夏に公開される劇場版アニメ「SILENT SKY」で明かされる真実を踏まえた物語となっているため、アニメ版のみを視聴したかたはご注意ください(いくつか重大なネタバレを踏みます)
シナリオライター本人が描く「カオスチャイルド」の後日談。ゲーム版の最終エンディングである「SILENT SKY」は宮代拓留と尾上世莉架ふたりの物語として描かれていて、他の事に関しては簡潔にしか語られないのですが、これは取り残された彼女たちが新しい一歩を踏み出すまでの物語です。
これまで在った日常は過去のものとなり、彼女たちは事件の真相を胸の内に秘めたまま、世間との軋轢や、様々なことに直面していかなくてはならない。周囲に理解してもらえなかったり、ひとりあるきする事件や犯人に関する誤解、真相を伝えられないもどかしさが時にしんどくもあるんだけど、それでも自分で一生懸命考えて、自分の足で歩き出そうとする姿が胸に熱い。
特に有村雛絵の立ち位置がめちゃくちゃ好きだったんですが、今まで否応なしに相手の本心を読んでしまっていた彼女がその能力を失い、戸惑いながらも体当たりで少しずつ人間関係を再構築していく姿や、拓留へ感じていた名前のつけられない感情に戸惑う場面とか、何もかもの憂さを吹き飛ばすような最後の演説とか、本当に可愛かった。親友の華が新聞部以外の友達を作る事にヤキモチを焼きながらも影に日向に応援したり、自らが思考の迷路にはまり込んだその時に、自分が助けた華を通して自分自身の言葉に助けられるの、本当に良い。
というか、その際に雛絵が“偉人の言葉”として呟いた自分自身の言葉こそが、この物語の全てを貫くテーマだったのかなあと。これまで以上にお互いを大切に想い合いながら、だからこそ離れていく彼女たちの姿が印象的でした。
「良かったに決まってるじゃん。かの偉人は言いました」
切り出したのは雛絵だった。いつもの飄々とした口調だった。
「『大切だからこそ、しかし我々は離れなければならない。大切なものに甘えて、その大切さをまさに自分たちの手で貶めてしまう前に』。私たちを誰だと思っていやがる。私たちが共有している経験の強さを舐めるなよ」