[著]成田 空子 [絵]CHI-RAN 「私服で通学できる」という校風に惹かれて、全寮制の女子校・愛百合女学院に転入した帰国子女の森永苺。ところが、パンフレットは5年前に作られたもので、私服登校した苺は転校初日から退学を言い渡される事に!?風紀委員や生徒会のお姉さま方から逃げ回っていたら、なぜか全校生徒の憧れの的・生徒会長の愛羅様に助けてもらって… |
読んでみた感想ですが……うまく言葉には出来ないけどなんか全体的に百合っぽくない…。昔のキャピキャピ系少女小説の文体で書かれた生徒会長モノBL小説、という印象。自分としてはあんまり百合ん百合んしててもヒいたかもしれないので苦手な読み味じゃなかったけど、正統派な百合を期待して読むとションボリだろうなあ。
主人公の御相手役である生徒会長・愛羅様が始終壊れっぱなしで、「本来の顔」を見せてくれる場面が本当にちょっとしかなかったのも残念かも。恐らく「普段はクールビューティ装ってるキレモノだけど、実は可愛いもの好き」的なキャラなんだとは思うんですが、その辺が描写不足で。もうちょっと表側のキリっとした「全校生徒憧れの美女」みたいな部分を出してくれればよいギャップ萌えキャラだったと思うのですが。
主人公についても、「勘違いしてたからって制服指定の学校で私服着てきていいって話にはならないだろ!!!」としか言えない。特に序盤の主人公の行動は、自己中心的なモノ以外の何も見えてこないので、正直不愉快でした。しかもその無茶な主張が、学院長やら生徒会長やらの取りなしで上手い事通ってしまうので、読んでる側としては非常にストレスたまる。こんなに「一度痛い目見た方がいいよ!!!」って思った主人公もめったにいないよ!!
途中で「制服を着たがらない」理由はちゃんと提示されるものの、それなら学校側に事情話してスカート丈調整してもらえばいいじゃん?とか……結局、本音は「制服なんか着たくない!可愛い私服が着たいの!!」なんじゃないの、としか思えないのがなんとも。帰国子女だからどうこうっていうよりただのワガママだよねーこれ…。
愛羅さまのセクハラが彼女の持つ過去のトラウマに触れてしまい、お互いの距離が離れて……というあたりは結構面白い展開だと思ったんだけど、そこから仲直りまでの描写があまりにも軽くて、なんだかなーと思ってしまう。
主人公の舌ったらずでイライラを誘う喋り方といい、世間知らずで自己中心的な性格と言い、ただの変態さんな生徒会長さんといい、キャラクターには正直あまり魅力を感じなかったのですが、変態全開な生徒会長の奇行を眺めるのはそれなりに面白かったし、生徒会長の繰り広げるセクハラの数々はとてもエロかったので、軽く気分転換に眺めるエロ小説としてはOKという感じでした。感想書き始めると文句ばかりでてくるんだけど、不思議と「つまらなかった」わけではないんだよね…ううむ。
ただ続きがあるならもうちょっと各キャラクターを掘り下げていってほしい気がします。苺のルームメイトや意地悪双子とか、結構いいキャラだったのに殆ど掘り下げが無くてとても惜しい。