純白と黄金 | 今日もだらだら、読書日記。

純白と黄金

 

ようこそ喧嘩都市へ。ここは思い出と約束の無法地帯。
《純白の悪魔》それは最強と称された少年の異名。 ヤンキーの聖地・東北で100人の敵を叩き潰した後でさえも彼のシャツには、返り血一つ存在しなかった。 数多の伝説と偉業によりその名は全国に轟き、遠くない未来に全てのヤンキーが彼の舎弟になるだろうと囁かれていたが…… ある日、彼は姿を消した。 時は流れ、ヤンキー全盛時代。 東京最大の喧嘩都市・猫丘区では第二の《純白の悪魔》を生み出すため、六つの高校が参戦する盛大な喧嘩が始まろうとしていた。 そんな狂騒の最中、一人のオタクの少年が猫丘区に降り立った。 名を安室レンジ。 かつて圧倒的な力で東北の頂点に君臨し、ヤンキーを引退した《純白の悪魔》だった――。

中学時代に修羅の国・東北で伝説のヤンキー「純白の悪魔」として伝説を築いた少年・安室レンジはオタクとして高校デビューするために東京の黒淵高校にやってくる。ところが、そこは東京のヤンキー達がしのぎを削る喧嘩都市であった。学園の筆頭ヤンキー・赤城ザクラを倒してしまったレンジは自分を助けようとしてくれた女ヤンキー・鬼津アオイの目指す「ヤンキーが差別されない世界」に共感し、彼女と共に猫丘区にある6つのヤンキー校の頂点を決めるテリトリーバトル「シマトリー」に挑むことに。

シリアスな笑いが炸裂する現代異能×ヤンキーバトル

表紙とあらすじから硬派な不良モノを想像していたのですが、ヤンキー概念と現代のSNS文化・スマホアプリを使ったテリトリーバトル要素を下敷きにした俺TUEE系無双系異能バトルもの(長)でした。

ヤンキーが混入した造語の数々でシリアスな笑いを引き起こしていちいち笑ってしまう。初っ端で強いヤンキーが出すオーラ的なやつを《邪気威(ヤンキー)》と呼び始めたところで既に笑ってしまった。あとなにげにSNS文化要素が色々混入していて、ヤンキー専用SNSとか自撮りの「カチコ映え」とかも地味にポイント高いんだけど個人的に一番笑ったのはSNSのイイネが「ヒャッハー」になっていたところです。他人のヒャッハーで承認欲求を満たすヤンキー、正直めちゃくちゃおもしろいな。あと東北への風評被害が凄い。

出てきたモブヤンキー(「汎用ヤンキー」って用語が登場人物間でも普通に使われてるのにも笑う)が主人公達の仕業で軽率に吹き飛んでいく派手なバトル展開と、その合間に割りと唐突に挟まれるヒロインとのイチャイチャも良かった。やや設定や文章に荒削りさを感じる部分もあったんですが、結構その場の勢いで楽しく読めたな。

男同士の複雑感情(を美味しく頂きたい主人公)が良かった

主人公・安室レンジがぶっちぎりに最強な設定で、俺は平和な東京(※平和ではない)でオタクデビューしてオタク友達作って目立たず生きたい……といいつつ、でも皆に気づかれる前に殴り倒せばいいよネって常人では見えない速さで雑魚を昏倒させていくのでこれは戦いになるのか!?と目を疑うレベルなんですが、オタクとしての自分とヤンキーとしての自分の両方を受け入れた結果「ヤンキー達がそれぞれの因縁を胸に激突する所を特等席で見守ろれるの実はオタクとして美味しくない!?(意訳)」ということに気づいてしまったので基本的に雑魚は倒してお膳立てをしつつ自分は基本的にボス戦に関わらないという最強の傍観者ポジションに目覚めてしまい無問題だった。彼らのすぐ横に居ながらも完全に上位レイヤーから彼らの因縁を俯瞰してるの、俺TUEE設定だからこそ出来る展開で色々と凄い。

黒淵高校の筆頭ヤンキー・赤城ザクラが実質もう一人の主人公みたいな立ち位置になっていて、彼がレンジとの出会いを機に自分を見つめ直し、道に迷い慢心していた己を鍛え直し、袂を分かったかつての仲間達と戦うためにふたたび立ち上がり、独りで戦うのではなく心を通わせた仲間を改めて手に入れる……という展開がとてもアツかった。というか彼が中学時代に組んでいた東京最強のヤンキーチーム・《天下逆上》のメンバーが現在のテリトリーバトルの中心となっている6つの学校でそれぞれ筆頭ヤンキーを張っている……という展開が完全にオタクが好きなやつなんですよね。男同士の複雑巨大感情じゃん。これはレンジも特等席で見たがるわ。

不良モノかとおもったら俺TUEE異能バトルモノ、男男間の複雑巨大感情かとおもったらそれを見守る強いオタク……といろいろな意味で予想を裏切られる設定で面白かったです。いや面白かったけど色んな意味でみんな表紙に騙されない!?いやでもこの内容を正確に読み取れる表紙って難しいよな……すでに2巻が出ているようなので、そちらも楽しみです。

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