斜陽ジャンルマイナーカプ頒布1桁の弱小サークルがめちゃくちゃな努力したとしたって数ヶ月で100部は無理があるだろという一見トンデモな展開から、本人の努力だけでなく原作側の展開やサークルの配置などが加わり「運が良ければ行ける」と思わせるリアリティ具合がすごかった。「同人誌100冊出さないと世界が滅ぶ」が納得できる設定に収まるのも好感度高い。
「弱小同人サークル」描写のリアリティが凄い
落ち目のアニメジャンルのマイナーカップリングをやっている同人漫画描きの主人公。本は四捨五入でも一桁売れたら良い方、の彼がなぜかタイムリーパーを名乗る女子高生から「救世主」として祭り上げられ、同人誌で100部完売を目指すハメに。100部完売しなければ魔王が復活して世界が滅ぶ!?というお話。この手のサークル描写って割と同人経験者でもリアリティがない作品が多いように感じるんですけど(同人経験あり商業誌作家の描く「弱小サークル」の描写、全体的に部数が2倍くらい多い、下手すると桁が1つ多い…)これはほんとうに弱小サークルあるある感がすごかったです。
絵が下手なわけではないがランキングに乗るほど上手くもない、ツイッターにイラスト投下しても行ってもRT10程度、漫画を描けば背景がなく全体的に白い、更にサークル名とHNが絶妙に古い、SNS使いこなせてないとかなんか…なんかわかる……(微妙に他人事には思えない!!!)
弱小同人サークル、100部完売を目指す
そんな主人公がヒロイン・ヒメの強烈なダメ出しと入念なスケジュール管理とそして本人の努力によって、次のイベントまでという短い期間でありながらも成長していく。真っ先にSNSでの活動での露出増をアドバイスしてくるヒメ(※オタク歴数ヶ月)のリサーチが完璧すぎる。イラストを投下させることで名前を売り、同時に枚数を描かせることで画力も成長させていくという完璧な計画なんですよね。SNSでのイラスト投稿が活発な絵描きは成長も早いし伸び代もでかいわかる。まあ普通はわかってるけど実践できないから困るんですが!!!(ヒメにスケジュール管理してもらいてぇ〜!!!)もともと頒布数1桁の主人公が現状のジャンル・カップリングのままで100部完売するのはどう考えても無理があるんですが、配置が良かったり公式側に動きがあったりみたいな微妙に運の後押しを受ける具合がまた本当に絶妙だった。たしかにそれだけの努力にラッキーが重なれば100部完売行けなくもないかもしれない。いやぁ夢のある話だなあ!!!(吐血)
世界の命運が文字とおり自分の両腕にかかったコミケ本番……なんて状況には関わりなく同人誌が売れていくことに素直に感動できる主人公の姿にもまた胸が熱くなりました。自分に自信がなく、同人をしていても内にこもりがちだった彼がヒメのスパルタ教育の成果もあって少しずつ自らの足で前に踏み出していく姿がとてもよかったです。
ファンタジーとしても面白かった
「同人誌100部売らないと世界が滅ぶ!」というあらすじだけ聞くとかなりトンデモなお話に感じるのですが、最終的にはすごく筋が通った展開で「主人公の同人誌が100部売れないといけない理由」にちゃんとオチがついて、同人サークル物としてもファンタジーとしても楽しかったです。読後感が爽快すぎるし、それでいて次巻への種まきもしっかりなされているところがまた隙がなかった。個人的には修羅場のエピソードはもう少しじっくり読みたかったけど、ファンタジー部分との兼ね合いを考えるとこんな感じになるのか。公式燃料投下でコピー本!!!の流れ、わかる。どうしても同人サークル描写の方に言及が偏りがちなんですが、ファンタジーの方の設定がまたすごく良かったんですよね!!ヒロインがタイムリープしてきていることで少しずつ見えてくる未来の人間関係が面白いし、それでいて解決の糸口が同人方向に寄っているのでいちいち笑ってしまう。魔王が復活する理由があんまりすぎるんですけど理解できてしまうので困るし私ならまず真っ先に元凶を消し炭にするので仕方ないと思う。むしろ元凶を消し炭にするのだけはやっても良かったのでは??ところで、カップリングの解釈違いでガチ喧嘩する主人公ヒロイン可愛いすぎない???
1巻でも綺麗にまとまってるけど続きが出るならまた読みたいなあ。