「Robotics;Notes」の物語を登場人物の1人・神代フラウの視点から追うノベライズ完結編。フラウの個別ルート終盤を追う内容に加え、淳和視点から淳和の個別ルートを描いたスピンアウトも収録されています。
フラウの、母親である古郡みなみと彼女の遺した「ガンヴァレル」への強い想いが胸に痛い。ゲームで若干唐突感のあったお風呂場のシーンや「ガンヴァレルが汚されちゃう」という発言を更に補強するような、作品への強い想いを感じる場面の数々がとても好きでした。元々“母さんの残したガンヴァレルを忘れられたくない”という目的の為にあんな凄いゲームを作ってしまうような彼女が、自身の行動が原因で母親とガンヴァレルまで汚されることになってしまうという絶望はいかばかりのものか。自分自身がけなされるよりも悲しいことって、あるよね。
個別ルートが終わるところまでしか描かれないので、このノベライズ単品で追っていると「俺たちの物語はここからだ!!」で終わってしまうのが若干面白味に欠けるかも。角川スニーカー文庫のノベライズはこれに限らず原作を全て読んでいるの前提の副読本みたいな役割をするものが殆どなのでその辺は割り切って読むしかないけど。あとがきでも言及されているとおり、この後の愛理ルートでのフラウの暗躍とか、ゲーム終盤であき穂と海翔が東京に行ってる間の種子島の様子とか凄く見たかった気はするんですが…。
ただ、神代フラウという引きこもりが八汐海翔というゲームオタクと出会い、1人の少女らしい恋愛感情を自覚する事で引きこもりを脱するという成長物語としては物凄く面白かった。奇天烈な言動の裏で物凄く緊張してたり、幼馴染のあき穂との関係を気に掛けていたり……みたいな部分がとてもとても可愛かったです。
後半に収録された淳和ルートの物語は、正直ページ余ったのでとりあえず入れましたみたいな感じが強くて正直…な部分はあるんだけど、元のシナリオ自体が単独でとても良い話なので、物語を復習する的な意味で、面白かった。海翔が大徳寺一家と邂逅する話がカットされてたのが本当に残念なのですが……というか大徳寺父・祖父のツイぽアカウント酷いwww
しかし、フラウ関係のメディアミックスは全体的に恋愛色自体が薄いロボノの物語の中でひときわ糖度が高いので良いですね。ノベライズは原作をやったひと/アニメを最後まで見た人への補強シナリオの側面が強いので未読者にはあまりオススメできませんが、フラウ視点から少しだけ原作の展開を変えつつ展開するコミカライズ版のほうは、原作未経験者にも満面の笑みでオススメできます。
原作よりも若干マッドプログラマー度強調(だけど恋する乙女)なこなちゃんとか、原作よりも更に格ゲーバカ一代な海翔さんがとても良いよ!!「多少特殊な能力を持つ普通の少年少女達がロボットを作るため頑張る」な原作に対し「ちょっとおかしな一芸秀でた秀才達が華麗に魅せる」物語になっていてこちらもあわせてオススメしたいです。