女王の化粧師2 | 今日もだらだら、読書日記。

女王の化粧師2

 

「わたしには、あんたの化粧が必要なの」――時代に翻弄された女王候補と化粧師の物語、続編登場!!
化粧道具を壊した主君マリアージュに怒りをぶつけてしまったダイ。 使用人たちからは非難を浴び、辞めさせられると不安を抱くなか、当主代行のヒースに化粧道具の調達に連れ出される。 花街時代の友人との再会やヒースによる励まし、鮮烈な魔術師との出逢いを経て、ダイは改めてマリアージュと向き合うことに。 しかし彼女からは、完璧に拒絶される一方で!?

良くも悪くも1巻からの続きのお話で、2巻一気読みできて良かった…。それにしても社交デビューの話がほんとに…恋愛要素薄めのお仕事モノだと思っていたのにこんなことになるとは!!

逆境の中、お嬢様と共にダイも成長していく第2巻

癇癪を起こしたマリアージュに大事な化粧道具を壊されて激昂したダイは、これまで使用人達が隠していたお屋敷の窮状を彼女に暴露した上、「自分がどんな女王になりたいのか解らないなら、自分が化粧を施すことはできない」とまで豪語してしまう。それ以来、マリアージュは自室に引きこもるようになってしまう──。

第1巻はダイの鮮やかな化粧の腕の披露に加えて癇癪持ちのマリアージュお嬢様との激突が描かれましたが、第2巻はダイ自身の出自が掘り下げられて、そんなダイの弱い所、マリアージュと共に成長していく姿が描かれていくのが印象的でした。ダイが化粧師だけでなく使用人として積極的に動いていくところは1巻の見どころでもあるんだけど、他所からやってきた新参者のダイがそれをするのが越権行為として映るのはある意味当然のことではあるんですよね。それが、マリアージュの成長に必要なことだったとしても。

お屋敷の中で居場所をなくし、庇ってくれたティティアンナの立場まで危なくして、過去のトラウマも合わさって徐々に自信を失っていくダイ。その過程でヒースの新たな一面が見えたり、新しい出会いがあったりはするものの、なかなかもどかしい展開が続きます。でも、長い沈黙を経てやっとダイの言葉に応えてくれたマリアージュお嬢様の、なんと心強いことか。もともと冷静でありさえすれば状況を正しく判断できる技量の持ち主であるマリアージュ。思えばどんなにぶつかりあったとしても、最初に化粧を施されて以降の彼女はダイに「出て行け」とは言ってなかった気がします。たぶん、自分にとっていかにダイが必要であるか、それを誰よりも感じていたのは彼女なんだよなあ。

世間知らずではあるけど貴族社会のならわしには強く人の心の機微に敏感なマリアージュと貴族社会には疎いが世間の機微をよく知っていて直情的なダイ、良い意味で互いの持っていない部分を補い合える関係のふたりが「どんな女王になりたいか、一緒に考えていこう」と手を取り合う姿に胸が熱くなりました。

なにげに、ダイの持つ化粧用品の秘密や魔法使いの登場など、世界観に切り込むお話が多かったのも楽しかったです。華やかな魔法の世界ではないけれど、水道やお屋敷の整備などちょっとしたインフラを魔法が支えているという設定が凄く面白いですね。

恋愛要素低めの“お仕事”モノ──と思いきや

マリアージュお嬢様との確執、お屋敷内での問題もほとんど解決したところでやってきたダイの社交デビュー。ダイの出自に複雑ななにかがあるのは1巻からずっと匂わされ続けてきましたが、その一端が遂に明かされます。というかそういうことだったんですか!!!確かにこう、改めて読むと色々と伏線が貼られ続けてたなという感じではあるんですけど!!!いやもうほんと細かい名言は避けますが、いやほんといつもの倍以上に語彙がないなこの文章!!

西洋風ファンタジー世界を舞台にした硬いお仕事モノだとおもって読んでいたのに、この社交デビューのお話はずるいですよ!!一気に匂わされてきた恋愛要素というか男と女の色事にニヤニヤが止まらない。いやこれはいろいろな意味でネタバレ無しで読んでほしい感じはあるんですけど…直接的なことはなにもしてない(?)のに、そこはかとなく溢れ出るエロスにニヤニヤしてしまう。特に手を重ねる場面と名前を呼ぶ場面、えっちでは!?

物語としてはまだ序章の序章でしかない

お話としては1巻2巻合わせて綺麗に終わってるのだけど、よく考えたらまだマリアージュは女王候補として漸くスタート地点にたったようなものだし、恋愛要素もまだこれから……という感じで、壮大な序章でしかない感。マリアージュのライバル・アリュシエルが誰と喋っていたのかも気になるし……というか「小説家になろう」版ではまだこの辺だと序章が終わってさえもいないと聞いたんですけど!?

1巻だけだとそこはかとないフラストレーションが解消されないまま終わってしまう感じが強かったので、2巻が電子限定ででも出てくれたのは本当に良かったなあ思う。原作なろうなので続きを読もうとすれば読める環境ではあるんですが、なんとか頑張って3巻も出てくれるといいなあ。隙あらば2巻の紙書籍も是非……。

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