学園の旧校舎には吸血鬼がすんでいた。吸血鬼とそれを狩るもの、正義のヒーロー、ふたりの女子校生。彼らの視点から紡がれるひとつの事件を巡るSF(すこしふしぎ)な物語。
語り手が変わる毎に全く違う側面を見せていく物語が面白かった!物静かでお高く止まっているように見えるけど実は(自主規制)な常磐さん、自らを高貴なノスフェラトウとして振る舞いたいちっちゃい吸血鬼のシギショアラ、誤解されやすいけど本当は情に厚い真光寺さん、そしてちょっと不思議な能ヶ谷君。視点が変わる毎に全く別の姿を見せていく登場人物たちの姿と、次第に明かされていく事件の真相に惹きつけられました。特に最初の常磐さんからシギショアラに視点が移動した時のストーリーの反転ぶりにはめちゃくちゃ笑った。
物語の全体像が見えきらないまま終わってしまった雰囲気もあるのですが、逆にどこまでも輪郭が曖昧なままどこともいえない場所に着地するようなふわっとした読み心地がなんだか心地よく、とても楽しかったです。
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「私の好きな」ライトノベル・オールタイムベスト・75(草稿)
ラノベオールタイムベスト100の話題を見かけてからずっと「自分のオールタイムベスト100を作りたい」と思っていたのですがいつもの調子で紹介入りで記事化すると地獄のように長い記事になるので体力があれば夏コミで本にしようかな……と思っていたのですが、そのうち普通に「自分のオールタイムベスト100」の流れが界隈に来たので取り急ぎ出します。コミケで紹介本……というのは割と真面目に考えているのでもし覚えていたら夏コミ1日目のFC小説島をチェックしてみてくださいね(まだ本が出るとは言ってない)
なお、100タイトル選ぶつもりで85まで選んだところで「これは無理に100にするよりもここから少し削ってまとめたほうが正しいな……」という気持ちになってきたので75に削って出します。夏コミで本当に本にするなら改めて100にするかもしれないし50くらいまで更に削って出すかもしれない。そして好きな順・刊行順ではなくだいたい私が読んだ年代順です。
1990年代
1:神坂一「スレイヤーズ」「このジャンル」を認識した始まりの一作2:山本剛「魔導物語」良きノベライズ
3:神坂一「闇の運命を背負う者」
4:新井素子「グリーン・レクイエム」続編の「緑幻想」が特に好き。
5:あかほりさとる「セイバーマリオネットJ」
6:久美沙織「MOTHER2 ギーグの逆襲」MOTHERがBROTHERになってしまう。
7:北条風奈「小説TWINSIGNAL」シンガポール行きたくなる!!!2巻が特に好き。
8:神坂一「ロスト・ユニバース」
9:庄司卓「倒凶十将伝」
2000年代
10:時雨沢恵一「キノの旅」11:中村恵里加「ダブルブリッド」オールタイムベストスリーには余裕で入る
12:椎野美由貴「バイトでウィザード」
13:甲田学人「Missing」
14:神野オキナ「シックス・ボルト」
15:杉原智則「頭蓋骨のホーリーグレイル」
16:有沢まみず「インフィニティ・ゼロ」
17:鈴木鈴「吸血鬼のおしごと」
18:木ノ歌詠「カラっぽの僕に、君はうたう。 フォルマント・ブルー」
19:川上稔「AHEADシリーズ 終わりのクロニクル」電子書籍化待ってる…
20:賀東招二「フルメタル・パニック!」
21:岩井恭平「消閑の挑戦者」
22:岩井恭平「ムシウタ」
23:三上延「シャドウテイカー」このへんの三上延作品セット買い。
24:後藤リウ「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」この本があったから18年待てたんだとおもう
25:藤原祐「レジンキャストミルク」殊子先輩が好きだ
26:風見周「殺×愛 ─きるらぶ─」
27:高殿円「カーリー」
28:土橋真二郎「扉の外」
29:喬林知「まるマシリーズ」三男派
30:虚淵玄「Fate/Zero」
31:林トモアキ「戦闘城塞マスラヲ」
32:井上堅二「バカとテストと召喚獣」
33:水瀬葉月「ぼくと魔女式アポカリプス」
34:菊池たけし「アリアンロッド・リプレイ・ルージュ」TRPGリプレイの中ではこれが一番好き。
35:神坂一「ドアーズ まぜこぜ修繕屋」神坂一挙げすぎってそろそろ思ってるよね。わかるよ。
36:小野上明夜「死神姫の再婚」
37:葵せきな「碧陽学園生徒会シリーズ」正式名称を使うめんどくせえオタク
38:田口仙年堂「吉永さん家のガーゴイル」最後の名乗りのカタルシスよ
39:平坂読「ラノベ部」平坂先生のリレー小説描写は神
40:田口仙年堂「魔王城」電子書籍化して!!!!!!!!
41:杉井光「さよならピアノソナタ」火目の巫女とどっちにするか悩んだ
42:田尾典丈「ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!」
43:うえお久光「紫色のクオリア」
44:壱月龍一「ラ・のべつまくなし」
45:渡島健康「魔王様げ〜む!」
2010年代
46:本田誠「空色パンデミック」こっちも電子書籍化して!!!!!!!!47:あざの耕平「東京レイヴンズ」
48:海羽超史郎「STEINS;GATE‐シュタインズ・ゲート‐」続編「比翼連理のアンダーリン」が特に好き
49:柳実冬貴「Re(アールイー): バカは世界を救えるか?」
50:森 美紗乃「奥様は貴腐人 旦那様はボイスマイスター」
51:かじいたかし「僕の妹は漢字が読める」異色の萌えディストピアSF
52:和ヶ原聡司「はたらく魔王さま!」
53:大樹連司「ボンクラーズ、ドントクライ」甘酸っぱくてほろ苦い青春の三角形。
54:夕鷺かのう「(仮)花嫁のやんごとなき事情」
55:渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」
56:榎宮祐「ノーゲーム・ノーライフ」
57:賀東招二「甘城ブリリアントパーク」続きが読みたい……
58:壁井 ユカコ(GoRA)「K -Lost Small World-」男二人の依存関係とすれ違いと
59:ツカサ「銃皇無尽のファフニール」
60:羊太郎「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」
61:望公太「最強喰いのダークヒーロー」
62:speakeasy(さがら総・橘公司・渡航)「クオリディア・コード」前日譚も本編も全部違う味わいがある
63:望公太「ラノベのプロ!」良い幼馴染ラノベだった
64:瀧ことは「腐男子先生!!!!!」書籍版完結してよかった……
65:師走トオル「ファイフステル・サーガ」
66:瘤久保慎司「錆喰いビスコ」3巻までしか読んでないんだけどその3冊がメチャクチャに好き
67:衣笠彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ」
2020年〜
68:二月公「声優ラジオのウラオモテ」69:七夕さとり「悪役令嬢レベル99 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜」
70:有象利路「サキュバスとニート」このへんの有象利路作品も著者セット枠。
71:紫大悟「魔王2099」
72:七斗七「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」
73:鏡 貴也「伝説の勇者の伝説」令和になってから読んだ。
74:南野 海風「魔術師クノンは見えている」
75:とくめい「アラサーがVTuberになった話。」
クオリディア・コード 2
セカイの真実は、どこにあるのか―?アンノウンの急襲によりカナリアを失った朱雀は、絶望に沈み込み戦線から離脱していた。首席を欠いてピンチの東京を支えるため、舞姫が新リーダーに就任。懸命に生徒たちを支えようとする舞姫だが、その陰ではカナリアを失った哀しみに必死に耐えていた。一方、ほたるはアンノウン急襲の鍵が侵入不可領域にあると考え、青生を連れて探索を始める。そして未知の新型アンノウンにほたるたちが襲われるのと時を同じくして、東京上空にかつてない規模でアンノウンが襲来!仲間たちが次々と倒れていく中、人類の希望を一手に背負った舞姫は激戦に身を投じていくが…!?話題沸騰のオリジナルTVアニメ完全ノベライズ、待望の第2巻!! (「BOOK」データベースより)
渡航が描く、TVアニメ「クオリディア・コード」本編のノベライズ。第2巻ではアニメ8話までの物語を収録しています。
1巻ラストで起こったカナリアの「死」を巡り、遺された5人それぞれの思いが透けて見えるのが楽しかった。完全に「メディアの違い」的な問題だと思うんだけどやはり心理描写を描くなら小説のほうが……みたいなのが、どのメディアミックスでもありますよね。兄気質故に妹っぽい舞姫のことが割と好感度高い霞はどこまで「兄」なんだよと笑ってしまった。「世界を守る」と叫んでいたかつての壱弥を唯一の「同志」だと考えていた舞姫の場面は、それを踏まえてその直後の壱弥とのすれ違いを思うと切なくなる。
良くも悪くも後半に千種兄妹視点になってからが本番で、兄妹の気の置けないやりとりとか青衣と視察に出ることになってどぎまぎする兄とかそれをストーキングしながらヤキモキする妹が可愛すぎた。そして妹のコードを弄る霞のシーンがアニメ以上にエロい。やっぱり首筋のコードは性感帯なんです?千葉全く関係ないけど壱弥に壁ドンされる霞のシーンは描写がまるでBL小説みたいでした(こなみ)。
ただ、千葉陣営が生き生きと動いているだけに逆に2巻前半の神奈川陣営メインの所はちょっと固さを感じたというか、割り食ってる印象はありました。ノベライズ自体はすごく良いと思うんだけど、それはそれとしてさがら総が描く4話までのノベライズ、橘公司が描く7話までのノベライズ、渡航が描く12話までのノベライズという形で読みたかった感じもちょっとする。
クオリディア・コード
約30年前、突如として地球に襲来した謎の異生物アンノウン。人類は総力戦で対抗、辛くも勝利を収めるが、現在も散発的な侵攻に苦しめられていた。東京、神奈川、千葉の各防衛都市では、固有能力“世界”を身につけた少年少女が、アンノウンと戦い続けていた。傲岸不遜な東京首席・朱雀壱弥と次席の宇多良カナリア。天然だが規格外の豪腕を誇る神奈川首席・天河舞姫と次席の凛堂ほたる。常にマイペースな千葉首席・千種明日葉とその兄・霞。戦いが日常となった世界で時に反発し、時に協力し合いながら過ごす朱雀たちだが、この世界には大きな秘密が隠されていた…。TVアニメ放送中の「クオリディア・コード」完全ノベライズ、第一巻!! (「BOOK」データベースより)
渡航が描く、TVアニメ「クオリディア・コード」本編のノベライズ。第一巻ではアニメ4話までの物語を収録。アニメだけでは分かりづらい部分の補足や、各キャラクターの心の動きがわかるのが嬉しかった。全シリーズ読破の上で読むと二度三度美味しい、まさにプロジェクトの集大成といえる物語。DVD付属のシナリオブックを読む限り、シナリオ段階ではあったけど尺の都合等で削られた部分も少し織り交ぜられているようです。
千葉組のもはや愛の営みと言って良いんじゃないのってくらいのイッチャイチャな戦闘描写が凄い好きなんですけど、まさに阿吽の呼吸で敵を屠っていく二人の姿を見ているとランキング二百位台の霞が千葉次席になるのはもう当然のことなんだなあと思わせてしまうこの説得力が凄い。明日葉は強いけど、その強さは兄とふたりでひとつの強さなんだよなあ。というか、要所要所で千種兄妹はイチャイチャしすぎで最高でした。神奈川組以上に戦場でイチャついてた!いいぞもっとやれ!
千種兄妹も最高に良いんだけど男二人のケンカップル模様が大好きな私としては霞と壱弥の関係も色々見逃せないというか、随所で巻き起こる軽口の応酬がいちいち本当に好き。しかし、改めて文字にされると本当に霞も壱弥もお互いが大好きだよねといいますか、壱弥が独断専行したときにそれを見越して準備してる霞の破壊力が高すぎるし、水着回で小型アンノウンを狙撃したときの口にせずとも伝わってる具合、本当は仲いいよねこの人達……。
時折挟まれる各キャラクターのモノローグが沁みる。壱弥はまだプレ小説での例の事件を引きずっていて、カナリアの存在でかろうじて自分を保ってるだけなんだよなあ……。そしてぱっと見で対称的に思える霞のモノローグをしっかり読むと、びっくりするほど壱弥と根本が同じなんだよなあ……。そしてカナリアのモノローグが本当にプレ小説から変わってないんだよなあ……。
カナリアが傷ついたことをきっかけに壱弥がやっと周囲を頼ろうとして、信じようとして、そしてカナリアのアレなんだよなあ……と改めて壱弥視点からの心象描写ありで物語を読むとやるせない。
あとがきによると「1巻」とのことなので恐らく2巻3巻があるのではないかと思われるのでとても楽しみなのですが、正直プレ小説千葉編の2巻もあるし「俺ガイル」の12巻も……でそろそろ渡先生の仕事量が心配になるレベル。どれも続きが読みたいだけに悩ましいよなあ……。ぶっちゃけ2巻は橘先生かさがら先生にバトンタッチでも良いようなきがするんだけど、どうなるんだろう。
クズと金貨のクオリディア
底辺高校生・久佐丘晴磨と、天使のような後輩・千種夜羽。同じ階層にいられるはずのなかった二人は、とある偶然をきっかけに接近してしまう。異常気象、異常現象、異常行動…少しずつ歯車が狂いだしていく二人の日常と奇妙な都市伝説。曰く「ランダム十字路」―真夜中、突き当たったT字路で誤った道を選ぶと、二度と帰ってこられない。行方不明の女子をなりゆきで一緒に追うなか、晴磨と夜羽の思惑は大きくすれ違い…!?レーベルを越えて広がる新世代プロジェクト第一弾!これはふたつの視点から紡がれる、終わりゆく世界とめくるめく青春の物語―。(「BOOK」データベースより)
友達いない底辺高校生・久佐丘晴磨はとあるきっかけから後輩の美少女・千種夜羽と出会う。半ば脅されるような形で行方不明になった彼女の“友人”を一緒に探す羽目に。見え隠れする“同業者”の姿と、「ランダム十字路」なる都市伝説の噂。事態は二人の想像もしなかった方向に転がっていって……!?
プロジェクト・クオリディアのアニメ・小説世界の更に前日譚となる物語。旧世界が<アンノウン>の襲撃によって終わりを迎えるまでの姿が物語の幕間幕間で示唆されつつも、そんなことは全部うっちゃってサイコパス美少女とやれやれ系男子高校生の奇妙な関係性を描く物語です。
わたりん節全開な晴磨のとりとめのない一人称と、さがら総が描くどこまでもクレイジーでサイコパスな夜羽の一人称がキャッチボールという名の相互壁打ち(決してお互いにボールを獲り合ってはいない)やってる感じが、めちゃくちゃ読んでて疲れるけどクセになる。最初から最後まで一貫して噛み合わず、思考はどこまでもあらぬ方向に脱線しながら、それでもつかず離れず寄り添うように進んでいく展開が面白い。
夜羽側の家庭の事情やこんな性格になった一端もそれとなく明かされるのですが、晴磨がそういった事情に絆されるわけでもなく、「お前はクソ女だ」という思いが最初から変わることはなく。それでも「一目惚れだ」って言ってしまうのが本当に凄い。最初から最後までどこかすれ違っていて、それなのにラストは本当にびっくりするほどラブラブで……唐突に終わる世界と、晴磨と夜羽ふたりだけのとびきり甘くて閉じたセカイが同時に描かれていくのが印象的でした。その後ふたりがどうなったのかどうとでも解釈できる、アニメのCパートのような終わり方が最高に好き。
「千種」「朱雀」「天河」「凛堂」とその後のクオリディアの中心となるメンバーと同じ名字が登場して、明確な示唆はされないんだけど彼らの“親世代”の物語になるのかな(特に朱雀に関しては壱弥が『父親が生徒会長だった』といってるのでほぼ間違いないとは思うけど)。晴磨と夜羽の物語には全く関係ない、各章の扉から描かれる旧世界の終わりの姿が、クオリディア・コードの3作品とアニメ4話までを踏まえると明確な形を見せてくるのが色々想像できて楽しかった。関連作品を知らずに読んだら全く違う感想になったと思うので、最後に読んでしまったのが少しもったいなかった気がする。
それにしても、カナリアの名字だけが登場しないのは意図的なモノを感じてしまう。明かされない彼女の『夢』といい、何か秘密がありそうだしなあ。
「好きなライトノベルを投票しよう!! 2016年上期」投票します。
企画元:好きなライトノベルを投票しよう!! - 2016年上期
今年もまたギリギリなんですが投票します。今回からツイッター投票がやりやすくなったので最後の1時間ですが好きな1冊があるかたは気軽に投票できるようになりましたよ!
そんな世界は壊してしまえ 2 ‐クオリディア・コード‐
人類の『敵』―“アンノウン”と戦う近未来。防衛都市東京に所属する朱雀壱弥は、初めての問題に直面する。狂っているのは自分か、それとも世界か。あるいは―「いつもにこにことなりでスマイルピース!あなたのカナリア、みんなのカナリア!毎度おなじみ、宇多良カナリアです!」―この女か。水着で無意味にぴょんぴょんするカナリアに、朱雀の正義が揺れ動く。逡巡の末、新たな仲間たちを指揮するが…「教えてあげる―その気持ちが、恋だよ」「おまえ、もしや目が腐っているのでは?」TVアニメ『クオリディア・コード』7月より放送開始!原作プロジェクトにして、『変態王子と笑わない猫。』コンビが贈る青春ラブコメの最前線、待望の第二弾! (「BOOK」データベースより)
東京主席の少年との一件以来、自らの“正義”に疑問を感じ始める朱雀壱弥。働きを認められ、戦闘科の配属になった彼はカナリアと共に、学園からドロップアウトして防衛都市の外で暮らす生徒たちと接触する。彼らを鍛え上げて、学園に復帰させようとするのだが、思わぬ事態が待ち受けていて……というお話。
1巻からもうこの物語の世界観や登場人物達の歪みっぷり本当に凄いんだけど、2巻は更に輪をかけて凄かった……特に戦闘科の生徒たちの選民思想というか歪んだエリート意識ヤバイ。こんな狂った世界でそうしなければ生きてこれなかったみたいな部分もあるんだろうけど、強いものにへりくだり、隙あらば蹴り落とし、弱い者やドロップアウトした者を見下す彼らの姿勢が清々しいまでにゲスくて直視できなかった。しかも、狂っていたのは上に居る彼らだけではなくて。
これまでとは違う道を模索しようとして、少しずつかつての当たり前の少年らしさを取り戻しつつあった壱弥が最悪の状況で手ひどく裏切られて絶望して、それでも最後に少しだけ光が垣間見るという終わり方がとても好き。壱弥って確かに歪んだ人格ではあるんだけど、きちんと自分が認めた相手にはそれなりの敬意を払っているのがどこか微笑ましい。
それで、私はラブコメ的には正直カナリアよりもつぐみ派なんだけど、つぐみは原作のここで脱落っぽい感じなのが残念。終盤の彼女のモノローグと諦観の混ざった心の動きが、どこか切なくて好きです。
終盤は少し駆け足感を感じたのだけど、良くも悪くも「アニメに続くための物語」で逆にこの後の物語をアニメできちんと見たいと思わせる終わり方だったと思う。2冊で綺麗にまとまっていて、アニメでは描ききれないキャラクターたちの事情や感情を理解することが出来て、良かった。
余談なんですがエピローグの電話の件、なんだかんだで彼らのことを気に掛けてるのがまるわかりでめちゃくちゃにやりとするんですけどアニメの1話でしっかりその『彼』が戦闘科で生徒たちをまとめる役割っぽいポジションになってるんですよ!!!アニメのクォリディアで防衛都市の細かい話をやるのかどうかはわからないけど、未来の彼らの姿も少し期待してしまう。
そんな世界は壊してしまえ ‐クオリディア・コード‐
人類の『敵』―“アンノウン”の襲撃により世界が崩壊した近未来。湾岸防衛都市東京の学園に所属する朱雀壱弥は―人類を愛しすぎていた。全人類の発展のため、美少女の告白をバッキバキに叩き潰し、戦わない同級生の心をボッキボキに叩き折る。デート?カップル?それはこの世界でどんな意味が?なにもかもを論理で語れ。自分の正義を信じてやまない朱雀に、謎の転校生少女の調査任務が与えられ…?ポジティブクズとドM天使が出会い、新たなる変態ストーリーの幕が上がる―!『変態王子と笑わない猫。』コンビが贈る青春ラブコメの最前線!刮目せよ!(「BOOK」データベースより)
正体不明の敵性体・通称アンノウンの侵略により壊滅的な被害を受けた世界。戦争中にコールドスリープに入った子供たちは、スリープ中に次々と“世界”と呼ばれる異能力に目覚め、アンノウンに対抗する力を手に入れた。戦争はいったん終結という形を取ったが引き続きアンノウンの侵攻は続いた。関東には東京・神奈川・千葉に3つの防衛都市が築かれ、そこでは能力を手に入れた子供たちがアンノウンと戦っている。
舞台は防衛都市・東京。高い戦闘能力を持つが飛翔する“世界”を持たないゆえに最前線の戦闘科から外された朱雀壱弥。人類を愛するあまりに個人への恋愛感情を理解できない壱弥とそんな彼に告白して以来すっかりセット扱いされているつぐみの2人は、東京次席の鷹匠からとある依頼を受けることに。全人類の可能性を信じるが故に戦闘科の劣等生達の心をバキバキに追っていく壱弥の前に、初恋の少女とそっくりな少女・宇多良カナリアが現れて……?というお話。
しょっぱなから朱雀壱弥という人間の歪みっぷりを思い切り出してきて、そんな壱弥に周囲が振り回されるお話かな?とおもったら次から次へともっと歪んだ登場人物達が出てきて東京がヤバイ。ラブコメ的な軽いノリの世界観かとおもいきや、思った以上に深い所から歪んでいて最高に楽しい。東京住みという優越感やら微妙な選民意識を闇鍋で煮詰めてどろどろにしたやつに、得体のしれない敵との先の見えない戦いとかほぼ子供達だけの閉じた世界とか、それがうみだす社会の歪みとか一緒くたにぶちこんで一見学園異能ラブコメの皮かぶせてました!みたいな。
どこか虚ろな狂気をもって世界全てに無償の愛を注ぎ続けるカナリア。壱弥の理想を体現したような歪んだ男・東京主席の少年との出会いを経て、少しずつ自分の考えに疑問をいだいていくのが印象的。アニメの前日譚ということで、壱弥とカナリアの都市内での立場もかなり違うんだけど、ここからどうやってアニメの物語につながっていくのかも気になる。
よくも悪くも壱弥がどう「変わっていく」のか、楽しみです。