悪役令嬢の中の人 | 今日もだらだら、読書日記。

悪役令嬢の中の人

 

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したエミは、ヒロインの《星の乙女》に陥れられ、婚約破棄と同時に《星の乙女》の命を狙ったと断罪された。婚約者とも幼馴染みとも義弟とも信頼関係を築けたと思っていたのに……。ショックでエミは意識を失い、代わりに中からずっとエミを見守っていた本来の悪役令嬢レミリアが目覚める。わたくしはお前達を許さない。レミリアはエミを貶めた者達への復讐を誓い――!? 苛烈で華麗な悪役令嬢の復讐劇開幕!!

Twitterで流れてきたコミカライズの1話目の続きが気になりすぎてなろうを探し、そのまま書籍版も手に取りました。乙女ゲームの悪役令嬢に転生・憑依し、持ち前の人の良さと暖かい心で破滅ルートを回避しようとしていたのにもかかわらず何故か婚約破棄言い渡されてしまったヒロイン・エミに変わって再び身体の支配権を取り戻した悪役令嬢レミリア。エミの暖かい心に触れて彼女に想いを寄せるようになっていたレミリアは、追放された先でエミの望んだ平和な未来を目指すために動き出し、その一方でエミに害をなしたゲームヒロインや攻略対象達に復讐しようとする……というお話。

愛を知って最強になった悪役令嬢(中の人)による復讐劇

愛を知らなかったばかりに破滅するはずだった悪役令嬢が運命共同体となった転生ヒロインによって愛を知り、改心する……のではなく、悪を知らずに破滅するはずだった悪役令嬢が愛を知ってもっと狡猾で完璧な悪女になる、というのがとても良かった!身体の支配権を取り戻しても「エミの理想の《レミリア》」を完璧に演じきる彼女は外面は文句なしの善人で、数々の正義を為し、善行を重ね、世界を救っていく。その反面、周囲には一切悟らせない、自らの手は汚さないままに周囲の人間を動かすことでエミを追い詰めた人間たちを陥れていく。完璧な形で復讐を成し遂げた彼女がエミへの深い執着を覗かせるラストがたまりませんでした。自分の中で眠りにつくエミと対話する=身体を与えるために嬉々として非道な人体実験を繰り返していくその姿、そしてエミが肉体を得た後の猫かわいがりっぷりというか本来なら叶えられないようなエミの悩みが 何 故 か 次々と解決していくこの展開……や、ヤンデレじゃないですかやだ〜〜!!!(※褒めてる)

本性バレ・逆ざまぁ的な展開があるのでは…とビクビクしていたのですが、あとがき読んだら「本性がバレることは一生ありません」と書いてあるので安心。

乙女ゲーム転生というより転生要素のある「憑依」モノ

転生令嬢の物語でありながら、彼女達が憑依したキャラクターの中に肉体の主導権を奪われた「中の人」の意識が残留している……という設定と、その設定を生かした上で全員に焦点を宛てていくという、いわゆる「憑依モノ」的な展開が面白かった。エミとレミリアの関係は本編でも語られますが、後日談として語られるゲームヒロイン側であるピナと転生者であるリィナの関係がしんどいというか……元々乙女ゲームヒロインになるまでのピナの半生が過酷なだけに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならなかったのか……という気持ちになってしまう。霊魂となった彼女がレミリアに救われるところは感動的なんですが、レミリアはレミリアでめちゃくちゃどす黒い思惑があって……いやでもまあそのどす黒いあたりはピナ本人には永遠に伝わらなかったわけだし……Win-Winだと思えば彼女に救われてから先は悪い人生ではなかったのかな。

ベースとなる世界観は乙女ゲーム……というか乙女系ソーシャルゲームという設定なのですが、ゲーム内では絶対的な効果を発揮するはずの「課金アイテム」が現実であるこの世界ではどういう扱いになっているかも面白かったです。ライバルであるゲームヒロインのピナ(リィナ)は課金アイテムを使うことでエミの築いた攻略対象達との絆を奪い去っていくんだけど、実は彼らもゲームヒロイン自身の事を好きになっているのではなく、エミへの愛情を歪まされてゲームヒロインに傅いていくことでわざとエミを傷つけ、その姿に愉悦を感じるようになっていく……という関係性があまりにも虚無だし、どす黒い。これ多分リィナの視点から見たら薬の力で調教され、身体だけじゃなく心まで屈服していく攻略対象達みたいな……○辱系エロゲー路線な感じで映ってたんだろうなあ……。

ゲームでは雑に利用できた好感度アップアイテムが現実だと個人の好みとか使用する状況とか相手との関係性によってちゃんと力を発揮しないというのも洗脳アイテムで心までは奪えない事も冷静に考えてみりゃ当たり前なんですけど、既に「現実」となったこの世界を最後まで「ゲーム」としか認識できなかったリィナが滑稽で哀れ。ゲーム内では通用した「金に明かした廃課金プレイ」では何も得ることが出来ず、結局エミのように地道な努力を重ねていくしかないという展開には考えさせられるものがありました。いやでもソシャゲ運営側としては課金プレイヤーがいないと採算が取れないみたいな部分もあるはずなので……まあリィナは相当痛いファンだったみたいだからどう思われてたかはわからんが!!

一貫して誰からも愛されなかったリィナが少しずつ全てを奪われて失意のままにレミリアの手の中の生き地獄に堕ちていく展開はゲームでのレミリアの末路を擬えているようで、なんともいえない気持ちになる。これだけ肉体関係を駆使して周囲を籠絡したりもしてるみたいなのに、攻略対象の誰とも肉体関係はなかったみたいだしな。これ、エミが知っていたらそれこそ感情移入してしまったのかもしれない……まあエミは何も知らないままだったんだけど……。

なろう版も併せて読みたい

「小説家になろう」版では尺の都合で削られたと思しき王子以外の攻略対象視点の話やレミリアの侍女・スフィア視点での番外編なども掲載されているので、本編が面白かったという人はこちらも合わせて読むのをオススメしたいです。というか攻略対象視点の話はページ数増やしてもいいから全部入れてほしかった。書籍版でもざっくり経緯は語られるのですが、全員が完膚なきまでにピナ(リィナ)に気がなかったことがわかってなんとも言えない気持ちになるので。あと、レミリアの実験台にされた人たちの話とリィナ視点の番外編の胸糞悪さが最高。
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