広島県巴市の市役所の通称「もののけトラブル係」に配属されたフリーの陰陽師・宮澤美郷は、不動産屋の手違いで着任早々宿無しになってしまった。そんなところに自称・拝み屋の金髪ピアスのヤンキー・狩野怜路から声を掛けられ、彼の家に居候させてもらうことに……。
黒髪イケメン&金髪ヤンキーが怪異を祓う、お仕事系バディ物
片やエリート陰陽師一族の生まれだが身の内に「異形」を飼う男、片や「天狗」を名乗る存在に拾われて呪術師として育てられそれ以前の幼い頃の記憶が無い男。生まれも育ちも違えどそれぞれ人には言えない秘密を抱えた2人が広島の古い屋敷で共に暮らしながら少しずつお互いに心の距離を縮めていく、お仕事&あやかし退治系のバディ物。儚げ美青年に見えてなんだかんだで生きることに執着するし笑顔の仮面を剥ぎ取ればなかなかどうして図太い性格している美郷と義理人情に厚く頼れる兄貴のように見えて自分の命を軽率に「対価」として差し出せてしまう見た目はヤンキーなのになんか桜に攫われそうな男・怜路…という二人の対比が印象的でした。見た目はどうみても桜に攫われそうなの美郷さんなんだけど、本編読んでみたら桜に攫われるのどう考えても怜路なんだよな……。
そして主役2人の関係性とその変化も楽しいのだけど、個人的に美郷が自分の身の内に巣食う白蛇精と折り合いを付けていく展開も大変良い。自分を脅かす存在であり現在も完全に支配下に置いているわけではなく「それ」に対して複雑な思いを抱えていた美郷が相棒の危機を救うためにその力を借りる決意をする展開がアツいし、喋らないのに謎の愛嬌……というか個性がある白蛇精さんだんだん可愛く思えてくるし、というか怜路も作中で言ってるけど「白太さん」はズルかった。名前の時点で可愛い。名付けの妙を感じる。
今回は主役2人がそれぞれの身の内に抱える問題に折り合いをつけるまでという感じでバディ物として協力して妖怪退治する展開はあまりなかったんだけど、同時収録の短編で出会う前の二人がそれぞれもののけトラブルに対処するお話が描かれていて、このふたりが今後色々と協力する間柄になっていくのが楽しみになりました。
それにしても終盤に色々余裕なくなってきて体面かなぐり捨てて職場の嫌味な上役にクソ塩対応する美郷さんめっちゃ好きだな。そして市役所の同僚にして元同級生の広瀬くんがどうかんがえても美郷さん拗らせてるのも良き。