百日後に死ぬ事を「神」から告げられた令嬢ルルーシェは最も美しい最期を迎えるために奔走していた。自分の死後に禍根を残さないため、婚約者である王太子サザンジールに婚約解消を申し出るのだが……なぜか彼はその日以来熱烈なラブコールを送ってくるようになってしまい!?
最高に美しい死に様、しかと見届けました
面白かった!!特に2巻での展開はタイトルから想像する「楽しい」なんて状況とはかけ離れていて、実際はむしろあらゆる方面において逆境だらけの百日間だったとおもうんですけど、最後まで弱みも見せず胸を張って心から「楽しい」と言って生き抜いたルルーシェの生き様が美しかった…!彼女が決して何事にも動じない鉄の女だったわけでも他者のために自分を犠牲に出来るような出来た人間だったわけでもない。むしろ普通の少女のように死に怯えたり婚約者との関係性に胸を傷める様子はちゃんと描きつつも他の人にはそんな美しくないところは見せない、それが一貫して最期まで貫かれているの本当に凄かった。あらすじで「奇跡が起きる」だったからひょっとして最後の最後でご都合主義復活エンドある!?って密かに期待してしまったんですが、逆にこんな完璧に100日間を駆け抜けた彼女に対してご都合主義復活エンドとか失礼でしかなかったなと。
残りの日数を自分が楽しむことに使っても問題ないのに、最後まで自分が愛した人々と彼らが生きる国を守るために奔走し続ける姿が、覚悟を持って迎えた最期の一日が、とても美しかったです。
後日談がまた凄く良い
そして、どこまでも鮮やかなままに舞台から退場したルルーシェの存在を心に刻み付けられながら、彼女の居ない日々を生きていく周囲の人々の後日談を描くエピローグ「白貝を外さない花嫁の独白」がまためちゃくちゃに良かった。ルルーシェからの教えを受けて強く美しく成長したレミーエ嬢の成長した姿が、100日かけてルルーシェが繋ごうとしたバトンを受け取った彼女が様々な障害・身分の違いを乗り越えて「自分の亡き後サザンジール殿下を支えて欲しい」という彼女の想いに応えるために奮闘する姿が良すぎるし、その豪胆さと淑女ぶりが、完全に「彼女」の生き様を受け継いでるんだわ……。サザンジール殿下は本当にルルーシェのことが好きだったんだなというか、前巻でレミーエとの出会いのエピソードからはじまり、婚約解消を申し出られてからはもうなりふり構わずルルーシェに追いすがっていく姿が微笑ましい(それが回り回ってルルーシェの立場を悪くする一因になっていたりするので手放しで称賛はできないのだけど)。最期まで破天荒な婚約者に振り回され、それでもひたすらに一途な愛を捧げ続けた彼が、ルルーシェの死後に今度は彼女の遺志を受け継いだレミーエに振り回されているのを見ると思わずニヤニヤしてしまう。
サザンジールとレミーエのカップル、良くも悪くもルルーシェが存在しなければはじまってすらいないだろうというか、夫婦になってもルルーシェ好き同盟というか共犯者的な関係になってそうなところ最高に好きです。夫婦になっても二人きりになるとルルーシェの思い出話で盛り上がってしまう二人というか、心の一番大事な所にルルーシェを住まわせている者同士というか、ここにはいない誰かを中心に繋がってる本来出会うことのなかった二人という関係性が本当に好きで……。
タイトルの通り定められたエンディングに向かって一直線にひた走る、儚くて美しくて力強い物語でした。本当に面白かった…!!