ページ 13 | 今日もだらだら、読書日記。

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我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.1 魔王城、燃やしてみた

 

12年ぶり「大賞」受賞作。最強爆焔娘の異世界コメディ!
(あわよくば何か燃やしたい……)という欲求を抱いていたホムラは異世界へと招かれる。そこには同じようにヘンな女子高生達が集められており、何でも特別な才能を持つ彼女達に「この世界を救って欲しい」という話のようで? 100年振りの魔王復活、混乱に乗じて蔓延る悪党共。天下動乱の世を正す為、世界の命運は少女たちに託された――。 「あなた悪人さんですか?それなら私、心置きなく燃やせます!」  燃やすことこそ大正義! 焼却処分はエクスタシー!! 圧倒的火力で世界を制圧していく残念系美少女ホムラの行く末は!?  スニーカー大賞12年ぶり「大賞」受賞作。 最強爆焔娘の異世界コメディ!!

現代で異端とされた少女達が異世界に召喚され、創世神から魔王を倒して欲しいと頼まれる。破天荒な仲間たちに囲まれて困惑する発火能力者のホムラだが、彼女の内にはとある強い欲求が渦巻いていて……!?

自分に正直に生きるために

発火能力者、マッドサイエンティスト、暗殺者、生体兵器、機械生命体……現代日本で「異端」とされた少女達が異世界で繰り広げる冒険譚。表紙のドヤ顔ガイナ立ちなヒロインと景気の良さそうなあらすじをみて破天荒な少女達が前世チートで大暴れする物語を想像していたのですが、どちらかというと彼女達がそこ(プロローグで語られた魔王との最終決戦)に辿り着くまでの物語で、今巻はむしろ物凄く地に足が付いているというか、前世で抑圧されてきた少女達が異世界で少しずつ成長しながら自分に正直に生きていく……という方向性のお話でした。

異世界に行っても彼女達が「異端」であることに変わりはなく、彼女達の持つ力も現時点では世の不条理をなぎ倒せるような圧倒的なモノではないのですけど、だからこそプロローグでのご無体ぶりが気になるというか、ここからこのクライマックスに向かって成長していくための物語なんだろうなあと感じてワクワクしました。

また、主人公達5人の絶妙な距離感が良かったな〜。どこか異常で異端な彼女達が適度な距離感を保ちつつお互いの異常な部分を理解はできないけど拒絶もしない、運命共同体としてまあ仲良くやろうじゃないかくらいの感じなのが良かった。個人的なお気に入り場面は仲間のひとりが不注意で毒だして、あぶなーーーい!っていいながら残り四人が足を引っ張り合って全員の逃げ道ふさぐ展開ですね。いやもうホント、こういう仲良し仲悪しな関係性大好き。

今回はホムラとサイコ以外の3人はやや存在感が薄めに感じてしまったんですが、他の少女達の事情や葛藤も面白そうなので、ここからどう物語が動いていくのかがとても楽しみです。

しかし、やっぱりこれ表紙とあらすじを読むと破天荒な少女達の私TUEEの方向を期待してしまう気がするな……宣伝がもう少し上手くやってくれれば、と思う反面、少女達の関係性や成長物語要素の方を押し出すとなんていうか地味になっちゃいそうなんだよなあ……。タイトルもかっこいいんですが(富士見全盛期世代並の感想)、原題の「異端少女」という表現が彼女達を表す言葉として凄くしっくり来たので何らかの形で残してほしかったな。

あと1巻のラスボスの人、与えられた情報からなんとなくラスボス化した理由は想像できるんですが物凄く雑にラスボス化してしまったのでもうちょっとこう、丁寧に料理してあげてほしかった気がしますね……いやだってこれ絶対に出世した同期へのクソデカ感情をこじらせた末にああなったやつでは……私が地味に読みたい方向のやつ…………。

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君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?

 
champi

親友の誠司に妹を殺された拓真。異世界に転生し、再会した二人は──。
 幼い頃から殺人衝動を持ち、勉強も運動も何でも一番の完璧な高校生、高城誠司。誰とも相容れない彼の前に、初めてライバルとして認められる存在の菅沼拓真が現れる。友情を深める二人だったが、ある日、誠司は拓真に、自殺した妹を殺したのはお前だと問い詰められる。  その瞬間、気がつくと誠司は魔方陣に吸い込まれ異世界に転生していた。魔法で召喚された先のインストリアル王国で、第一王子デュレルの右腕として誠司は成り上がっていく。一方、誠司と同様に転生した拓真も、軍人として第二王子アシュレイの信頼を得て出世していた。  異世界で再会した二人は、国を左右する王子たちの皇位争いに巻き込まれながら、拓真の妹の死の真相に近づいてゆくのだが――。

完璧な優等生である主人公・高城誠司は高校で自分と対等に付き合える存在・菅沼拓真と出会い、親友となる。ある日、拓真の妹・香奈が患っていた病気を苦にして自殺してしまうが彼女の自殺の裏には誠司の存在があり……拓真が彼女の死について誠司を問い詰めようとしたその時、ふたりは異世界に召喚されてしまい……。

かつて親友であった天才ふたりの、執着と対決の物語

拓真の妹の死を巡って撒き起こる親友ふたりの対立に異世界のとある国家の行く末が巻き込まれ……というお話。あらすじや評判を見て好みの予感しかしてなかったのですが、最初から最後まで親友ふたりの濃厚な執着・俗に言うクソデカ感情のお話で、楽しかった〜〜!!というかまず作者が自費で作ったというPVがめちゃくちゃ最高なのでとりあえず何も言わずに見てください。
CV.石田彰×羽多野渉 ライトノベル『君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?』本PV

ありあまる才能を持つがゆえにほんとうの意味での「友人」を持たなかった二人がはじめて対等な立場で付き合える相手と出会って親友となる。しかしその裏で、誠司は魂の輝きが消える瞬間が見たいという殺人衝動を強く刺激され、それを感じ取った拓真も親友が間違いを犯したら殺してでも止めようという義憤を芽生えさせることになる。相反する感情、人間を殺してはいけないという倫理観に支えられてそれでも絶妙なバランスで成り立っていた彼らの関係──それは、妹の死と異世界転生という切っ掛けで致命的に形を変えてしまう。

合間合間で語られる転生前の「親友」としての気のおけない関係性、そして転移後に見せる互いへの執着が大変によかった。異世界で強い人間を殺しても良い名目と立場を手に入れた誠司が行方もわからない拓真と対決するときのために力を蓄えていくのに(こういう言い方もアレなのですが)ワクワクするし、一方で別の場所に転移した拓真の方も妹の死の真相を知るため、そして自分の正義を貫くために誠司への執着を募らせていく。導かれるように敵対する関係となり再会する二人の姿に、興奮してしまいました。

彼らを取り巻くキャラクターたちも魅力的

とにかく最初から最後まで一貫して男同士のどでかい感情の対決を描く物語で最高なのですが、その反面で彼らを取り巻く現代・異世界のキャラクターたちも魅力的でした。誠司と拓真の対立の起点となった妹・香奈、誠司の汚いやり口に嫌悪感を持ちながらも拒絶することはできず理想と現実に折り合いをつけられずに迷い続ける王女シンシア、誠司に手駒として見出されてその殺人衝動を知った上で彼に心酔する従者オデット。おおよそ主人公らしからぬ「悪」である誠司の心の動きを引き立てるような彼女達の存在・葛藤がとても良い。

そして誠司と拓真の対立の起点となった妹・香奈。もういろいろな意味で彼女の行動には驚かされましたし、誠司のような「悪」を主人公とした物語の起点として、この上なくしっくりくるキャラクターだなと。彼女の出番自体は本当に少ししか無いのですけど、強烈な印象を残していくキャラクターだなと思いました。オデットにしろ香奈にしろ、こういうキャラクター達こそが誠司の弱みというか予想を越えてくる展開、良いなあ。

もういろいろな意味で衝撃的なラストだったけど最低4巻以上のボリュームを想定した戦記モノとのことで、ここからどう続いていくのかめちゃくちゃ気になる。色んな意味で異世界側に拓真以外で主人公の敵になれそうな相手がいないし、彼らの物語としてはこの上なくきれいに1巻でまとまっている感じがするんだけど。2巻でどういう方向に行くのか、とても楽しみです。

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Vのガワの裏ガワ

 

「私のママになってくれませんか?」
プロの高校生イラストレーターとして活躍する千景。そんな彼はある日、誰もが近づきがたいほどに完成された美しさを持つ孤高の少女・果澪から「ママになってくれないかな?」とお願いされる。 この場合の「ママ」と言えばVTuberのキャラクターデザイン――悩む千景に、果澪は突如脱ぎ出し、きわどい水着姿で迫り……!? 果澪の熱意を受け止めた千景は、同じく高校生イラストレーターの桐紗、自堕落な隣人にして大人気個人VTuberの仁愛を仲間にし、VTuber「雫凪ミオ」プロジェクトを発足。全員で果澪を人気VTuberにするべく、動き出す。 VTuberになりたい女子高生と、クリエイター&ストリーマーたちで送る青春ラブコメディ開幕!

高校生にして「神絵師」──商業イラストレーター・アトリエとして一定の地位を得ている主人公の亜鳥千景。ある日突然、隣の席の美少女・海ヶ瀬果澪に自分の正体を見抜かれた上、Vtuberの「ガワ」をデザインして欲しいと依頼される。「アトリエ先生のファン」という彼女に悪い気はせず、依頼を請け負うことにするが……?

Vのウラ(制作サイド)を描く青春物語

隣の席の美少女からVtuberのキャラクターデザインの依頼を受けた主人公が、同級生で同業者でもあるイラストレーターの少女・桐紗(モデリング担当)と隣の部屋に住む自堕落な後輩の少女・仁愛(人気Vtuber)の2人を巻き込んで、4人でプロジェクトチームを立ち上げるというお話。

ただVtuberのキャラクターデザインを担当するというだけでなく、キャラクターを動かすためにモデリングを依頼したり、Vtuberとしての売り出し方を考えたり、Vtuberをやっている友人達に宣伝を頼んだり……と、多角的な視点からひとりの「キャラクター」を完成させるために動いていくという展開がめちゃくちゃ面白かった!こういった立ち上げからの話を1から全部やれるのは個人勢Vtuberの面白いところだなあ。また、それを複数人のチームで行っていくのが一昔前の青春系部活モノみたいな味わいで楽しい。最初は打算的な目的一致で集まった急造のチームだったのが、Vtuberのプロジェクトを通して少しずつ距離を縮めていく展開にほっこりしました。

前半とは打って変わった後半のシリアス展開が熱い

人気イラストレーター2人と人気Vtuber、3人のバックアップを受けてデビューしたVtuber「雫凪ミオ」。前評判の高さとそれを裏切らない魅力的なキャラクターが功を奏して、果澪の当初の目標を大きく越えて人気を博し、一気にスター街道を邁進していく。ところが、ある日を堺に果澪は学校を休みがちになり、並行して「雫凪ミオ」のプライベートを洗うような不穏な噂が広がり始めて……。

青春部活モノのような味わいの前半、華やかなVtuber界のスター街道を駆け上がる中盤を経て、果澪の内面と本心に迫る後半の変調が凄まじい。果澪がVtuber「雫凪ミオ」になろうとした本当の理由、そしてこれから何をするつもりなのかを知って愕然としましたし、これまでとは打って変わってシリアスで重苦しい展開に背筋が寒くなりました。しかも、そんな彼女の行動の背中を押したのは元はと言えば千景が黒歴史としてしまいこんでいた配信時代の軽率な発言だったものだから、なおさら事態が混迷を極めていって。

果澪の歩んできた道の重さを知って、しかもその背中を押したのが自分だと知って、自分が彼女の行動を否定してしまって良いのかと散々悩み……そんな中、仲間たちからの叱責を受けて、仲間として友人として「雫凪ミオ」ではない「海ヶ瀬果澪」を取り戻そうと必死に手を伸ばす主人公の姿がとても良かったです。

文字通りVtuberのガワ(制作サイド)の裏側(内面)を描くお話で、発信者としてのVtuberではなく「創作者」としての視点で描かれていく物語が印象的でした。また、華やかなVtuber活動の裏側で繰り広げられる少年少女たちの青春物語がとても楽しかったです。1巻目にして「1」とナンバリングされている珍しいパターンだけど割りと1巻が綺麗にまとまっているので、ここから1巻から引き続き「創作者」達の物語にも、「配信者」達の物語にも(創作・配信活動をテーマにした)「高校生男女」の恋愛モノにでもどんな方向にも舵を切れそう。次巻で方向性が定まるんだろうなと思うので、どっちの方向に進んでいくのか楽しみにしていようと思います。

あと、ストーリーも面白かったけど表紙絵の本編内での使われ方がめちゃくちゃよかったな。思わずニヤリとしてしまった。

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残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.2

 

バエティカ王国の男爵令嬢、アンヘラ。男爵の庶子である彼女は成りあがるため、自らの通う学院で王太子をはじめとした貴い身分の男性たちに取り入り、多くの令嬢たちにいじめられつつも強かに過ごしていた。しかし、卒業パーティ前夜に突然、アンヘラは前世の記憶を取り戻し、自分が乙女ゲームのヒロインだということを理解する。しかもこのままでは明日、逆ハーレムエンドを迎え、今の自分では望まぬ人生を送ることになってしまうかもしれない……。そこで彼女は信頼する従者エドガーの手を借り、エンディングが確定する卒業パーティまでの残る二十四時間で、逆ハーレムエンド阻止のため奔走することに――

ある日突然前世の記憶を取り戻した男爵令嬢アンヘラ。自分は乙女ゲームのヒロインで、明日には逆ハーレムエンドがほぼ確定してしまうのだが、どう考えてもその生活が幸せなまま維持出来るとは思えない。ならば確定する前にみんなに辞退してもらおう!と従者エドガーを巻き込み、フラグを折るため動き出すが…!?

乙女ゲーヒロイン本人による、逆ハーレムエンドフラグ破壊RTA

前巻は権力も資金力もある悪役令嬢な主人公がフラグをぶち壊していく様が痛快なお話でしたが、今回は権力も資金力もなく実家の後ろ盾も薄い男爵令嬢の主人公がゲームの攻略知識を使って事態をひっくり返していく展開で、前巻とは違った縛りの多い展開を楽しめました。エンディング到達後の自身の進退もあるので、権力者である攻略対象達に恨まれないようにフラグを折らないといけない(出来れば向こうからラブコールを取り下げて貰いたい)のが難易度を上げている。

できる限り穏便に事態を処理しようとしているところに、同じくアンヘラの逆ハーレムエンドを阻止しようとする悪役令嬢コンスタンサが介入してくる。更に前作ヒロイン・悪役令嬢の影まで見え隠れしはじめて……!?徐々にこんがらがっていく人物相関図が楽しかったです。

面白かった!けど説明が足りてない……

穏便な解決を望むアンヘラ、攻略対象たちを排除できればそれで良いスタンスのコンスタンサ、そして彼らの裏で蠢く前作キャラクターたち。別々の思惑を持った複数の人間がフラグ破壊を巡って絡み合う展開はとても楽しかった……のですが、重要な設定がいくつも触れられないまま終わってしまい、終盤は完全な消化不良になってしまった。特に、意味ありげに絡んでくる前作キャラたちの思惑が一切語られず、わけもわからないまま彼女達の手のひらの上で踊らされただけという印象が強くなってしまったのが本当に残念でした。


あまりにも消化不良で原作のWEB小説を探しに行ったのですが、この辺の説明が足りてない部分ってほぼぜんぶ書籍化されていない「Interlude1 アレクサンドラのその後」で語られている部分なんですよね。結構文字数が多いのと、外伝として別話立てされているので収録しづらかったんだとはおもうんですが、流石に説明が足りてなさすぎるというか、2巻を書籍化するならば誰の視点かをぼやかしてでも必要な回だけでも章間に無理やり入れるとか出来なかったのかな……いやこれは流石に編集仕事しようよ案件でしょ……。

特に前作ヒロイン・ルシアの挫折から再起、真実の愛を得て舞台に舞い戻るまでの物語はストーリー単体でもめちゃくちゃ面白かったんですが、同時にこれを読んでないと2巻に登場するルシアにつながらないので流石にここを省いて書籍化するのは駄目だとおもうんでうが……アレクサンドラが事態に介入してくる流れも最低限説明がほしい(こっちはコンスタンサが誰の娘なのか説明するだけでも大分違ったと思う)。というか「Interlude1」を読むと2巻の話ってアンヘラ視点で進むもののアレクサンドラとルシアの物語の延長戦として存在しているのでやっぱりアレクサンドラとルシアの視点を省くのはないよなあ。

他にも戦争に行った前作攻略対象達の末路とか、セナイダの結婚話とか、最後の最後の最後でアレクサンドラがルシアに一杯食わされる展開とか、ちょっと長いんですけどすごく面白かったです。2巻のメインヒーローであるエドガーの正体バレが出てくるので2巻を読む前にこちらを読めともいいづらいんですが、その辺含めて上手く書籍に盛り込んでくれたらめちゃくちゃ面白かったと思うので、本当に編集が……メディアの違いを理解してくれればこんなことには……。

個人的に、全ヒロインが揃い踏みで乙女ゲーと自分の前世のネタバレトークするInterludeの最終話めちゃくちゃ面白かった。ルシアとコンスタンサの前世が予想外に大物すぎるし、アンヘラもなかなか波乱万丈な人生贈ってるし、そこに張り合えるアレクサンドラの前世(一般庶民・同人作家)がまさしくオタクならではの序列という感じで笑ってしまった。

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ロクでなし魔術講師と追想日誌 10

 

忘れたくても忘れられない、彼女を喪った哀しき記憶
その日、グレンは彼女の墓地に花束を捧げていた。その脳裏には彼女――セラを喪ったあの日の記憶が鮮やかに蘇っていた。ジャティスが引き起こした『天使の塵』事件。訪れた別離の瞬間にセラが遺した言葉は――

何気ない昼下がり、シロッテの枝を齧っていたグレンはセリカの突然の思いつきによってシスティーナ&ルミアとともに魔の海域・ベーリン海に挑むことに……!?

どんなトンチキ話でも今割りとしんどい(富士見短編あるある)

初っ端からセリカのワガママでグレン達が魔の海域に巨大カニを狩りに行く「セリカの南海大冒険」のトンチキぶりが凄い。「犯罪者に人権はない」と言い放って海賊をおびき出して海賊船を略奪して、その他だいたいのトラブルも全部イクスティンクション・レイで強引に解決していくセリカのご無体スタイル、同レーベルの大先輩である某ス●イヤーズ先輩を思い出すというか完全に意識してる気がする。懐かしいなこのノリ……。

しかし本編があんなことになっちゃってるのでもうこの最高に頭の悪いトンチキ話でもなんかしんみりしてしまうんですよね……これもう「戻らない日々」なんだよなあ……最後の最後でちょっとセリカがグレンに息子想いな気遣いを見せる展開なんかも覿面にホロリとしてしまうわけで。富士見短編集終盤あるある。ところでグレンの誕生日が(本当の誕生日ではないとしても)設定されてるの初耳なんですがその設定開示するなら何月何日だったのかまでちゃんと教えて下さいよぉ!!!!!(生誕を祝いたいオタクの叫び)

実家に縁切りされて貧乏なイヴのなけなしの安アパートが火事で全焼してしまう「家なき魔術師」、たまにぶち込まれるイヴ先生の貧乏ネタがめちゃくちゃ好きなんですが、その次のグレンが優勝賞金目当てにボクシング大会に挑む「熱き青春の拳闘大会」も金欠に喘ぐイヴ先生がうっかりグレンに大金を賭けてしまうというお話で貧乏ネタ連続でぶちこんでくるの笑ってしまった。グレンの代わりに貧乏くじ引いてるイヴ先生の回、イヴのヒロイン度がググっと上がってシスティーナとルミアが涙目になるところまで含めてラブコメ度が高くて楽しい。

拳闘大会の話は出発地点が与太話なのに普通にグレン先生が熱バトル&良い教師してる話で、最終的にイヴとシスティーナが貧乏くじ引いてるのが微笑ましかったです。拳闘大会で出てきた彼は今後本編の方にも出番がありそうで、どういう形で出てくるのか大変楽しみです。

今語られる、『天使の塵事件』の真相

描き下ろしの過去編「Lost last word」は表紙を見ればなんとなく予想が出来てしまう、セラが死んでグレンが特務分室を辞めることになった『天使の塵事件』の顛末を描くお話であり、本編での様々な事件を乗り越えてきたグレンが漸く彼女の死と向き合おうとするお話。

この事件のあらましは本編5巻でも軽く語られていて、なんとなくこれ一種の人災みたいな話だと思ってたんですけど思った以上に政治色の強い事件だったんですね。たったひとりで国家転覆を成功させかけたジャティス普通にやばい。そして本編の展開を踏まえるとイグナイト卿の介入には色々と考えてしまう部分ある……家の矜持とかもあっただろうけど、その後を見据えてわざとイヴに失敗させてアルザーノ帝国全体の戦力を削ぐ的な狙いもあったんじゃないかとか……。

最終決戦を前に『天使の塵事件』の概要をおさらいできたのもタイミング的に良かったし、今読むからこそわかる部分も多かったし、今後の展開の伏線になりそうな話とか今読むからこそ意味が解るくだりとかも色々あって良いおさらい&予習になる過去編でした。

そして何よりセラとグレンの関係がほぼほぼ両想いだったのにはびっくり。わりとこう、恋愛になりきらない関係性とか喪ってから本当の気持ちに気づいたパターンだと思ってたんですけど本当にあとはグレンが想いを伝えるだけの状態だったんですね……。これはグレンも引きこもるわしトラウマにもなるわ……。あとこの二人が割りとちゃんとした恋仲だったとわかったところで地味に最終的にグレンが誰とくっつくのかも改めて気になってきますよね。本編だとシスティーナっぽいけど、短編のイヴのヒロイン力やばいんだよな……。

今回ので現時点で語れる過去編は今回ので全部出きったなという感じがあり(あとはせいぜいセリカと出会う前のグレンの話くらい?)、シリーズ通してあとは最終決戦を残すのみ。グレンの必殺兵器である『愚者の一刺し』ですら殺しきれなかった「彼」とどう決着を付けるのか。本編の次巻が本当に楽しみです。

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まだ間に合う!明日処刑される悪役令嬢ですけど、スチル回収だけはさせてください!

 

「処刑は明日の正午だ。ここで、これまでの人生を悔いるといい」
突然処刑を言い渡された私は気がついた。 自分がドハマリしていた乙女ゲーム『ゲーテンベルグの白百合と黒薔薇』の悪役令嬢フェルリナになっていることに! そして処刑を宣告したのは最推しキャラのアルフリートだということに! さらに思い出す。自分が全スチルを回収できていないことに……! 「私を裏庭に連れてって!! 今なら告白スチルを生で回収できるから!! お願い!! どうせ死ぬならスチルを生で拝ませてよぉぉ!!」 「裏庭にだけなら連れて行ってやる! わかったから少し黙れ!!」 イベントスチルの回収に執念を燃やすフェルリナの熱意は、処刑回避に繋がるのか!? もう遅くない、まだ間に合う!? ファンタジーラブ&コメディストーリー、スタート!

乙女ゲーム『ゲーテンベルグの白百合と黒薔薇』の真エンディングにたどり着くべく、徹夜でスチル回収をしていた主人公は階段で足を滑らせ──気がつけば、その乙女ゲームの世界に転生していた。しかも、明日処刑される悪役令嬢フェルリナとして。どうせ明日死ぬならせめて集めきれなかったスチルを拝んでから死にたい!!とゲームではお助けキャラだった騎士・アルフリートを巻き込んで「スチル回収」を始めて……?

タイトルの出オチ感とは裏腹に深まっていく謎は必見

処刑直前なのに乙女ゲーの未回収スチルをリアルで回収しようとする転生悪役令嬢のお話。タイトルから出落ち感がすごいしかなりコミカルな話ではあるのですが、話が進むごとに自分の記憶やゲーム知識と現実の展開にズレが生じてきて、謎が深まっていく……という展開がすごく良かった。

真エンディングを見れてない乙女ゲームという不完全な知識と、感情が伴わず重要なエピソードの記憶が抜け落ちてしまっている悪役令嬢フェルリナとしての記憶。そのどちらにも大きな欠落があり、(プレイ済の)乙女ゲーム転生モノでありながら先の読めない展開になっていくのが印象的でした。元々謎解き要素・ホラーというかミステリー的な要素のある世界観なのですが、そこにゲーム内では描かれていなかった異能力の存在や知らない事件の話が掘り出されてきて、更には一連の騒動の裏で蠢く陰謀、攻略対象達の本心も明かされていって、どんどん何が起きてもおかしくない雰囲気になっていくんですよね。もう誰を信じたら良いかわからなくて、そのせいで中盤のアルフリートと離れてフェルリナひとりで行動するシーンなんかはかなりハラハラしながら読んでしまってました。

暗くなりすぎない展開・大団円のハッピーエンドが嬉しい

そんな予想外に重たい展開の中、主人公であるフェルリナがスチル回収に必死になったり「推し」の活躍に悲鳴を上げたりする姿と、彼女の相棒役である騎士アルフリートが彼女に振り回されながらも繰り出す鋭いツッコミが一種の清涼剤となっていた気がします。いや、2人の掛け合いが唯一の清涼剤だからこそ、中盤の2人が別行動を取る展開でめちゃくちゃ手に汗握ってしまうわけですが。

フェルリナが「スチル回収」にこだわる姿はともすると滑稽だし現実が見えてないようにも思えるんですが、一方で色んなところで作品そのものに対する深い愛情を感じることができて、オタク主人公の推しコメディとしてもポイント高かった。ちょっといいシーンになると途端にスチル扱いして細かな描写で語り始めるのが微笑ましいし、中盤になるとだんだん好感度が上がってきたアルフリートがちょっと殺し文句を言ったりカッコいいムーブをする度に悲鳴を上げて不審者になってるのわかるすぎる。また、ただオタクの悲鳴を上げるだけではなくて、双子の妹でもありライバルでもありもう一人の「推し」でもあるゲームヒロイン・リリベールや攻略対象達について、どんなに彼らを疑いたくなるようなネガティブな情報や推察が出てきたとしてもゲームで触れた彼らの内面を信じ抜くフェルリナの姿がとても良かった。自身の命運に関してはやたらと達観している割に、自分を陥れたはずの彼らがバッドエンドを迎えないように奔走する姿はとても印象的で……だからこそアルフリートがフェルリナに「もっと自分を大事にしろ!」と言い続けるのも解るんだよなあ。

そんな彼女の真摯な想いが天に通じたのか、最終的にたどり着いたグランドフィナーレは誰も傷つくことのない完璧な大団円で、思わずニッコリしてしまいました。特に事件を通してすっかりラブラブになったアルフリートとの、事件を切っ掛けにすっかり仲良し家族になってしまったリリアーナとの仲睦まじい様子にはニヤニヤが止まりません。

悪役令嬢でも割りとよく見かける気がする復讐完遂でも「ざまぁ」でも逆ハーレムエンドでもなく、主人公含む登場人物全員がそれぞれの進むべき道を選んでそれぞれ幸せになっていくという大団円な終わり方、凄く良かったです。

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「このラノ2023」感想と自分の投票の話

『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) このライトノベルがすごい! 2023
『このライトノベルがすごい!』編集部(編集) (著)
宝島社
発行:2021-11-25T00:00:01Z

今年も「このラノ」のアンケートに参加したのでざっくり自分の投票とざっくり本読んだ感想の話をします。協力者は降りて久しいんですが最近の協力者枠は自分の投票と総合コメントが載せてもらえていいなあ。しかし向こうの協力者枠の募集要項で指定されてるほど今読めるか微妙なところだしなあ……ギリギリその数字になってても最近の新刊を読んでるわけじゃないしなあ……という顔。

殿堂入りが……殿堂入りが多い

今回で3回目の新文芸部門1位だった「本好き」に加えて、殿堂入り条件緩和で例年ずっとWEB投票1位だった「よう実」、上位常連の「チラムネ」がランクイン。よう実はともかくチラムネはアニメ化もまだだしこれからも投票したくなること多いのではー!?よう実も作者インタビュー見る限り3年生編ありそうな雰囲気だし、と思ってしまったけどたしかにずっとランキング上位にいたもんなあ……。

よう実にハマってこのラノ投票復帰したという経緯があったので投票できなくなる前にコメント一度採用されてみたかったですが多分凄く競争率が高い。

作品紹介とインタビューに重点を置いた紙面楽しい

去年の感想でも言った。協力者の投票内容が全部載るようになったのも性別年齢別のランキングが載るようになったのもブックガイドの方にも投票コメント掲載が入るようになったのもあって、以前の紙面よりも作品との出会いに重点を置いている感じが楽しいです(毎年言ってるけど名台詞コーナーが消えたのだけが寂しい)。ランキング入った作品殆ど読んでいない状態だったので(このブログの中の人は特に最近のラブコメの波動に全然ついていけていません)これからしっかり中身を精読して気になる本に手を出してみたいとおもいます。

あと表紙が特集記事の載っていて殿堂入りのSAO、表紙に載ってる目次がインタビュー主体になったのも表紙からのランキングバレを上手く避けてる感じで上手いなあと。つまり来年再来年あたりで俺ガイルとかよう実表紙の可能性あるな。ないか。

よう実の衣笠先生インタビューはここ数ヶ月アニメ雑誌「ニュータイプ」に掲載されたインタビューよりも書き手側の話が多くて、今までと視点が違う感じが面白かった。綾小路のキャラクターが出来るまでとか、トモセ先生との出会いの話なんかも面白かったなあ。あとちょくちょくエロゲー時代からのファンが指摘している「完結させられない問題」にも言及していて、小説のほうが性に合っているので大丈夫ですみたいな話をされてたので良かったなあと思います。3年生編の話もちょっとしていたので2年生編で終わるってこともないみたい。楽しみ!!

これに投票しました

コメント採用どころか「よう実」以外全部ピックアップもなくて寂しい。去年と今年は投票時のコメントをそのまま残していたのですが、毎年のまとめと比べてちょっとよそ行き気分で文章書いてるので自分で読み返すとちょっとおもしろいですね。キャラクター投票のコメントはもう少しテンション高めでも良いのかも(ていうか堀北さんが!堀北さんが初ランクインしてておめでとうだった!!よう実の女性キャラだと堀北伊吹櫛田の凸凹トリオが好きなんですけど見事にランクインしない3人なので悲しいw)

作品部門

1:七斗七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」→感想
配信事故を切っ掛けに成り上がっていくVtuberの話…という目新しさに惹かれて手に取った作品ですが、毎巻コミカルな会話劇をやりながら各キャラクターに焦点を当てて掘り下げていく構成になっているのが、読みやすいし安定感がある。リスナーとの会話劇にも「毒」が殆どなく、安心して読める作品なのが嬉しいです。
2:小路燦「VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった」→感想
借金を抱えたギャンブルクズのVtuberエリンが、圧倒的な個性と超絶トークスキルでシンデレラロードを駆け上がっていく姿が痛快。同時に、彼女のバイト先の同僚でありマイクに転身した主人公がそれとなくファンの意向を伝えたり、萎縮してしまいそうな時に発破を掛けていくことで影に日向に彼女を支えていく展開が良かった。
3:コイル「オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!」→感想
主人公二人のお互いを束縛しない・否定しない・一緒に居て心地の良い関係性が物語を通して伝わってきて、読者も読んでいて元気がもらえる作品。偽装夫婦からスタートして少しずつ絆を深めあった二人が自然に距離を縮めていってお互いを本当の伴侶として認めていく展開がとても良かった。
4:夏目純白「純白と黄金」→感想
かっこいい男の子たちが鎬を削る、スタイリッシュなヤンキーバトルだと思って読み始めたら「ヤンキー」という概念の限界に挑戦するかのような、現実離れしたど派手な展開の連続がとても楽しかった。荒削りに感じる部分も多い作品でしたが、とにかくノリと勢いで読ませていく感じが良かったです。
5:衣笠彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」→感想
高校生活全体の折り返しに差し掛かり、顕著に変化していく人間関係が印象的でした。クラス崩壊の危機を乗り越えて結束を高める級友達を尻目に、主人公・綾小路は不穏な動きを見せていて。これから物語がどう動いていくのか、まだまだ目が離せそうにありません。

女性キャラクター部門

◆櫛田桔梗(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
クラスの中で一度は完全に居場所を失った櫛田が、再び居場所を得るために自分にしか出来ない形でその存在価値を示そうとしていく姿がアツかった。以前の腹に一物隠し持った姿よりも本性を出した後のふてぶてしい姿のほうが魅力的に感じたし、犬猿の仲である堀北との関係性の変化も楽しみ。

◆加々宮エリン(「VTuberのマイクに転身したら、推しが借金まみれのクズだった」)
借金持ち・ギャンブル狂いのクズという強烈なキャラクターでありながら、アンチのコメント・同業者からの嫌がらせすらも逆手に取って自分の起爆剤に変えていくトークスキルが最高でした。

◆柚日咲めくる(「声優ラジオのウラオモテ」)
「声優」であり「声優オタク」でもある彼女がその2つの間で葛藤し続ける姿が好きです。後輩声優からファンサを貰って内心悲鳴をあげたりする姿が微笑ましい一方で、自分の「推し」である彼女たちと一つの椅子を奪い合わねばならないという二律背反に悩み、葛藤する姿が印象的でした。

男性キャラクター部門

◆綾小路清隆(「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」)
強い。かしこい。ひとのこころがない。他の生徒達とは全く別の場所を見ていそうな綾小路が同級生たちをどこに導いていくのか。とても楽しみです。

◆クノン・グリオン(「魔術師クノンは見えている」)
生まれつき目が見えないというハンデを背負いながらそれを乗り越えさせた結果、女性と見ればナンパしてしまう・底抜けに明るい・ちょっとマッドな見習い魔術師とかいうとんでもない逸材が爆誕してしまった。いろいろな意味で今後どんなふうに成長していくのか楽しみすぎる人材です。

◆グレン=レーダス(「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」)
殆ど出番のなかった最新刊でも最後に美味しいところを持っていくところはさすがの主人公!!宿敵・ジャティスとの対決も間近に迫っているようで、どんな活躍を見せてくれるのかとても楽しみです。

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王様のプロポーズ2 鴇羽の悪魔

 

無色の彼女の座を懸け、彩禍の絶対に負けられない戦いが始まる!
世界最強の魔女・久遠崎彩禍の生活にも何とか慣れ始めた玖珂無色だったが、〈庭園〉とは別の魔術師養成機関〈影の楼閣〉との交流戦代表メンバーに選ばれてしまう。 さらに魔術師専門動画サイト『MagiTube』の超人気配信者・鴇嶋喰良には彼ピとして、全世界に紹介され!?  事態の収拾を図るべく彩禍の姿で交流戦に参加しようとするも……。 「魔女様! むしピのカノジョの座を賭けて、アタシ様と勝負っす!」 〈楼閣〉側の代表メンバーだった喰良から宣戦布告を受けることに――。 自分(彩禍)で自分(無色)を争奪するという絶対に負けられない恋と魔術の戦いが始まる!

ひょんなことから世界最強の魔女・久遠崎彩禍と身体を共有する関係になってしまった玖珂無色。ドキドキが止まらない二重存在生活にも少しずつ慣れてきた頃、彩禍が学長を務める〈庭園〉と、魔術師養成機関である〈影の楼閣〉の交流戦が行われることになったのだが、なぜか魔術初心者の無色が彩禍と共に代表選手として選ばれてしまう。さらに〈影の楼閣〉の代表として来校した魔術師専門動画サイト『Magitube』の人気配信者・鴇嶋喰良から彼ピ認定されてしまって…!?

ドキッ☆美少女だらけの無色争奪戦勃発!!(※出来レース)

喰良と彩禍による無色争奪戦、というとまるで一昔前のドタバタラブコメラノベみたいな展開に聞こえるんですけど、彩禍の中の人は今は無色なわけで、つまり喰良と無色による無色争奪戦なんですよね。無茶のありすぎる交代劇や二人羽織状態のごまかし方が既におかしいし、出来レースとしかいいようのない展開の数々で腹抱えて笑ってしまった。そこに最強の魔女である彩禍が交流戦に選ばれたと知って対抗して交流戦に参加しようと乱入してくる〈影の楼閣〉の教師ども(学生コスプレ)が加わってくるもんだから本当に笑いが止まらなかった。

そしてハイテンションな無色争奪戦から、かつて彩禍が封印した「滅亡因子ウロボロス」を巡るハードな戦いの温度差が凄い。ていうか風邪引く。ていうかあのジジイ無茶すんなのコスプレが後の伏線だなんて思わないじゃないですか……どんなにかっこ良くてもその爺直前まで学生のコスプレしてたんですよって思うともうホント笑っちゃうんですよ……。

無色と融合する前の彩禍ですら倒しきれなかったウロボロスをなんとか撃退したものの、その存在の完全復活を巡って各地に封印されているウロボロスの残滓を巡る戦いが勃発することに。無色自身の魔術師としての力が少しずつ明らかになったり、彼らの正体を知っている存在がちょっとだけ増えたり瑠璃が少しだけ勘ぐったりし始めたりして、バトル的にも人間関係的にも今後がどうなっていくか楽しみな終わり方でした。次巻は渦中の瑠璃の掘り下げ巻みたいだし、喰良が今後どう動いていくのかも気になるし、続きが楽しみだな。

それにしても今回、正体バレした黒衣さんが時折見せる〇〇さんモードめちゃくちゃ良かったですね。無色が気を抜いた途端に不意打ちしてくるのズルい。イチャイチャしやがって!

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オタク同僚と偽装結婚した結果、毎日がメッチャ楽しいんだけど!3

 
雪子

同人女子とドルオタ男子の、偽装結婚から始まった楽しすぎる結婚生活、その幸せな結末。
趣味で同人作家をしている咲月と、会社ではできるサラリーマン、実はドルオタ男子の滝本さん。二人の甘やかな新婚生活は推しのアイドルのTV初出演、冬コミ参戦、親友ワラビちゃんの結婚式など、楽しいイベントが目白押し。さらに、二人の間に新しい生命が宿り……。 超打算で偽装結婚した咲月と、打算の顔して実は彼女のことが好きだった滝本さんの新婚生活――からの妊娠、出産、子育て。趣味を楽しむオタク夫婦の話、最終3巻。

偽装結婚からはじまり、少しつづ夫婦としてのアレコレを積み重ねてきた咲月と隆太。隆太が推している地下アイドル「デザート・ローズ」がテレビデビューしたり、ひょんなことから彼女たちの衣装を咲月がデザインすることになったり、咲月が冬コミに参加したり、同人仲間のワラビちゃんが結婚したり、忙しくも楽しい毎日を送っている中で二人は子供が欲しいと考えるようになって……。

どんなことでも楽しめるふたりの姿が最後まで楽しいお話だった

偽装彼氏彼女の気楽な同居生活、両想いになった2人のイチャイチャ生活……ときて、いよいよ新しい家族を迎えたふたりの家族生活が描かれていくシリーズ最終巻。子供が出来たらまた色々と生活の形が変わってしまうのは明白なので一体どうなる!?と思っていたけれど、ごく自然に「この生活に私達の子供が加わったらきっと楽しい」という出発地点から始まって、どんなことでも楽しんでしまう咲月さん、営業で鍛えたフォロー力を公私共に使って全力で彼女の妊娠・子育てをサポートする隆太さんという形で全てを楽しく乗り越えて行くところが本当に凄かった。ていうかこんなに笑える出産シーンある!?

子供が生まれてからも同じで、無理しすぎずにキツいときはお互いを頼って、育児から保育園の送り迎えから園の役員まで楽しんでやってしまう2人の行動力がひたすら楽しい。悪阻が軽かったり片方だけとはいえ理解のある親がいたり、実家暮らしだったりちょっと面倒でも送り迎えが出来る場所に保育所があったり……と(咲月の毒親の件を踏まえても)運が良かった部分も多少はあると思うのですが、どんな逆境もお互いにフォローし合って「ふたりならば楽しい!」で乗り越えてしまう関係性がとても良かった。他人事なのに、ふたりの家族計画聞いてるとワクワクしてきちゃうんだよね。

一方、やはり子供が出来るとなるとやはり自由に使える生活時間は減っていくし、2人のオタク活動にも変化が訪れていく。特に趣味のために諦めていた昇進を受け入れた隆太さんが、仕事に育児に奔走しているうちに少しずつアイドルの現場から足遠のいてしまう……という展開には納得なんだけど複雑な思いがありました。配信でライブを見ることが可能な世の中になって、隆太さんも妻と娘がメチャクチャに可愛くて、それで好きなものを優先したいあまりに自然とドルオタ活動に使える時間が減っていくというのは納得の展開ではあるんですが……。

ドルオタから足を洗うことすら考えていた隆太が咲月の図らいで、アニメ主題歌を歌うことになったデザロズのライブの現場に久しぶりに向かう。そこで、彼女たちを愛した自分の気持を取り戻していく……という展開が本当にアツかった。年とともに関わり方が変わっていくとしても、他にもっと好きなものが出来たとしても一度抱いた自分の「好き」を捨てなくてもいい。「あれもこれも全部好きでいていい」という咲月さんの言葉が胸に刺さりました。

咲月さんは隆太さんみたいな嫌なところは踏み込んでこない適度な距離感で自分をフォローしてくれて全力で愛してくれる旦那を持てて凄く幸せだなとおもうんだけど、同じくらいに隆太さんも精神的な部分でどうしようもなく咲月さんの懐の広さや一緒に楽しんでくれる前向きさに救われているんだなあ。これからもこの2人はこんな感じで、新しい家族の心海ちゃんと共に「楽しく」やっていくんだろうなあと感じさせる、素敵なラストでした。

咲月と隆太のオタクカップルの話だけでもういっぱいいっぱいになりそうなんですけど、2人の妊娠と前後して結婚した同人友達のワサビちゃんがオタクじゃないけど理解のある旦那さんに出会ってしまって、実家の言う通りに愛の無い結婚をするつもりが咲月もびっくりのラブラブ夫婦になってしまうのもとても良かったですし、なにより3巻かけて少しずつ描写されてきたデザート・ローズのアイドルたちの物語が本当に良かった。1巻で描かれた彼女たちの挫折と再生の物語が凄く印象的だったんですけど、3巻であんなに綺麗な伏線回収が行われるとは正直思ってなかったですし、何より彼女たちの「物語」がひとりのオタク(隆太さん)の生き様を救ってしまうのがねもう本当に良かったんですよ……。

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残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.

 

タラコネンシス王国の公爵令嬢のアレクサンドラ。彼女が、自分が乙女ゲームの悪役令嬢だと気がついたのは、なんと断罪イベントの前日だった! すでにアレクサンドラは、ゲームヒロインにさんざん悪意をぶつけたあと。というのも、ゲームヒロインが、アレクサンドラの婚約者である王太子に手を出したからだ。王太子も、どうやらあの芋女に惚れてしまった様子。このままでは明日、糾弾&婚約破棄されることは明白だ。だけど、素直に断罪されるなんて、まっぴらごめん! むしろ、自分を蔑ろにした人達へ目に物見せてやる! アレクサンドラは残り二十四時間で絶体絶命の状況を打開しようと動き始めた――

ふとした拍子に前世の記憶を取り戻したアレクサンドラ。自分は乙女ゲームの悪役令嬢で……王子からの婚約破棄・断罪イベントはもう目前まで迫っている!?ゲームのエンディングまであと24時間、アレクサンドラはフラグをひっくり返すために奔走することに……!!!

痛快な逆転劇と並行して描かれる細やかな感情の動きがとても良かった

面白かった〜!!!なりふり構わず自分の手足になりそうな面々を買収し、婚約者の浮気の場面をデバガメさせ、婚約破棄を切り出される前に自分から婚約を破棄し、自分を断罪するはずの攻略対象達を次々と断罪の場に登場できないようにしていく……とにかく爆速でぶち壊されていくフラグと、終盤の容赦のない「ざまあ」展開が痛快。「RTA」のサブタイに恥じることなく中だるみ一切なしで1冊で綺麗にまとまってるのもポイント高かったです。

爆速でフラグを覆していく容赦の無さとは裏腹に、主人公が元来の「アレクサンドラ」としての矜持や年齢相応の恋心も見失ってはいない姿が印象的でした。人格は元のアレクサンドラのままで「転生者」として知識と柔軟性が兼ね備えられていくので、王子の婚約者として磨き続けた深い見識・前世から得たこの世界の現在未来に関する知識・公爵令嬢としての地位が合わさって実質最強なんですよね。ゲームで待ち受ける多彩な死亡・破滅エンドを回避してギリギリ貴族として生き残るルートを進んでいるのにも関わらず、「芋女(ゲームヒロイン)に膝を折るくらいなら処刑・追放エンドの方がずっとマシ!!」と言い切るアレクサンドラの高潔さがとても良い。元々コミカライズが面白くて手を出したんですが、小説以上にテンポ良くフラグ破壊が進む愉快痛快なコミカライズ、スピーディーな展開の間にもアレクサンドラの内心での繊細な感情が濃厚に描かれる原作小説という感じで、どちらもそれぞれの強みが生かされていて良かったです。

多少嫉妬深い部分はあったとしても、王族・貴族としての思惑を完全に無視してアレクサンドラを婚約破棄して庶民の女を正妻に取り立てようとする王子アルフォンソのやろうとしていることは普通に(この世界の王侯貴族のやりかたとしては)おかしいわけで、恋に盲目なあまりそんなことにも気づけない王子が自らゲームのバッドエンド=無惨な破滅へと向かって突き進んでしまうのはとにかく滑稽なんですが、そんな彼に三行半を突きつけながらも自らの抱いた恋心にどこか後ろ髪を引かれてしまうアレクサンドラの姿が、ただ敗北者をあざ笑うだけではない展開が、最後の最後で漏らしたただひとつの本音が、すごく良かったです。この手の「ざまあ」もの、相手側が破滅したほうが面白いけどあまりにも容赦なさすぎると逆にしんどくなってしまうときがあるんだけど、ただ愚者をあざ笑うだけではないバランス感覚が凄く好き。

主人公と何もかもが正反対の「ゲームヒロイン」の凋落が印象的

一方、もうひとりの転生者であるゲームヒロイン・ルシア。アレクサンドラと対称的に幼少の頃に前世を思い出して人格ごと前世のそれに塗り替えられてしまっていた彼女はあくまでゲーム感覚で最高難易度の逆ハーレムエンドを目指す。あくまでゲームのとおりに物事を勧めていたルシアは、ゲームと現実の知識をフル動員してフラグをひっくり返していくアレクサンドラの逆転劇に途中で半ば気づきながらも何も対応することができずにあっさりと敗北してしまう。そんな彼女の傍らには、常に一緒にいた「親友」の姿があった──。

ヒロインサイドで描かれるゲームヒロイン・ルシアの凋落と、それに付き従いヒロインサイドの語り手として登場する「親友」が時折見せる彼女への執着がまた良かったです。ゲームの全てを知りつくしているからこそ王子と自分が今どこに突き進もうとしているのか解ってしまうクライマックスでのルシアの恐怖は察して余りあるものがある(そしてアレクサンドラの口から語られる逆ハー失敗エンドの展開がキツすぎる)し、最後まで眼の前の相手を人間ではなく「ゲームの攻略対象」としてしか見られなかった少女が滑稽で、哀れでもある。少しでもゲームではなく自分が転生した世界の「現実」をちゃんと見れていたら少しは変わっていたのかもしれないけど、語り手である「親友」が彼女の目を覆い隠していたのもおそらくあるんだろうなあ。

物語を読んでいる際に感じていた物語への違和感が次第に形となっていく展開は印象的でしたし、何より「語り手」の正体が明かされるエピローグがめちゃくちゃ良かったです。いや、コレは良いヤンデレ百合ですわ……。

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