩を踏み出していって……そしてそれは並行世界を超えて高須九郎や少年ジャスティンへ、そして魔王フェロードやジャティス=ロウファンをも引き込んでいったんだなと。今こそ明かされる「禁忌教典」の真実。最後の目的を果たすために人々の想いが一つになっていって……もう笑っちゃうくらいのクソデカ元気玉っぷりに笑ってしまうんですが、その奇蹟を生み出すためにジャティスの頭脳と魔術を持ってしても五億年以上もの気の遠くなるような試行錯誤があったんだとすると本当に………しかし改めて退場したはずなのに霊圧高すぎるんだよなぁこの人!!!!!!!失敗したパターンどれもリアルに想像できすぎてしんどすぎるし、本当にこの結末を導き出した彼が孤独に退場していくのしんどすぎるというか
そこかしこで懐かしの第一巻を彷彿させるクライマックス、もう間違いなく序盤を意識しているであろう台詞回しの数々でガッツリ泣かされてしまった。登場人物たちみんな絶対幸せにしてくれると信じていたけど、予想を更に超えた幸せエンディングだったしもう色々とずるい。それとなく語られる登場人物たちのその後の姿にもニヤニヤが止まらなくて最高でした。本当にお疲れ様でした。楽しかったーーー!!!!!(それはそれとしてもう1〜2冊くらいは短編集でお目にかかりたいですよろしくお願いします!!!)