進級した綾小路達新2年生を待ち受けていたのは、生徒達個々の評価をアプリから一覧できる新アプリと、一年生とペアを組んで行われる特別試験だった。ペアの平均点で点数を競い、基準点を下回れば2年生のみが退学になる──というこの試験を退学者なしで乗り切るため、堀北は独自の動きを取る1年Dクラスに目を付ける。一方、綾小路も1年生の中に潜む「ホワイトルームからの刺客」を炙り出せなければ退学になる危険があり……。
一年生編から発展した、新たな人間関係が楽しい
11.5巻での堀北会長との一時の別れを経て、改めてクラスを率いて上を目指すことを決意した堀北と、月代を筆頭にした「ホワイトルーム」からの刺客の存在をきっかけにこれまでの傍観者的なスタンスを捨てて“本気”をだすと決めた綾小路。長かった一年を経て別々の理由から改めてAクラスを目指すことを決意したふたりが改めて行動を共にするようになった姿が印象的でした。軽井沢さんが恋愛面でのパートナーとしての立場を確立したこともあってか、綾小路・堀北の恋愛要素のない相棒関係が強調されていたように思えます。一方でめでたく彼氏彼女の関係に昇格した軽井沢さんが綾小路との二人きりの勉強会で一喜一憂してるのが本当に可愛くて仕方ないんですけど(メロンブックスの特典SSもよかった…)、その一方で重い過去を持つ彼女がかつて綾小路に告白した過去を持つ佐藤に綾小路との関係を聞かれて、どう向き合うかもアツかった。綾小路という譲れないもののために、これまで逃げてきたものと立ち向かう彼女の姿が健気すぎるし、そんな彼女が本当の友人を掴み取ったのだと信じたい(しかし例によって綾小路の視点を紐解くといろいろな意味で「都合の良い女」扱い感が強いのでまじで軽井沢さんは幸せになってくれ……)。
ホワイトルームからの刺客を炙り出せ
新しく登場した下級生の誰もがなんか疑わしいという展開の中、まずは刺客そのものを探すのではなく「いかにホワイトルームの刺客ではない人物と組むか」に徐々に焦点が当たっていくのが印象的。そんな流れから綾小路の選んだ「パートナー」がなんというかマジ綾小路だなと言う感じなんですが……理屈を聞けば納得するんだけどその発想が出てくるところがなんかもう強いよなこの人。ホワイトルームからの刺客の話、前巻からがっつり伏線張った割にこのあらすじだとあっさり解決してしまうのでは!?と思ったのですが、色々な意味で予想外に先の見えない展開に。一年生全員を敵に回してもおかしくないこの状況から本気を出した綾小路がどうやってひっくり返していくのか、続きが楽しみ。
良くも悪くも「顔見せ」巻のある、仕切り直しの第一巻
新たな展開の始まりを感じる一方で、色々な意味で新一年生の顔みせ&新学年になった各クラストップの動向が中心でこれまで登場したキャラクターたちひとりひとりにはどうしても焦点が当たらない感が強くはありました。これまでは綾小路たち一学年の動向が中心の物語でしたが、南雲率いる生徒会や動きの読めない一年生、そして綾小路を連れ戻そうとする「ホワイトルーム」の動向も含めてかなりキャラクターの多い物語になってきそうな雰囲気で、そのへんをどう捌いていくのかは結構気になるところ。綾小路グループ周りもほとんど出番ないまま、ひと悶着ありそうな雰囲気で終わってしまったな…。それにしても相変わらず最後の挿し絵(見開きのやつ)がいい仕事しているな最高。
ま〜〜た綾小路さんはコワモテの男をたらしこんで…(違)
画集の話をしよう
ところで同日発売の「トモセシュンサクArtWorks」に特典でついてくる、店舗特典SS集がとてもぶあつくて楽しいです。まだ全部読んでないんですけど後追いのファンとしては特典類をこうやって1冊にまとめてくれるのは嬉しいし、基本的に「原作の同じ場面を他のキャラクター視点で描く」というコンセプトになってるのが凄くありがたい。原作で描かれていない場面の物語、ではないので割と気楽に追いかけられるなあという印象。それで書き下ろしの「1年後に見えてくるもの ─龍園翔─」が11.5巻の綾小路との会話の龍園視点なんですけどなんなんですかねこの人達なんでこんなに仲良いんですかね……やっぱ龍園の視点から見ても綾小路は龍園の事好きすぎじゃないっすかねって思うし龍園さんも綾小路のことを気に入り過ぎでは……。そしてもうひとつの書き下ろしは11.5巻ラストの軽井沢視点でした。綾小路に恋してしまった軽井沢さんが七転八倒しながら恋する乙女してるのが本当に可愛いんですがそこでその挿し絵(11.5巻ラストのやつ)をお出しするんじゃない。
やっぱり軽井沢さん幸せになってくれ………………(3回目)
KADOKAWA
発行:2020-01-24