七夕に関する不思議な伝承が残る星無町に住む5人の幼馴染達が繰り広げる、少し切ない恋と友情のお話。表紙の魅力がとてもヤバイ。「ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート」もかくやというほどの吸引力。あらすじと合わせて突発買い余裕でした。
少しずつ大人になるにつれて変化しはじめた4人の関係が、とある想いを持って帰還した5人目の少女・あかりの存在によって明確な不協和音を奏で始める姿が切ない。年不相応に子供っぽい考えを持ち、ひたすら空気が読めない湊が彼らの関係を保とうとして立ち回るのですが、読者側からみると踏まなくてもいい地雷を片っ端から踏んでいるようにしか見えず、中盤はいつ彼らの間にある薄い氷のような関係を踏み砕いてしまうのかが心配で心配でなりませんでした。
一方で、既に“大人”としての考えを持った上で5人の幼馴染関係を大切に思っている橙との対比が印象的。「最近一緒に帰れなかったから疎遠になったみたいな気がした」と言う湊に対し、「そんなことで距離が出来るような関係なら本当の親友関係ではない」と思っている橙。作中では深く語られないけど、本当に5人の関係を尊んでいたのは彼なんじゃないでしょうか。
そういう意味で個人的には、タイトルが素晴らしいと思う。綺麗な「ペンタゴン(5角形)」を形作るためには限りなく全員が全員に対して同じような距離感を持っていなくてはならなくて、彼らが恋をすることによってそのペンタゴン内の距離感が崩れ、歪な形になってしまうという意味なのかな、と。それに気付いてペンタゴンを壊そうとするあかり、形に拘らず新たな関係に進もうとする橙、意識的に関係を保とうとする伊緒。そしてその「ペンタゴン」という形に拘泥していた湊が恋によっていつまでもその形ではいられないということを自覚し、彼らと新たな関係を築いていく事を受け入れるという物語なのではないかと思う。鈴は空気だったのでどういうスタンスだったのか良く判りませんg……ゲフンゲフン。
一方、終盤であかりとの関係に決着がつかないまま突然トンデモ設定が展開され、伊緒と主人公の恋愛関係に主軸が移ってしまうのには少し疑問を覚えました。序盤から少しずつ不穏な伏線が張られ、読者の興味を惹きつけていったあかりの物語は途中からいきなり入ってきた伊緒の物語によって結末を明確に語られないまま終わってしまうし、一方で伊緒の物語はトンデモ設定な割に序盤で彼女の存在感がイマイチ高くないせいかかなり強引に挿入されている印象を受ける。どちらの物語もとてもよかったのですが、良かっただけにちゃんと語られていないのが残念でした。せめて湊・伊緒・橙が織りなす三角関係の結末くらいは描いて欲しかったなぁ。
しまった!!これ明日読めば七夕ドンピシャだったのに!orz
余談ですが、「田舎町に住む幼馴染達」「恋によって変わりゆく関係と変わらぬ友情」「流れ星に掛けた願い」というキーワードから、どうしても「キラメキ☆銀河町商店街」を思い出した私が居る。
不思議要素はないけどこの物語の幼馴染成分や青春成分にキュンとなった人は読むといいよ!併せてお薦め。
キラメキ銀河町商店街 1 (花とゆめCOMICS)ふじもと ゆうき by G-Tools |