見に覚えのない罪で婚約を破棄された上投獄されたの公爵令嬢が本性をあらわにして牢獄に自ら立てこもり、悠々自適な生活を送りながら自分をいびろうとする元婚約者の王子とその取り巻き達をいびり返すお話。完結編。
最後まで恋愛沙汰にも刃傷沙汰にもならず(いや一部の人は別の意味で大変なことになっていたけど)、最初から最後まで一貫して軽いノリで突き抜けていったので安心して楽しめた。この流れから王子一派が処刑されるようなオチになったらちょっと嫌だなあ…と心配していたんだけど、むしろ暴走して刃傷沙汰に走ろうとする周囲を引っ掻き回していたはずの主人公サイドが食い止める展開すらあって笑ってしまう。絶対にシリアスも泥沼にもさせないこのさじ加減が凄かった。2巻という巻数もいい感じに間延びせずにきれいにまとまってよかったと思う。
散々無茶苦茶やっておきながらもレイチェルは最終的にエリオット側の生命を取るような流れは一切望んでいないのが本当に面白い。絶妙に王子側が暴走しすぎないよう「節度」を持ったいびりが展開されていくし、レイチェルの配慮が届かない/手の出せない部分は彼女が育て上げた侍女軍団が完璧に彼女の意図を汲んで行動してストッパーとして機能する。こんなん、レイチェルへの嫌がらせに拘泥するあまり臣下からの信頼を失ってさえいるエリオット一行が勝てるわけがない。
楽しくドタバタしながらも、気づけば取り巻き一行は一人ずつ王子の周りから排除されていき、貴族達への求心力もしっかり剥ぎ取って…一切の弁明の余地なく王子の政治生命を完璧に断っていく流れが見事でした。しかし同時に、レイチェルが一番望んでいた結末は「自分も次期王妃の座を追われて牢の外でも悠々自適に暮らす」ことだったと思うので正直試合で勝って勝負に負けた感じが物凄くあるんだよな…いや、そのへんのバランスがまた絶妙なんですが。
ともすれば重くなったり残酷になったり後味が悪くなってしまいそうな題材を扱いながらも、最初から最後まで明るく笑える話として計算され尽くした展開がどこまでもお見事でした。楽しかったです!レイチェルがラストでプロポーズした相手、私も彼と結婚したい。