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二四〇九階の彼女 2

[著]西村 悠 [絵]高階@聖人

無数の世界が幾千と積み重なって形成された“塔”。サドリは廃棄された“塔”の2409階の世界に居るという少女と言葉を交わし、彼女との約束—いつか外に出て、海を見ること—を果たす為に途中で知り合った人工生命体のカエルと共に“塔”を降りていく。様々な国を通り過ぎ、サドリが遂にたどり着いた“塔の外”とは…!
 

(あらすじが前回の使いまわしだったりしますが気にしてはだめですよ!)

無数の世界が積み重なって形成されている“塔”の外にあるという海を目指して度を続ける少年・サドリとカエルの織り成すストーリー第二段。 設定だけ見るとなんだか「二四〇九階」がキノで、「シゴフミ」がしにバラに見えるというツッコミは多分禁止。

1巻を読んだ時のように主人公が浮いているなあと感じることも無く、今回は普通に楽しく読めました。正直あまり続編を買う気はなかったけど、これは買ってよかったと思う。

どの話も平均的に面白いのですが、やはり一番オススメなのはサドリとカエルが出会うきっかけとなる「一二四四階の競争」。サドのキャラクターがめちゃくちゃイイ。最初あの喋り方はカエルが2人いるようで物凄く戸惑ったけど、慣れると凄く味があります。そしてカエルがああいう喋り方をするのは、実は…という展開がまたお見事。

その他の「一八六階の列車」も「七三五階の闇」も前作と比べて圧倒的にキャラクターが生き生きしていて、良かった気がします。特に「七三五階の闇」ラストは物凄くインパクトあります。死ぬような思いをしてたどり着いた回答が、アレだと思うとどうにもやりきれない…。

どうも以前は主人公のみが空回りしている感じがあったのですが、主人公のちょっと熱血気味な性格がいい具合に作用しているように思えました。1巻を読んだ時の第一印象は「劣化キノ」だったのですが、いい感じに「キノ」とは違う味が出てきたなあと。

しかし、折角2巻で美味しくなってきたのに
「二四〇九階の彼女 2」がまんま打ち切り最終回っぽいんですが、ひょっとして2巻完結ですか…?

まさか二四〇九階全ての層の話をやる訳には行かないだろうけど、どうせならもうちょっと続けてほしいなあとか、塔の1階は、出口はどうなってたのー?、とかどんなエピソードがあったのー!?とか…色々と尻切れトンボな終り方に思えてなりません。完結、とも書いて無いし。かといってこのエピローグが出た後に時系列戻して今まで通りサドリとカエルの旅を描いた3巻が出てもなんだか興ざめだし…うーーーん。


二四〇九階の彼女

[著]西村 悠 [絵]高階@聖人

無数の世界が幾千と積み重なって形成された“塔”。サドリは廃棄された“塔”の2409階の世界に居るという少女と言葉を交わし、彼女との約束—いつか外に出て、海を見ること—を果たす為に途中で知り合った人工生命体のカエルと共に“塔”を降りていく。通り過ぎた世界では沢山の様々な人間がいて、それぞれ懸命に生きていく…。
 

各話結構面白くて基本となる世界設定等も非常に惹かれるんですけども、「キノになりきれなかったキノ」みたいな…良くも悪くもそんな印象を受けた作品でした。

“ただ一つの約束を果たす為に”という行動理念が根底にあるのなら主人公はあくまで傍観者に徹するべきだったと思うのです。しかもゲストキャラクター達の背負った運命や世界観などが重く、彼らが生み出すストーリーが非常に魅力的なのに対し、対照的に主人公の設定や背負うものは酷く薄い。こういうストーリーなら従来のテンプレ通りな熱血主人公を据えるよりもキノやモモのような“傍観者”的な主人公を据えた方が面白かったんじゃないでしょうか。

個々のストーリーは文句なしに面白かったんです。特に「九四三階の戦争」「一〇五六階の幻想」のラストは非常に切なくて、胸が締め付けられる思いでした。

作者的に、主人公を傍観者にしたいのか、それともフラグたてまくりの上条当麻的スタンスに持っていきたいのかが不鮮明なのに加え、階層数によって時系列がはっきりと示されているにも関わらず時系列をめちゃくちゃにして読ませているという意図が不明で、そこが気になって本編に集中できなかったというのもあったと思います。時系列が不鮮明だったりカエルとコンビを組ませたりしているのはやはり「キノの旅」を意識したストーリー構成という事なのかもしれませんが、それなら主人公をもっとでしゃばらせないで欲しかったです。というか特に意味がないなら時系列順でいいんじゃないかと思うんだけどなあ…続編が出る予定があって、実は続編以降の重要な伏線に繋がっていたりするのでしょうか。

近頃「キノ」や「しにがみ。」を読んでもだれだれに感じてしまう分「電撃短編界に新たな風が!!」とか序盤読んでて思っていただけに、凄く残念な感じでした。