“神楽坂 淳” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

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大正野球娘。

 

時は大正14年。洋食屋の娘・鈴川小梅は女学院の親友・小笠原晶子に誘われ、級友達と“野球”というものをやることに。まだまだ女性が男性の後ろに隠れているような世の中で、男子を見返そうとして手探りで立ち上がった彼女たちだが…!?

大正時代を舞台に、良家のお嬢様達が試行錯誤しながら男性を「野球」で見返そうと頑張るお話。

以前読んだ同作者の征服娘。が結構ドツボだったのでこれもハマるんじゃないかなあと思ってはいましたが、予想以上に面白かった!もうとにかく、娘さんたちがとっっっっっても、めんこい。良家の子女としての分別と、年相応の少女としての無邪気さを併せ持った彼女達のやりとりに、どうしようもなく胸がキュンキュンする。ああもうこの娘達の頭をなでなでしたいっ!!!

とにかく各キャラが魅力的で、彼女達の挙動挙動を見ていくのが楽しい。シスコン気味な静やツンデレ全開な環が次第にデレてくる描写が可愛いのなんの。そして、良家のお嬢様であり、様々な個性・才能を持っている彼女達が皆、様々な理由で平凡な主人公である小梅を愛しく感じているのがまた。特に巴と小梅のやりとりは、真っ先に彼女の「小梅LOVE」な心象描写を見せ付けられたあとだと、もう彼女が冷静な態度の裏でどんなことを考えているか…と想像するだけで楽しくなってしまう。小梅と許婚の三郎さんが、どこかたどたどしいながらも少しずつ親密なお付き合いになっていく姿も良かったなあ。

大正時代に生きた人々の息遣いが今にも聞こえてくるような物語の描写も素敵。特に食べ物の描写がおいしそうすぎて、空腹時に読むのはやばかった。淡い色のソーダ水、牛の骨から作ったドミグラスソースをかけたふわふわのオムライス、美味しい塩で握った「ご飯の味を楽しむための」おにぎり、大口をあけないとかぶりつけないサンドイッチ、食べる人への気配り満点な稲荷寿司……などなど、とにかく本当にご飯がおいしそうだったなあ…猛烈にオムライス食べたくなりました。つか3巻のタイトルが「たこやき娘」なのが超気になるんですけど!!!

しかし、キャラクター描写も大正という時代背景も、様々な嗜好を凝らして男子に対抗するための策を練り上げる姿もしっかりと描かれている割に、実際の試合シーンがちょい尻切れトンボな印象を受けるのが気になるかなあ。まあ女の子達のキャッキャウフフが楽しかったので正直野球シーンはどうでも良いですが。

ところで征服娘。の2巻はそろそろ諦めた方がいんですか?
密かにずっと待ってるよ!!!


4086304023征服娘。
(集英社スーパーダッシュ文庫)
集英社 2008-01-25

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征服娘。

[著]神楽坂 淳 [絵]鈴羅木 かりん

名門貴族の娘として生まれ、商才に恵まれた少女・マリア。彼女は才能があっても血筋や性別の所為で損をしなければならない社会に我慢することが出来ず自らがこの世界を掌握せんと、侍女にして親友のアッシャと共に動き出す。ひとまず目先に迫った結婚から逃れる為、2年間修道院に入る事にしたのだが…
   個人的お気に入り度数
才能はあるのに“女”であるがゆえに結婚して家庭に入るという将来が確定してしまっている貴族の令嬢が、自らの手で未来を切り開く為に国家の頂点に立つという野望を抱く…という物語。

自分の弱点や欠点を正確に把握して、自分に出来るところから少しずつでも堅実に野望に向かって邁進していくマリアの姿がとにかくかっこいい。将来、父や兄と事を構えることも視野に入れながらも彼らから間違いを正されればきちんと受け止めるし、自分が弱者である事も認めたうえでそれを出し抜く計画を練る。その大それた望みとは対照的に堅実な動き方が好印象でした。「世界征服の第一歩として、まずはカーニバルの露店から!」という小ささが凄く良い。

また、そんな彼女に惹かれて集まる協力者達が非常にかっこいいのです。侍女であり親友にして訳ありっぽくてクールな元王女・アッシャ、貴族だけどアウトローでマリアと同じく野望を持ったラウラの魅力は勿論の事、彼女の「信望者」とも言うべき庶民達がまたかっこいい。特に水夫のマルコの発言には痺れたなぁ。ある意味最大のライバルともいえる父親・ジャコモとマリアの駆け引きも物凄く面白かった。

マリアが手がける「ティー」や「チョコレート」をはじめとして現在ではデザートとして広く流通している嗜好品がまだ一般化しておらず、それをマリア達が女性ならではの感性で一般に流通させていこうとするという過程も興味深かったです。今後もこういった甘味流通ネタが出てきそうな気配なので、そちらも併せて楽しみ。

…しかし、個人的にはほぼ文句なしだったんですが、唯一挿絵が……鈴羅木さんは某社のゲームアンソロ時代からのファンなのでラノベの挿絵と聞いて楽しみにしていたのですが、キャラを重点に押し出した派手な画風や、線の太いしっかりとした描き方がイマイチこの作品には合っていないように感じました。良くも悪くも「1枚のイラスト」として完成してしまっていて文章の挟まる必要すら無い空気を感じるというか…なんなんだろうなぁ、この違和感…。


電子書籍で読める、少し昔の単巻完結タイトル10選

※2022/04/18 「Kindleで買える、おすすめ&気になる単巻完結タイトル10選」から改題

個人的に大好きなのでおすすめしたい単巻完結ラノベ(一部ラノベじゃない)をまとめました。Kindleで買えるラノベが少なかった時代に「Kindleで買える単巻タイトルを〜」というお題で書いた記事だったのですが、現在は殆どのタイトルが電子書籍化していることを踏まえて改題&未読やこの記事の後に続巻が出てシリーズ化したタイトルを省いて、この記事を最初に書いた2014年よりも前に読んでたおすすめの単巻タイトルを(「ボンクラーズ、ドントクライ」以下3タイトルを)追加しています。

今、結構昔のタイトルもちゃんと電子書籍になってて良い時代になりましたね……って綺麗にまとめようとしたんですがおすすめしたいタイトル何割か普通に電子書籍になってなかったのでやっぱり良い時代になるまでにはもう少しかかりそうです!「氷雪王の結婚」と「迷走×プラネット」の電子書籍化を頼むよマジで!!!

入間 人間「多摩湖さんと黄鶏くん」
キスババ抜き、全二次創作を嗜むオタクに布教したい
キスも手繋ぎもまだな初々しいカップルの二人が色々な恋愛の「いろは」を10段階くらいぶっとばしてひたすらカードゲーム(という名目の変態プレイ)に興じるお話。キスまで程度の描写でここまで表現できるのかというか、とにかくエロい。キスババ抜きはもっと二次創作界に広まるべき。
和智 正喜「消えちゃえばいいのに」
どこにでもいる少年少女の、愛と殺戮の物語
自分の為に、自分と些細な形でも関わりをもった人間たち100人が殺される。愛という感情を知らない主人公と、そんな主人公に引き寄せられるように狂気に満ちた愛をふりかざしていく「犯人」の行動に、後味の悪さばかりが残るラストが印象的でした。
紅玉 いづき「ミミズクと夜の王」
児童書のような優しい世界観を持つファンタジー
奴隷として生きてきた少女・ミミズクと金色の瞳を持つ人にあらざる者・フクロウのおりなす物語。根っからの悪人がほとんどいない優しい世界観と、そこで賢明に生きる人々のすれ違いと再生の物語が心にしみます。紅玉先生が電撃文庫で出した作品はどれも単巻でスッキリまとまっているのでおすすめ。
桜庭 一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet」
「好きって絶望だよね」は名言。
家庭環境に問題を持つ2人の少女が最初は反目し合いながら少しずつ仲良くなる。砂糖菓子のように甘い嘘の弾丸で、嘘の世界に逃げ込んだ主人公が現実に帰ってきたら、案外現実だってそこまで辛くはなかったんだよという、苦くて甘くてお話。
神楽坂淳「征服娘。」
中世に生きる貴族の令嬢が歩む頂点への道のり
高い商才を持ちながら貴族の娘として生まれたが故にその才を生かせない令嬢が、その商才で国家の頂点を目指すお話。地道な所からはじまる征服への道のりと、女の友情やライバルたちとの駆け引きが楽しかったです。電子書籍版は挿絵なしの廉価版のみです。
夕鷺 かのう「花狩のロゼ 歌姫は薔薇を殺す」
戦う女装主人公×男装ヒロイン
女装してても心は男前な主人公とその主人公と様々な因縁を持つヒロインの関係性も大変美味しいのですが、主人公の従者・ミュゲとの背中合わせの友情ぶりが大変美味しかった。2巻が出なかったのが残念すぎるのですが1巻だけでも綺麗にまとまっていて面白いので……。
新井素子「グリーン・レクイエム」
植物の遺伝子を持つ少女と植物学者の青年の少し不思議な恋物語
緑の長い髪を持ち、光合成を行うことで生きている少女・明日香。幼い頃彼女と出会い、植物学者への道を志した信彦は再び彼女と出会い、惹かれ合うが皮肉にも明日香は植物学者達の研究材料としてその身を狙われる事になってしまう。続編もありますが1冊で綺麗にまとまっているので。でも続編も良いので読んで欲しい(この記事の主旨が台無し)
大樹 連司「ボンクラーズ、ドントクライ」
恋愛と友情の間で揺れる、少年と少女の青春物語
仲良し男子ふたりの『ごっこ遊び』でしかなかった映画製作が、転校生の少女の存在を切っ掛けにして本格的に動き出す。転校生の少女に恋をしながら、彼女の加入によって親友との蜜月が終わってしまうことを怖れる主人公の感情の動きが物凄く良かった。青春のツマとして語られる甘酸っぱい三角関係が最高に良い。
古戸 マチコ「ワルプルギスの夜、黒猫とダンスを。」
魔法とともに描かれる、やがて大人になる少女の「第一歩」
呪いによって身体を入れ替えられてしまった主人公が、魔女ベファーナとして過ごしながら呪いを解く方法を模索する。魔女の森の描写にとにかくときめいてしまうし、そこで主人公が経験する淡い恋と成長の物語と、何より全ての謎が紐解かれていくラストがめちゃくちゃ良かった。
うえお 久光「紫色のクオリア」
愛する少女を救うため、少女は縦横無尽に時をかける
ひょんなことから並行世界の自分と会話する能力を手に入れた波濤マナブは、親友・鞠井ゆかりの不可解な死を阻止するため、並行世界の自分達と共に時空を縦横無尽に駆ける。ループものというか世界線移動要素と異能要素ありのSFというかあとちょっと百合。単巻ラノベというとかなりの確率で名前が上がる名作ですが本当に名作なので読んでください。