その宿命は星に訊け 岐伯春秋 | 今日もだらだら、読書日記。

その宿命は星に訊け 岐伯春秋

[著]北条 風奈 [絵]櫻 ゆり

炎帝・神農氏を主君と仰ぐ薬師・岐伯は帝の命令により北部を収める帝の異父弟・軒轅氏に仕えることになる。様々な出会いを経て北部の飢饉から人々を救おうとする岐伯だが、兄へ劣等感を抱く軒轅氏と神農氏の間で戦争が起きて…
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その宿命は星に訊け—岐伯春秋
その宿命は星に訊け—岐伯春秋
封神演義時代以前の中国を舞台にした中華ロマン。「封神演義」に登場するキャラクターたちが多く登場するので、某マンガ世代の人たちにはちょっとなじみの深い名前が多いかも。ちなみに発売当初買ったまま5年も積んでた一冊です…って考えると、これが実質的な「初ビーンズ」だったのか…。

エニックスで長いことSF系のノベライズを出していた北条風奈さんの小説、ということでエニックス側で出されていた著作の大ファンだったのですが……後書きで低年齢層を意識して文章の書き方を意図的に変えているという文章がありましたが、その所為かエニックス時代の文章を読んだときに感じた魅力が全くなくなってしまっていました。何よりもキャラクターや舞台の臨場感溢れる(一部では「やりすぎ」とまで言われた)描写表現がきっぱりさっぱり削られているのはもうなんていうか…。淡白といえば聞こえはいいけど、なんか以前の過剰なくらいの描写表現に慣れきった身としては違和感感じまくりでした。

いや、なんていうか「小説TWINSIGNAL」を読んだときに毎回感じていた、舞台になった街に一緒に旅行に言ったような気分になるそういう臨場感とか、そういうのが皆無だったのが個人的に期待はずれすぎたんだよー。もっと南部と北部の人々の生活の様子とか、そういうの書いてほしかったっていうかその辺を期待してたというか。

ストーリー自体は、中盤くらいまではまだ良かったかなあとおもうのですが、ラストが酷い。最後の2Pくらいで散々張り巡らされた伏線を後日談と言う形で強引に解決しておしまい。ヤバイくらいに何も落ちてない。ジャンプの10週打ち切りマンガみたいだ。シリーズものの1巻として、「彩雲国物語」の1巻みたいに未来の姿を暗示して、次巻につなぐって感じでも無いしなあ…。

各キャラクターの描写がとにかく浅くて、なぜ彼らが岐伯に絡んでくるのかとかそういう辺りがあまり見えてこない。主人公の描写はしっかりしていて、北と南の帝の間で揺れ動く様なんかはとても素敵なものがあるのですが(それでも最後の方に駆け足で書かれた部分という印象が否めないんだけど)、全体的に物語として浅い気がするのです…。

「古代中国ロマン」という今までの著作物とは一線を画するジャンルに挑戦したのがまずかったのか、角川に移って編集者にいろいろ言われて路線変更を迫られたのかはしりませんが、「小説TWINSIGNAL」や「奇跡の知性」が自分の中でかなり神だっただけに、この出来はショックでした。うーん、中学・高校時代に一番読み込んだ作家さんだと言っても過言ではない方だけに、この作品を最後に消えてしまったのが本当にもったいないと思えてしょうがないのですが。是非、いつか路線をSFに戻して復活してほしい作家さんです。(ビーンズよりも富士見Fか電撃か富士ミスあたりのほうが活躍できそうな作家さんだとおもうんだけどな?…)


ちなみにエニックス時代に出したオリジナルSF作品「奇跡の知性」は正直神がかってるとおもうので、うっかりこの本を読んでしまって欝になった貴方は是非古本屋で探してご一読してみてください。amazonさんで何故か定価以上の価格で売られててびっくりしましたが。

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