人類の理想を実現した未来都市・No.6。エリートとして都市で英才教育を受ける事になっていた紫苑は嵐の夜に偶然「ネズミ」と名乗る少年と出会い、彼をかくまった事を切っ掛けにそれまでの生活を追われる。4年後、公園の管理局で働いていた彼は奇妙な事件に遭遇して……というお話。
“理想的な都市”といわれているNo.6の裏側が、紫苑が事件に巻き込まれていくにつれ少しずつ見えてくる展開が面白い。犯罪も危険も何もない理想都市なんて裏があるに違いない、と思ったら予想とおりで……異端者は“排除”し、不要な情報は流れないよう“統制”する、揺り籠の様な管理社会から弾かれてしまった人間達が受ける仕打ちに背筋が凍り、少しずつ身を危なくしていく紫苑の姿にハラハラした。自分の読み進める速度がもどかしいと思うほど物語に没入したのは久しぶりかも。
物語りも面白いけどキャラクターもとても良かった。特に頭は良いがどこか天然で時にずばりと物事の真実を見抜いてしまう主人公の紫苑と、都市の“外”からやってきた謎の少年・ネズミの関係には思わずニヤニヤしてしまう。物語は始まったばかりという感じでこれから二人がどのような形で“No.6”の謎や秘密と対峙していくのか、続きが楽しみです。