囚人諸君、反撃の時間だ | 今日もだらだら、読書日記。

囚人諸君、反撃の時間だ

 

ファンタジア大賞〈金賞〉監獄から始まる下克上学園ファンタジー!
「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」羊太郎、 「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」細音啓 絶賛!!! 魔術犯罪者を幽閉し、才能ある者を矯正する『アインズバーグ監獄学院』。 皇帝候補の少年・ライアンは冤罪によりこの地に送られ、 さらには魔力ゼロとして蔑まれる『絶唱者』と暴露されてしまう。 「出てやるっ! こんな場所、すぐに! 一瞬でッ!」 失意の中、同室になったのは魔族姫・ルナーラ。 魔族を憎むライアンだが、彼女の心を知り、ともに「反撃」を企てる協力関係に。 そのための秘策、ライアンだけが使える魔術の発動条件は―― 「……わ、私をもっと貴方に惚れさせなさい」 ――2人の仲が親密になることだった……!? 2人の絆が深まるにつれ、ライアンの魔力は強大になり、 学院内でその強さを轟かせ始める。 堕ちた英雄と、人類の敵・魔族姫。 監獄の最下層から、世界への反撃が始まる!

魔術の強さが全ての世界で魔術が使えない「絶唱者」であることを隠して生きてきた英雄の息子にして皇帝候補の少年ライアン。ところがある日、自分の正体を晒された挙げ句に貴族殺しの罪を着せられ、処刑は免れたものの『アインズバーグ監獄学院』に送られてしまう。絶望の淵に沈んだ彼が牢獄で出会ったのは、憎んでいたはずの魔族の姫・ルナーラで……!?

絶望の淵ではじまる英雄の倅×魔族の姫の王道ボーイミーツガール

魔力を持たない「絶唱者」と蔑まれる存在だった主人公のライアンだけが監獄学園でも魔力の制御を必要とせず、それゆえに制限なしで「魔術を使える」……という逆転の発想が面白かった!魔族と英雄──相容れぬはずの二人の絆の深さこそが難局を突破する魔術発動の鍵となる設定も面白いし、魔術の完成のため絆を深めるうちにルナーラに惹かれていって、内心で家族を殺した「魔族」という存在に好意的な印象を抱いている自分の姿に葛藤するライアンの姿が印象的だし、その横で魔術のためと嘯きつつも自分の好意ばかりが一方的に強まっていくことにもどかしい気持ちを抑えられないルナーラちゃんとの温度差がまた良かった。割とシリアス重視な展開の中でルナーラがひとりでラブコメやってるの、なんともいえず可愛いな。

監獄学園を舞台に繰り広げられる様々なトラブル、監獄を支配するライバルとの対峙、不本意で投獄されてしまったけど辛いことばかりではなく……監獄での出会いを力に変えて、憎んでいたはずの魔族の少女に背中を預けて……自らを陥れた本当の敵と戦うクライマックスがまた良かった。正統派なボーイミーツガール+下剋上+王道バトル展開が読めて大変気持ち良い物語でした。

ただ、個人的にはエピローグちょっと色んな伏線回収するために強引に流してしまった感じあって、ちょっと残念だったかも。タイトルの伏線を回収するためとはいえ、正統派ボーイミーツガールでほぼ主人公とヒロインの二人の世界で物語が進んできて、突然最後で「全体」の話をしはじめるの違和感あったんだよな……だって主人公、ほぼほぼ監獄学園内でヒロインとサブヒロインと宿敵以外と交流深めてないし……ライアンとルナーラ、ふたりとも冤罪だったのにヒロインだけが出獄できない理由もよくわからなかったし、ヒロインを監獄学園から助け出すために残ります、でもよかったような気がしたので。

個人的に主人公にボコボコにされてそれまでのダーティーな監獄の王様の皮を脱ぎ捨ててサシでの決着を望むアーサーくんがメチャクチャ好きだったので、もうちょっと絡んできても良かったと思うんですよと思うんですが絶妙にこう、蚊帳の外だったので残念だよね……クライマックスでなんだかんだいいながら背中を預けて戦うみたいな展開あっても良かったと思うんですが!!!

最後の最後で綺麗に落ちてないなあ……という感じなので、続刊が出たらぜひともそのへんのフォローはそれとなくしてほしい。今回のクライマックスって魔術が使えないと思わせているからこそ魔術の制御をされていない、バレたら一発で終わる隠し玉みたいなものだったので、色々バレた上で監獄に戻るならそのへんがどうなるのかも気になります。いや自分から戻るとはいえその状況だと主人公も魔術の制御を受けることになるんじゃないの?という。主人公ヒロインの関係性すごく良かったしその他のキャラクター達も魅力的だったので、続きが出るといいなあ。

ところで、あとがきで原題が跡形もないです!!みたいなこといっててどんなだったんだ……とおもいながら確認したら『魔王様は末代まで呪いたい! 元魔王と英雄の倅の人魔再統一物語』というのが出てきて思わず笑った本当に跡形もないな!!!今のタイトルのほうが全然かっこいいとおもうので改題して正解だとおもう反面前のタイトルも直球で嫌いじゃないけど、末代まで呪〜のあたり結構展開違いそうで、元がどうだったのかはちょっと気になりますね。

◆6/19追記
第35回ファンタジア大賞のサイトに原題とあらすじが載っていた。

英雄の息子にもかかわらず魔力ゼロの“絶唱者”である少年・ライアン。ある日、彼は父に倒された淫靡な魔王・ルナーラの封印を解き、深く交わった他者から魔力を借りる“共有魔術”を授けられる。「 ──乗ってやるよ、魔王」魔力と子孫繁栄のため、学園の少女たちと絆を深めるべく奔走することに。「魔族に伝わる昔ながらのナンパ術だ」「……それ、本当に使えるのか?」ルナーラの的外れな恋愛指南に振り回される内に、ライアンは劣等生から這い上がっていく。そして、一目惚れしたとある少女の因縁に巻き込まれ、彼は危機に陥る学園の命運を担うことになる……。英雄の息子&元魔王のヒロイン攻略バトルファンタジー!


あとがきで相当別物になったみたいな話があったけど、このあらすじ読むとルナーラが協力者ポジションで他のヒロインを落としまくる学園ハーレムファンタジーっぽい雰囲気?……別モノでは!?(講評を読む限りルナーラがメインヒロインである部分が変わるわけではないようだけど)

そっちの設定それはそれで面白そうで読みたかったなって少し残念に思うのと、エピローグを読んで感じた謎の違和感は内容を大幅に変更した故に生まれた歪みだったのか……となんだか納得。これだとモブレベルなことに変わりがないとしても学園内の色んなキャラクターと絡むことになっただろうし、その上で「囚人諸君〜」なら違和感薄かったかもしれない。

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