本性を抑え込んで表面上は控えめに生きてきた公爵令嬢が婚約破棄を切っ掛けに覚醒し、牢獄(※投獄の数ヶ月前から事態を察知して物資を運び込んでいた)に引きこもって悠々自適な生活を送りつつ、無能な元婚約者とその取り巻きたちをいびり倒すお話。
物静かなふりをしていたが、本当はとんでもなく賢くて裏の人脈も豊富で敵対する相手には(色んな意味で)容赦ない主人公と、どこまでも小物で無能な王子一味の対決が滑稽すぎる。最初から最後まで全く勝負になってないのがもはや可哀そうですらあるんだけど、相手がどこまでも懲りないので意外に可哀そう感ない。毎週のように印籠で土下座させられる某時代劇の悪代官みたいな様式美すら感じてしまう。
主人公のレイチェルがとにかく王子に対して無関心なので、色んな意味で重くならずにサッパリした軽妙な読み口になってるのが印象的でした。行われる嫌がらせもどちらかというとレイチェルが好き勝手している様子にエリオットが勝手にキレてるだけなので、独り相撲的な面白さなんですよね……(一部王子への直接的な当てつけ展開もあるけど)。
投獄されても御用聞きの商人やお抱え侍女軍団を自由自在に操り牢屋の中から人脈を広げすらするレイチェルと、本人たちは気づいてないだけでどんどん周囲の印象が悪化して孤立していく王子一味との対比も印象的でした。しょっぱなから投獄されたときのレイチェル両親の怯えっぷりや、現王夫妻とのやりとりに腹抱えて笑ってしまうんだけど実の両親からすらその扱いって駄目じゃない!?本当に「裸の王様」ぶりが半端なくて早く考え直したほうがいい。ところで公爵と現王に悪友萌えしたって話はどこですればいいですか?(迫真)
しかし、これ色んな意味でどうやってオチをつけるのかが気になる。レイチェルが断罪される流れは絶対にないと思うんだけど、王子側が断罪される展開は下手したら重くなってしまうよなあと。色んな意味で軽妙な展開が魅力の物語なので、軽いままで最後まで行ってほしい。