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愛なら売るほど

 

高らかに愛を謳い、真実の愛を求める彷徨人、その名は麗奈―流行語大賞獲得、社会現象ともなった大ヒットマンガ『愛売る』の作者・泉は、十年ぶりに出席した同窓会で、高校時代から想い続けていた飴屋と再会する。変わらず素敵な彼が自分を覚えていてくれたことに浮かれる泉だったが、「真実の愛なんて興味ないね」という言葉にはちょっぴり傷ついて…。マンガ家シリーズにキャンディ先生登場!鬼担当・橘編とアノ夜の後日談を書き下ろし。 (「BOOK」データベースより)

 大人気漫画『愛売る』の作者・藤野泉は10年来好きだった高校時代の同級生・飴屋と同窓会で再会する。自分が漫画家だということは隠していたが、偶然彼と同じマンションに引越しすることになって……というお話。

 藤野視点から見ると凄くかっこいい男として映っている飴屋が、実は藤野の漫画の大ファンだったり藤野の編集・橘を恋人だと勘違いしてヤキモキしたり、後日談では初体験を滞りなく迎える為にわたわたしたり……と見かけとは裏腹の残念っぷりを覗かせるのも微笑ましかったんだけど、それ以上に作中作『愛なら売るほど』が気になってしかたなかった。いえ、なんというか、ものすごく……「シリアスな笑い」を提供してもらえそうです……どう考えても色々とシチュエーションがギャグなのに、泣ける恋愛漫画らしいから余計意味がわからない。とても読みたい。それにしてもこれ、レディコミなのに一般読者多すぎじゃないですかとかこのマンションの驚愕のゲイ率とか多分突っ込んじゃいけない。

 表題作も良かったけど、個人的には橘とコンビニ店員で(ネタバレ)の小谷が繰り広げる『愛ならいらない』が好きでした。強引だけど漫画に深い愛情を注ぐ橘が漫画など読んだ事がなかった小谷に『愛売る』を押し付けて、小谷が少しずつそれにハマっていく様子にニヤニヤ。終盤のすれ違いっぷりは王道展開だけど美味しいし、墓場の前でのやりとりには思わずしんみりした。

 ただBLというだけでなく、『愛売る』という作品を巡って創作者/編集者/読者の、各々の物語への想いが透けて見えるのがとてもよかったです。面白かったー。