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ざ・ちぇんじ! 新釈とりかえばや物語 後編

 

男として宮廷に出仕した綺羅姫だが、帝は不可解な態度をとるし、弟が尚侍として後宮に上がることになるし、愛妻の三の姫は最近、何かと恋の"いろは"について聞きたがって来るしで近頃はため息をつくばかりの毎日。そんな中綺羅の親友である宰相中将は綺羅への「奇しの恋」を自覚してしまう。意を決して綺羅の居る右大臣亭へと足を向けたが…

男勝りの姫様と女の子らしい若君という双子の姉弟が繰り広げる新釈「とりかえばや」物語、完結編。

姉君の「結婚」に弟姫の「後宮入り」といよいよのっぴきならないところでギリギリの攻防に加えて帝やら三の姫やら女東宮やら宰相中将…と二人を巡る様々な人々が交錯し、そんな中で最初に「元服したい」と言ってしまった責任感で一人で矢面に立とうとする姉君の姿にハラハラしていましたが、最終的には絡まった糸を解して綺麗に収まってくれたことにホっとしました。前巻の自由奔放ぶりを知っていると、序盤の姉君の落ち込みぶりは見てて目に余るものがありますが、その後の行動の堂に入りっぷりは思わずニヤリとしてしまうものが。

そして何よりも後編の見所は立派に成長した弟姫の雄姿。後宮に上がったことを切っ掛けに、前巻のヒスっぷりからは見違えるように立派になって……女東宮に秘密を打ち明けた時のやりとりには思わず笑ってしまいましたが、なんだかんだいって根は女の子な女東宮や姉姫を上手い事あしらっていく姿には男の子の底力を見た気分でした。

正直、事情も知らずに振り回されてしまった三の姫や帝が可哀想に思えなくも無いのですが(宰相中将は自業自得なのでスルー)、なんだかんだいって誰もが幸せになる終わり方だったのが嬉しかったです。

個人的には、帝にはいつか本当のことを打ち明けてあげてほしいなあ。


ざ・ちぇんじ! 新釈とりかえばや物語 前編

 

時は平安。権大納言は自分の子供であり双子のように瓜二つの容姿を持つ母違いの姉弟のことで心悩ませる日々を送っていた。姉の「綺羅」の方は凛々しく男勝りな性格で、男姿で活発に遊びまわっており、弟の「綺羅」は繊細すぎる程繊細な心の持ち主で母の言いつけにより姫として育てられていたのだった。周囲の人々は姉を「綺羅君」、弟を「綺羅姫」だと思って疑わなかったが、やがて周囲の男児達が元服していくのに感化された姉の綺羅姫が「元服したい」と言い出してしまい…!?

古本屋で偶然置いてあるのをみつけて、懐かしさの余り思わず買ってきてしまいました!「とりかえばや物語」を下敷きにした、双子のような容姿の姉弟とその周囲の人々が巻き起こすコメディ。

綺羅姫の「元服」からトントン拍子に綺羅君の「裳着」に、そして……と、当事者達の思惑をよそにどんどん物語が取り返しのつかない方向に転がっていってしまい、それに当事者たちが翻弄される姿に思わずニヤニヤしてしまう。大体元凶の一言を放つのは姉の綺羅姫の方なんだけど、話が大きくなってから「あれっ、なんでこんなことに……」と我に返って綺羅がなんだか可愛い。特に主上とのやりとりは、はたから見ると完全に両想い状態なのに綺羅が女であることを隠しているばかりにどんどん話が変な方向に転がっていって、お互いがお互いに自発的にすれ違いまくってどんどん事態が悪化していく姿に微笑ましくなってしまいました。こ、こいつらかわいいなあ!!

前巻では宮中で華々しく活躍する綺羅君(※姉)とその周囲の人々を中心に描かれるので、綺羅姫(※弟)の方は殆ど日が当たらないんだけど、ラストでとんでもない爆弾を投下されて遂に「取換え」騒動の渦中に飛び込んできそうな勢い。以前読んだとはいえ殆ど結末あんまり覚えてないので、後編でどんなオチがつくのかとても楽しみです!