かなめを狙う追手をやりすごしながら、日本で潜伏生活を続ける相良一家。横浜の団地で高校時代の同級生・風間がやっている配信を見ていた宗介だったが、なぜか過労で倒れた風間の代わりに「Vtuberの中の人」としてゲーム実況をやる羽目になり…!?
宗介・風間(+小野D)の20年後の関係性に胸が熱くなった
アラフォーになった宗介とかなめと子供達の騒がしくも楽しい日常生活を描くシリーズ第二巻。前巻ではかなめ側の人間関係がクローズアップされがちだったんですが、今回は宗介側の人間関係がメインで描かれていました。個人的には宗介が風間の代わりにVtuberの中の人をやる「神奈川県横浜市戸塚区の1DKの団地」がめっちゃ好き。何も知らない相良軍曹がテッサそっくりなガワのVtuberの中の人をやる時点でもう何も起きないわけがなく……案件なわけですが、宗介が上手くできないところまで組み込んで一種のイベントとして「企画」を立て、その上で宗介に声を掛けてきているのが上手すぎる。いやほんと風間、良い意味で「食えない大人」になったな。
フルメタ本編では宗介の破天荒な行動に振り回されるばかりという印象だった風間(や小野D)が20年の時代を過ぎてもなんだかんだと友人関係を続けているというのがとてもよかったし、何より、大人になった宗介が当時の風間が自分と友だちになってくれたことをめちゃくちゃ恩義に感じていること、そして「命の恩人」という言葉で胸が熱くなってしまう。最終巻のボイスメッセージのことだよねこれ……。
宗介って学生時代は同級生たちの事を弱者・守るべき対象だと思っている面があったとおもうんだけど、20年の時を経て戦闘能力だけが強さではないことに気づいた宗介が尊敬できる隣人として彼らと友人関係を続けている姿が見れたのが本当に良かったです。
伝説のウルズチーム、最後のロックンロール!
そして今回のメインはクルツ&マオ夫妻と娘のクララが登場しててんやわんやする「和歌山県東牟婁郡櫛本町の古民家」「三重県志摩市のもとやま国際ホテル」の2編。これがまた良かった。アラフォーである宗介よりも更に加齢の影響を感じるクルツ・マオ夫妻。若い頃のような無茶はもう出来ないとぼやきながらも久しぶりに最強のコンビネーションを見せる三人が、でもこんな風に三人で戦うことはもうないだろう──と薄々感じている姿が印象的でした。いや、1巻から宗介の衰えの描写はちょくちょく登場していたわけなんですけど、あのクルツくんが「老眼」て………。加齢や病気で失われたものが沢山あるけど、同時に新たに手に入れたもの(知識とか経験とか財力とか)もたくさんあって……今回はそれを駆使してかなめを狙う悪者の親玉を追い詰めて無茶やりつつも気持ちよく勝つお話になっているのがめちゃくちゃ楽しかった!そして彼らの大活躍の裏でかっこよく登場しようとしてるのに全然かっこよくキメられないテッサおばさんおもしれえ女すぎる。彼女がどんな20年を歩んだのか、続巻を楽しみに待ちたいです。
それはそれとして、宗介の衰えの描写とかはまぁ順当というか年を取る上でどうしようもない部分ではあるのでいいんだけど、ふたりの子供達が時折見せる天才性と戦闘に対するセンス、それを内心で心配する宗介が印象的……というか不穏で……。1巻のかなめとソフィアの話もあるし、なんというかまだまだウィスパード周りの話が実は一件落着してないのではないかみたいな不気味さあるよなあ……。
あと、Vtuber回で夏美がぼそっと漏らした「父さんはまだ山奥から帰ってきてない」、戦争終わった後の帰ってこれない兵士の話だぁ……と頭を抱えてしまったスパ●ボプレイヤーの私。