現代で異端とされた少女達が異世界に召喚され、創世神から魔王を倒して欲しいと頼まれる。破天荒な仲間たちに囲まれて困惑する発火能力者のホムラだが、彼女の内にはとある強い欲求が渦巻いていて……!?
自分に正直に生きるために
発火能力者、マッドサイエンティスト、暗殺者、生体兵器、機械生命体……現代日本で「異端」とされた少女達が異世界で繰り広げる冒険譚。表紙のドヤ顔ガイナ立ちなヒロインと景気の良さそうなあらすじをみて破天荒な少女達が前世チートで大暴れする物語を想像していたのですが、どちらかというと彼女達がそこ(プロローグで語られた魔王との最終決戦)に辿り着くまでの物語で、今巻はむしろ物凄く地に足が付いているというか、前世で抑圧されてきた少女達が異世界で少しずつ成長しながら自分に正直に生きていく……という方向性のお話でした。異世界に行っても彼女達が「異端」であることに変わりはなく、彼女達の持つ力も現時点では世の不条理をなぎ倒せるような圧倒的なモノではないのですけど、だからこそプロローグでのご無体ぶりが気になるというか、ここからこのクライマックスに向かって成長していくための物語なんだろうなあと感じてワクワクしました。
また、主人公達5人の絶妙な距離感が良かったな〜。どこか異常で異端な彼女達が適度な距離感を保ちつつお互いの異常な部分を理解はできないけど拒絶もしない、運命共同体としてまあ仲良くやろうじゃないかくらいの感じなのが良かった。個人的なお気に入り場面は仲間のひとりが不注意で毒だして、あぶなーーーい!っていいながら残り四人が足を引っ張り合って全員の逃げ道ふさぐ展開ですね。いやもうホント、こういう仲良し仲悪しな関係性大好き。
今回はホムラとサイコ以外の3人はやや存在感が薄めに感じてしまったんですが、他の少女達の事情や葛藤も面白そうなので、ここからどう物語が動いていくのかがとても楽しみです。
しかし、やっぱりこれ表紙とあらすじを読むと破天荒な少女達の私TUEEの方向を期待してしまう気がするな……宣伝がもう少し上手くやってくれれば、と思う反面、少女達の関係性や成長物語要素の方を押し出すとなんていうか地味になっちゃいそうなんだよなあ……。タイトルもかっこいいんですが(富士見全盛期世代並の感想)、原題の「異端少女」という表現が彼女達を表す言葉として凄くしっくり来たので何らかの形で残してほしかったな。
あと1巻のラスボスの人、与えられた情報からなんとなくラスボス化した理由は想像できるんですが物凄く雑にラスボス化してしまったのでもうちょっとこう、丁寧に料理してあげてほしかった気がしますね……いやだってこれ絶対に出世した同期へのクソデカ感情をこじらせた末にああなったやつでは……私が地味に読みたい方向のやつ…………。